新釈 遠野物語 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 66
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101168074

作品紹介・あらすじ

東京の或る交響楽団の首席トランペット奏者だったという犬伏太吉老人は、現在、岩手県は遠野山中の岩屋に住まっており、入学したばかりの大学を休学して、遠野近在の国立療養所でアルバイトをしている"ぼく"に、腹の皮がよじれるほど奇天烈な話を語ってきかせた…。"遠野"に限りない愛着を寄せる鬼才が、柳田国男の名著『遠野物語』の世界に挑戦する、現代の怪異譚9話。

感想・レビュー・書評

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  • 遠野物語をベースにしつつ、昭和28年頃に、山中に住む不思議な山男から聞いた話として、複数の小話が綴られている。
    東北で語り継がれてきたであろう話がベースになっているものと思うが、一昔前の東北地方で苦しい生活を送っていた人たちの様子や、人間と動物の情愛など不思議な話が多く、変な話だと思いつつも、なぜか引き込まれて一気に読んでしまった。

  • 誇大癖のある"ぼく"と、語り部である
    いんちき臭い犬伏老人が「遠野物語」の序文に
    なぞらえつつ紹介され、つるりと始まる物語。

    山の緑の稜線に重なる白い夏雲。
    世界が反転するような不思議で美しい
    桜の花びらほどの大きな雪の舞う景色。

    美しい描写にうっとりしながら、
    老人の話す怪異に夢中になりページをめくると、
    それはいつしか艶っぽい話、悲しい恋の話、
    残酷な話、悲しく面妖な話へと様変わりしていく。

    本家遠野の話を小さな骨組みとして
    話は隆々と肉をつけ、種を知っているはずの
    手品が鮮やかに趣向が変わり、感嘆し、
    最後には井上氏の愉しい試みに口角が上がる。

    遠野とどこかしら地続きでありながらも、
    延長線上のオマージュに留まらず、
    再構築され生まれ変わる遠野。
    "ぼく"となった聞き手の私は
    犬伏老人の話を心の底から楽しみ魅了される。
    見事な筆致にまさしく、どんとはれ!!

  • 柳田國男の『遠野物語』は、河童やきつねや山人といった不思議な生き物の怪奇談や幻想的な民話が勢ぞろい。奥深い自然とともに生きてきた人々の、生き物や天空の営みに対する愛惜と連帯感、そして深い畏敬の念がこもっているようです。読みながら、ひや~っと背筋が冷たくなったり、小春日和のようなぬくもりを感じたり、どこか懐かしく、静謐で物悲しい。民話とはじつに不思議な魅力にあふれた読み物です。

    そのような柳田國男の「遠野物語」を現代風にアレンジしたのが本作。オリジナルの「遠野物語」を知らない方でも十分楽しめる作りになっています。もちろんオリジナルをご存知の方は、ああ~あのくだりね! ふふふ~と楽しめるから嬉しい。

    ***
    岩手県内陸部の遠野に近在する国立療養所でアルバイトすることになった休学中の「僕」。ある日、ふと山奥から響いてくるトランペットの音色を聴いた僕は、まるでセイレーンの美しい歌声に惹かれるように岩屋に近づいてみると……山人のような暮らしをしている元トランペット奏者の犬伏老人と出会います。流暢で面白い彼の語りは、「僕」のみならずこの本のページを繰る万人をも魅了していきます。

    第1話「鍋の中」
    第2話「川上の家」
    第3話「雉子娘」
    第4話「冷や馬」
    第5話「狐つきおよね」
    第6話「笛吹峠の話売り」
    第7話「水面の影」
    第8話「うなぎと赤飯」
    第9話「狐穴」

    1話から9話はそれぞれ独立したお話です。でもそれぞれが音楽のようにゆるく繋がっていますので、初めての方は、どうぞ順番どおり読まれてみてくださいね。次第に犬伏老人の人となりや面白さが明らかになってきます。わくわくしながら最後までくると、うひゃひゃ~と独り笑い、してやられたわい!

    それぞれの話が面白くアレンジされています。それらを緩やかに連結させたみごとな手腕、なんといっても柳田國男の「遠野物語」の神髄を体現したような結末。
    井上ひさしという人から放たれたユーモア、優しさ、郷愁……さすがですよね。私にとって彼は「難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを面白く」してくれる魔法使いのような作家なのです♪

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    東京の或る交響楽団の首席トランペット奏者だったという犬伏太吉老人は、現在、岩手県は遠野山中の岩屋に住まっており、入学したばかりの大学を休学して、遠野近在の国立療養所でアルバイトをしている“ぼく”に、腹の皮がよじれるほど奇天烈な話を語ってきかせた…。“遠野”に限りない愛着を寄せる鬼才が、柳田国男の名著『遠野物語』の世界に挑戦する、現代の怪異譚9話。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    はっΣ(゚∀゚*)
    今気づいたけどそもそもの「遠野物語」知らないΣ(゚∀゚*)

    なーんて言う私でも、奇妙なお話楽しむことができました!
    子供の頃、よくこう言う民話系の不思議なお話が好きだったなぁ...と思い返し。
    「○○の昔話」みたいなシリーズ、地元のものも含めてけっこう読んだものです。
    小学生くらいの時かなぁ...
    あの頃から図書館に入り浸って、顔も名前も知られていたなぁ(´・ω・`)

    そんな淡い記憶もよみがえるような。
    不思議で奇妙で、ちょっと怖いお話たち。

    「遠野物語」は確か河童で有名ですよね。
    子供のころに読んでたら、もっと面白かったのかな?

    本家もぜひ読んでみたいです。
    もしかしたらこっちの方がユニークなのかも知れないけど。

    さらっとした感想でごめんなさい(人-ω-)

  • 遠野近在の国立療養所でアルバイトをしている“ぼく”は、その山中に住む犬伏老人に出会う。老人は“ぼく”に、遠野に伝わる奇天烈な話の数々を語って聞かせた。柳田國男の名著「遠野物語」を井上ひさし氏が新釈したもう一つの「遠野物語」。

    話し上手な犬伏老人のインチキ話の数々に、誇大癖のある“ぼく”は当初疑心暗鬼になりながらも暇つぶしと思って話を聞き入るが、しだいに“ぼく”は老人に次の話を乞い始める。老人が語る9つの話は、木々や動物といった遠野の美しい自然を背景に今も昔も変わらない人間の滑稽な姿を浮彫にする。印象的だったのは「雉子娘」「笛吹峠の話売り」、そして最後の「狐穴」。
    後悔先に立たずなオチはどれも秀逸で、読んでいる方は自分自身も話の登場人物のようにラストで途方に暮れるが、それがまた不思議と心地いい。「やられた」の一言。

  • 自分も一緒に炉端で犬伏老人の話を聞いている気分

    久しぶりに読み返してみたけどおもしろい!
    そして思ったよりしんみりする話とか艶っぽい話が多かった。先が気になってしょうがなくなる。そう思うと犬伏老人の語りはうまい。話の終わり方が鮮やか。自分も狐につままれた気持ちになる。

  • 「遠野物語」のパロディかと思って読み始めたが違った。そこに下地はあるものの独創的なファンタジーである。山の神、精霊、河童、狐付き。都市では失われた自然との交歓をユーモアたっぷりに語ってくれる。2021.2.4

  • 柳田国男の『遠野物語』とどれほど対応しているのかはわからない。
    でも、河童や沼の主のウナギが登場したり、馬と人間の娘の恋など、多くの話が下敷きになっているのだろう。

    大学を休学し、故郷近くの釜石の国立療養所で働く青年を視点人物に、山で出会った犬伏老人から怪異譚を聞くという設定になっている。

    老人はいったい何者なのかという謎解きが、個々の怪異譚をくるむように配される。
    老人の体験談として語られるため、東北の嘗めてきたつらい歴史も織り込まれている。
    たとえば昭和恐慌で、多くの娘たちが身売りされたこと。
    鉱山での恐ろしい労働。
    私たち読者は、怪異譚を楽しみつつも、そんな悲しい歴史にも思いをはせることになる。

    本作の特徴は、地形が目の前に見えてくるかのような描写だろうか。
    昔、地理学を専攻する先輩が、村上春樹を読むと、その土地が目に浮かんでくると言っていた。
    へえ、専門家(事実、彼は現在大学の教員になっている)は違うものだなあ、と思ったものだ。
    本作は、シロートたる私が読んでも、土地のありさまが想像できた。
    これを彼が読んだら、どう読むのだろう?

  • 井上ひさしの本をそういえばあんまり読んだことないな、と思って手に取る。昔話や妖怪の出てくる話。元ネタの、遠野物語を読みたくなる。

    落語でも狸や狐に騙された小咄というのはよく出てくるけど、その感じととてもよく似ていて、既視感があったので少し評価は低めに。

    里山や村などの自然と近い生活感が感じられるところがよかった。ちょっと自然に近い気持ちになれる。

    短い話が続くので、気分転換したいとき、旅のお供におすすめ。小説も、ある意味では化かし合いだなあと思ったり、霞のかかったような本でした。表紙が可愛い。

  • 遠野物語を下敷きにした物語集。筋はどれも陰惨にして哀切、だけども次が読みたくなる面白さがある。
    一発目が夢オチなのでオチもなんとなく想像できてしまうが、読後感はスッキリ爽やか。

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著者プロフィール

井上ひさし

一九三四年生まれ。上智大学仏語科卒。「ひょっこりひょうたん島」など放送作家として活躍後、戯曲・小説などの執筆活動に入る。小説では『手鎖心中』で直木賞、『吉里吉里人』で日本SF大賞および読売文学賞、『腹鼓記』『不忠臣蔵』で吉川英治文学賞、『東京セブンローズ』で菊池寛賞、戯曲では「道元の冒険」で岸田戯曲賞、「しみじみ日本・乃木大将」「小林一茶」で紀伊國屋演劇賞および読売文学賞、「シャンハイムーン」で谷崎潤一郎賞、「太鼓たたいて笛ふいて」で毎日芸術賞および鶴屋南北戯曲賞など、受賞多数。二〇一〇年四月死去。

「2021年 『さそりたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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