俺俺 (新潮文庫)

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本棚登録 : 546
レビュー : 95
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101164526

感想・レビュー・書評

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  • 個性が疎まれる時代になってきた。小さい頃から、リレーは順位を着けずに皆でゴールし、競争なんてもってのほか。出る杭は打たれる。人と違う事をするのを恐れ、人と同じだと安心する。皆流行りの同じ服を着、流行りの同じ髪形で、少しでも足並みを合わせない他者を異質の目で見る。自分とは何なのか、本当の自分はどういう人間なのか分からないまま何となく生きる。そんな世の中を見ていると、いつかこの世界が俺俺時代になってしまうのではないかと不安になる。

    主人公の記憶がどんどん改竄されていき、一体今主人公は誰なのか、本当の主人公はどういう人間なのか分からなくなって行く、とても怖い話だった。「世にも奇妙な物語」に出てきそうな、ゾッとする話。映画化されるそうなので、どう作られるか楽しみだ。

  • 映画をみてから興味を持って読んでみました。主人公のおれおれぶりが活字の場合、また違った勢いを伴っていて面白かったです。

  •  読み終わった後に、亀梨和也が33人役を演じた映画の原作だったことを知る。
     映画の紹介をテレビで観た時はコメディというか、一種のスラップスティック的な内容かと思ったのだが、実際に原作である当書を読んでみると全然違った。
     自分と同じ自分が増殖していって、最後は削除しあうという内容なのだけれど、決してSFでもなければ、コメディでもスラップスティックでもなく、これはホラーだ。
     あるいは、自分が増殖していく世界を、単に誰かの精神世界内の話だと考えれば、全然違う世界も見えてくる。
     自分が増殖するといっても、それはドッペルゲンガー的な現象ではなく、まさに自分自身が増殖していくのだ。
     そしてラスト近くになって自分は自分を削除していく。
     このラストのカニバリズムの考え方は、安部公房の「自己犠牲」を思い出させてくれる。
     まさに「自己」を「犠牲」にして初めて見えてくる世界もある。
     結局、「自己」なんてのは相関対象である他者がいてこそ確立されるものであり、相関対象がすべて「自己」になってしまっても、結局それは「絶対的」な「自己」にはなりえない。
    「自己」なんてのはそれほどに脆弱なものなのかも知れない。
    「自分探し」とか何とか言って「現実逃避」するような甘ったれた人間がこの本を読んだら、耳が痛くて逃げ出したくなるだろう。

  • 苦手なあの人を観察すると、私とよく似た部分がある。そのことに気づくと、何だか憎めなくなってくる。

  • 軽いノリから意外と深いテーマへ。
    この作家の作品は初めて読みましたが、非常に洒落た作品だと思いました。
    途中の流れはこれ必要?という点もあったけど、
    思いついた自身のテーマをドヤ顔で描き切った感じが、
    非常に好感持てました。

    秀逸です。

  • ありえない、と一蹴することもできる反面、いままさに、そんな現実に直面しているとも言えるのではないか。

  • ファーストフード店で、たまたま隣り合った男が携帯を「俺」のトレイに置き忘れていった。なんとはなしに、その携帯の持ち主になりすまして、その携帯の持ち主の親からお金の振込もしてもらい、俺俺詐欺のような話になったところで異変が起きる。金を振り込んでくれた「親」がアパートにやって来て、まるで最初から「俺」が息子だったかのように振る舞う。自分の実家に帰ると、同じ顔をした「俺」が応対に出て、この頃似たような「俺」が訪ねてきてトラブルになったという…

    「世にも奇妙な物語」風味に話が進んでいく。途中から「自分と他者の違い」「自分の中に潜む凶暴性、凶悪性」が引き出され、職場でのいじめや、多数の「俺」が互いの腹の内を知りながら互いを「削除」していき、輪廻転生(?)とでもいうか手塚治虫の「ブッダ」のような世界観も挟みつつ「自分とは何か」を考えさせられる。どんなに嫌な奴に見えてもそのどこかに自分と同じような部分があって世の中は反面教師だらけ、と言いたいのかなと感じた。

  •  出来心で詐欺を働いた日から増殖していく俺。始めは元の自分が何者であるか分かっていたのに、次第に記憶も曖昧になり、いつの間にか別人の名前を語り、別人の記憶と境遇を生きている主人公俺がとても不気味だ。
     他者を心の中で疑いながら自らの役割を演じているというのは怖いけど、同じようなことを日常的に行っているのは自分だということに改めて気付かされる。物語のラストは、自分とは違う他者と完璧に理解し合うことは無理だけど、相手の立場を想像する力が大切だと考えていた最近の自分とシンクロしていて、腑に落ちた気分。

  • 絶対にあり得ないことなのにとてもリアルになっている。

  • パラレルワールド系の話かと思ったら全然違った…あんまりSFを楽しむって感じじゃなくてちょっとお説教臭い感じ。大人になったらまた読みたい。

著者プロフィール

星野智幸(ほしの ともゆき)
1965年ロサンゼルス生まれ。東京都立戸山高等学校、早稲田大学第一文学部文芸専修をそれぞれ卒業後、産経新聞社記者に。1991年産経新聞社を退職、1991年から1992年、1994年から1995年の間、メキシコに留学。1996年から2000年まで、字幕翻訳を手がけていた。
1997年「最後の吐息」で文藝賞を受賞しデビュー。『目覚めよと人魚は歌う』で三島由紀夫賞、『ファンタジスタ』で野間文芸新人賞、『俺俺』で大江健三郎賞、『夜は終わらない』で読売文学賞、『焰』で谷崎潤一郎賞をそれぞれ受賞している。

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