天国旅行 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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レビュー : 304
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101167626

感想・レビュー・書評

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  • 何か読む本ないかな~と思っていたところで出会った。直感で手に取ったのだが、解説の角田光代さんの重く深い言葉の一つ一つが突き刺さり、勢いで購入。これが大当たりでした。
    「心中」がテーマの本作は、どの作品もしをんさん的なひねりが効いていて、それぞれに先が読めない。不気味で、ぞわりと怖いのに、どこか滑稽だったり、静かに哀しかったり。よく描かれる、ただただ悲観的で、過剰に美化されがちな死と違い、しをんさんの視点は冷静だけどどきっとするところを突いている。
    一体どういう気持ちで死を選んだのか?どうして殺されたのか?彼の正体は何なのか?…どこか謎に包まれている、「死」を巡る状況。それぞれの謎の解釈は読者に委ねており、どの作品もいい意味で「わかりやすくない」。前世の夢に捉われたり、あるいは夢で懐妊したり、恋人の幽霊が見えたり…時に非現実的な設定もあるけれど、その描写が不思議と説得力があるのだ。近しい人の死により人生は一変するけど、その後も残された人らの日々は続く。哀しみや苦しみが複雑に入り混じり、だけどほのかな希望がわずかに見え隠れする、独特な読後感の一冊だ。
    一番印象的だったのは、「森の奥」。富士の樹海を舞台に、生死のはざまでみっともなく惑い揺れる中年男性の滑稽なほどのカッコ悪さ。謎の男性との束の間の交流でカッコ悪さはさらに際立つものの、共感できるところもあり。最後はちょっと泣きそうになる、しをんさんらしい作品だなと思いました。

  • 心中をテーマにした7つの短編集。
    心中なんてものをテーマにしているのだから、暗い小説かと思いきや意外と明るい物だった。死で終わるのではなく、死を通して生を語っているからだろうか。何があっても、今生きている事が大事だと思える内容だった。特に気に入ったのは「初盆の客」。
    相変わらず、しをんさんの文章は美しく読みやすい。

  • 死がテーマなのに、こんなに軽妙に描かれているということに驚き。
    いろいろな生と死がある中で、私たちは自分の意識上「生」しか味わえない。けれど味わえる間は甘んじていたいなと思える。
    可能ならば、奇っ怪に見えたとしても、自分なりの愉快さを伴って。

  • 心中の話なのに面白い!

  • いまのところ自分で死のうと思うことはおもっていないけれど、死んでもいいかなあって思えるような瞬間ってあるんだろうな。

  • “きみと出会い、きみと生きたからこそ、私はこの世に生を受ける意味と感情のすべてを味わい、知ることができるのだ。”
    この一文で二人の関係性がわかるような気がします。

  • 人はやっぱり生きてこそ。
    楽しいばかりではない人生だけど
    辛いことばかりでもない。

    自分に直接関係ないのに、しんどい状況になるのは嫌だけど。

  • さまざまな形の心中を綴った短編集。
    読みやすさも読み応えもありました。好きです。

    あらすじに「すべての心に希望が灯る」とありますが、そこにはあまり期待を寄せないほうがいいかもしれません。後味が良いとは言えないものもあります。

    「遺言」と「星くずドライブ」がお気に入りです。
    前者は、最後の一文にものすごく大きな愛を感じました。もう一度読み返すと端々に愛情が滲んでいてあたたかい気持ちになります。
    後者は、ポップなおかしさと対峙する巨大な閉塞感にゾッとするのですが、どうしてだか1番好きです。

  • 「心中」をテーマにした短篇集。
    心中というと家族や夫婦が共に入水や練炭で自殺を図る、という印象が強いですが、本作ではその印象を覆されました。
    過去に愛した2人の男の後を追うように、1人を真似て喫煙を続け1人を真似て断食をして安らかに眠ったウメおばあさんが「物理的」にではなく心の底から3人での心中を成し遂げたと思うと、死や自殺は痛ましく哀しいだけではないのかなと感じました。
    解説にもあった「死は救済である」という考え方は私自身そのように考えていたのですが、嫌な事や苦しみからの解放だけが救済ではなく、例えそれが病死や老衰でも想っている人と気持ちの上で共に死を遂げたり、
    自分の命を賭けて何かを抗議したり伝えたりということは
    それ相応に死ぬ側も死なれる側にも救いがあるのかなと、改めて考えさせられました。

  • 「心中」をテーマにした7つの短編集です。

    タイトルはTHE YELLOW MONKEYの『天国旅行』という曲名からつけられたそうです。

    「せまいベッドの列車で天国旅行に行くんだよ 汚れた心とこの世にさよなら」
    この曲の一節です。

    生と死、夢と現実、そんなワードが浮かんでは消える、この曲のなんとも言えない不思議な世界観が、7つの短編に散りばめられているように感じました。

    綴られる文章の中には、歌詞のように美しい一文がたくさんあります。
    曲を聴いてから読んでみてもいいし、逆に本を読んでから曲を聴いてみてもいいかもしれません。
    ぜひ、音楽と本をリンクさせてみてください。

    図書館スタッフ(学園前):トゥーティッキ

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    帝塚山大学図書館OPAC
    http://lib.tezukayama-u.ac.jp/mylimedio/search/search.do?target=local&mode=comp&category-book=1&category-mgz=1&materialid=2410003897

  • 「死」とか「心中」がテーマの短編集
    …と言ってしまうとなんかイメージが偏ってしまいそうだけど、秀逸の物語ばかり。ハッとさせられる切り口に、作家の力量を見る。
    普段は文庫本の解説って余計だと思うけれど、角田光代の解説は、そうそうとこちらを頷かせる。
    死んだらおしまいよ。感じることができるのは、面白いと思えるのは(いろんな意味で)生きているからこそ、です。

    「初盆の客」
    「森の奥」
    「遺言」

  • 面白かった。心中もしくは死をテーマにした短編集ですが、軽いタッチのものもあればどんより重いものもあり何人かの違う作家さんの作品を読んだような満足感。特に良かったのは「君は夜」。前世と現世とのシンクロがいい。「初盆の客」も良かった。

  • 死をテーマにした7編の珠玉の短編集。
    哀しさが底流に流れる愛の物語。セックスの描写はどれも寂しくてエロい。
    ゴシックメタルで例えると言MY DYING BRIDEかな。なんで、あまたあるPEACEVILLEのバンドの中からMDB なのか?それはオレにもわからん。ふと、頭に浮かんできたのがこの老舗ゴシックバンドだった。
    どれも傑作だけれど内田春菊の『南くんの恋人』テイストの「星くずドライブ」を推しとこ。角田光代のあとがきではひとことも触れられてないし。香那とちよみのキャラも被ってるような気もするし。映画『星くず兄弟の伝説』やフロイドの「星空のドライブ」を思ひ出すから。

  • 心中をモチーフとした連作集。
    流麗な文書表現で綴られ、結末が気になりさくさく読み進められます。
    心中がテーマなので暗くなりがちかといえはそうでもなく、「初盆の客」のように心温まるようなものもあり飽きが来ない。「星くずドライブ」のカノジョのように少し感触のあるユウレイという設定はセンスがありますね。
    それにしてもタイトルと表紙はまるで「君はポラリス」のヒットにあやかりたい魂胆がみえみえであざといなぁ、と。特にタイトルと内容はなんだかミスマッチな気がします。

  • 「死」をテーマにした短編集。自分の死、身内の死、赤の他人の死。自殺、他殺、心中。そしてそれにまつわる遺書、幽霊、前世、などなど。なのに不思議と重すぎず、暗すぎず、いろいろな人のいろいろな死と向き合っています。死に方=生き方なのね。解説を角田光代さんが書いてるのがちょっとうれしい。

  • 再読。心中をテーマにした7つの短編集。再読のわりには覚えてないものもあった。こんなに印象的なのになあ。爆笑エッセイや爽やか職業小説が続いたので、ちょっと重めなカンジが「そうそう、しをんさんってこういうのも上手いんんだよなあ」と味わえた。最後の「SINK」のラストシーンは美しくてせつなくて泣けた。角田光代さんの解説も納得。

  • 軽い読み物と思いきや、思いのほかの重量級。
    テーマは心中。
    主人公たちのほとんどは、あまりうまく世渡りするタイプではない。
    生きあぐねて、あるいはパートナーの死に直面して、揺らぐ心のありようが描かれる。

    「遺書」。愛を確かめるために自殺しようとする妻に残す遺書の形式の短編。
    二人のなれそめまでもがそこには書かれているが、妻に翻弄される彼の姿に、何とも言えないおかしみが漂う。
    老齢に達した彼が、もし妻が後に残されたら、と考えてこの「遺書」を書くのだが、最後の数行の彼の気持ちは崇高だ。

    「星空ドライブ」は、ひき逃げで死んでしまった恋人につきまとわれる大学生の物語。
    最初は死んだ彼女が自分のもとにやってきたことに愛情を感じていた佐々木だが、自分が死ぬまでずっとそばにいられることにぞっとし始める。
    こういう細やかな心理描写がすばらしい。

  • 森の奥…「心配してくれるひとが一人もいないまま生きていくってのが、どんなことなのか」、この言葉が胸に深く突き刺さった。想像を絶する孤独を抱えて寂しさから抜け出せないという地獄。
    遺言…捉えどころのないご主人とエキセントリックな奥様。
    初盆の客…誰の子供なのかが奇々怪界だった。
    君は夜…この永遠にループするような愚かさに怒り心頭。
    炎…仇を取ったというには程遠いし、真相もわからずじまい。
    星くずドライブ…場所はつくばかな。ちょっとあり得ない完璧な結びつきと永遠性に到達した二人に羨望した。
    SINK…評価はこの作品。主人公の厭世的姿勢は男なら理解できる人は多いだろう。真っ黒な絶望と悲劇的状況でも可能性が万に一つあるのなら試してみる価値はあるとお母さんは思ったのだろう。お母さんの意思をそう解釈するのなら主人公は極めて幸運だと言えるのではないか。万に一つで生き残ったのだから。
    解説は角田光代さん。

  • 心中の話。三浦しをんさんの文体が好きすぎ。

  • 160611*読了

  • 「炎」をドラマで見て、原作が気になって読んでみた作品。ドラマだと短くて状況がよくわからなかったけれど、ああこういうことか、と納得。すべて死がテーマでそんなに重くないのもあるけど結構重めで、どれも最後ははっきりさせていなくてもやもやした感じが残る。「初盆の客」「君と夜」「星くずドライブ」とかが好きだった。

  • ◎思いを遂げるためにそれぞれができること。
    当人たちには死のうが何しようが、関係ない。
    思いを遂げられればよいのだから。

    7つの様々な愛や恋の形を描いた短編集。3つだけ紹介。

    「遺言」
    語り手がずっと一生涯添い遂げた人に対し綴った物語である。
    駆け落ち同然で出会い結婚した二人は、何度か危機を迎える。離婚というわけではなく、相手の死によって。(実際は死なない。未遂。)
    語り手はとても楽しい人生だったに違いないのだが、相手はそうもいかず、ちょっとしたことで信用を失うとすぐ青酸カリの瓶が象徴的に取り出される。駆け落ちの決意の印だ。
    相手の"死んでおけばよかった"という言葉は、後悔のようにも聞こえるのだが、語り手の最後の書きぶりから見れば、実は永遠の愛への憧れ、あのとき自分が思っていた気持ちをなくしたくない!という決意でもあるように思えてくる。
    愛とは、恋とは。その究極の(というか、「究極」は角田光代氏が解説の中で言っている)形は死なのか。
    書きぶりはなんだか「こころ」を思い出すような。

    「炎」※2016年1月4日にフジテレビ系列でドラマ化
    バスの中でじっと見ていた憧れの先輩は、ある日突然校庭の真ん中で自殺した。
    やりきれない亜利沙は、バスの中で花束を持つ初音に出会い、自殺の真相へとたどり着く・・・のだが。
    事件解決後、初音の狡猾さを感じてしまうが、それでもやはり先輩のことが好きだった自分に気づく瞬間。先輩が死んでしまった事実は変わらないのだ、と。

    「星くずドライブ」
    ある日家にいると、彼女がやってきた。彼女と一緒に登校するが、そこで友人から「彼女と連絡がとれない」と言われる。横にいるはずの彼女がなぜ連絡が取れないのか?そこで、彼女が死んでいることに気付いた。
    やがて彼女の死体が見つかり葬式にも参加するが、いつまでも死ねない彼女が横にいるのがとても物悲しい。
    それは好きだよ?でもさぁ、死んだら何もできないし・・・というもどかしい思い。

    愛や恋の形が死だ、という話はそれはそれで刺激的だった。

  • 短編集。お正月にこの中の『炎』がドラマで放送されていて、さっそく読み始めました。どのお話しも「心中」がテーマ。巻末の角田光代さんの解説まで含めて読んで良かった1冊になりました。

  • 「心中」をテーマにした作品。シリアスなほうの作品。なぜ心中をするのか、その結果はどういった形で現れるのか。けっしてくらい話ばかりではないが、「心中」を通して「生」を感じることができるだろうか。

  • ドラマ『偽装の夫婦』第3話で嘉門ヒロがこの小説の「森の奥」の一節を言うシーンがあった。その言葉になんだか感動してしまって、読み始めた。
    一番印象的だったのは「初盆の客」。

    まだ、2作品(『舟を編む』、『天国旅行』)しか読んでいないので書評めいたことなどは言えないが、それぞれの作品で三浦しをんの人間の心情の描き方が素敵だなと感じた…。

  • 安定のおもしろさ。
    装画がきれいでそれで買ったのだけれど、装画と内容はイメージが違う。

  • ▼収録作品
    「森の奥」
    「遺言」
    「初盆の客」
    「君は夜」
    「炎」
    「星くずドライブ」
    「SINK」

    まず、題名がいいよねえ。

    「遺言」の最後の詩的な文章が良い。
    解説を読んで、目から鱗の思いで再読。なぜ初読時にそうと気付けなかったのだろう。むしろ、その読みの方が普通の男女の話よりよっぽど自然だと思えた。

  • 死にまつわる短編集。
    死とは何か。愛する人の死とどのように向き合うのか。
    愛する人の死をどう乗り越えるのか。

    読みやすい文体で、丁寧に描いている作品。

  • 心中をモチーフにした短編集。
    この、ひとつのテーマでこれほどまでに多彩な舞台設定、登場人物で描けることが素晴らしいです。
    しをんさんは、お仕事小説も面白いけど、シリアスもうまくて引き出しの多い作家さんだというのを改めて認識しました。

  • 心中をテーマにした短編集。全体的に言葉が綺麗でページをめくりながら何回も同じ言葉を読み返したりなんかしながら楽しく読みました。特に好きなお話は「君は夜」と「SINK」。二つとも最後があまり救われないお話で… 特にSINKはもやもやするな~続きが気になる。友情を超えた何かが恋愛であるとは限らないし、、

著者プロフィール

三浦 しをん(みうら しをん)。
1976年、東京生まれの小説家。出版社の就職活動中、早川書房入社試験の作文を読んだ担当面接者の編集者・村上達朗が執筆の才を見出し、それが執筆活動のきっかけになった。小説家の専業になるまで、外資系出版社の事務、町田駅前の古書店高原書店でアルバイトを経験。
2006年『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞受賞。2012年『舟を編む』が本屋大賞に選ばれ、翌年映画化された。2015年『あの家に暮らす四人の女』が織田作之助賞受賞。また、『風が強く吹いている』が第一回ブクログ大賞の文庫部門大賞を、2018年『ののはな通信』が第8回新井賞を受賞している。
Cobalt短編小説賞、太宰治賞、手塚治虫文化賞、R-18文学賞の選考委員を務める。最新刊に、『愛なき世界』。

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