- 新潮社 (1980年10月28日発売)
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感想 : 91件
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784101168074
みんなの感想まとめ
不思議な物語と美しい自然描写が織りなすこの作品では、昭和28年頃、山中に住む犬伏老人が語る小話が中心となっています。東北地方の民話をベースにしたさまざまな物語が、心温まる情愛や幻想的な要素を交えながら...
感想・レビュー・書評
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遠野物語をベースにしつつ、昭和28年頃に、山中に住む不思議な山男から聞いた話として、複数の小話が綴られている。
東北で語り継がれてきたであろう話がベースになっているものと思うが、一昔前の東北地方で苦しい生活を送っていた人たちの様子や、人間と動物の情愛など不思議な話が多く、変な話だと思いつつも、なぜか引き込まれて一気に読んでしまった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
柳田國男の『遠野物語』は、河童やきつねや山人といった不思議な生き物の怪奇談や幻想的な民話が勢ぞろい。奥深い自然とともに生きてきた人々の、生き物や天空の営みに対する愛惜と連帯感、そして深い畏敬の念がこもっているようです。読みながら、ひや~っと背筋が冷たくなったり、小春日和のようなぬくもりを感じたり、どこか懐かしく、静謐で物悲しい。民話とはじつに不思議な魅力にあふれた読み物です。
そのような柳田國男の「遠野物語」を現代風にアレンジしたのが本作。オリジナルの「遠野物語」を知らない方でも十分楽しめる作りになっています。もちろんオリジナルをご存知の方は、ああ~あのくだりね! ふふふ~と楽しめるから嬉しい。
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岩手県内陸部の遠野に近在する国立療養所でアルバイトすることになった休学中の「僕」。ある日、ふと山奥から響いてくるトランペットの音色を聴いた僕は、まるでセイレーンの美しい歌声に惹かれるように岩屋に近づいてみると……山人のような暮らしをしている元トランペット奏者の犬伏老人と出会います。流暢で面白い彼の語りは、「僕」のみならずこの本のページを繰る万人をも魅了していきます。
第1話「鍋の中」
第2話「川上の家」
第3話「雉子娘」
第4話「冷や馬」
第5話「狐つきおよね」
第6話「笛吹峠の話売り」
第7話「水面の影」
第8話「うなぎと赤飯」
第9話「狐穴」
1話から9話はそれぞれ独立したお話です。でもそれぞれが音楽のようにゆるく繋がっていますので、初めての方は、どうぞ順番どおり読まれてみてくださいね。次第に犬伏老人の人となりや面白さが明らかになってきます。わくわくしながら最後までくると、うひゃひゃ~と独り笑い、してやられたわい!
それぞれの話が面白くアレンジされています。それらを緩やかに連結させたみごとな手腕、なんといっても柳田國男の「遠野物語」の神髄を体現したような結末。
井上ひさしという人から放たれたユーモア、優しさ、郷愁……さすがですよね。私にとって彼は「難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを面白く」してくれる魔法使いのような作家なのです♪ -
誇大癖のある"ぼく"と、語り部である
いんちき臭い犬伏老人が「遠野物語」の序文に
なぞらえつつ紹介され、つるりと始まる物語。
山の緑の稜線に重なる白い夏雲。
世界が反転するような不思議で美しい
桜の花びらほどの大きな雪の舞う景色。
美しい描写にうっとりしながら、
老人の話す怪異に夢中になりページをめくると、
それはいつしか艶っぽい話、悲しい恋の話、
残酷な話、悲しく面妖な話へと様変わりしていく。
本家遠野の話を小さな骨組みとして
話は隆々と肉をつけ、種を知っているはずの
手品が鮮やかに趣向が変わり、感嘆し、
最後には井上氏の愉しい試みに口角が上がる。
遠野とどこかしら地続きでありながらも、
延長線上のオマージュに留まらず、
再構築され生まれ変わる遠野。
"ぼく"となった聞き手の私は
犬伏老人の話を心の底から楽しみ魅了される。
見事な筆致にまさしく、どんとはれ!! -
話の中身は毛色が違うが、語り手が老人に話を聞きに通うという構成的に半七捕物帳を思い出してしまった。語り手の質問や混ぜっ返しも含めて二人の対話で(勿論主は老人の語りだが)物語が進行する連作短編で、最後の章でオチがつく。色っぽい話や凄惨な話も多いのだが、昭和前期とはまだそんな時代だったのかという驚きもある。
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遠野物語は柳田国男の原作に限る。現代語訳や京極夏彦が脚色したものも読んだが、正直つまらない。遠野物語の迫力は柳田の文体により作られたものといえよう。
ただ、この新釈遠野物語は別物で、面白い。遠野物語の原作をそのまま使っているのではなく、材料をうまく戦後まもなくの時代に落とし込んでいる。遠野物語を読んだことのある人なら、ああ、あの話か、と分かる。このころまでは、柳田の遠野物語と地続きだったのだろう。 -
タイトルに「遠野物語」が入っているからという先入観入りまくりで最初の話を読んでしまったので
最後に「ええー;」という感じに(笑)
でもオチまではどきどきしながら楽しく読めました。
他の作品も断言しない、言い切らない良さと
善と悪で容易に分けない良さがあり、
ただただ切ない話もあり…
特に妻の話の切ない事と言ったら…!
と 思っていたのに
最後の話を読んでまた「ええー;」という感じで終わるという(爆)
とても面白い一冊でした。
10年後くらいにもう1度読みたい一冊。 -
遠野近在の国立療養所でアルバイトをしている“ぼく”は、その山中に住む犬伏老人に出会う。老人は“ぼく”に、遠野に伝わる奇天烈な話の数々を語って聞かせた。柳田國男の名著「遠野物語」を井上ひさし氏が新釈したもう一つの「遠野物語」。
話し上手な犬伏老人のインチキ話の数々に、誇大癖のある“ぼく”は当初疑心暗鬼になりながらも暇つぶしと思って話を聞き入るが、しだいに“ぼく”は老人に次の話を乞い始める。老人が語る9つの話は、木々や動物といった遠野の美しい自然を背景に今も昔も変わらない人間の滑稽な姿を浮彫にする。印象的だったのは「雉子娘」「笛吹峠の話売り」、そして最後の「狐穴」。
後悔先に立たずなオチはどれも秀逸で、読んでいる方は自分自身も話の登場人物のようにラストで途方に暮れるが、それがまた不思議と心地いい。「やられた」の一言。 -
遠野旅行をした折、土産店で本書を購入。安野光雅のカバー画もよい。
旅を終えてからも遠野の箱庭的魅力をじんわり味わえる、いい物語。「新釈」というのは言い得て妙で、遠野物語を下敷きにしつつもまっさらの物語世界を構築していて夢中で読んでしまった。
際どいお話ばかりなので(1話目がいきなり下ネタオチで、こりゃあすごいなと思ったら回を重ねるごとにそのすごみが増して、二重に驚いてしまった)、お子様にはあまり勧められないが、遠野で語り継がれていた民話も本来はこれくらい生々しいものだったのだろう。エリート官僚・柳田國男の味付けで文学性が増し、今は子ども向け絵本も出ているくらいだが。
遠野物語の中では私はオシラサマ伝説がいちばん凄みというか深みを感じて、文字として記録されている以外の秘密があったのではと感じたけど、井上ひさしもそうだったのだろうか。本書でも馬との悲恋を題材にしたお話がもっとも印象深かった。
ところでオシラサマは、遠野の女子どもの間で主に行われてきた風習(?年間行事?)だという。厳しい村の暮らしで男に頼るしかなかった悲しさややるせなさ、絶望のなかの仄かな希望、ささやかなロマンなどを反映したものだったのかなと思う。そして女子ども間の秘め事である故に、佐々木喜善や柳田國男が汲み取りきれず、井上ひさしもつかみきれず、その全貌が明らかにされていない気がする。これを題材に女性作家が物語を書いたらどうなるだろう……?と夢想してしまう。
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遠野物語に表れる話を下敷きにしながら編み直された奇譚集。語り手(犬伏老人)と聞き手(ぼく)は、遠野物語を形作った佐々木と柳田の間柄とみることもできるけど、むしろ民間伝承を伝えてきた年寄りと子供に擬える方が会話調の全体設定にしっくりくる。
河童の話や狐にまつわる話などいろいろあるが、個人的には遠野に行った時に聞いたおしらさまの話に通底する「冷し馬」が印象に残る。
これとは関係なく最近読んだ『ギケイキ』で、現世に甦った?義経が、今と比べて昔は神仏の功徳がはるかにリアルなものとして存在した云々と繰り返し注釈を入れるけれども、たまたま続けて読んだこの作品にも似たような観念が貫いてるのかも。 -
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遠野物語は未読だが、面白く読めた。
川上の家、笛吹峠の話売り、鰻と赤飯、狐穴が印象に残った。
全体的にどこか仄暗く悲劇的な話が多い中、狐穴は狐のいたずらがおかしく描かれていて笑えてしまう。
人間と自然が今よりも近い距離にあった時代の不可思議な話。現実味は薄いのにどこか心に引っ掛かるものが残るのはそれこそ不思議だ。 -
語り手と聞き手っていう舞台装置を生かした遠野物語
怖いとか不気味なだけじゃない、にやっと笑える感じが読みやすかった
井上ひさしはブンナよ木から降りてこい、オムレツのルロイ修道士のイメージしかなかったから読んでみてよかった -
どの話にも民話らしい仄暗さや余韻がある。
狐や河童だけでなく、『雉も鳴かずば撃たれまい』『岩魚の怪』などの大胆な翻案も。
解説にもあったが、『遠野物語』にはない入れ子構造がとられているのも面白い。この本の語り手の「ぼく」と物語の語り手の「犬伏老人」との関係性がタテ軸になることで、単なる短編集ではない連続ドラマとしても楽しめる。 -
遠野物語を現代に甦らせた連作短編集。
物悲しかったり、艶っぽかったり、遠野物語風味を楽しめた。
最後はほほーっと唸ってしまいました。
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岩手旅行に行くので遠野物語を読もうと思い立った。中学生のころ、言葉遣いが難しく挫折した遠野物語。まずはライトなものを、と探していたら見つけた本書。オシラサマや河童の話を作家が煮詰めるとこうなるのか!と思った以上に面白い。
著者は実際に釜石療養所で働いていたようで、それだからか、本当に語られている昔話のようなリアルさがあった。 -
井上ひさしの代表作ともいえる連作小説集。たぶん、新潮文庫の百冊にも入っていたような記憶がある。
収録されているのは、「鍋の中」「川上の家」「雉子娘」「冷し馬」「狐つきおよね」「笛吹峠の話売り」「水面の影」「鰻と赤飯」「狐穴」の9編。
民俗学者柳田國男が書いた「遠野物語」の中に収録されている伝説や昔話を、井上ひさし流に新たな話として現代に蘇らせたものである。
どこか聞いたことのあるような親しみのある話が、笑い話や怖い話、不思議な話と生まれ変わっている。
この本を最初に読んだのは、高校生ぐらいの時、それから何度も読み返しているし、本自体2冊目になっている。
ストーリーもあらかたわかっているのにもかかわらず何度も読めてしまうのは、井上ひさしの冗長なぐらいのと言いつつもテンポの良い、独特の文体に引き寄せられてしまうところがあるのかもしれない。
また、話のいくつかは、艶っぽい女性が出てくる(これも井上ひさしらしいが)。こういう大人の女性は、歳を経ないとわからない所があるよね。(まあ、今になってもわかっているとはいいがたいが・・・。)
こういった所も何回も読める所なのかもしれない。
もとになっている話も、何処かで聞いたことがあるよなあと思う話が料理されているのでその事もあるのだろう。
この本は1976年に筑摩書房から単行本が出版され
1980年に文庫化されている。
思ったより出版が古いなあ。(笑)
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著者プロフィール
井上ひさしの作品
