- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101164014
感想・レビュー・書評
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デビューから中期にかけた短編集。
非常に鬱屈としていて内向的な作品が並ぶ。
しんどいボリュームと文字密度だが、『夢の中の日常』は完全に開眼しており底知れないエネルギーを感じた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『死の棘』で有名な島尾文学の解明につながる短編集、最近復刊されたもの。
海の特攻隊として死を覚悟させられ、終戦にてまぬがれしも心の傷は癒えず、それが過去にあるために本人と家族におよぼす深い傷。
解説に「正確で抽象的な作品」とあるように、文学的なあまりにも文学的な作品集。短編ではあるが、島尾敏雄が昇華させた主題が年代を追って、作品の執筆順に深まっている。
緊張を強いられた現実と、心因性の深層心理が弾ければどうなるか、という文学での追求は「文学的なあまりにも文学的な」と書いたが、現代に引き比べられ、悩ましい普遍が織り込まれている。
初版の解説(森川達也)に引き続き、芥川賞受賞の堀江敏幸の解説が追加されているが、それもなかなかよい。そういうことだったのかとすっきりさせてくれる。すっきりしたとて重いのだけれど、惹きつけられるのはおこがましくも堀江氏同様 -
「海辺の生と死」から辿りつく。独特の、夢と現実が交錯するような物語が面白かった。何者かにより自分の命が終わりを宣言される。それを当たり前として受けいれて日々生きた人でしか書けないすごみがあった。
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特攻隊長として自らの死を予期しつつも、結果訪れなかった特攻命令により、生き延びることとなった島尾敏夫の短編集。
表題作の「出発は遂に訪れず」では、その模様が揺れ動く心理描写と共に克明に描かれる他、デビュー作である「単独旅行者」では、自らのレーゾンデートルがどこにあるのかがわからない不安感から、行くあてのない旅を続ける主人公の姿が、当時の作者の心理状態を表しているように見える。 -
迫力のある特攻隊の心理描写を期待していたが、実際は暗く閉鎖的で抑揚のない日常であった。この事が却ってリアリテイを掻き立てる。1日を跨ぎ、生と死を分かち、価値観が変わる。それは一体どんな気持ちだろうか。天皇の名を利用し、政治を行った当時の民主主義は、国民を操作し、時に逮捕し、揺動した。当然、大義はあった。だから納得した。しかし。
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「戦争はどのように語られてきたか」で扱われていたので。特攻出撃命令が保留となったまま終戦を迎えた士官の心の内が丁寧に描かれている。
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特攻隊に配属されるも、飛び立つことなく終戦を迎えた軍人の想いがつまっている作品
回想するのとは違う、その当時のままの状況が描かれている