剣客商売 十 春の嵐 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101157405

感想・レビュー・書評

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  • 剣客商売 十

    今回は特別長編「春の嵐」です。

    “秋山大治郎”を名乗る連続辻斬りが現われ、全く身に覚えのない大治郎が窮地に陥ります。
    小兵衛さんと、弥七、徳次郎が懸命の追跡を行うのですが、特に徳次郎の執念には胸が熱くなりました。
    さらに八巻「狐雨」に登場した杉本又太郎や、女武芸者・お秀さんも加勢します。
    この事件の裏に、田沼老中と松平定信の対立を深めることで漁夫の利を得ようとする巨悪の存在が浮かび上がりますが、結局闇に葬られる事になり、仕方ないとはいえ、とんだ目にあった大治郎のことを思うとモヤモヤします。
    せめて辻斬りの男を大治郎に退治させてあげたかったと思います。
    そんな中、今回登場して杉本又太郎さんのところに押しかけ弟子のように居ついてしまった、芳次郎がなかなか面白いキャラでした。

  • ▼剣客商売シリーズを特に予備知識なく読んできまして。このシリーズは基本的に「連作短編」です。鬼平犯科帳もそうです。そうなんだけどこの十巻を読み始めてしばらくして、「あ、これ長編だ」。

    ▼いきなり壮大なネタバレを書きますが、








    要は
    ・秋山大治郎を名乗って次々に殺人を繰り返すヤツがいる。
    ・それも、秋山大治郎と田沼意次の関係を知ってか、わざわざ田沼の家来や、
    あるいは田沼と犬猿の仲の松平定信の家来を殺す。
    ・当然大治郎も疑われるし、いろいろガタガタしてくる。
    ・結局、黒幕は「徳川一橋家」だった。一橋家が、今権力者の田沼と、ライバルの定信の間を翻弄して、次期将軍の座を狙いたい・・・みたいな。
    ・最後は小兵衛が犯人と戦って勝つ。

    ▼なんだかなあと思うくらい、ミステリ的に「何も分からない状況」に客を置いてけっこうな分量が進みます。そして、毎回思うけど、結局は岡っ引きの弥七と徳次郎の「尾行」、または色々な偶然で徐々に真相が分かる。

    ▼池波さんのものは全般、歯ごたえが物足りないような気がしつつも味わいがまろやかで楽しめてしまう。今回も同様だった。

  • 2019年8月17日、読み始め。

    ●小兵衛のが使う刀メモ

    ・「国弘の脇差」。
    これは、一尺八分の愛用の脇差。

    ・「藤原国助の大刀」。
    これは、小兵衛の恩師の辻平右衛門が江戸を去る時に「形見」として与えた一振り。二尺三寸一分。


    ●人物メモ

    ・永山精之助---町奉行所の同心。弥七の直属先。
    ・弥七---四谷・伝馬町の御用聞き。
    ・徳次郎---内藤新宿の下町に住む。女房は、おせき。
    ・又六---深川・島田町の裏長屋に住む、鰻売り。

    ・小川宗哲---亀沢町の町医者。小兵衛の碁がたき。小兵衛より10歳位年長。

    ・文吉(ぶんきち)・おしん---鬼熊酒屋の亭主と女房。前亭主は、熊五郎。文吉・おしんは養子夫婦。

    ・牛掘九万之助(うしぼりくまのすけ)---浅草・元鳥越町に奥山念流の道場をかまえる。

    ・金子孫十郎信任(のぶとう)---湯島5丁目に道場をもつ。60歳をこえている。門人は300人以上。

    ・杉本又太郎---団子坂の無外流・杉本道場の当主で、秋山親子とも顔見知りの剣客であった父親を1年前に亡くしている。

    • やまさん
      seiyan36さん
      こんにちは。
      いいね!有難うございます。
      雨が降っています。
      これからしばらく降るようです。
      困ります。
      ...
      seiyan36さん
      こんにちは。
      いいね!有難うございます。
      雨が降っています。
      これからしばらく降るようです。
      困ります。
      やま
      2019/11/22
  • 剣客商売では珍しい長編。とはいっても幾つかの話に分かれているので短編集のように読みやすい。

    大治郎の名を騙る辻斬り?が暗躍し田沼、松平を巻き込む大事件に。。。

    ってなかんじですが、今まで出てきたキャラクターも再登場。三冬さんもどこかしら母親の感じが出てきてさすがにうまいなぁと。

    大治郎がイマイチ活躍しないのと、最後の斬り合いはあれでいいのか?と思わないこともないですが、やはり剣客商売は面白いと思わせるに十分でした。
    しかし史実では、松平定信の遺恨は尾を引いて結局田沼さんは酷い目に遭わされるんだよねぇ。。剣客商売の中ではとても良い人に描かれているのでかわいそう。
    悪いやつランキングでは一橋の治済がトップか?

  • 池波作品は、安定して良いですね。剣客商売は、特に好きな作品です。長編なのも良かったですね。

  • <目次>


    <内容>
    『剣客商売』の第一長編。秋山大治郎の偽物が辻斬りを繰り返す。それは御三卿一橋家の陰謀であった。秋山小兵衛が脇キャラを総動員しつつ、事件を解決していく(特に傘徳は大活躍!)。読み始めると止まらない…

  • 「池波正太郎」の長篇時代小説『剣客商売(十) 春の嵐』を読みました。

    『新装版・梅安針供養 仕掛人・藤枝梅安(四)』、『剣客商売(一) 剣客商売』、『剣客商売(二) 辻斬り』、『剣客商売(三) 陽炎の男』、『剣客商売(七) 隠れ簑』、『剣客商売(八) 狂乱』に続き、「池波正太郎」作品です。

    -----story-------------
    老剣客「秋山小兵衛」とその息子「大治郎」が悪に挑む!
    累計2400万部突破の大人気シリーズ。

    わざわざ「名は「秋山大治郎」」と名乗って辻斬りを繰り返す頭巾の侍。
    窮地に陥った息子を救う「小兵衛」の冴え。
    シリーズ初の特別長編。
    -----------------------

    やめられなくて、どんどん次が読みたくなる『剣客商売(けんかくしょうばい)』シリーズの第10作… 1978年(昭和53年)に刊行された作品です、、、

    シリーズ初の長篇… 読み応えがありましたね、もっと長篇も描いてほしかったと思いますね。

     ■除夜の客
     ■寒頭巾
     ■善光寺・境内
     ■頭巾が襲う
     ■名残の雪
     ■一橋控屋敷
     ■老の鶯
     ■解説 常盤新平

    頭巾をかぶった立派な体格の侍が「あきやま、だいじろう」と名乗って旗本「井上主計助」を斬り殺した… 「井上」に付き添っていた小者はこの難を逃れたため事が発覚した、、、

    当然、「大治郎」がしてのけたことではないが、剣客たるものどこでどう恨みを買っているかもしれない… 「秋山大治郎」を名乗る侍の凶行はさらに続く。

    「田沼意次」中屋敷の門前に現れて門番を斬り殺し、次には「田沼意次」と敵対する「松平定信」の家来がその凶刃に倒れる… 「大治郎」が窮地に立たされるが、「大治郎」自身に嫌疑が及んでいるため、「大治郎」が先頭になって犯人捜しに出ることは出来ず、父「小兵衛」に任せるしかない、、、

    しかし、「小兵衛」もなにやら雲を掴むような思いでの探索だった… 犯人は狡猾でその姿を見せない。

    難敵を迎えた秋山一派の結束が見事でしたね… オールキャストといって良いほど、主要な脇役たちが登場しますが、その中でも特に「傘屋の徳次郎」の地道な活動が実を結ぶという展開が印象的でしたね、、、

    「小兵衛」に頭を下げられた「徳次郎」が感動して涙する場面は、本シリーズの魅力を象徴しているシーンだと感じました… 「田沼意次」と「松平定信」の確執や、「一橋治済」の陰謀、「徳川家」の跡継ぎ問題を絡めるあたりのスケールの大きな展開も愉しめました。

    面白かったー もっともっと長篇を読みたかったですね。

  • シリーズ初の長編。秋山大治郎の名を騙る神出鬼没の剣客が引き起こす連続殺人事件、そこに立ち向かっていく小兵衛とお馴染みの仲間たちという、ここまでの舞台や登場人物の総括といった趣。なかなか正体を現さない敵役の恐ろしさやひやひやする尾行の場面、意外な人物の思わぬ働きなど、これまでにないスリリングな話でとても新鮮な気分で読むことができた。小兵衛という超人的な遣い手の存在によって成り立つシリーズではあるが、彼を取り巻く豊富な人脈と人情の結びつきの強さもやはり「剣客」の欠かせない魅力であると改めて実感する。

  • 「名は秋山大治郎」とわざわざ名乗って辻斬りを繰り返す頭巾の侍。しかも狙われるのは、幕閣の中枢で対立する田沼意次と松平定信の家臣ばかり。意次の娘・三冬の夫である大治郎は窮地に追い込まれ、身の証を立てるため、家から一歩も出ない暮らしを余儀無くされる。小兵衛は、四谷の弥七と傘屋の徳次郎だけを頼りに必死の追跡を始めるのだが……。
    シリーズ初の特別長編、第10弾。

  • 剣客商売10作目。
    初の長編。

    小兵衛の執念が伝わる作品。
    でも、ラストは、なんとも有耶無耶な結末。
    あれは、小兵衛にとっても、関わったものたちにとっても、もやっとした結末だったろう。
    大人の事情で仕方ないとは言え。。

    剣客商売を読み始めた当初、おはるは、単なる年下女房で、あまちゃん。みたいなイメージだったが、ここにきて、たくましいおっかあのイメージになってきたな。

    除夜の客
    寒頭巾
    善光寺・境内
    頭巾が襲う
    名残りの雪
    一橋控屋敷
    老の鶯

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著者プロフィール

大正十二(一九二三)年一月二十五日、東京市浅草区聖天町生まれ。昭和十(一九三五)年、下谷区西町小学校卒業、株式仲買店勤務。昭和十四年より三年ほど証券取引所にあった剣道場へ通い、初段を得る。旋盤機械工を経て昭和十九年、横須賀海兵団入団。敗戦の翌年、東京都職員として下谷区役所の衛生課に勤務。昭和二十三年、長谷川伸門下に入る。昭和二十五年、片岡豊子と結婚。昭和二十六年、戯曲「鈍牛」を発表し上演。新国劇の脚本と演出を担当する一方、小説も執筆。昭和三十年、転勤先の目黒税務事務所で都庁職員を辞し、作家業に専念。昭和三十五年、『錯乱』で直木三十五賞受賞。『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』の三大シリーズや『真田太平記』等、数々の小説で人気を博す一方、食や映画、旅に関する著作物も多く上梓した。受賞歴はほか吉川英治文学賞、大谷竹次郎賞、菊池寛賞等。平成二(一九九〇)年五月三日、入院していた東京都千代田区神田和泉町の三井記念病院で死去。小社では同じく単行本未収録のエッセイ集『一升桝の度量』(二〇一一)と初期戯曲集『銀座並木通り』(二〇一三)を刊行している。

「2022年 『人生の滋味 池波正太郎かく語りき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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