細川ガラシャ夫人(下) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101162157

作品紹介・あらすじ

暴君信長のむごい仕打ちに耐えかね、ついに明智光秀は織田家に叛旗をひるがえした。しかしその天下はあまりにも短く、玉子は逆臣の娘として苦難の日々を過ごすことになった。父母一族は亡び、夫や子とも引き裂かれた玉子は、秀吉のキリシタン弾圧の中、洗礼を受けることを決意する…。強者の論理が支配する時代に、命をかけて信念を貫いた細川ガラシャの生涯を描く感動の歴史ロマン。

感想・レビュー・書評

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  • 下巻は、光秀が信長を討ったとの報せが玉子のところに入るところから始まります。

    夫の忠興は実家の家族が皆亡くなった玉子を味土野の山奥へ
    幽閉します。
    その時にキリシタンの清原佳代という侍女が供をしますが、玉子はこの時、佳代の影響を大きく受けます。

    そして多摩湖は2年の後にその時天下を取っていた秀吉に許されて帰館します。
    すると忠興にはおりょうという側室がすでに居て、玉子は非常にショックを受けます。

    玉子は
    「男はすべて女を策略や戦の道具に、あるいは子を産む道具にしか考えていないのではあるまいか」と思います。
    そして「信仰を得たならば、こうした苦しみが消えるかもしれない」と思い、佳代らの助けを得て、洗礼を受けガラシャという洗礼名を授かります。

    父の謀反によって家族全員を失い、夫の忠興しかいなかった玉子にはキリシタンとして生きる以外には道はなかったのはよくわかりました。

    それにしても、この作者の三浦綾子さんは秀吉を二百人の女性がいるというかなりの女好きと書かれており反吐が出そうでした。
    その美貌で秀吉をも虜にした玉子は知恵をもってその毒牙からものがれます。

    そして、また夫、忠興との仲を取り戻して、キリシタンとして38歳で最期を遂げます。
      散りぬべき時知りてこそ世の中の
        花も花なれ人も人なれ
                玉子(ガラシャ)辞世の歌

    そして、玉子の灰になった遺骨の側にあったという子供時代からのただ一人の家臣で玉子を陰ながら慕い、修士となっていた、初之助の遺骨。
    忠興の、男泣きには涙を誘われました。

    • くるたんさん
      まことさん♪素晴らしいレビューです♪

      玉子の胸の内が至るところで伝わってきましたね。

      忠興がああいう形でしか愛を表現できなかったのも悲し...
      まことさん♪素晴らしいレビューです♪

      玉子の胸の内が至るところで伝わってきましたね。

      忠興がああいう形でしか愛を表現できなかったのも悲しみと共に心に残りました。

      明智光秀の見方も変わったし、読んで良かった歴史小説の一つです。
      2020/08/23
    • まことさん
      くるたんさん♪

      ええーっ(^^;
      くるたんさんの、余白のあるレビューの方がいつもながら素敵ですよ~!
      でもでも、ありがとうございま...
      くるたんさん♪

      ええーっ(^^;
      くるたんさんの、余白のあるレビューの方がいつもながら素敵ですよ~!
      でもでも、ありがとうございます。

      忠興も、玉子が亡くなった後は、再婚もしなかったみたいですね。
      明智光秀が、あんなに人徳者だったとは知りませんでした。
      ご紹介ありがとうございました!
      2020/08/23
  • 堪能した、一冊。

    下巻は特に玉子の目線と心情を中心に描かれる戦国の世。

    道具、捨て駒として扱われるのが当たり前の時代。

    女性達の諦めとも言える人生の中で、玉子の芯の強さ、凛とした姿は胸をうつ。

    父母、一族を喪い、夫 忠興しか心を頼れる人はいない。
    なのに「美しい」という言葉しかもらえない侘しさ。
    ここに涙と共に一番寄り添ってしまった。

    次第に高まる信仰心。

    息をのむあの瞬間、玉子の祈りが心に、白無垢と真紅の血がまぶたに焼きつく。

    彼女の尊い命が動かした幾人もの心に涙と吐息。

    歴史の一端、一人の女性の生き様、全て堪能した。

    • まことさん
      くるたんさん♪おはようございます。

      くるたんさんがレビューに「読みやすい」と書いてくださったのを思い出し、苦手な歴史小説に挑戦しました...
      くるたんさん♪おはようございます。

      くるたんさんがレビューに「読みやすい」と書いてくださったのを思い出し、苦手な歴史小説に挑戦しました。
      ガラシャ夫人がこんなに、歴史に影響を及ぼした人物だということは知りませんでした。
      私は、初之助の想いがいじらしくて泣けました。
      2020/08/23
    • くるたんさん
      まことさん♪おはようございます♪

      私も初之助の想いがたまらなかったです。
      横笛が忘れられない…。

      私、歴史は苦手なんでこうやって小説で知...
      まことさん♪おはようございます♪

      私も初之助の想いがたまらなかったです。
      横笛が忘れられない…。

      私、歴史は苦手なんでこうやって小説で知ることばかりです〜。
      読みやすいと惹きこまれますね♬

      2020/08/23
  • 何よりもお家の存続が優先された時代、一人の人間としての心の充足や幸せを求めた、世紀の謀反者の娘 明智玉子。

    高い知性と豊かな感性を備えた彼女は、時代の価値観へ果敢な挑戦をしながら一生を終えた。
    それは何も戦国時代に限ったことではなく、儘ならない環境のなかで、自分がどう生きるか、何を選ぶかは、自分に課せられているということを私たちに示唆している。

    天下人信長を討った謀反人明智光秀の娘というレッテルを背負って生きる哀しみ、そして慈愛に満ちた父としての明智光秀への思慕。
    世間からの目と、断ち切れぬ父への愛情の狭間で、すがることができるのは、夫細川忠興のみ。
    しかし、彼女はその夫の激しい気性と悋気にも苦しむ運命を背負う。

    親きょうだい一族をすべて滅ぼされ、すがりたい夫からも子ども達と離れ、山奥に幽閉された彼女。

    次々降りかかる苦難について、「なぜ自分だけがこんなに辛い目に?」と思うのは常だ。

    やっと手にする安寧も、次にまた何かが起こり、自分の手元から奪われるのではという不安に常に苛まれる一生。
    ならば、最初から幸せを望まず、我慢と辛抱をしているほうがまだよいのでは?という問いに私の心も震える。

    本文より:「人の世に苦難はつきもの、ただ苦難を逃れよう逃れようとして生きていては、今幸せであることすら恐ろしい。幸せの時すら、この幸せが、いつ崩れることかと、恐れて生きて行かねばなりませぬ」

    私たちも今、パンデミックという不確実真っただ中に生きている。
    何を以て心の充足とするのか。足りないものは何か。自分が欲しているのは何か。今手にできているものは何か。幸せの本質に向き合ういい時期なのかもしれない。

    イエズス会において、日本人としての彼女の評価がとても高かったと知り、イエズス会運営の大学出身なので、勝手に親近感。私は信徒ではないけれど。
    とても魅力的な人間に出会えた一冊でした。

  • 信仰というものの強さを感じた。
    壮絶な最期を遂げたとき
    彼女を去来したものは
    永遠の命なのかもしれない。

  • キリスト教が一体どんな宗教なのかを知りたくて読み始めた作品でもあるが、ますますわからなくなってしまった。天主の教えを守るために周りの人間を不幸にしてもよいのだろうか??
    答えを見出せなかったところに最後の最後に答えを見出せた気がする。自分は今のところは武士道の方が胸を打つし、腑に落ちるのだと言う事を。
    それでもまたキリスト教とは何か、腑に落ちる作品を探そうと思う。遠藤周作とか。

  • とても惹かれた。
    こういう戦国時代の話って戦いや殺し合い、疑い合いがあって読むのが辛い部分もあるのだけれど、だからこそ人間ってなんで生きているんだろうと自分の運命を振り返ることも多かったのかも。
    ガラシャの場合、彼女の落ち度は何もないのに、戦国の世であるからこそ、その時々の時勢や時代の流れに逆らえない。

    文章がうまいからか、玉子の運命の一つ一つがやるせなく、何度怒りを覚えたかわからない。
    夫の忠興はやっぱり好きにはなれない…。
    いいところもあったのだが、客観的に見て夫としては傍若無人過ぎやしませんか?
    それでも、最後の玉子との別れにはグッときた。

    玉子はもともと気丈だし、聡い女性だけれども、たくさんのものを失いすぎていた…キリストという信仰を得た後は、流されるだけであった運命から、ゼウスに捧げる人生ってを得た。
    神を信仰することって、日本ではカルト的なイメージが強すぎるので怪しく思うところもどうしてもある。
    でも、戦乱の世に生きる人々が神に仕えることで幸福感を得ることができたとすれば、信仰の力は偉大だと思う。
    やっぱり人って、何か信じていないと生きていけないのではないか。
    そういう意味では、織田信長も秀吉も家康も、誰かを疑い自分しか信じられない状況だったわけで、幸福ってなんだろうって考えさせられる。

  • 上巻に続いて引き込まれた
    人生について考えさせられる

  • ★★★★★ フルプライス出せる!

    細川ガラシャの伝記という以上に、人生の道標ともなる作品だった。

    味土野での孤独、そして夫と再会してからも味わう寂寥感に、玉子は既存の価値観を疑うようになる。
    幸せを他人に求めていたら、その人が自分の意にそぐわぬ言動をした際に自分を保てなくなる。だから自分の中にその基準を求めなければならないというのは、現代でも全く変わらないところだと思った。ガラシャはそれを信仰に求めたが、別に信仰でなくてもいい。ただ危機に陥った時にどう行動すればいいのか、その判断の基準を一つ持っておけば良いだけなのだという教えを感じた。
    一つ筋の通った人は強い。秀吉に襲われそうになった際の咄嗟の判断は痛快だった。またガラシャの最期は、あの悲しくも華々しい有終は信仰いや彼女の人生全てをかけなければなし得なかったものだろう。

  • 下巻始まってすぐに本能寺の変があってからはやはり玉が話の中心。
    この時代に父があんなことしといてよく生き残れたなぁと。幽閉生活は過酷であり、寂しかっただろうなと思いました。
    最期のシーンにはちょっとウルッと来ちゃいました。
    それにしても旦那である忠興!なんつー身勝手野郎だ(笑)玉を愛していたとは思う、長生きしてもずっと独身だったなんて…。

  • 色々考えさせられた。
    キリスト教において、他人を殺してはいけないのと同様に、自分のことを殺してはいけないと有る。よって細川ガラシャは家臣に自分を殺してもらったが、それは他人にその罪を負わせていることになっているし、何よりそれは律法主義的な考え方に縛られている気がした。

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著者プロフィール

1922年4月、北海道旭川市生まれ。1959年、三浦光世と結婚。1964年、朝日新聞の1000万円懸賞小説に『氷点』で入選し作家活動に入る。その後も『塩狩峠』『道ありき』『泥流地帯』『母』『銃口』など数多くの小説、エッセイ等を発表した。1998年、旭川市に三浦綾子記念文学館が開館。1999年10月、逝去。

「2023年 『横書き・総ルビ 氷点(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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