きみはポラリス (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 16235
レビュー : 1405
  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101167602

作品紹介・あらすじ

どうして恋に落ちたとき、人はそれを恋だと分かるのだろう。三角関係、同性愛、片想い、禁断の愛…言葉でいくら定義しても、この地球上にどれひとつとして同じ関係性はない。けれど、人は生まれながらにして、恋を恋だと知っている-。誰かをとても大切に思うとき放たれる、ただひとつの特別な光。カタチに囚われずその光を見出し、感情の宇宙を限りなく広げる、最強の恋愛小説集。

感想・レビュー・書評

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  • 『いつも不思議に思うことがある。どうして恋に落ちたとき、ひとはそれを恋だとちゃんと把握できるのだろう』

    『「恋愛をテーマにした短編」の依頼が多い』という三浦しをんさん。仕事を受ける場合、その仕事には当然発注元からこと細かな要望が付きます。小説家が仕事を受ける時に付くのが『テーマ』。あらかじめ提示されたテーマを『お題』として出来上がる小説は、その『お題』からはずれない限りは無限の可能性を持つことができます。『結婚して私は貧乏になった』、『ラブレター』、『あのころの宝もの』、『最後の恋』というような『お題』を聞いた時、あなたはそこにどのような物語を思い浮かべるでしょうか?『結婚して私は貧乏になった』=うんうん、そうだよ、あの旦那がこんなに金遣いが荒いとは思わなかった、とか、『あのころの宝もの』=あ、そうだ、小学校の時に大切にしていたあれ、どこにしまったっけ?といきなり押し入れをがさがさ探し出したり、とか。人によってピン!とくるものは違えど、人は人それぞれに今まで生きてきた中で今の自分を作ってきたドラマを持っています。普段、記憶の中に眠っているそんなドラマが『お題』というきっかけを与えられることによって、再び光を浴びる瞬間、そしてまた長い眠りについていくドラマたち。人の記憶とは面白いものだなと思います。そんな記憶の中でも恋愛は人にとってさらに特別な意味を持つものではないでしょうか。この作品は、依頼者から与えられた恋愛にまつわる『お題』を元に書き下ろされた三浦しをんさんの短編集です。

    2005年から2007年頃に書かれたこの作品は11の短編から構成されています。面白いのは、三浦さん自身が、それぞれの短編について、依頼者から与えられた『お題』をはっきりと明示していることです。読者は、三浦さんがそれぞれの『お題』でどのように作品を描いたのか、また逆に、この作品はこんな『お題』を元に描かれていたのか、という、そんな側面からも楽しむことができるようになっています。

    そんな11編の中で、私が最も三浦さんらしいと感じたのが〈裏切らないこと〉です。『お題』は『禁忌』です。『急いで帰らないと、勇人を風呂に入れるという楽しみを逃すことになる』とバス停からの道を小走りに急ぐ岡村健。そんな岡村は『恵理花が床に額ずくようにして、勇人の小さなペニスを口に含んでいた』という『とんでもないものを目撃』します。『赤ん坊のペニスをしゃぶるような妻を、はたして俺はこれからも変わらずに愛しつづけられるだろうか』と考えこむ岡村。『ざーんねん。勇人が待ちきれないって騒ぐから、もうお風呂に入れちゃったよ』といつも通りの恵理花。会社の同僚に相談しようと考えた岡村は、翌日、相談相手に十は年上で、子持ちの女性である柏崎さんを選びます。『舐めましたか?赤ちゃんのときのお子さんを』という問いに『岡村くん、舐めてないの?うちの旦那なんか、「かわいいなあ」ってベロベロ舐めまくって大変だったよ』と返す柏崎。そして『二人とも女の子』という柏崎に『俺が知りたいのは母親の、息子への接し方なのだ』と不満が晴れません。思い切って『実はですね。妻が息子の、その、あれを舐めてるというか…柏崎さんでもそうしてみますか息子さんがいたら』と覚悟を決めて核心を聞く岡村。『そうねえ、してみると思う』と答える柏崎。『岡村くんだって、きっとお母さんに舐められてたわよ』と笑われます。『かわいけりゃなんでも舐めていいのか、と胸の内で抗議しながら、俺は悄然と席を立った』という岡村は、『なぜ女たちは、血のつながった男には深い寛容と信頼を見せ、他人である男には素っ気ないとも言える警戒を見せるのか?』と考えます。『結婚して二年が経つが、恵理花は俺のことをどこか信じていないところがある』と『恵理花にとって俺はあくまで「他人」のままだ』とどんどん考えこむ岡村。一方で岡村は『ほとんど家に帰れない』という大きな仕事上のトラブルに巻き込まれていきます。そんな中で、ふと『自分にとって恵理花と勇人が、どんなに大切な存在であるかに』気づく岡村。そして…というこの短編。インパクトのある起点から、物語は大きく膨らみを見せながら『愛』というものの本質へとぐりぐり迫っていく過程に三浦さんらしさをとても感じた短編でした。

    また、作品中、一番雰囲気感に溢れていたのは〈冬の一等星〉です。これは三浦さんが自分で『年齢差』という『お題』を設定された短編ですが、『私が誘拐されたのは、八歳の冬のことだった』という衝撃の設定の上に描かれるのは、『誘拐』という言葉から抱く緊迫感とは対極の優しさに溢れた雰囲気の中で描かれていく”誘拐犯”の文蔵と八歳の『私』が見上げる冬の星空でした。『好きな動物は?』と聞く文蔵に『うさぎ』と答える『私』。オリオン座の下に位置するうさぎ座を教える文蔵。『ペンギン座も、スフィンクス座も?』と聞く『私』に『なければ作ればいい』と答える文蔵。『誘拐』という設定の物語を、なんとも言えない奥深い余韻を残す作品としてまとめる三浦さん、う〜ん、上手いなぁと思いました。

    「きみはポラリス」という書名のこの作品。ポラリスとは北極星のこと。でも、11編の中で星について触れられるのは10編目の〈冬の一等星〉と7編目の〈森を歩く〉の中に出てくるプレアデス星団だけで、それらも含めて北極星に触れられることは一切ありません。北半球で一年を通して真北を表す象徴のように輝く北極星。でもそれは全天で21個あるとされる一等星でもないごく普通の二等星に過ぎません。そんな北極星を持ち出して「きみはポラリス」という作品名とした三浦さん。そんな11の短編に登場する人物たちは、さまざまな愛の形を紡いでいく中で、北極星の如く、いつも同じ場所にいつも同じ明るさで、その存在を頼りに生きる人たちに向かってほのかな光を放っていました。人は生きていく中で、新たな道を探し、新たな道を造り、そして新たな道へと歩みを進めようとします。でも、そんな時に、そんな新たな道で、進む方向を迷った時に顔を上げる。そんな時に、いつもの場所にいつもと同じほのかに、静かに輝き続ける人がいる、心の拠り所とする人がいる。「きみはポラリス」、なんて印象深い書名なんだろう。読み終わってふっとため息が出ました。

    恋愛には恋愛の数だけさまざまな形があり、普通の恋愛というものはありません。この作品に取り上げられている11の短編に描かれた恋愛もそれは同じことです。

    『どうして恋に落ちたとき、ひとはそれを恋だとちゃんと把握できるのだろう』

    そう、すべての人が必ず持つ特別な感情、それが『恋』です。

    そして、その感情が発露するその瞬間に生まれる恋愛という感情。そんな感情が描かれた11の短編を通して、この世には人の数だけいろんな恋があり、いろんな愛の形があるんだ、そしてそんなすべての恋愛の上にそれぞれのポラリスが輝き続けているんだ、そんなことを考えた、三浦さんらしい作品でした。

  • 多種多様な11編の「恋愛」をアウトローな形で表現した内容だった。自分のこれまでの経験から、全話、全く受け入れられない恋愛パターンが新鮮で、一方、何故だか光り輝く北極星(ポラリス)のようだった。浮気あり、大学の先生の骨を噛んだり、自分の息子のあそこを舐めたり、宗教絡みの恋愛、森を歩きまわり、大阪まで犯人と車で過ごしたり、最後には同性愛。最初はアウトローな内容なだけに感情移入はできずイライラしていたが、この話は客観的にアウトローを楽しむものであり、エキセントリックな登場人物が恋愛の幅を壮大に広げてくれた。

  • なんとも三浦さんらしい、というかなんというか、一筋縄では行かない恋愛模様をつづった短編集。

    それぞれに味があって深いのだけれど、なかでも「冬の一等星」が心に凄くしみたなぁ。

    「どうして文蔵と同じ星を見ていると信じられたのだろう。それらはあまりにも遠くにあって。触れて確かめることもできないものなのに。」

  • とても読みやすく面白かったです。
    『私たちがしたこと』はかつての恋人たちがもつ辛い秘密の話ですが、俊介が言った「俺がしたこと」という一言の優しさが余計に辛い。
    『夜にあふれるもの』の最後は予想外で驚きました。
    『春太の毎日』はこの本の中で一番好きなお話。麻子のところにやってくる米倉を最初は憎たらしく思いながら、やがて受け入れる気持ちになった春太の「どうしたって俺は麻子より先に死んじゃうだろう」という思いが切ない。「保険」として、という深謀遠慮に込めた愛がかわいい。
    恋愛小説の短編集ですが、それぞれに趣がまったく異なっていて、最初から最後まで楽しく読めました。最初と最後のお話が対になっている感じの作りもよかったです。

  • 穏やかな幕開けながらも最後にはがらりと雰囲気を変え、突然断ち切られるように終わるショート・トラック「永遠に完成しない~」に始まり、力強い声で高らかに歌う「裏切らないこと」、ミステリアスな曲調で先を急かす「私たちがしたこと」と続き、重苦しくも荘厳な主題を持つ「夜にあふれるもの」、ノスタルジックなバラード「骨片」につながっていく。別々の物語ではあるが全体の構成としてはしっかりと緩急がつけられており、通読すると、まるで1枚のCDアルバムを聴いているかのような感覚がある。
    その後もスリリングで危うい雰囲気の「ペーパークラフト」をはさみ、王道ポップス路線の3曲「森を歩く」「優雅な生活」「春太の毎日」で和んだところへ、表題曲であろう「冬の一等星」の、センチメンタルなイントロが流れてくる。そして、1曲目と同じメロディを含む「永遠に続く手紙の最初の一文」で、まさに永遠に続く時間を思わせながら全ての曲の終わりを迎える。
    まるで三浦しをんのラブソング・ベストアルバムとでもいうべき、異なった魅力を持つ12編が収録された、内容の濃い、お得な一冊。

  • 11個の"好き"が詰まっている本だった。
    勝手なイメージなんだけど、恋ってもっと可愛らしいものだと思っていた。
    でも、色んな形があるんだな。
    内に秘めた想い。全身で伝える気持ち。色んな恋の形。

    サラリとしていて読みやすかったけど、しっかりと人物の想いは伝わってくる。
    良かった。

  • 恋は苦しい。恋は苦い。もし「本気を貫く男」に出会ってしまったら、すべて受け入れるか全力で逃げ出すしかないんだからね、という多恵子さんの言葉は背筋が凍るほど恐ろしい。

    それでも人はだれかを好きになってしまうのだ。その気持ちを思い切り外に出せる人は幸せだ。抑えこんでひたすら自分一人で抱え込んでいくしかない思いもある。その苦しさがまた恍惚を呼び込むことすらあるから、恋はやっかいなのだ。

    ひたすらハッピーエンドのベタ甘恋愛小説じゃなくてよかった。
    帯に「最強の恋愛小説集」と書いてあったので恐れをなして手を出せないでいたのだ。でもそうじゃなかった。どうしようもなく落ちてしまう「恋の罠」が、さまざまなパターンで描かれている。「幸せ」というにはあまりにも深くて苦い。
    「春太の毎日」は微笑ましい描写が続くけど、その背後にある絶対的な断絶を思うと途方に暮れる。それでも春太は麻子を愛する。「本気を貫く」オトコなのだ、春太は。種が違っててよかったのか悪かったのか。

    どんなに苦しくても、一度も恋に落ちないよりはいい。あの苦しさと裏腹の光り輝く一瞬を知っていることが、恋をした者の特権なのだと思う。

  • 恋愛テーマの短編。どれも 分かるーと思うけど実際同じ気持ちになるかといえば、似てる様な似てない様な。それが恋愛なのかな?ほのぼのしたー

  • エッセイが大好きで三浦しをんさんのファンになったけれど、小説はまた違ったテイストで優しくて登場人物が魅力的で、本当に大好き。

  • うむ。良い。良いですコレ。とりあえず、4点なのですが、限りなく5点に近い4点。フィギュアスケートの競技の採点?みたいなのでいうならば、

    「9点9点9点9点9点、、、そして、、、9.8点!」みたいな感じ?10点満点ではないのですが、もう、すっげえ10点満点に近い、きゅーてんはってん、みたいな感じ、でしょうか。いやはや、三浦しをん、お見事でした。

    まず、お見事だな、と思ったのは、この短編集の題名は「君はポラリス」なのですが、「君はポラリス」というタイトルの短編は、この中には収録されていない、という点。同タイトルの作品が無いにも関わらず、何故にこの短編集は、「君はポラリス」という題名なのか?それは、平たく言いまして、読んだら分かるのです。って感じ。この題名、物凄く、お見事だと思うのです。

    いやもう、この題名しかないでしょう。この短編集には。そして、恋というものを表現する言葉は。「君はポラリス」か。お見事すぎますね。

    ポラリス = 北極星
    周りの星は動いても、ポラリス自体は、動かない。常に目印になる。象徴ですよね。恋する相手の象徴。恋、という現象そのものの象徴。そして、多分、恋をしている自分そのものの象徴でも、ある。上手い。お見事です。恋をしている自分にとって、決して揺らぐことのない、愛情と尊敬と嫉妬と愛憎と、あらゆる全ての感情が向かう象徴としての、北極星。くう、、、お見事だなあ。

    凄く、角田光代さん的雰囲気が、ある気がしました。優しくなってちょい軽い雰囲気になった、角田光代?みたいな感じ?ですかねえ、、、そんな印象を受けました。角田さんも三浦さんも、どっちも、すげえこう、ロックンロールミュージックが好きな雰囲気を感じちゃいます。洋楽邦楽問わず。ロックンロールミュージック的なものに対する親和性が、凄く高い、気が、する。あくまでも、なんとなく、そう感じるだけですけどね。

    ちょっとなんか、スピッツの曲に、すげえ似合そうな題名でも、ある気がする。あ、でもそれは、スピッツに「君は太陽」って曲があるから、だから、そう思うのかもしれませんね。

    あと、解説が、めちゃくちゃ、良い。中村うさぎさん、なんですけどね。スゲエ良い解説です。「あ、この人、マジでこの小説、わかってるんだなあ」ってことを、ヒシヒシと感じる解説。こういう解説、良いですよね。中村うさぎ、お見事だぜ、って思いましたね。

    ・永遠に完成しない二通の手紙
     こりゃお見事。すげえ短い話なんだけど、めちゃくちゃこう、凝縮してますね。ちょっと、身震いするほど、好きです。ドキッとする。多分、個人的には、この短編が、この作品のベストかなあ。いわゆる、ゲイの男性の、同級生の親友に向ける、決して伝えることのできない、愛情?だと思うんですが、本当にさりげなく、本当に切実に、表現していると、思うんです。凄い。

    「俺がずっと一緒にいるよ」

    の一文を持ってくるタイミングが、本当に、上手いし、切ない。その切なさは、全て読み終えたときに、しみじみと、しみじみと。感じられる。素晴らしいと思いました。

    三浦さんのお題としては「ラブレター」だそうです。くう。良いなあ、、、しみじみと。寺島が洋子さんに向けて書くラブレターと、岡田が寺島に向けて書く、決して渡されることのないラブレター。うむむ。お見事です。

    ・裏切らないこと
     うむう、こう、ちょっと、怖い。怖いけど、美しいな、って感じ、でしょうか。マンションでの、B君の家の鍵で、A君の家のドアが開いてしまったエピソード、めちゃおもろい。もしかしたら、アレ、実話?三浦さんが、知人のマンション管理業者から聞いた、実話?いやあ。面白すぎるし、興味深すぎるし。

    この話の主役は、やっぱ、前園喜一のおじいさんと、多恵子さんのおばあさんの二人の、関係性かなあ、と。いやあ、怖いし、美しいし、見事だし、うーん。いやはや、お見事な話だと思いますね。

    三浦さんの自分お題としては「禁忌」だそうです。きんき。タブー。うむ。まあ、そうか。近親相姦、といえば、そういうことか。でもまあ、すげえこう、美しく思えちゃいますよね。お見事ですよね。ホンマのホンマのところ、あの二人は、ホンマのホンマに兄弟姉妹だったのか?という事を、明らかにしようと思えばできただろうに、しなかった。というのも、こう、よい。シミジミと、よい。言わぬが花。秘めてこその恋。この趣深さよ。

    ・私たちがしたこと
     古橋さん、おもろいですね。自分が食べるものを、じっくりとじっくりと、慎重に慎重に思案吟味するところとか、凄く好き。しっかりとした哲学、ポリシー感じます。

    朋代と美紀子の、女の友情も好きですね。美紀子、マジでエエやつやんか。

    そして、黒川俊介は、本当に本当に、朋代をレイプしようとした男を、本当に本当に、鉄パイプで殴り殺したのか?本当なのか?その辺りのぼかし方も、お見事なんですよねえ。いや本当に撲殺したんだろうけど。いやでも、お見事。その後ずっとバレていない、という事で、「いや、嘘でしょ?普通、絶対バレるっしょ?」とも思わせることの絶妙感。上手いよなあ。

    なんか、全然こう、見当違いかもしれませんけどね、俊介と朋代の関係性を見てて、東野圭吾の白夜行を、思い出したりも、しました。

    三浦さんの自分お題としては「王道」だそうです。そうか。これが王道なのか。そうか。そうなのか?

    ・夜にあふれるもの
     三浦さんの自分お題は「信仰」だそうで。なるほどね。恋愛も宗教も、それを信じる人にとっては、それはもう「信仰そのもの」ですものね。いやしかし名短編だよなあ~これも。

    しっかしこの内容。世が世なら、焚書モノでは。魔女裁判モノでは?神に対する冒涜です!ってな感じで。くわばらくわばら、やで。すっげえ際どい所を描写している、気もする。

    宗教での、神に対する絶対的な信仰と信心の、私の全てをあなたにゆだねます!っていう頼り切る事の歓喜の絶頂と、異性とのセックスでの性的な快感でイクことの絶頂が同じです、って言ってるようなもんでしょ?すげえなあ。いやまあ、そうなんだろうなあ。快楽、って、凄いですよね。この短編が、発禁にならない世界を未来永劫望ム、って感じ。

    あと、主人公の名前「エルザ」って呼ばれてるじゃないですか。なんじゃこら。愛称?ニックネームでしょ?って思いながら読んでたのですが、もしかしたら、ホンマにホンマの名前が「エルザ」なのか?「野生のエルザ」だから、セックスもワイルドだね、って有坂は茶化したのか?エルザが本名って!?キラキラネームやん?そこらへんを、ちゃんと語らないところも、好きです。

    ・骨片
     これは、昭和初期が舞台?なんだろうか。いつだろうか。なんか、凄くこう、ええ雰囲気ですね。女性が大学に行くことが、特別だった時代。見合いの相手を、問答無用で兄弟から紹介される時代。女性が大学に行っていただけで、嫁に行き遅れる、って言われる時代。そんな時代が、あったのか?ホンマか?あったんだろうなあ、、、この令和の日本国民総晩婚化の今となっては、考えらえねえなあ。いやあ、時代の流れって、凄いです。

    三浦さんのお題は「あのころの宝もの」だそうです。いやあ、なんとも愛おしく、ちょっと怖く、素敵な宝もの、ですよね。いやあ、お見事だなあ。

    ・ペーパークラフト
     すげえ角田光代っぽい!って思いました。なんだか、いっちゃん、角田さんっぽさを感じた、気がします。すげえビターなビタースイート。ほぼビター。カカオ100パーセントのチョコレートみたいなもんか?

    三浦さんの自分お題「三角関係」だそうです。息子の「太郎」いれたげてよ、、、とか思うのだが、まあそれは単なる揚げ足取りですまん、って感じですね。

    ・春太の毎日
     多分、読んでたら、結構早い段階で「春太ってのは、麻子が飼っている猫のことなんだな」って分かると思うんですが、それでも決して、「春太は猫です」って説明を、しないところ、良いですね。読者の想像に任せるところ。いやあ、良い。

    三浦さんのお題は「最後の恋」だそうで、うーむ。猫にとっての、最初で最後のご主人様であろう立場の人間に向けての「最後の恋」って意味か?面白い表現だぜ、って感じですかね。

    ・冬の一等星
     この話が、おそらくこの短編の、もっとも肝になる話?という気がします。冬の一等星、っていうのが「ポラリス」の事ですよね?そうですよね?違ったらマジごめん、って感じですが。いやもう、上手い話です。見事だなあ。

    文蔵と「わたし」との、ほんのわずかな時間の、でも一生の記憶に残る邂逅。それを、「わたし」は、あの状況を「誘拐」としか表現できないことがもどかしい、あの出会いを、一生の宝物として、生きている。くう。素晴らしい。文蔵。あんた、最高にオトコマエだよ、ってね、思いますね。素晴らしきハードボイルド。ルパン三世的感じですね。

    三浦さんの自分お題は「年齢差」だそうで。こう、読んだこと無いんですけれども、角田光代さんの「キッドナップ・ツアー」って、こんな感じ?とか思った。でもあっちは、父と娘の物語、だったか?となると、違うか、、、?でもなんだか、「キッドナップ・ツアー」っぽいのでは、とか、勝手に思いました。

    ・永遠に続く手紙の最初の一文
     これは、すまん。実は読みたくなかった、、、という感じが、強い。最初の話「永遠に完成しない~」の、後日談、ではなくて、最初の話の、一番スタートとなった話、ですよね?最初の話より、時系列は、古いでしょうから。でもなあ、「永遠に完成しない~」が、あまりにアレだけで完成されまくっていると思うので、別のエピソードをね、追加して欲しくない、っていう気が、するんですよ。それぐらい、あの最初の話のさりげなさと切なさが、好きなのです。ワガママ言ってゴメン。

    三浦さんの自分お題は「初恋」だそうです。うむうむ、なるほどね、とは思う。でもスマン。やっぱ自分にとっては、この話は、蛇足だなあ、、、って、思ってしまうんだなあ。ワガママ言ってホンマゴメン。

    まあ色々いいつつも、この小説は、マジで好きですね。三浦しをん。素晴らしいですね。

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著者プロフィール

1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○(まる)』でデビュー。以後、『月魚』『ロマンス小説の七日間』『秘密の花園』などの小説を発表。『悶絶スパイラル』『あやつられ文楽鑑賞』『本屋さんで待ちあわせ』など、エッセイ集も注目を集める。06年『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞を、12年『舟を編む』で本屋大賞を、15年『あの家に暮らす四人の女』で織田作之助賞を受賞。ほかの小説として『むかしのはなし』『風が強く吹いている』『仏果を得ず』『光』『神去なあなあ日常』『天国旅行』『木暮荘物語』『政と源』などがある。

「2021年 『ののはな通信』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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