剣客商売 五 白い鬼 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101157351

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  • 秋山小兵衛の弟子で高崎藩士の竜野庄蔵が討たれた。犯人は、藩内で陰惨な事件を起こしていた「白い鬼」
    佐々木三冬の住む寮に賊が侵入する。三冬がその日見かけた男女が事件のきっかけだった「西村屋お小夜」
    鰻売りの又六の情報を元に、小兵衛が無頼旗本や浪人たちを打ち倒す「手裏剣お秀」
    秋山大次郎が夜更けに出会った人斬り事件。犯人を差配していたのは大身旗本で槍の名手だった「暗殺」
    農具小屋で一人、雨宿りをすることになった小兵衛。そこに飛び込んで来たのは、かつての剣術試合の相手だった「雨避け小兵衛」
    女武芸者の佐々木三冬は老中•田沼意次の娘。父には、自分より強い相手以外とは結婚しないと申し入れてあるが「三冬の縁談」
    大次郎は大川に投げ込まれそうになっていた旧知の小針又三郎を助ける。小針はある女に依頼された品を弟に届けようとしていた「たのまれ男」

    油ののった第五巻。秋山小兵衛•大次郎親子とその取り巻きの人物造形が確定し、生き生きと動き回る姿が小気味よい。
    ただ、長編連作に有りがちな同趣向の展開も増えてきた。ちょっとだけ気になったのは、"隠れた場所に入り込んで事件を覗き見する"というパターンがこれで3回目。それでも、登場人物たちは、覗き見した自分が嫌になったりはしない。覗き見することが趣味じゃないので、その気持ちがよくわからん。知らんけど。

  • 事情があって図書館へも書店へも行けず、自宅にあった池上正太郎の剣客商売五白い鬼を再読した。

    以前から何度か通読したり、抜粋して読んだりしていたが、最初から最後までそして常盤新平の解説までじっくり読んだのは初めてだった。

    秋山小兵衛と大治郎、おはるの風変わりだけど愛情溢れる親子関係、大治郎と三冬のもどかしい恋愛事情に心温まる。事件を御用聞きの弥七と傘屋徳次郎の助けを借りて手際よく解決するくだりに感心する。小兵衛が贔屓にしている料理屋の食事、おはるが作る朝餉、夕餉どれを取っても食べてみたくなる。

    何処を読んでも作者の粋で陽気でユーモア溢れるタッチには、感動する。次の六新妻を探しだした。

  • ▼収録されているのは以下。



    白い鬼

    西村屋お小夜

    手裏剣お秀

    暗殺

    雨避け小兵衛

    三冬の縁談

    たのまれた男


    ▼印象に残ったのは「雨避け小兵衛」。小兵衛が雨よけでとある小屋に入る。その小屋にあとから、誘拐犯が入ってくる。小兵衛は隠れていて様子を見る。誘拐犯は、かつて鎬を削った剣客だった男。いまは落魄して暮らしに困っているらしい。

     で、小兵衛は当然ながら腕でこれを退治解決するのだが、やるせない想いに襲われる。この誘拐犯が落魄するきっかけになったのは、自分との注目の試合だったからだ。

     ラスト、若い女房のおはるに慰めを求める小兵衛、という一幕が印象的。


    ▼つまりは、剣客商売の業。これはスポーツとか芸能と一部似ているところもある。「いちばん強い」から金が稼げる。「負けたらすべてを失いかねない勝負」だから、人が注目するし、勝者にはお金・地位・名誉が入る。

     だがその「美味しいポジションのマーケット」があまりに小さいのでは、ほとんど全員が「いつか惨めになるために、必死で修行している」ことになってしまう。その道を、そうとは思わず歩んできた自分。たまたま自分は上手く生き残ったけれど。

    という感慨ですね。



    ▼そして、この物語は田沼時代で、それはつまり1770年代〜1780年代だと思われます。江戸時代は1603年〜1868年なので、ちょうど江戸江戸中期。元禄時代(1700年前後)を経て、剣術は以前のようには流行らなかったでしょう。

    ちなみに恐らく、江戸時代後半というか終盤に多少盛んになります。具体的には千葉周作以降、1830年代以降でしょうか。幕末の乱世が1853年以降です。

  • 剣客商売 五

    今回の“サイコ”は(定期?)、表題作「白い鬼」に登場する、金子伊太郎。彼は涼やかなルックスですが実は猟奇殺人を繰り返す恐ろしい奴です。そんな金子伊太郎に昔可愛がっていた弟子を殺されて、小兵衛さんの怒りの剣が炸裂します。
    そして「三冬の縁談」では、大治郎が三冬への想いを意識することに・・。三冬が大治郎ラブなのはわかっているので、これは相思相愛ということになりますね。あとは初心な二人の恋がどう発展するのか、じっくり見守る所存です。

  • 白い鬼 サイコパス金子伊太郎
    西村屋お小夜 大治郎と三冬で解決、盗人宿
    手裏剣お秀 女武芸者
    暗殺 要はエロ本所持を隠したかった
    雨避け小兵衛 負けてやればよかったのに
    三冬の縁談 両想いじゃないか
    たのまれ男 渡り中元とかのごたごた

  • 地位が高い人も小者と言われている人にも、いい人もいればそうでない人もいる。清濁併せ呑む子兵衛。その当たり前のことがよく描かれている。季節感、食べ物の描き方も素晴らしい。人物や服装にまつわる描写もいい。つぎはぎだらけだが少しも垢じみてないとか…輪郭からその人物の人となりがわかる。周辺がきちんとかけているから物語が面白いだけに終わらない余韻がある。

  • 剣客商売5作目。

    やめられない とまらない ◯ビー◯っぱえびせん♫
    という曲を思い出すほどに、やめられない とまらないシリーズ(笑)

    「白い鬼」は、ゾッとした。
    猟奇殺人。。
    いつの世も、この手の猟奇はいるのだな。。。
    しかし、本当に怖い。

    「西村屋お小夜」の大治郎には、笑ってしまった。
    最後の最後までそれに気づかないとは!!
    鈍感というか、ウブというか。。。(笑)

    「雨避け小兵衛」は、小兵衛が気の毒だ。。
    旧知のものの落ちぶれた姿、行動。。
    そのショックは相当なものだと思う。
    おはるの包容力に期待をした最後だった。

    白い鬼
    西村屋お小夜
    手裏剣お秀
    暗殺
    雨避け小兵衛
    三冬の縁談
    たのまれ男

  • 2019年10月5日、読み始め。
    2019年10月6日、読了。

  • <目次>


    <内容>
    3巻、4巻は借りられていて、先にこの5巻を読んだが、
    安定。三冬と大治郎の関係が進んでしまっていたのはしょうがない…

  • 今の世知辛い世の中とは違って、則よりも情の世界。爽快です。「三冬の縁談」は、小兵衛やり過ぎな感じですな(笑)杉下右京に叱られそう(笑)

    解説にもありますが、池波氏の小説は食べ物が出てくるのも楽しみの一つ。今回も味噌汁で白飯を食べたくなりました。

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著者プロフィール

大正十二(一九二三)年一月二十五日、東京市浅草区聖天町生まれ。昭和十(一九三五)年、下谷区西町小学校卒業、株式仲買店勤務。昭和十四年より三年ほど証券取引所にあった剣道場へ通い、初段を得る。旋盤機械工を経て昭和十九年、横須賀海兵団入団。敗戦の翌年、東京都職員として下谷区役所の衛生課に勤務。昭和二十三年、長谷川伸門下に入る。昭和二十五年、片岡豊子と結婚。昭和二十六年、戯曲「鈍牛」を発表し上演。新国劇の脚本と演出を担当する一方、小説も執筆。昭和三十年、転勤先の目黒税務事務所で都庁職員を辞し、作家業に専念。昭和三十五年、『錯乱』で直木三十五賞受賞。『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』の三大シリーズや『真田太平記』等、数々の小説で人気を博す一方、食や映画、旅に関する著作物も多く上梓した。受賞歴はほか吉川英治文学賞、大谷竹次郎賞、菊池寛賞等。平成二(一九九〇)年五月三日、入院していた東京都千代田区神田和泉町の三井記念病院で死去。小社では同じく単行本未収録のエッセイ集『一升桝の度量』(二〇一一)と初期戯曲集『銀座並木通り』(二〇一三)を刊行している。

「2022年 『人生の滋味 池波正太郎かく語りき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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