診療室にきた赤ずきん―物語療法の世界 (新潮文庫 お 64-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101160818

作品紹介・あらすじ

「むかしむかし、あるところに…」まさか精神科を受診して、昔話や童話を聞かされるなんて誰も思ってもみなかっただろう。でも、患者たちの当惑はすぐ驚きに変わる。そこに繰り広げられるのは自分の物語なのだ。悩みを抱えた心の深層を「赤ずきん」「ももたろう」「幸運なハンス」「三びきのこぶた」などで解き明かす、ちょっと不思議で、ほんとうは不思議じゃない12話の「心の薬」。

感想・レビュー・書評

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  • 精神科の症例集×童話。患者は精神科へ出向き心の悩みを吐露する。一方、医者は患者の話を聞き『赤ずきん』や『幸運なハンス』などの“童話”の一部に例えて深層心理を明解にする。

    少々のこじつけ感は否めないですが、患者側は馴染み深い例えをまえに目の前の霧が晴れたように解決されているので効果的な解決法なのだと思います。謎に覆われた心療内科の世界を覗かせてくれます。
    本書では“童話”を迷える患者の「例え」として示していますが、もとは幼い子には「道徳」を教え、大人には時に「訓戒」として忙しい日々に気付きを与えてくれます。“童話”はつい子供のモノと考えがちですが、常に人生に寄り添っていて、大人となっても時々立ち返る必要があるかもしれません。

  • 「むかしむかしあるところに…」精神的な悩みを抱えてやってくる患者たちに、昔話や童話を聞かせて治す精神科医が描いた本著。ノンフィクションで、患者たちが自分のために語られた物語の中に、自分の姿を見出して、診療室から飛びたっていく様子を描いている。

    一番最後の「人には誰にでも『自分の物語』があるのです。…人生の節目節目に自分に合った童話や昔話を見つけて下さい。」という言葉にわくわくした。
    私の物語は何だろう…今は「ヘンゼルとグレーテル」かな。道を模索中だし…あ、でもそしたらお菓子の家という甘いワナにひっかかってしまう;用心しなくちゃ!

  • 学生さんに教えていただいた本です。
    私は絵本好きで(蔵書600冊以上)、しかも医療面接の研究をしております。
    私にぴったりの本でした。
    臨床では絵本は使いませんが、絵本は子どもが理解できるようにシンプルで、しかも人間の本質が書かれております。
    様々な人生を生きる私たちにピッタリ当てはまる絵本が必ずあるはずです。
    そんな本に出会えたら幸せですね!

  • よかった

  • タイトルに魅かれて手にしたら三省堂書店限定復刊という帯を見て復刊するくらいなのか、と購入。
    精神科医のエッセイ。おとぎ話や童話を物語療法として使っているということで私でも読めるかなぁと読み始めたら読み易いし、知っている童話ばかりなのですごく興味を魅かれどんどん読み進めた。
    全編明るく開いた書き方なのは、患者に対する優しい視線と症状に対する鋭い洞察力と精神科医としての深い知見が含まれているからなのかな。解決した症例ばかりだからというのもあるだろうけれど。
    読後しみじみ思ったのは、人はちょっとしたきっかけで、でも本人にとっては知らぬ間に、道に迷ったり闇に落ちたりするのだなということ。
    決して他人事じゃない。
    最後の章で、
    『皆さんも思い出してみて下さい。幼いときに心ひかれた物語が、きっと皆さんの人生を導いてきたことに気づくはずです。人には誰にでも自分の物語があるのです。』とあり、思い出すと私にもあるなと気付いた。知らず知らずの内に導かれていた感じの。今となってはなんでそれに魅かれたんだと後悔する感じの。
    『過去に限る必要はありません。人生の節目節目に自分に合った童話や昔話を見つけて下さい』
    と続くから、これから探すのでも遅くはないらしい。
    解説の南伸坊さんも『自分の物語』に興味津々でした。

  • 精神科医の診察の場面において、読書療法を実際にどのように取り入れているのかについて症例を用いて説明がされている。

  • 2020年に読了。20年以上前の本だがとても面白かった! 精神科的に一般的な認知療法などではなく、ユニークなアプローチ。人に寄り添う診療は大変だっただろうと思うが、楽しんでいた気配さえ感じた。さて、自分が投影出来る物語って何だろう?

  • フロイト派?が解説した童話本が興味深かったので、訳者だった著者の本を読了。

    いくつかの童話、民話と、具体的な患者の話が描かれており、読みやすい本だった。実際の診療でも説明によく使うとか。

    人は内省の時期があるという、三年寝太郎や浦島太郎の話に興味を持った。

    また、食べ物とは愛情を示していることが多く、例えば赤ずきんでは、狼が赤ずきんを食べる根底には愛情に対する嫉妬など(本当に飢えているならば、その場で食べた方がよい)があるというのは、なるほどと。

    また3匹の子ブタは、本来の話では、最初の2匹は狼に食べられ、最後のレンガの家のブタは逆に狼を食べるという弱肉強食と知恵の生存戦争だったとは!

    昔から伝わる話には、時代を経ても自分の境遇や心情に合う物語があると。自分の教訓になる物語も探してみたい。

  • 悩みを抱えた心の深層を物語で解き明かす、十二話の『心の薬』

    所蔵情報
    https://keiai-media.opac.jp/opac/Holding_list/search?rgtn=070506

  • 著者は、聖路加国際病院精神科部長でもあります。患者の治療を目的として、童話や昔話を話します。確かに、童話や昔話は、勧善懲悪だったり、最後に愛は勝つだったり、子供を良い方向へ導くための物語です。しかし、長い間語り継がれてきたのには、それだけではない理由があるのでしょう。話す人・聞く人の心を癒すという大きな理由が。

    ここでは、『ねむりひめ』『三ねんねたろう』『幸運なハンス』『食わず女房』『ぐるんぱのようちえん』『ももたろう』『赤ずきん』『うたしまたろう』『三びきのこぶた』『いっすんぼうし』『つる女房』『ジャックと豆の木』のお話が書かれています。その中で、『三びきのこぶた』が一番印象に残りました。

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