こんなに変わった歴史教科書 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 319
レビュー : 48
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101164465

作品紹介・あらすじ

昔、お札で見慣れたあの絵の人物は聖徳太子ではなく、鎌倉幕府が開かれたのも1192年ではなかった?昭和生れの歴史知識は、平成の世にあっては通用しない。歴史の基礎中の基礎、中学校教科書は、この三十年の間に、驚くほど多くの記述が書き改められている。それはなぜなのか?昭和と平成、新旧二つの歴史教科書を比較しながら、その変化の理由=史学研究の成果を楽しく学ぶ。

感想・レビュー・書評

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  • 長年歴史教科書を執筆してきた著者が、中学校における昭和47年(1972)の教科書と平成18年(2006)の教科書との違いを比較すると共に、現在でもドンドン更新されている最新の歴史の見直しの一端を披露することにより、教科書の簡単な記述の中に込めた多くの思いを語った本である。

    最近時々TVでも紹介されているように「聖徳太子」「源頼朝」「足利尊氏」らの画像は「・・・と伝えられる肖像画」と、特定を避けた記述になっていたり、「島原の乱」は「島原・天草一揆」、「西南の役」は「西南戦争」と変化している。

    幾つかの具体例を上げると、
    人類の出現⇒人類登場の年代はドンドンさかのぼる
    昭和の教科書:「よくわからない」
    平成の教科書:「400万年前」
    化石の新発見とともに、人類の出現はドンドン遡っており、近年では700万年前まで遡っている。
    百万年単位で動くのが凄い。

    大和朝廷⇒ヤマト政権・ヤマト王権
    まず「朝廷」には天皇が政治を行う場所という意味があり、天皇を中心とした国家が成立していない時期の用語としては不適当という考えから「朝廷」という文字が消えた。
    また「大和」は8世紀頃の行政区画名で、それ以前には「倭」「大倭」の文字が使われていた。4~5世紀の政治勢力の中心範囲と異なることから、最近では「ヤマト政権」や「ヤマト王権」と表記されるのが、一般的になりつつある。

    私の世代では「ヤマト」と書くと、「宇宙戦艦ヤマト」や「クロネコヤマト」を連想してしまう。

    また、私の棲む「彩の国」は江戸時代以前は、歴史の不毛の地かと思っていたら、「さきたま古墳群」の中の稲荷山古墳出土の鉄剣に金象嵌の銘文が発見された。この発見により、5世紀後半にはヤマトの大王を中心とした政治連合に関東から九州までが参加していたことが分かったそうだ。まさに世紀の大発見だった。

    長篠の戦い⇒武田騎馬隊は存在したのか
    昭和の教科書:「織田・徳川の連合軍の鉄砲隊は武田の騎馬隊を狙い撃って大勝利を得た」
    平成の教科書:「鉄砲を有効に使った戦法により、武田氏を長篠の戦いで破り」
    と、鉄砲隊に関してはグーンとトーンダウンしている。これは近年の研究成果により、「鉄砲三千挺、三段撃ち」も「武田の騎馬隊」のいずれも存在しなかったとの説が有力になっているのだそうです。
    また当時の日本の軍馬の体高(首の付け根までの高さ)が126cmと「ポニー」並みの小ささで、人が騎乗したままの戦いは無理で、闘う時は馬から降りたそうだ。

    第33回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した黒澤明監督、仲代達也主演の映画「影武者」のラストでの織田・徳川連合軍と戦う武田軍の壮絶な騎馬隊の戦闘シーンはどうなるのでしょう。
    因みにこの映画の撮影には体高が170cmもあるサブレッドが使われたそうだ。

    ああ! 夢がドンドン壊れて行く・・・

  • 着眼点が面白い。
    ちょうど自分が学んだ歴史教科書と現在の教科書の違いがわかってよかった。

  • 歴史研究が進んだ結果、昔と今とでは歴史教科書の記述が変わってきていて、足利尊氏だと、源頼朝だと信じてきた肖像画が実は別人だったとか、鎌倉幕府は1192(いいくに)作ろうじゃないとか、仁徳天皇陵が今は「大仙古墳」だとか、「大和朝廷」じゃなくて「大和政権」だとか…昔当たり前だと思っていたことが、ことごとく訂正されて、あの時覚えたあれは何だったの?と思うものの、なぜ違ってきたのか、何がどれだけ変わったのかという話には、興味があるし、面白いと思う。
    で、なぜ、教科書の記述が変わったのか、または曖昧になったのか、研究資料やその解釈の変化の過程やらから分かりやすく説明してくれている本です。
    学校の授業でも丁寧にやった、古代から明治維新前後あたりはおもしろく読めるのですが、授業でも駆け足になる近代以降になると、ちょっと不完全燃焼になる。
    それまで、資料を示しての丁寧で論理的な説明だったのが、何やら雑な説明になったような。
    「今」に続く近代だから、色々配慮しなければならなくたったということなのでしょうが、比較としての「昭和教科書」の記述がなくなり、「平成教科書」ではこうです、という説明に留まっていて、タイトルの「こんなに変わった」はどこに行ったのかと。「変わった」比較ができないなら、近代の章はなくても良かったんじゃないかと思う。

  • 昭和と平成の歴史の教科書がどう変わったかの差分説明。
    ○○と伝えられていた人物画は今は違う人物の画と判定されているなど。

    面白いと言えば面白かったが、残念でもあった。
    昭和の授業を受けた身としては、何を勉強してたんだと言う気にも。

    歴史というものは断片的な情報をかき集めて、そのときの人がそれっぽいと思ったものが採用されているのだなと感じた。恐らくまた20年もしたら別の内容になっているのだろう。
    国の成り立ちと言う意味で近代の歴史は要るだろうが、それより前の不確かな歴史を授業としてするのは必要なのだろうかと思ってしまった。

    とはいえ、なぜそう判定されたかも分かりやすく書かれていて、内容は面白かった。

  • 年号の暗記を要する歴史が苦手だった。だから教科書は無味乾燥なものであった。史料を基にした歴史小説を読んできた今、日本の歴史にいくらかでも馴染んだ気がする。昭和と平成の歴史教科書を対比させながらの記述はたいへん興味深い。しかし、古代から近代まで納めなければならない制約から、例えば坂本龍馬などは本書では一切触れられていない。教科書に+αの話を盛り込んでくれる教師がいたら歴史が最初から好きになっていたかな~?

  • <内容紹介より>
    昔、お札で見慣れたあの絵の人物は聖徳太子でなく、鎌倉幕府が開かれたのも1192年ではなかった?昭和生まれの歴史知識は、平成の世にあっては通用しない。歴史の基礎中の基礎、中学校教科書は、この三十年の間に、驚くほど多くの記述が書き改められている。それはなぜなのか?昭和と平成、新旧二つの歴史教科書を比較しながら、その変化の理由=私学研究の成果を楽しく学ぶ。


    東京書籍が刊行した中学校用教科書のうち、『新訂 新しい社会【歴史的分野】(昭和47年)』と、『新訂 新しい社会【歴史】(平成18年)』を比較。
    私学研究がどのように進み、その成果がどのように教科書に反映されてきたか、という話。
    平成29年現在で考えると、すでに新たな研究成果もあり、少しずつ情報が古くなっている部分もあるが、歴史教科書の変遷をとらえる、という意味では悪くない本だと思う。


    p.65
    「蝦夷」と「エミシ」
    『宋書』倭国伝にある倭王武の上表文に「東は毛人征すること五十五国」とみえるが、…「毛人」は、おそらく「毛の国の人」の意味で、現在の北関東に勢力を持っていた毛の国(上毛野(カミツケノ)下毛野(シモツケノ))を指すと考えられる。「毛人」は「エミシ」とも呼ばれたが、これは「弓師」の転訛で武人を示すとする説が最有力で、「東国の武者」といった意味合いが強く、蘇我蝦夷や佐伯今毛人などの人名にも用いられた。

  • 昭和と平成の歴史教科書の差異を見る。かつて習った「日本史」との比較が可能な大人に向けられた内容だが、可笑しく感じられたのは、中高の歴史の授業同様、近現代史の取り扱いが極端に少なかったこと(日露戦争で終了)。30年前と中身が依然変わってないのか、紹介する程のトピックが無かったのかは分からないが、日本の歴史教育の弱点まで反映されているようではあった。

  • 東京書籍の1972年と2006年の教科書を比較し、記述がどのように変わったか、その背景にどのような研究の進展があったかを考える一書。よく知られている話が多いが、こうやってまとまった記述になっていると、改めて面白いと思う。

    ただ、不満もある。それも大きな不満。

    (1)扱っているのが東京書籍だけであること。他社の教科書はどうなのだろうか。東京書籍に限定せず、他社の教科書も取り入れるともっと変化の様子がよくわかったのではないかと思う。

    (2)教科書の執筆者について触れていない。といっても教科書のどの部分を誰が書いたのかは公開されていないので、せめて1972年と2006年の執筆陣は掲載してもよかったのではないか。教科書の巻末に執筆者は載っているのだから。

    (3)これが最大の問題なのだが、近代の記述が日露戦争で終わっている。これでは竜頭蛇尾と言わざるをえないだろう。というか、意図的に避けたのだろうな、という気すらしてくる。しかし1990年代から教科書にとってもっとも問題になっているのが近代史、とりわけアジア太平洋戦争近辺であるのだから、そこの変化を追わないというのは残念である。この本が単なる「一般の面白い本」で止まってしまい、歴史学・教育学として意味のある本にもう一歩なりきれていないのではないだろうか。

  • 分かりやすい!
    節ごとに同時代の世界史をまとめてくれるのは便利。

  •  平成の教科書と昭和の教科書の記述の違いと、その変遷の経緯や理由を述べた本である。歴史認識の難しさを感じるとともに、知らない歴史が多々ある自身の反省に繋がる書であった。

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著者プロフィール

1957年岡山県津山市生まれ。東京大学文学部卒業。同大修士課程修了。文学博士。現在、東京大学大学院情報学環教授、同史料編纂所教授。
『江戸お留守居役の日記』(読売新聞社)(1991)で、日本エッセイストクラブ賞受賞。『鎖国と海禁の時代』(校倉書房)(1995)では、従来の「鎖国令」の定説をくつがえし、教科書が書き換えられている。豊臣政権から江戸時代の政治や武士社会を中心に研究している。
著書は、『流れをつかむ日本史』(角川新書)、『東大教授の「忠臣蔵」講義 』(角川新書)、『歴史の勉強法 確かな教養を手に入れる』 (PHP新書)、『天皇125代と日本の歴史』(光文社新書)、『格差と序列の日本史 』(新潮新書)、『歴史をつかむ技法 』(新潮新書)、『日本史の一級史料』(光文社新書)、『信長の血統』(文春新書)、『武士道の名著』(中公新書)など多数。
東京書籍からは、『読み方で江戸の歴史はこう変わる』、『教科書には出てこない江戸時代』、『こんなに変わった歴史教科書』ほか。

「2018年 『教科書には書かれていない江戸時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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