天国旅行 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.50
  • (157)
  • (418)
  • (498)
  • (112)
  • (10)
本棚登録 : 5270
感想 : 399
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101167626

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 読んだタイミングで思ったことぜんぜん違った。死ぬことも生きることも楽じゃないね

  • 心中をテーマとした作品。
    基本的には死を「救済」として見てる内容が多く、独特。
    でも死を目前として考える人の思想はたしかにどんなものだろうと思い起こしてくれる。
    心情描写が細かく適度に重くさせてくる。それもまた良し。

  • 生と死がテーマの短編集。色々と考えるきっかけになる。


  • 心中がテーマというが死を介した日常という感じ

  • あんたにはわからないだろう。心配してくれる人が1人もいないまま生きていくってのが、どんなことなのか
    渕上:でも、そのはずだった自分が来ると出るのだと覚えれば夜だけど、もう充電ないような気がした
    君と出会い君と生きたからこそ、私はこの世に生を受ける意味と感情をすべてを味わい知ることができたのだ
    現実には、なんの仕返しも抗議もできない無力な私たちは、死によって、神のごとく他者を罰し、傷つけ、深い後悔を負わせることができると、どこかで思っている

  • 文楽を基にしたエッセイと小説を著した著者ならではの作品と言えよう。特に「君は夜」は、現代を生きる理紗が、夢の世界では江戸に生き、そして死に至る(?)記憶を宿す物語に、不条理な心中を強く感じさせた。衝撃的なのは、富士の樹海で自死を目論む男を描く「森の奥」。好きなのは、戦時下の男女を描いた「初盆の客」。戦死した最初の夫、そして、戦後まで添い遂げた二番目の夫のどちらも愛したおばあちゃん。これも壮大な心中……ということなんだね。

  • 「遺言」が私宛だったらいいのに

  • 死は決して遠くない。身近なものであるのだと再認識させられる。でもただの死ではなく「心中」だからこそ描ける愛情のようなものを感じた。家族・恋人・友人。そして、死を選んだからといって全てがリセットされるわけではないといったような、哲学も感じられた。残された者の「生」は続いていくわけだし、影響力は残っている。残り香のようなものもあれば、生きている側の何かを突き動かすようなエネルギーのあるものまで。それはただの「死」ではなく、「生きていた」証なのだと思う。
    それなのに重たすぎないのが不思議だ。内容の重たいものはあるのだが、誰もが一度は向き合う「なぜ、生きているのか、生まれたのか」というものに近い気がした。

    余談だが、THE YELLOW MONKEYの「天国旅行」からタイトルをもらっているようで。この曲は本当に好きで、思い浮かべる風景が近いものもあった。読んでる途中もずっと頭の中で流れていたせいもあるかもしれないが、両方を知れて、私はどうやら「生きている」ことを実感したようだ。

  • 「心中」をテーマにした短編集。
    心中が共通のテーマというだけあって、起きている事件はヘビーだったりするのだか、物語は淡々と進む。作者の文体も影響してるとは思うのだが、おそらく生も死も、好きな子に告白されたことも並列な出来事だと捉えているからなのだろう。
    人は生死に関わるイベントを重く捉えがちだが、それも日常の一場面なのだと感じさせられた。
    テイストは異なるが是枝作品を見た後の感覚に似ている。

    ●森の奥
    自殺しようと樹海に入ったサラリーマン。中で出会った若い男と行動するうちに生きることを考え始める。
    ●遺言
    若い頃、心中を試みたが生きることを選んだ二人。老人になり、あの時に死ねば良かったと繰り返すパートナーとの暮らし。
    ●初盆の客
    ある年の盆、一人留守番をしている女のもとに遠縁と名乗る男がやって来る。男は亡くなった祖母の前夫の孫と言うが…。
    ●君は夜
    前世の記憶が夢に出て来る少女は大人になり、不倫の恋をするが…。
    ●炎
    憧れの先輩が早朝の校庭で焼身自殺を遂げる。少女は先輩の彼女であら同級生と真相を探り始める…。
    ●星くずドライブ
    彼女の幽霊と同棲している大学生。なかなか成仏しな彼女との二人暮らしにも慣れ始めるが、ある条件のもとで消失することに気づく…。
    ●SINK
    一家心中の生き残りである主人公が、ある言葉をきっかけに母親の行動に別の意味があったことに気づく…。

  • 旅行と名付けているのがちょっとびっくりするような内容。
    短編集で後味悪い結末だったりする話もあるけれども死をテーマにしてそれぞれの生い立ちを知りあたたかい気持ちにもなれる。 
    行き先が天国なのかも分からないけれども人の最後だけではなく当たり前だけれどもそれまでの人生や思いがある事を知る事が出来る。
    一気に読み終わりました。

  • 装丁が素敵で気になった本、ジャケ買い

    「きみはポラリス」とセットなのかなと勝手に思っていたけど、特にそういう訳でもないのかな でも愛することと生死は繋がっているテーマだと思う

    一冊読み終えてTHE YELLOW MONKEYの『天国旅行』を聴くと映画の後に流れるエンディングみたいに感じられた

    生きる態度と死ぬ態度の境目がよくわからない その瞬間自分らしくあることを選んだ結果が死に繋がるなら、それは回避すべきなんだろうか? 生きてれば何も得られない、けれどこの先の人生すべてと引き換えてもいいと思えるような瞬間を生きることだってなかなかできないよなあ 最後の角田光代さんの、この本でそれぞれ描かれる「死」の壮絶さに関する解説を読んでそんなことを考えた

    どの物語も読み終えた後はしいんと浸ってしまったけど、今回は「君が夜」が一番心に残ってるな 自分は絶対にあれほど盲目的になり得ない、なんて口が裂けても言えないわ
    現実的なお話というのだと、「遺言」もまだ身近なお話に感じたけど、こちらはとてもほっこりしたなあ

  • 「心中」をテーマにした7つの短編集。
    関係性を語る魔術師・三浦しをんが紡ぐ、生と愛の物語たち。心中だけど、生と愛なのだ。
    「森の奥」富士の樹海で自殺を企図する男が不思議な青年と出会う。
    「遺言」ともに死ぬことばかりが愛の証明ではない、究極のラブレター。
    「初盆の客」祖母が貫いた愛と秘密を知ることで結ばれる縁。
    「君は夜」夜な夜な見る前世の夢に囚われて現実を見失う女。
    「炎」焼身自殺を遂げた先輩への想いをひととき共有する少女たち。
    「星くずドライブ」幽霊になった恋人との暮らし。
    「SINK」一家心中で生き残った男の希望。

    個人的には「星くずドライブ」の途方もなさ、救いのなさに呆然とする。犯人は誰か、なんてのはどうでもよくて、幽霊になってしまった香那を見捨てることができそうもない英ちゃんの運命の過酷さと言ったら…。彼はいつか83キロを超えてどこかへ飛んで行ってしまうんじゃないかと不安で切ない。

  • 天国旅行 三浦しをん著

    1.購読動機
    舟を編む、まほろば、風が強く吹いている、あの家に暮らす4人の女という具合に定期的に手にとる作家さんです。
    装丁に花があり、そしてタイトルに惹かれて購読です。

    2.新しい三浦さんの世界
    装丁そしてタイトルのような優しさとは違う展開です。
    著書にあるとおり、心中をテーマにした作品です。
    そう、どのような動機で人間は、死を選択するのか?
    7つの短編すべてが、このテーマです。
    したがって、まほろばや、風が、、、のようなテイストの作品とは趣きが異なります。
    作品の遺言は、夏目漱石をイメージしてしまうのは私だけでしょうか?

    3.死
    作家角田さんの後書きで、「死とは死でしかない。それを作品としてどう描くのか?は、作家として一つの関心であり、挑戦」の趣旨を記述しています。
    三浦しをんさんの世界を広げてみたい方はぜひに手にしてみては?いかがでしょう。

  • きれいに生きたいからこそ死を選ぶこともある。
    汚いまま生きれる心の強さがあれば、自ら死を選ぶことはないのでは無いかと感じた
    全て自死をテーマにした内容ですが、重すぎずどこか一筋の希望の光のようなものが見える作品たち

  • 物語はどれもよかったけど、特に最後の角田先生の解説まで読んでストンと落ちた。
    何年か経ってまた読み返したい。その時私は何を思うか。その為に生きるのが少し楽しみになった。

    イエモンの天国旅行も聴きました。天国かぁ、、、

  • 死ではなく、心中をテーマにしているところが、暗いテーマの中にも人との関わりや愛を感じられた。

  • 心中をテーマにした短編集。
    暗さのある雰囲気が好き。

  • 心中をテーマにした短編集。死に至る追い詰めでなく、そこからの脱出をしてしまうところに先々の明るさを見る。

  • ひとつひとつが、重かった。今後の人生でほんとにしんどくなったらまた読みたい。

  • 心中や自死をモチーフにした短編集。

    死にたくなる、というつらさがなくても
    死んでしまってもよいと思うことはないですか?

    実際に死に直面したときに、人が何を感じるのか。

    さらっと粗筋を追って読むというより
    2度目にじっくり読みたくなる。

著者プロフィール

1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○』で、デビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で「直木賞」、12年『舟を編む』で「本屋大賞」、15年『あの家に暮らす四人の女』で「織田作之助賞」、18年『ののはな通信』で「島清恋愛文学賞」19年に「河合隼雄物語賞」、同年『愛なき世界』で「日本植物学会賞特別賞」を受賞する。その他小説に、『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『きみはポラリス』、エッセイ集に『乙女なげやり』『のっけから失礼します』『好きになってしまいました。』等がある。

三浦しをんの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三浦 しをん
三浦しをん
三浦 しをん
三浦 しをん
三浦 しをん
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×