吉里吉里人(上) (新潮文庫)

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レビュー : 73
  • Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101168166

感想・レビュー・書評

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  • 面白い!! 物凄く面白い!!
    最初の吉里吉里語講座も熱心に読んだので、その後の吉里吉里語の会話もバッチグーで読める。

    ただあまりに熱心にやったお陰で、時々普通の会話中に”今のを吉里吉里語で言うと○○だな”と頭の中で翻訳してしまうのが、ちょっと…ね…笑

  •  3月11日の大震災以後,というよりそれに引き続いて起こった福島第一原発の事故以後,ちょっと話題になっていた本です。
     東北地方の一寒村・吉里吉里村が,ある日突如として日本国からの分離独立を宣言し,「吉里吉里国」を作る,というお話。吉里吉里国は独自の国政方式を敷き,これまで「ズーズー弁」と蔑まれてきた東北方言を「吉里吉里語」として公用語に定め,金本位制の独自通貨「イエン」を導入し,次々に新国家としての体制を整えていきます。機動隊か自衛隊を投入すれば瞬時に片が付く,と高をくくっていた日本側も,吉里吉里国が次々に繰り出してくる「切り札」を前になすすべもなく翻弄されます。騒動に偶然巻き込まれた三流作家・古橋健二を中心に,吉里吉里国の分離独立闘争を描いた作品です。
     「独立闘争」などと書くと重苦しい感じがしますが,作品は全編にわたって明るくのんきな感じです。吉里吉里人たちの繰り出す「切り札」が,例えば自衛隊の介入に対する切り札が参加人数わずか3名の国際卓球大会だったりして(なぜこれで自衛隊を追い返せるのかは作品をお読みいただきたい),真正面からの力押しで独立を勝ち得るのではなく,知恵を使った戦い方にうならされます。
     しかしその背景にあるのは,これまで長きにわたって虐げられてきた東北地方の現状です。日本の工業化・高度成長の陰で常に泣かされてきた東北の人々の不満が,吉里吉里村を分離独立に踏み切らせたのです。食料自給率は100%,電力も地熱発電で賄え,小国家ゆえに自転車で事足りるため石油燃料に頼る必要もない。自分たちの手ですべてをうまく回していけるのに,なぜ日本政府の命令に従って苦しい生活をしなければならないのか…という言い分です。
     この作品が書かれたのは1981年,今から30年も前のことですが,東北の受難は今もって変わりがありません。日本の農政は30年前から今に至るまでずっと,東北の農村に農業の単一化・機械化を推し進め,機械代と化学肥料代で農村を借金漬けにしました。減反政策は深刻な農業離れを生み,若者は農業と故郷を捨てて都会へ出,税収の減った地方自治体の財政は破綻し,そこへ莫大な補助金を伴って原発がやって来たのでした。そう考えると,井上ひさし氏が東北の怒りを『吉里吉里人』にぶつけた30年前から(作品を読むとわかりますが,実は30年どころではなく300年前から受難は続いているのですが),現状は変わっていないどころかより深刻化していると言えます。東北の一寒村の独立という冗談のような物語をハラハラしながら読みながら,そういう視点を持つことができたのが良かったです。
     作品の半分ぐらいはそういう真面目な話で,もう半分はほとんど下ネタなので,誰にでもお勧めできるというわけではありません。性的な話題にそれほど嫌悪感がないという方はどうぞ。

  • 宮城の端の吉里吉里という町が日本国から独立するというお話。
    本筋はすごく面白いのだが、話の中心である古橋のサイドストーリーとか、横道にそれる話題が非常に多く、飽きる。早く吉里吉里国について教えてほしい。
    中盤からページをくってもくっても吉里吉里国の話にならないので、脱落してしまった。

  • 痛快。思わず笑ってしまう。冗長な部分もあるけれどこれもまた必要な要素だと思う。今後どうなってしまうのかが気になって次も読む。ともあれ、この笑いのツボはどことなく昭和な感じがする。

  • (中巻に続く)

  • 東北の一地方が突如、独立を宣言し、「吉里吉里国」となる。旅客列車が止められて旅券を拝見とは⁉︎
    なかなかの発想ですね。時々、クスリと笑わしてくれる。
    主人公の古橋健二は自伝小説を書いた小説家。
    この騒動に巻き込まれて、国賓扱いを受けていたが、となることから裁判に掛けられ犯罪者扱いとなる。次の巻が気になりますね。

  •  一応「SF」小説だと言うから読んだのだが、かなり期待の斜め下を行く作品だった。
    SF的ガジェットは無くもないが、ほとんど冗談のような医療技術に負う所が大きいからだ。

     東北の一寒村が日本政府に対して独立を唱えるという発想は面白い。
    そしてその手法が軍事独立ではなく文化的戦略による独立である事も。
    色々言うとネタバレになってしまうのだが「吉里吉里国」の戦略は用意周到かつ大胆、しかしどこか肝心な所が抜けている。

     本作は上中下の三巻にも及ぶ長編だが、作中の時間はたった二日にも満たないという「ロミオとジュリエット」にも負けない強行軍だ。
    それだけ出来事が濃縮されているかと言うとむしろ逆で、暇な時には主人公古橋の過去話やどうでもいい回想が挿入される形式になっている。
    一応日本国の自衛隊が鎮圧に乗り出したり卓球ワールドカップを開催したり最終的には吉里吉里国の最終防衛ラインである大病院でドンパチやらかしたりといった山場はあるが、余分な所をカットすれば一冊に収まったのではなかろうか。
    もっとも、その「余分な所」も含めてこの作品のユーモアであるから判断が難しいところではあるのだが。

  • 下巻に

  • 初めての井上ひさし。間の抜けたような登場人物が面白いし、それでいて妙に説得力のある描写が物語にリアリティを与えている。吉里吉里語とドイツ語の親和性に笑ってしまった。続きが楽しみである。

  • 面白い上に、内容が濃いです。余計な話がたくさん出てきますが、全く飽きさせません。上中下巻で1,500ページほど有りますが、あと二冊、楽しんで読めそうです。

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著者プロフィール

1934年山形県生。上智大学卒。浅草フランス座文芸部進行係等を経て文筆業に。「手鎖心中」で直木賞、『吉里吉里人』で読売文学賞、日本SF大賞等を受賞、他、小説、戯曲、テレビ脚本で受賞多数。2010年逝去。

「2017年 『国ゆたかにして義を忘れ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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