俺俺 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 488
レビュー : 89
  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101164526

作品紹介・あらすじ

なりゆきでオレオレ詐欺をしてしまった俺は、気付いたら別の俺になっていた。上司も俺だし母親も俺、俺ではない俺、俺たち俺俺。俺でありすぎて、もう何が何だかわからない。増殖していく俺に耐えきれず右往左往する俺同士はやがて――。他人との違いが消えた100%の単一世界から、同調圧力が充満するストレスフルな現代社会を笑う、戦慄の「俺」小説! 大江健三郎賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 個性が疎まれる時代になってきた。小さい頃から、リレーは順位を着けずに皆でゴールし、競争なんてもってのほか。出る杭は打たれる。人と違う事をするのを恐れ、人と同じだと安心する。皆流行りの同じ服を着、流行りの同じ髪形で、少しでも足並みを合わせない他者を異質の目で見る。自分とは何なのか、本当の自分はどういう人間なのか分からないまま何となく生きる。そんな世の中を見ていると、いつかこの世界が俺俺時代になってしまうのではないかと不安になる。

    主人公の記憶がどんどん改竄されていき、一体今主人公は誰なのか、本当の主人公はどういう人間なのか分からなくなって行く、とても怖い話だった。「世にも奇妙な物語」に出てきそうな、ゾッとする話。映画化されるそうなので、どう作られるか楽しみだ。

  • 周りの人との関係性、自分の在り方。
    普段自分がいる世界の中に潜む非日常体験。
    「増殖」と「アレ」への恐怖。
    有り得ない話ではあるけれど、もしかしたら……。

    ちなみに映画鑑賞後に読みましたが大筋は同じですが、映画と小説は別物です。

    • miya-ayimさん
      こんにちは。
      もしかしたら自分も入れ替わっても誰も気付かないのでは…と心配になりますよね。
      こんにちは。
      もしかしたら自分も入れ替わっても誰も気付かないのでは…と心配になりますよね。
      2013/05/30
    • miicamさん
      miya-ayimさん

      こんにちは。コメント有り難う御座います。

      架空の世界じゃなく、私たちが住んでる世界が舞台になっているだけ...
      miya-ayimさん

      こんにちは。コメント有り難う御座います。

      架空の世界じゃなく、私たちが住んでる世界が舞台になっているだけに不安になりますよね。
      2013/06/09
  • 苦手なあの人を観察すると、私とよく似た部分がある。そのことに気づくと、何だか憎めなくなってくる。

  • 亀梨くん主演の映画化が話題になっている大江健三郎賞受賞作品。
    偏見は良くないが、この小説にしかなしえない小説の映画化は困難だろう。
    後半は終始一見哲学的な自己分裂の連続描写は評価が難しいと感じた。

    ただ、あとがきにある、
    秋葉原連続殺傷事件の犯人である加藤智大の言葉、

    「自分の家に帰ると、自分とそっくりな人がいて自分として生活している。家族もそれに気づかない。そこに私が帰宅して、家族からは私がニセモノとして扱われてしまうような状態です。」

    この小説が、加藤が起こしたあの惨劇よりも前に書かれた小説であるという事実だけで、評価に値し、そして、この小説がフィクションを超えた現実になったとも言えるのだ。

  • そもそも自分を自分だと証明する術はあるのだろうか?

    あるいは自分が自分であるべき理由…

    ある日誰かと自分が入れ替わっても家族や恋人や友人、職場の人にそれは自分ではないと訴えた所で信じて貰えるのだろうか?

    自分が自分である確証なんて実は自分自身にも無いのかもしれない…

    私は中学生位の時に鏡を見ては不思議に感じていた。私って何?…私って誰?自分が何者なのか不確かで、何故ここに存在しているのか分からなくて不安だった。

    自我の芽生える年頃だったからだろうけれど、鏡を見ると自分が自分で無いような気がして不安に苛まれた。

    自分とは色々な個性の寄せ集めであり、そのそれぞれの個性が自分を自分だと思える唯一の手段なのかな…と思う。

    個性が自分の証明だとすれば、現代では同じ様なファッション、同じ様な思考。で、似たような人達がうじゃうじゃいて、何だか気持ちが悪いと言えば気持ちが悪い…

    皆と同じ思考や価値観でないと、空気読めてないと異端児扱いする学校や会社や世間が悪いのかな…と思う。

    回れ右でみんなに従う自分、自分とよく似た自分、安心感で群れて、自分に似た他の自分だから、他の自分の事も理解出来るし、気を使わなて安心出来る…そしていつの間にかどれが本当の自分なのか分からなくなり、気付いたら別の自分に自分の居場所を乗っ取られてしまう…


    自分が違う自分に入れ替わった事に家族も気付いてくれなくて、逆に本当の自分を不審者扱いされてしまう…

    でもそれを受け入れる自分。自分の新たな家族にも何だかなじんでしまって…全部俺だからいいか、的な落胆的発想。全部俺!考えてる事も手に取るようにわかるし、行動も予測通り。気を使わなくていいし、ラク!他人と接するよりも、俺達だけで暮らした方が楽しい!俺は勢いがついて増殖を繰り返す。
    周りも全部自分だし、日本中みんなが俺だ。

    俺のコピー、俺の分身。俺だけが入れば楽しく人生を生きていける!

    果たして本当にそうなのだろうか?

    俺に似た俺にも少しは本体の俺(もうどっちが本体かすらも分からない)とは違う自我がある。

    反発や言い争いを繰り返すうちに、ついには殺人事件が発生。自分が自分を殺すなんて…

    本書の主人公均は、気まぐれで犯した俺俺詐欺をきっかけに、自分が誰なのかの疑問に初めて気づく。

    元々自分の気持ちを偽り、誤魔化し、イヤな事から目を逸らして生きてきた事のツケが回ってきたのだ。

    夢を追いかけて生きようとする友人、イヤな上司、流れに逆らわずに生きようとする姉の夫。虫酸が走ると思いながらも、結局は自分が目を逸らしていた自分自身の投影だった。

    全ての人間が俺になった時に、お互いの自分の弱い部分を指摘し合い、そしてついには殺し合う…もうどの俺も信じられない。信じられるのは本体の俺だけ…

    でも本体の俺はどれだ?均自身、大樹、あつし、色んな人間に間違われてどれが本物の俺なのか分からない。

    俺が俺だと認めてくれる人は誰もいない…器の見た目さえ似ていれば、中身はどの俺でも構わないのか…

    確かに家や会社や学校で俺がいなきゃダメだ!と言ってくれる人がいるのだろうか?代わりはいくらでもいる、俺がいなくても地球は回る。似ている俺が入れば何も問題無い…

    殺しあって一人になった、本物の俺の均。均でさえ自分が何者なのかも分からないまま模索して、生き残った人達と今度こそ良く似た俺達ではなく、本当の自分になる事を誓う。そして自分は誰なのか忘れないで欲しいーと。

    人は常に演技する。家庭で、学校で、職場で。演技をしていないと不安になる。自分のアイデンティティを見いだせない。

    けれど時々は演じる事をやめて、まっさらな自分に向かい合うべきなのだろう。悩みや苦しみを演技で誤魔化すな、そうしなければ本物の自分には、なれない。自分を誤魔化さずに生きるのは難しい。けれどそれを乗り越えなければ、本物の自分にはなれないのかもしれないー。

    私も誰かに私を乗っ取られないように気を付けなくては!

  • もう何が何だかわからないよ…

    これを映像化って…どゆこと。

  • 怖い、とても怖い小説。
    自己と他者に差がなければいい、同じならいい、なんの努力もなく解りあい必要とされ、その輪のなかで完結してしまいたい、自分だけが自分だけがと自意識に被害妄想に振り回されることもない。「同じ」だという絶対的な安心感。けれどそれは「同じ」なかで自己が失くなるということになる。
    …さてそれが現象として実際に現れたらどうなるか、それがこの、俺俺。

  •  読み終わった後に、亀梨和也が33人役を演じた映画の原作だったことを知る。
     映画の紹介をテレビで観た時はコメディというか、一種のスラップスティック的な内容かと思ったのだが、実際に原作である当書を読んでみると全然違った。
     自分と同じ自分が増殖していって、最後は削除しあうという内容なのだけれど、決してSFでもなければ、コメディでもスラップスティックでもなく、これはホラーだ。
     あるいは、自分が増殖していく世界を、単に誰かの精神世界内の話だと考えれば、全然違う世界も見えてくる。
     自分が増殖するといっても、それはドッペルゲンガー的な現象ではなく、まさに自分自身が増殖していくのだ。
     そしてラスト近くになって自分は自分を削除していく。
     このラストのカニバリズムの考え方は、安部公房の「自己犠牲」を思い出させてくれる。
     まさに「自己」を「犠牲」にして初めて見えてくる世界もある。
     結局、「自己」なんてのは相関対象である他者がいてこそ確立されるものであり、相関対象がすべて「自己」になってしまっても、結局それは「絶対的」な「自己」にはなりえない。
    「自己」なんてのはそれほどに脆弱なものなのかも知れない。
    「自分探し」とか何とか言って「現実逃避」するような甘ったれた人間がこの本を読んだら、耳が痛くて逃げ出したくなるだろう。

  • Kindle版印象としては少しダメ。期待が外れた印象。惜しい。

  • 田丸雅智さんの本と勘違いして選んでしまった(智しか合ってない)がすごくよかった。
    大江健三郎賞受賞作ですが、途中までは安倍公房って感じで結末は大江健三郎って感じ。
    現代と強く結びついているからこそ、面白いんだよな。
    文庫表紙の絵もいい。

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