天国旅行 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 3275
レビュー : 303
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101167626

感想・レビュー・書評

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  • 心中をテーマにした短篇集です。
    心中という言葉の持つずしりとした重みから、なかなか手に取らずにいたしをんちゃん作品でしたが、いざ読み始めるとページをめくる手が止まりませんでした。

    好きだったのは「遺言」。
    おかしみが存分に散りばめられた前半からのめりこんでしまい、最後に一気に押し寄せる切なさにやられました。
    こんなに愛しい気持ちがたくさん詰まった遺言状をもらったら、相手が死んでしまった後であろうと惚れ直してしまいます。
    最後の数行を読んだとき、ふと夏目漱石『夢十夜』の「第一夜」の美しさを思い出し、また切なくなったのでした。

    中には、ずしりとくる読後感のものもいくつかありました。
    出口のない問いかけに囚われてしまいそうな。
    「君は夜」「炎」「星くずドライブ」は引き込まれて読んだあとに、もやもやっと胸をよぎるものがあり、少し不安な気持ちが残りました。

    しをんちゃんの描き出す作品の多彩さに改めて圧倒されました。
    今まで敬遠していたのが嘘のように、本書に夢中になっていたのでした。

  • 心中を扱った短編集。それぞれの話が偏ることなく、違った視点から書かれていたので、なかなか読み応えもあった。暗くなりがちなテーマなのにそういった雰囲気はあまりなく、幽霊も登場するがファンタジーな感じはしない。読了後はその話について思いを巡らせて、考えてしまうものばかりだ。はっきりと白黒つけない終わり方が多いので、もやもやする人もいるかもしれない。どちらかというと私はそういったものが好きなので、彼らはこの後どうなるのだろうとか、自分だったらこうするだろうなあとか考えてみるのも面白かった。中でも「星くずドライブ」は突拍子もなく始まったかと思うとなかなかヘビーな問い掛けが待ち受けており、こういった心中もあるのかと唖然としてしまった。やっぱりこの作家さんはすごい。

  • どの話も死(心中)について書かれている短編集。
    最初のうちは重い本だったのか、失敗したかもとおもったが引き込まれる。

    そして表紙の色合いが綺麗で好きです。

    解説を角田光代さんが書いているのだが、こう読めばいいのかとさすがの納得をもらえた。読解力が凄い。

  • 現実に絶望し、道閉ざされたとき、人はどこを目指すのだろうか。
    すべてを捨てて行き着く果てに、救いはあるのだろうか。
    心中(もしくは自死)をモチーフにした短編集。

    テーマは心中でありながら、主人公はみな生きる人たち。
    死を身近に何を考え、何を想うのか。
    死を選ぶ人たちにとって、死は救済であり、絶望的な生からの離脱であり、誰かに何かを訴える究極の手段でもある。

    一方で、本書に登場する死は、餓死、焼死、溺死と壮絶なものが多いです。
    「天国旅行」なんて美しいタイトルに反して、死は残酷な一面も持っている。

    解説で角田さんが言っているように、小説では時に死が不必要に美化されていたりすることがあって、読み手を泣かせるためだけに描かれていることさえある。
    それでも、誰にも等しく1度しかない「死」について、読みたびに涙してしまう。

    本書では淡々と妻への想いを綴る「遺言」に泣かされました。全体を通して、生と死と夢が入り混じる不思議な読了感。しをんさんの語り口がやさしくて好き。
    「初盆の客」や「星くずドライブ」も切なくて好き。

  • 「死」がテーマの1冊。そうとは知らず、表紙のデザインで購入して読みました。
    いろんな死が書かれているけれど、解説の角田さんが書かれていたように、読んでいて逆にとても「生」を意識したように感じました。

    文章がとても綺麗で、三浦さんのお話は素敵だなと思います。

  • この著者が書く話は、けっこう好きです。文章もさくさくいくし。すいすい読めます。
    スタートの話が特に好きです。

    しをん作品は、いま密かなマイブーム。

    文章うまいよなーって。


  • 先日本の虫に三浦しおんさんの本を借りて大変面白かったので、古本屋で見つけて買ってみました。
    心中をテーマにした短編集。。。なかなか生々しい感情の塊でもあり、これを買った?読んだ?私の心境を表してるのかなとも

  • 全てが「死」に関する短編集。
    死について書かれているものだからか、どの話も完結していない感じがして、モヤモヤする。
    あんまり後味の良いものではなかった。

  • なんとなく釈然としない話が多かったような気がするし「君は夜」なんかは救いようがないとかいうレベルを越えている感じがするけれど、「SINK」は好きかな、イエモンの天国旅行につられて読んでしまった、きみはポラリスの方が好き

  • 面白かった。「心中を共通のテーマにした」と作者が言う通り、様々な背景や状況をもった人物が登場するが、その誰もが身近な人、あるいは自分の生と死を深く見つめる短編集となっている。

    解説の角田光代は「これらの小説を読みながら、生きていくことのほうがなんだかおもしろそうだ、た読み手は感じるのではなかろうか」と書いているが、それはどうだろう。
    読み手の状況にもよるのだろうが、唯一の救いであるはずの死によっても救済されない、報われない魂、死んでも状況は好転せず、ただそこで行き止まるだけ、ということをじりじりと突きつけられるように感じた。
    考えてみればこれは当たり前のことなのだが(死んでしまえば死んだ本人の全活動がそこでストップするから)、これら7つの短編を前にすると改めて感じさせられた。

    続いて角田氏が指摘する「小説における死の扱い方の実験」は読んでいて感じた。
    「心中をテーマに」とは言うが、実際に心中の言葉が出てくるのは最後の短編のみである。しかしこの短編集には様々なカタチの「生」と「死」が描かれる。
    深く相手を大切に思いながら生を全うする者、あり得ざる夢を見つつ死にゆっくりと向かう者、恋人を深く愛する一方でその存在に耐えられず死が頭をよぎる者。多様な生と死の在り方により、生きることとは一筋縄ではいかないこと、死への期待と、しかしその期待は幻想であることを考えさせられる。

    本の帯には「君はポラリスに続く〜」と書かれていたため軽い気分で読み始めた。だが中々読むにはしんどい小説だった。

著者プロフィール

三浦 しをん(みうら しをん)。
1976年、東京生まれの小説家。出版社の就職活動中、早川書房入社試験の作文を読んだ担当面接者の編集者・村上達朗が執筆の才を見出し、それが執筆活動のきっかけになった。小説家の専業になるまで、外資系出版社の事務、町田駅前の古書店高原書店でアルバイトを経験。
2006年『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞受賞。2012年『舟を編む』が本屋大賞に選ばれ、翌年映画化された。2015年『あの家に暮らす四人の女』が織田作之助賞受賞。また、『風が強く吹いている』が第一回ブクログ大賞の文庫部門大賞を、2018年『ののはな通信』が第8回新井賞を受賞している。
Cobalt短編小説賞、太宰治賞、手塚治虫文化賞、R-18文学賞の選考委員を務める。最新刊に、『愛なき世界』。

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