唐獅子株式会社 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (497ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101158013

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  • なんと初版は1981(昭和56)年。私が購入したのは2009(平成21)年の21刷。ずっと売れ続けていることがそれだけでも凄いです。

    長い服役を終えて出所したヤクザの哲。ところが彼のおつとめの間に世の中はすっかり変わり、ヤクザもイメージが大事だと、社内報を作ることになっていた。その名も「唐獅子通信」。地元のTV局を買収して番組制作も手がけるらしく、とにかく哲にとってはワケのわからないことばかり。なのに組長は哲に舵取りを任せたいと言いだし……。

    もとは短編1話のみの作品として発表されたのだそうです。短編を書くのは好きではないと公言する著者の小林信彦氏。1話発表してみればその反響大きく、あれよあれよという間に10話、文庫化されると500頁弱とボリューム大。なにせ、PCもケータイもスマホもない頃の話で時代を感じます。それでも、今も生き続けるものがちらほら現れるのが楽しい。

    たとえば「唐獅子惑星戦争」では、『スターウォーズ』を観て衝撃を受けたヤクザの親分がすっかりスターウォーズかぶれに。おまえらも被れと言われて渡された帽子には“May the Force be with you”の文字。ちょっと英語ができるという子分が訳してみれば、「5月の問題の暴力はおどれらのおかげで残存する」、つまり「おどれらの努力にもかかわらず他の組との暴力沙汰は5月中には解決でけなんだ」になっちゃいます。大橋純子の『たそがれマイ・ラブ』の替え歌は傑作で、「千切れた指 すべり落ちた 五郎八茶碗 砕け散って」と、たちまちシティやくざの詩に。ピンクレディーやキャンディーズなど、昭和を彩る数々のヒット曲も懐かしければ、ホッピー、吉野屋、『スーパーマン』など、今なお健在なあれこれが嬉しい。

    愛犬のブルドッグがアホだからと指を詰め、あげくの果てに剥製にしちゃったり、ドアベル代わりにそのブルドッグの剥製を用いて紐を引っ張らせたりと、今なら動物愛護団体から苦情が来る可能性もありそうな。(^^;

    小林信彦氏は東京の下町に生まれ育ったのに、大阪弁が好きでたまらないのだとか。本作で大阪弁を駆使するために調査を重ねたというところも嬉しい限り。まちがいなく、大阪弁です。さまざまな当時の流行もののパロディーともなっていて、今となっては原典にたどり着くのが難しいと思っていたら、筒井康隆による、これ以上にない完璧な解説付き。

    中だるみもあったりして、本当なら★3.5というところですが、著者に敬意を表して★4で。

  • おもしろいです。独特な作家。

著者プロフィール

小林信彦 昭和7(1932)年、東京生れ。早稲田大学文学部英文科卒業。翻訳雑誌編集長から作家になる。昭和48(1973)年、「日本の喜劇人」で芸術選奨新人賞受賞。平成18(2006)年、「うらなり」で第54回菊池寛賞受賞。

「2019年 『大統領の密使/大統領の晩餐』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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