春の数えかた (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.82
  • (35)
  • (50)
  • (45)
  • (4)
  • (2)
本棚登録 : 471
レビュー : 60
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101164717

作品紹介・あらすじ

春が来れば花が咲き虫が集う-当たり前?でもどうやって彼らは春を知るのでしょう?鳥も植物も虫も、生き物たちは皆それぞれの方法で三寒四温を積算し、季節を計っています。そして植物は毎年ほぼ同じ高さに花をつけ、虫は時期を合わせて目を覚まし、それを見つけます。自然界の不思議には驚くばかりです。日本を代表する動物行動学者による、発見に充ちたエッセイ集。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 動物行動学者の好奇心にあふれたエッセイ集。
    身のまわりの植物や昆虫に対する、著者の眼差しのあたたかさと鋭さを両方とも感じることができます。

    特に印象的だったのは「自然との共生」についての文章です。(「幻想の標語」「人里とエコトーン」)
    そもそも自然とは果てしない競争と闘いの場である。
    人間は住みやすい環境を守るために雑草や虫を追い払うけれど、植物や虫は子孫を残すため追い払われてもまた巻き返してくる。
    そのように、人間のロジックと自然のロジックがせめぎ合うところが人里であり、その状態こそ「自然との共生」なのではないか、と著者は述べています。
    そう考えると、里山の景色がなんだか違ったように見えてくるから不思議です。

    また、表題作にもなっている「春の数えかた」もおもしろかったです。
    生物はどのようにして春が来たことを知るのだろう?
    たった5ページのエッセイとは思えない、わくわく感を味わうことができました。

    • nejidonさん
      すずめさん、こんにちは♪お久しぶりです。
      この本はだいぶ前に読んだのですが、大変面白く
      読んだことを覚えています。
      ヒントを得てブログ...
      すずめさん、こんにちは♪お久しぶりです。
      この本はだいぶ前に読んだのですが、大変面白く
      読んだことを覚えています。
      ヒントを得てブログ記事にしたものもいくつかありまして(笑)。

      で、レビューとは関係ないのですが、「ちいさなつづら」というタイトルは
      安房直子さんの作品からとられたのでしょうか?
      変なことを聞いてすみません。
      作品集の中で殊に好きな一編なのです。
      すずめさんと同じだったら嬉しいなぁと。
      2015/09/04
    • すずめさん
      nejidonさん、ご無沙汰しております!
      コメントありがとうございます。
      日高さんのエッセイは科学者の目線とわくわく感を同時に味わえる...
      nejidonさん、ご無沙汰しております!
      コメントありがとうございます。
      日高さんのエッセイは科学者の目線とわくわく感を同時に味わえるのが魅力ですね。

      「ちいさなつづら」は残念ながら安房直子さんの作品ではありません…。
      HNすずめ→すずめのお宿→宝物の入ったちいさなつづら…というイメージでつけたタイトルです。
      「小さなつづら」は安房直子コレクションの3巻に収録されているとのこと。(nejidonさんはこちらのコレクションをお持ちなのですね!)読んだことはないのですが、nejidonさんの"殊に好きな一編"とのことで読む楽しみが高まりました。
      ぜひ読んでみたいと思います!
      2015/09/04
  • 日高先生は虫や植物と目線を合わせてお話されてるんだなぁ。そして、それらを何にも知らないわたしのような読者へ、とても分かりやすく教えてくださる。

    時にはユーモアたっぷりに。
    例えば、クジャクのどんなオスがメスにとって魅力的なのかの問いには
    “どの動物でも、メスはいつも、オスの数ではなく、より良いオスを求めている。人間の女も無意識のうちに同じことをしているのだと考えれば、奥さんたちのおしゃれもファッションも理解できる。”
    例えば、ゴビ砂漠の60度はあるだろう熱砂の上で、熱さにやられた虫を探しているときには、
    “虫が死ぬか、自分が死ぬか、ギリギリの限界で生きているアリたちにぼくは心を打たれた。”
    大変な状況なのにクスリと笑ってしまう。

    このエッセイ集は、幼稚園から子どもがカエルや干からびたミミズやらを持って帰ってきて、ギャーッ!!となってしまうお母さんでも、大丈夫なお話ばかり。 笑

    でも時には、人間と自然や動植物との関わり方について、戒めておられる。
    “かつてはかなり正しい選択であったことも、時間とともに意義が変わってしまう。人間は正しいことばかりできるわけではない。まずい点に気がついたら、面子や責任にこだわらず、そのときどきで修正していくべきなのだ”
    これって、現代の様々な問題にも対処できる考え方じゃないかな。

    一番印象的だったのは、
    “発育限界温度も有効積算温量の一定値も、生きものの種によってちがっている。それは長い歴史の間に、それぞれの種に固有に定まってきたものだ。生きものの種がちがえば、春のくる日もちがうのである。”
    人間だけが、例えば赤ちゃんの成長一つとっても、他人と比べ焦り、出来た出来ないと一喜一憂して、何かにつけ遅いことに不安を持ち苛立ったりしているのではないかな。

    ちゃんと、ちゃんと、春は来るんだよ。
    その子にあった春がちゃんとあるんだよって言ってもらっているようで、何だかジンと目頭が熱くなってしまったのだ。

  • 春の数えかたというタイトルに魅せられました。
    同じ高さにそろえて咲かせている花たち、鳥や虫たちが季節を知る方法、自然界の不思議がいっぱいつまった素敵な作品です。
    著者の作品にこれからも、触れて行こうと思います。

  • 人の世に疲れたときは、こういった生物学方面の本を読むとほっとする。
    人間以外の生物は、厳しく荒々しくむきつけに生きている。
    人間は簡単に「動物を見習うべき」なんてことを言うけれど、とうてい無理だと思う。まあだいたいそういうことを言う時は、人間に都合のいい面だけを取り上げているものなのだけれども。
    この本はエッセイなので、いろんな事象についての日高先生の思いが書かれているにとどまっている。ここから先が面白いんだよなあ。
    それにしても、植物と昆虫のせめぎあいは実に凄まじい。

    もう亡くなってしまったのが改めて残念だ。

  • 花も、虫も、人も、それぞれの時を生きている、と噛みしめる。それはなんと素晴らしい営みか!

  • サイエンス

  • 『自然科学系日常エッセイ』
    日常にちらちらと見え隠れする昆虫・植物・動物に目を向け、動物行動学者の筆者の経験を追体験するエッセイ集。自分が今まで読んできたような科学の真実を深く追求するような書籍とは一線を画し、ときには謎を謎としてそのまま残すこともあり、絶妙な日常と自然の距離感を保っていて心地良い。牧歌的なエッセイ要素を抜きにみても、「地域の花の背の高さは何故同じなのか」「洞窟昆虫の視力は如何にして退化したのか」「動植物は、どのようにして季節を知るのか」などなど思わず誰かに教えたくなる興味深い主題が揃っている。中学生を自然科学の道へ進ませるには、この一冊。

  • たまたま植物の知性と夜の大切さについての本を読んだばかりで、すっと腹落ちする。自然への愛、それも甘ったるい自然に優しく系、自然に生かされてる系ではない、好奇心に満ちた読んでいて心地よいエッセイ

    [more]<blockquote>P27 (動物行動学としてのファッション)「自己満足」とは実は極めて複雑なものなのだ。まず異性に魅力的だと思われなければならない、他の女とは一段違っていてほしい、といって、ある集団への帰属は必要である。そしてその中で一段目立たなくてはならないのだ。それと同時に攻撃性。同性との戦いには勝たねばならぬ。しかしあまりに他の女の攻撃性をかき立てては困る。これらすべてがうまく行った時、女は自己満足するのだろう。

    P32 ハダニたちは植物の悲鳴物質を嫌いもせず、といってそれにひきつけられることもなかった。生き物たちの世界はもっと複雑にできているらしい。

    P39 人里とは、人間が人間の論理で生活し、いろいろな活動をしているが、けっして自然の論理をつぶし切ってしまわずに、自然の論理と人間の論理が絶えずせめぎあっているような場所であること。【中略】共生とは、利己と利己のせめぎ合いの上に初めて成り立つものなのではないかということ

    P71 日本では古来滝に打たれる修行が行なわれてきた。だから上から降ってくる水を浴びて身や心を清めるという思いも行為も存在していたのである。けれど、水を引いてきて細かい穴を持った口につなぎ、雨のように降らせてそれを浴びる、つまりいわゆるシャワー式のものはついに発明しなかったように思われるのだ。

    P91 鳥たちが何かしようとするときは、彼らの間にこのような生理的気分が伝染していき、その結果群れ全体が揃って統一された行動をとりうることになる。

    P148 人間の活動は、原野や原生林の周辺に、いわゆる「エコトーン」をつくり出した。エコトーンとはおおざっぱに言えば植生の中における移行帯のことである。

    P215 昔のような、なんだかよくわからぬ池がなくなってしまった。あっちもこっちもきれいにしようとする住民と行政双方の低俗な願望によって、池の水辺はコンクリートで固められた「親水公園」となり池のまわりの草地は「美しい」芝生に変えられてしまった。こんなところでヒキガエルは育たない。</blockquote>

  • 日高敏隆さんの本は『チョウはなぜ飛ぶか』と阿部謹也さんとの対談『新・学問のすすめ 人と人間の学びかた』に続いて3冊目です。
    動物行動学会の初代会長。
    この本は植物・虫・鳥についてのエッセイ。

    読んでいたら、たびたびスズメの騒ぐ声が聞こえてきて、ベランダに見に行きました。
    下の家の人がときどき庭にエサをまくので、通りがかったスズメが食べていくのです。
    でもどうしてあんなに騒ぐんでしょう?
    最近彼らの観察に凝っているのですが、そーっと行かないとすぐ逃げられてしまいます。
    たかがスズメに疑問がいっぱい。日高先生に聞いてみたい。
    ついでに余談ですが、今朝の朝日新聞によると、1990年~2010年の20年間で、スズメは半減しているそうです。
    日高先生の感想をお聞きしたい。

    そしてベランダに出たとき、花びらが二枚飛んできました。
    でもよく見たらモンシロチョウでした。

    日高先生の本を読んで何が変わるっていったら、身近の自然を真剣に見て、あれこれ考えてしまう自分になるっていうことです。

  • 戦中から高度経済成長、バブル崩壊と、経済の発展、都市開発と自然の変化を肌身で感じてきた人にしか書けない文章であった。
    自然が変化し、ツバメがいなくなったというのを人は嘆くが、自然・生き物は人間が思っているよりも大分したたかであるという言葉が印象的。

全60件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

【訳者】 日高敏隆 (ひだか・としたか)
1930年生まれ。京都大学名誉教授。2009年歿。

「2018年 『利己的な遺伝子 40周年記念版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

春の数えかた (新潮文庫)のその他の作品

春の数えかた 単行本 春の数えかた 日高敏隆

日高敏隆の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ベルンハルト シ...
冲方 丁
村上 春樹
伊坂 幸太郎
有効な右矢印 無効な右矢印

春の数えかた (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする