真田騒動―恩田木工 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.75
  • (50)
  • (75)
  • (94)
  • (6)
  • (0)
本棚登録 : 590
感想 : 65
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101156217

作品紹介・あらすじ

信州松代藩-五代目・真田信安のもと、政治の実権を握り放縦な生活に走った原八郎五郎を倒し、窮乏の極にある藩の財政改革に尽力した恩田木工を描く表題作。関ケ原の戦い以来、父昌幸、弟幸村と敵対する宿命を担った真田信幸の生き方を探る『信濃大名記』。ほかに直木賞受賞作『錯乱』など、大河小説『真田太平記』の先駆を成し、著者の小説世界の本質を示す"真田もの"5編を収録。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 長野県上田市の真田氏歴史館を訪れた際に購入しました。

    本書は五篇の小説からなる。
    舞台は信州松代であり、すべてに真田家の人々が登場している。
    それぞれの話が、いろんな角度から展開されていて再登場する人物もいて面白い。
    いつの時代でも世の中を統率するには苦労が付き物ですね。

    小野のお通は惹かれる何かを持ち合わせている。
    関連本を読みたくなります。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「上田市の真田氏歴史館」
      行ってみたいナ(負け組マニアなので)
      「上田市の真田氏歴史館」
      行ってみたいナ(負け組マニアなので)
      2014/05/15
  • 「真田太平記」を読んだことがある人には、かなり面白い本だと思います。
    読んだことが無い人にとってどうなのかは、ちょっと判んないです(笑)。
    ただ、発表順は、全然逆なんですね。この本に入っているのは、

    「真田騒動~恩田木工~」(発表1956) ※これで、「時代小説を書くぞ」という方針が決まったそうです。
    「信濃大名記」(発表1957)
    「碁盤の首」(発表1958)
    「錯乱」(発表1960) ※直木賞をこれで受賞されたそうです。
    「この父その子」(発表1970)

    の、5編。
    そして、池波正太郎さんの年譜で言うと、

    「鬼平犯科帳」1967~
    「剣客商売」1972~
    「仕掛人梅安」1972~
    「真田太平記」1974~

    と、なっています。だから、「真田太平記を書いた余波で書いた短編」では、全然ないんですね。

    池波正太郎さんの、オンリーワンと言って良い持ち味が良く出ていますね。
    悪事に落ちる悪者の、業の凄味…怖さ…人間的な味わいにまで思えてしまう…。
    悪事と欲と怖れに満ちた浮世の中で、思いを曲げない男女の佇まい…。
    人間臭さ…清濁併せたぬくもり…。どこか俯瞰なもののあわれ…。と、でも言いましょうか。


    簡単に内容の備忘録を。
    「真田騒動~恩田木工~」
    武骨な年代記のような形で、「江戸時代。暗愚な殿様、逆臣のせいで混乱する大名。地味に建て直しに粉骨する主人公」というお話。
    暗黒時代のストレス感、主人公がヒーローではない生身な生活感。
    乱れ落ちる大名家の様子がリアルで、かなり面白い。
    悪に傾き、落ちていく人間像を体温ごと描くような持ち味は、池波節が初期からキラキラしていたことが判ります。

    「信濃大名記」
    大阪冬の陣と夏の陣の間に、真田幸村と真田信幸の兄弟が、お忍びで会った。久闊を叙した。
    そしてその後の歳月を、信幸の視点で描く。
    豊臣滅亡、天下泰平の後で。忽然と信幸が、父昌幸と弟幸村と同じく、戦場と抵抗への欲求に駆られる、その不条理な心情が実に生で面白い。
    ただ、歴史的な予備知識がないと、手触りが楽しめない掌編だと思います。

    「碁盤の首」
    良く出来たオハナシ。
    信幸在世時代の真田家を舞台に、悪者の家臣を成敗するまでの気の利いた短編。
    強姦で捕まえた人格破綻者の家臣。脱走して幕府に讒言。
    お家安泰のために成敗したい。
    名君・信幸の策は。悪者の碁仇だった家臣に、悪者をおびき寄せさせるために…。

    「錯乱」
    これまた、時代小説なんだけど、良く出来た大人のミステリー小説、と言って良い。
    事件は、真田家の後継ぎ騒動。君主が病死。幼年の子供か、悪者な弟か。
    進む悪者側の陰謀。追い詰めれらる子ども側。悪者側の糸を引く徳川幕府。
    真田家の中に潜む、「実は幕府のスパイ」という家臣。
    その家臣の人間的な、スパイとしてのストレスと苦悩。この辺はグレアム・グリーン顔負けの人間ドラマ。
    名探偵は、90代の!隠居の信幸。(ほんとに長生きだったんですね。すごいですね)。
    敗色濃厚、絶体絶命の真田家を、どう救うのか。
    これは確かに、絶品の中編。
    名探偵の老人・信幸の人間像と、プレッシャーの中でもがくスパイの心情が、どっきどき。
    「スパイ中心の悪漢小説、信幸が鬼平だ」と、考えたら、素晴らしい鬼平モノだ、とも言えますね。

    「この父その子」
    これは、淡い味わいの心情ドラマ。
    信幸死後の真田家。
    貧乏な家の為、倹約に努める質素な若殿(と、言っても、もう中年)が覚えた、初めての恋、情事。
    道ならず生まれたその男子の数奇な運命。
    人の弱さ、狡さ、疑い。その中で芯を貫く泥中の蓮。ままならない浮世のあわれさ。人の体臭が匂うような温かさ。
    でも、残酷とか悲惨とか、というところまで落ち込まない、独特の湿度というか。
    肩の力の抜けた、物書きとしての熟度を感じる掌編。

  • 「真田太平記」「獅子」と読んできて、これで一区切りにしようと読んだ一冊。前半は知っているエピソードばかりだったが、新たに知る時代の話はワクワクしながら読めた。信幸の後も大変な時代が続いたんだな…。生きる地を簡単に変えられない時代だからこそ、どうにかしてより良い藩に、と奮闘する人々の活躍が印象的だった。

  • 真田太平記に魅了されてはや10年以上の歳月がすき、久し振りに読んだ真田年代記。
    やはり面白い!
    真田太平記が多少は娯楽的な面白さが前面に出ていた気がするが(その分夢中になりました!)、こちらは大人の内容。
    読み応え十分。
    読んで良かった。
    お勧めです。

  • 真田太平記のその後の物語など、これも楽しく読めて興味深い。

  • 『真田太平記』の元になった作品。
    真田家と言ったら、池波正太郎というくらいに、自分のものにしてしまっている感がある。
    五編、収録されているのだが、どの作品も骨太で読み応え充分。

  • 幕藩体制下の武士、特に政客の生き様が描かれる。創業は易く守成は難し。真田家はまさにそのような立ち位置である。2020.2.8

  • 戦国末期から江戸幕府期の真田家のサバイブについて。どの時代も生きづらく、だがしたたかに生き延びる。真田家のありようは成長期と成熟期の企業のようであり、外様大名の多くが直面したであろう苦労はサラリーマンにとって、共感できる。

  • 母の出身は松代の下級藩士。だから松代は何度か訪れた町。真田家には親近感あり。
    昌幸信繁は、戦を楽しむ、信之(文中では信幸ー関が原後、改名していたはず)は「領民家来の幸福を願う事」を考える。その生きざま。戦国時代後を見据えた藩の維持を考えている。今の政治家にここまでの矜持はあるだろうか。
    池波作品は、人の心の機微も細やかに書き込まれていて安定感がある。恩田木工「しかし、おれも人間だからな(原たちのように思いあがるかも)」に妻みつの「みつが目をはなしませぬ」P292、さりげないこのやり取り。うまいなあ。「剣客商売」は読破したが、「真田太平記」は手を付けていなかった。これを機に着手を考える。

  • 信州松代藩--五代目・真田信安のもと、政治の実験を握り放縦な生活に走った原八郎五郎を倒し、窮乏の極にある藩の財政改革に尽力した恩田木工を描く表題作。
    関が原の戦い以来、父昌幸、弟幸村と敵対する宿命を担った真田信幸の行き方を探る『信濃大名記』。ほかに直木賞受賞作『錯乱』など、大河小説『真田太平記』の先駆を成し、著者の小説世界の本質を示す''真田もの''5編を収録。


    どこの藩、家でもお家騒動はあったかと思いますが、信州松代藩(真田家)の騒動を取り上げた『真田騒動』が特に興味をひかれました。
    藩の財政再建に関わる話なのですが、家老の恩田木工が抜擢される前の状況がひどすぎて笑うしかない部分もありましたが、自らが先頭に立って揺ぎ無い覚悟のうえで改革に乗り出した恩田木工。
    当たり前のことといえば当たり前ではありますが、時代は変わっても、当たり前のことが出来ない責任者がたくさんいた事実は変わらないのですね。
    財政再建といえば上杉鷹山が有名ですが、恩田木工の力も負けていないと思います。

全65件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

大正十二(一九二三)年一月二十五日、東京市浅草区聖天町生まれ。昭和十(一九三五)年、下谷区西町小学校卒業、株式仲買店勤務。昭和十四年より三年ほど証券取引所にあった剣道場へ通い、初段を得る。旋盤機械工を経て昭和十九年、横須賀海兵団入団。敗戦の翌年、東京都職員として下谷区役所の衛生課に勤務。昭和二十三年、長谷川伸門下に入る。昭和二十五年、片岡豊子と結婚。昭和二十六年、戯曲「鈍牛」を発表し上演。新国劇の脚本と演出を担当する一方、小説も執筆。昭和三十年、転勤先の目黒税務事務所で都庁職員を辞し、作家業に専念。昭和三十五年、『錯乱』で直木三十五賞受賞。『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』の三大シリーズや『真田太平記』等、数々の小説で人気を博す一方、食や映画、旅に関する著作物も多く上梓した。受賞歴はほか吉川英治文学賞、大谷竹次郎賞、菊池寛賞等。平成二(一九九〇)年五月三日、入院していた東京都千代田区神田和泉町の三井記念病院で死去。小社では同じく単行本未収録のエッセイ集『一升桝の度量』(二〇一一)と初期戯曲集『銀座並木通り』(二〇一三)を刊行している。

「2022年 『人生の滋味 池波正太郎かく語りき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

池波正太郎の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×