ブンとフン (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.59
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本棚登録 : 1008
感想 : 103
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101168012

作品紹介・あらすじ

「ブンとは何者か。ブンとは時間をこえ、空間をこえ、神出鬼没、やること奇抜、なすこと抜群、なにひとつ不可能はなく…」フン先生が書いた小説の主人公、四次元の大泥棒ブンが小説から飛び出した!たちまち全世界に、奇怪なしかしどこかユーモラスな事件が…。あらゆる権威や常識に挑戦する奔放な空想奇想が生む痛烈な諷刺と哄笑の渦。現代戯作の旗手、井上ひさしの処女作。

感想・レビュー・書評

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  • 父が子供の頃に読んだ本と聞いて、こっそり買って読んでみた一冊です。
    想像以上に、凄く楽しめます。本が読者に語りかけてくるスタイルで、ページの中にのりしろがあったり、切り取り線があったり。昔大好きだったかいけつゾロリやおばけマンションを思い出して、ワクワクしました。
    何回も読みたくなるフレーズが沢山あるし、ストーリーもワクワクするし、終わり方も突然に見せかけて凄く綺麗だったし、創作とはこの本で表現されたようなことを言うんじゃないかな、と思います。
    最初に書いた本がこれってすごいなぁ。他の本や作品も観てみたいです。

  • 言葉遊びの天才!
    キリトリ線にのりしろに、なんてお茶目なのか。
    一から十までふざけているようでいて、そこには皮肉があったり平和を祈っていたり…。
    だけど、押し付けがましくなく、サラッと語ってしまうところがいいなぁ。

    処女作ということで、きっと荒削りなところもあるんだろうけど、同時にエネルギーもある気がする。他の作品も読んでみたい。

  • 劇作家の井上ひさし氏の処女作。ああ、小説ってこんなに自由奔放で勝手気ままでいいんだなぁ、と嬉しくなる作品です。「世のお母さんたち」に読まれたくない部分にはノリシロがあり、このページを糊で貼り付けてしまうように、などという指示が出ていたりして、著者の遊び心にもニヤニヤしてしまいます。200ページぐらいですが、一日で一気に読めます。

    何せ刊行されたのがもう40年前ということで、登場する有名人や時代背景なんかはさすがに古いですが、随所に出てくる言葉遊びや語呂合わせ、著者の豊富で奔放な想像力と悪ふざけ、そして世の中への風刺は今でも鮮やかに輝いてます。きっと、これから数十年後に読んでも、やはり同じような色彩とシニカルな視点を読者に与えてくれるのだろうと思います。

    ナンセンス文学であり、世界への皮肉や批判も内在している風刺文学でもあるこの作品、時々本棚から抜き出して読めば、声を出して笑える時間を与えてくれるでしょう。

  • ストーリー :☆☆☆☆
    世界観   :☆☆
    ビジュアル :☆☆☆
    キャラクター:☆☆☆☆
    読みやすさ :☆☆☆☆
    オススメ度 :読んで損なし!

  • 作者が使う日本語は本当に生き生きしている。テレビや演劇といった分野で磨かれた言葉選びのセンスは活字になってますます輝く。こういう風に自在に文章が扱えたらどんなにか書くことが楽しいかと思う。
    作品としては児童読物の体裁をしているが、作者がこれを書いた時代背景からして、既存の旧体制を打破し、新しい価値観の創出を求める60年代の匂いが感じ取れる。思わず笑ってしまう馬鹿らしさでそれを表現できるのがナンセンス作家と呼ばれる井上ひさしの魅力だろう。
    改めてご冥福をお祈りする。

  • レコード会社に勤める知人。入社試験で好きな本を挙げ、その感想を書かねばならなかったらしい。
    それでこの本を挙げたのだとか。そのセレクトセンスも見事だと思った。

    エンタメ業界を担うに相応しい、遊び心満載の内容。彼はどんな感想を書いたのか知らないが、見事合格して会社のお偉いさんになっている。ふとそれを思い出し、読んでみた。

  • 井上ひさしの処女作。
    売れない作家フンが書いた作品の「ブン」が、
    発行部数分だけ実際の世界に飛び出し、
    四次元怪盗として、世の中のありとあやゆるもの盗みまくる痛快小説。(2010.11.19)

  • めちゃくちゃなストーリーである中に風刺が富んでいて、さらに言葉の使い方においても普通じゃない感じがあり、簡単には感想が出てこない。
    処女作とのことで単純に目立ちたかったのかなとも思ったけど、著者のウィキペディアを読んでみると一筋縄ではなさそうな生い立ちであられ、どんな背景でこの作品を書くに至ったのか、なかなか想像ができない。もう少しこの方の著作を読んで、じっくり味わってみたいと思った。


  • 開始:2023/1/4
    終了:2023/1/5

    感想
    ポップコーンのように次から次へと跳ねでる面白さ。いつまでもブンの秘密には触れられないナンセンス。だがそこがこの小説を傑物たらしめる。

  • 最初の方はくだらない作品かと思って読んでいたけど、後半は結構良いことが書かれていた。

    人は地位や名誉やお金に恵まれると、本当の自分がわからなくなる。だからブンはそういったものを盗んだと書いてあり、確かにそうだなと思いました。

    お金がなくても、良い地位じゃなくても、本来の自分はあるはずで、楽しく日々を送れるはずです。子供の頃の私達がそうであったかのように。社会に出るとどうしてもお金とか地位とか名誉に目がいってしまいます。

    30年前にこのような子供も読める小説の中で上記のことが書かれていることに衝撃を受けました。

    大人も子供も読むべき本。特に今のこの世の中を生きる人達に読んで欲しいです。

  • 面白くて大好きだった。読み返したい。

  • 中学生の時好きだった本。久しぶりに読んだ。昔はくだらなさが好きだったけど、大人になって読んだらなんだか深い気がした。

  • 昔、新聞連載されて挿絵が漫画っぽく、読もうかなと思った記憶がある。今回初めて読んだが、破茶滅茶で元気が出るパワフルな内容である。新聞連載といえば『偽原始人』もあったなぁ。2019.9.2

  • 井上ひさしさんの「他人の血」という作品を少し前に読んで、面白かったのかそうでないのかを確かめたくて手に取りました。ブックオフなどに行ってもなかなか作品が無くて、あちこちで探してやっと見つけました。
    井上さんは、まさに筒井さんの兄貴と言えるくらいのヘンテコ小説で、ヘンテコ小説が大好きなワタシはまたどこかで作品を見ればまたどこかで買ってしまいます。

  • 初読

    読んだつもりになってたけど読んでなかった?
    挿絵に見覚えはある気がするのだけどなー。
    小学生の時に読めばよかったなー!!と心から後悔
    こういうタイプのユーモア、好きだったのよ…
    外国の実在の固有名詞のモジりとか、大好きなパターン。

    文学ミュージカルね。
    音の響きのテンポの良さ、センスの良さに今更ながら驚嘆。
    井上ひさしがご存命なら、フリースタイルバトルを面白がったのではないだろうか。

  • 今まで読んだ本の中で最も突飛でくだらない。著者のあとがきを読み、世の中の常識へ疑問を投げたものだと言う点で納得がいった。ギャグの連発が天才だと思う。

  • 作家のフン先生とその作品からとびだしたブン。
    ミュージカル的。どたばた。
    解説によると「ナンセンス文学の傑作」C0193

  • めちゃくちゃで面白い。

  •  井上ひさしの小説デビュー作。いわゆる「パニックもの」で、社会の「常識」や「秩序」をユーモラスかつアイロニカルに「解体」しているが、1960年代の時事を背景とした作品なのでさすがに古さは否めない。

  • まるでミュージカルのようだ。愉快なようで人の本質を突きつけられている気もする。だからこそ奇想天外と笑って終わってもいいのかもしれない。
    2015/6/4

  • 読書部課題図書その23

  • 作家が生みだした怪盗が小説を世界中で大暴れするだけの話ですが、文体が軽快、痛快でついつい笑ってしまいます。この手のナンセンス作品は読んだことがありませんでしたが、楽しく読めました。

  • 相当久しぶりの井上ひさし。「ドン松五郎」なんて好きで中学以来、何度読んだか忘れるほどであったが、そういえば代表作の「ブンとフン」は読んでいなかった。パラパラっとめくって、読まなかった理由がわかった。ワタクシは、改行の多い詩を書くのも読むのも苦手なのである。パラパラっとめくるだけでいくつも出てくるが、もう大人なので無視して読み始め。

    そういう個人的な事情は置いておいて、読書家向けに簡単に書くと、ストーリー内でも数回引き合いに出されている、北杜夫の「怪盗ジバコ」を丁寧に書いて、オチまでつけたというような話だ(オチはむちゃくちゃだが)。違いは、あちらはの怪盗は生身の人間であったが、こちらは本から現れた架空の存在というところ。読書家でない人に解説すると、本から主人公が出てきて大騒ぎというSFがかったファンタジーコメディーで、戯曲というか、ミュージカル風に話が進む。

    気になっていたその詩は、よく読んでみるとダジャレがメインになっているので面白みはわかるものの、やっぱり電車内で読むと何故か気恥ずかしいし頭に入ってきにくいのが難点。そこは無視するとして、後の名作「吉里吉里人」と同じような結構下品なネタもありつつのドタバタで、途中から社会現象に話を広げるあたりも井上ひさしらしい展開であります。

    あとがきで本人も書いているように、井上作品の中でも群を抜いてハチャメチャなので、そういう話を読んで腹を立てる人やフィクションやユーモアを解さないサイキンのオトナの人にはまったくもって向きませんが、読書家ならずとも、一度は読んでおきたい名作(迷作?)であります。

  • ブンブンフンフンブンブン、リズム良く楽しくでも心には残らなかった。

  • 図書館で読んでいたら笑いが漏れて大変でした!笑
    文中に登場するミュージカル調の文章のリズム感が面白い!頭の中をブンが駆け巡っていくようなお話でした。

  • 【本の内容】
    「ブンとは何者か。

    ブンとは時間をこえ、空間をこえ、神出鬼没、やること奇抜、なすこと抜群、なにひとつ不可能はなく…」フン先生が書いた小説の主人公、四次元の大泥棒ブンが小説から飛び出した!

    たちまち全世界に、奇怪なしかしどこかユーモラスな事件が…。

    あらゆる権威や常識に挑戦する奔放な空想奇想が生む痛烈な諷刺と哄笑の渦。

    現代戯作の旗手、井上ひさしの処女作。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    デビュー作には、その作家のすべてがある、とは文学の世界でしばしば言われることだが、それは今年4月に亡くなった井上ひさしさんの小説デビュー作『ブンとフン』(新潮文庫)にも当てはまる。

    奇想天外な筋立て、権威への痛烈な批判、バカバカしさの中に豊かさを秘めた言葉遊び――。

    40年も前に書かれた作品を読めば、ただまっすぐに、ぶれることなく生きた井上さんの人生が見えてくる。

    物語は、売れない作家フンが書いた小説の主人公の大泥棒ブンが、現実に飛び出す所から始まる。

    世界中で奇怪な事件を起こしたブンは次に、人間の一番大切なものを盗もうと決める。

    〈ほう、そりゃあなにかね?〉と尋ねるフンにブンは言う。

    〈権威です(中略)権威をもつと、人は、愛や、やさしさや、正しいことがなにかを、忘れてしまう〉

    ページの端に「のりしろ」「キリトリ線」があったり、ヘンテコな歌があったりと笑えるシーンも満載。

    新潮社は「今の中高生に小説の面白さを伝える1冊に」と今夏、14年ぶりに「新潮文庫の100冊」フェアの対象作に復活させた。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 小学3年で初めて感想文を書いたのがこの本。フン先生の書いた小説から飛び出したブンが大暴れ。点線やのりしろでいたずらを。ナンセンスに初めて触れた本。井上ひさしさんご冥福をお祈りします。

  • 自由気ままに、ペンの赴くままに
    アハハ
    オモシロかった

  • ちょっと読んでおかなくちゃいけないかなぁと思って。本当は小さい頃父親に、吉里吉里人をすすめられて、そのまま大人になってしまっていたのだけど、長いしとりあえず手にとりやすいものから、と。
    でも、遊びが随所にはさまれているところも面白かったし、ミュージカルになったりしているけど、一度みてみたいと興味をそそられた。
    長いのも読みます。

  • ブン「人間に歴史なんかあってもしかたがないと思わない?だて、人間がほんとうに歴史からなにかを学んでいるなら、一度やった失敗は二度と繰り返さないはずよ。ところが人間は、たとえば、しょうこりもなく戦争などを繰り返しているわ。人間には歴史なんて宝のもちぐされなのよ(p.112)

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著者プロフィール

(いのうえ・ひさし)
一九三四年山形県東置賜郡小松町(現・川西町)に生まれる。一九六四年、NHKの連続人形劇『ひょっこりひょうたん島』の台本を執筆(共作)。六九年、劇団テアトル・エコーに書き下ろした『日本人のへそ』で演劇界デビュー。翌七〇年、長編書き下ろし『ブンとフン』で小説家デビュー。以後、芝居と小説の両輪で数々の傑作を生み出した。小説に『手鎖心中』、『吉里吉里人』、主な戯曲に『藪原検校』、『化粧』、『頭痛肩こり樋口一葉』、『父と暮せば』、『ムサシ』、〈東京裁判三部作〉(『夢の裂け目』、『夢の泪』、『夢の痴』)など。二〇一〇年四月九日、七五歳で死去。

「2023年 『芝居の面白さ、教えます 日本編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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