父と暮せば (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
4.07
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本棚登録 : 726
感想 : 105
  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101168289

作品紹介・あらすじ

「うちはしあわせになってはいけんのじゃ」愛する者たちを原爆で失った美津江は、一人だけ生き残った負い目から、恋のときめきからも身を引こうとする。そんな娘を思いやるあまり「恋の応援団長」をかってでて励ます父・竹造は、実はもはやこの世の人ではない-。「わしの分まで生きてちょんだいよォー」父の願いが、ついに底なしの絶望から娘をよみがえらせる、魂の再生の物語。

感想・レビュー・書評

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  • R2.1.12 読了。

     タイトルが気になって衝動買いした本。戦後間もない頃の広島が舞台で、1人の女性が「自分は幸せになってはいけない」という思いと、亡き父親の姿で現れた「恋して結婚して幸せになりたい」という思いの狭間で揺れ動く。
     原爆投下の日に父親は爆弾で死んでしまったという状況で、生き残った女性は運命に翻弄される。
    舞台上の設定で亡き父親と娘が会話する形式で進んでいく。
    戦争がなかったら、この人たちも悩まずに日常生活を送れていたのではないかと思うと、悲しくなってしまう。
    広島弁の語りが当時の状況を切実に伝えていると思う。
    もしもこの先、同名の舞台があればぜひ見に行きたい。

  • 買いだめしておいた何冊もの本の中から、今日偶然に手に取った。
    8月は鎮魂の月である。
    祖母は被爆者。自分が幼い時に話は聞いたことがある。原爆資料館にも連れて行ってもらった。
    それから30年以上たち、日本は戦争していないが、世界中で悲惨な戦いは繰り返されている。
    日本は核兵器禁止条約に批准しないという。
    日本の国としての限界がそこにある。
    ただ政治家も一般国民も皆戦争はしてはいけないものだ、と共通に願っていてほしい。
    父と暮らせばを読み、それも8月に読み、戦争はいかに人を傷つけるか、改めて考えさせられた。

  • 有名な作品なので、タイトルと「広島の原爆」の話だというのは知っていたが、
    どうしても「原爆」というテーマが重すぎて今まで手が出せなかった一冊。
    でも、実際に読んでみると「原爆で生き残った娘と恋の応援団長の父(亡き人)」の話だった。後味も良く、「これは、読まず嫌いだった」と反省。
    現代でも、悲しいけれど「死んだ者」と「生き残った者」は存在する。生き残った方は娘のように幸せから遠ざかろうとするけれど、死んだ者が望むのは、残していってしまった愛する人の幸せ。舞台版も観てみたいと思った。

  • 母に薦められて読んだ本。
    全く何の知識もなく読み始めて、まえがきで原爆のことなのだとわかり、覚悟して読む。
    読みながら、思いがけず3.11の津波のことを考えた。津波の後、この作品の父と娘の別れの回想と同じような体験談を読み、胸がえぐられた。全編通して、とても辛いのだけど、父の思いが前を向いていて、救いがある。
    原爆の資料集めやその際の言論が占領軍によってコントロールされていたのは知っていたけど、民間人がひしひしと感じ、そして話せない沈黙の中でどれだけのものが失われ続けただろうと考えると、やるせないし、また、原爆被害にあったものの子孫として、自分のこれだけの距離感はこの「話せない」「話さない」ことに根をもつものであり、そうであるならば、辛くても積極的にもっと読み、次につないでいかなければならないと感じた。
    「太陽二つをすぐそこに1、2秒」という原爆の描写は、子どもにもわかる描写でシンプルに、だからこそ恐ろしい。この小さな劇は私の中でずっと生き続ける。
    薦めてくれた母に感謝。

  • 終戦から3年経った広島。被爆した娘と原爆で亡くなった父のやりとりで進む、舞台台本。
    まず、前口上で原爆に対する作者の思いが、短いが力強く書いてあり印象的だった。
    原爆で一人生き延びた自分は幸せになってはいけないと思う主人公が恋をする。心に蓋をし、相手を遠ざけようとする娘を「応援団長」として現れる亡くなった父こと“おとったん”。
    原爆をテーマとしているが、茶目っ気たっぷりの“おとったん”の励ましがなんとも温かい気持ちにさせる。
    セリフはオール広島弁。馴染みのない方は読みずらいかも…?

  • 台本であり、読みやすい。
    幸せになることに対しての娘の葛藤、父の心配、そして、幽霊として娘のそばにおり、娘がそれを受け入れているというユニークな設定。あたたかい。

  • 「ちゃんぽんげ」の場面が好きで好きで…
    これの意味を知りたい人は読むべし。

  • 最近、夢中になっている井上ひさし。
    悲しいが、優しい救済の物語。こうでないと救えない心がたくさんある。

  • 母に勧められて読みました。
    本の内容も面白かったですし、色々と考えさせられる内容だったので読んで良かったと思います。
    僕は井上ひさしさんの本を読むのは初めてだったのですが、井上ひさしさんの「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでゆかいに」という言葉を感じた本でした。

  • こまつ座で舞台になっている他、宮沢りえ主演で映画化されたり、人形劇団むすび座で人形劇化されている。
    戯曲は読みづらいというイメージがあったけれど、映画を見てから読んだということもあってかとても読みやすかったし、おとったんと美津江の身に起こったことや、二人の思い、美津江が心を揺らしながらも一歩一歩前に進んでいく様子が、映像を見たとき以上に理解できた。
    一発の原爆は、たくさんの人の大事なものを失わせ、人生を変えてしまう。生き残った人は、亡くなった人の思いを背負って生きていくことになる。原爆を落とすことはとても大きな罪だと思う。

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著者プロフィール

井上ひさし

一九三四年生まれ。上智大学仏語科卒。「ひょっこりひょうたん島」など放送作家として活躍後、戯曲・小説などの執筆活動に入る。小説では『手鎖心中』で直木賞、『吉里吉里人』で日本SF大賞および読売文学賞、『腹鼓記』『不忠臣蔵』で吉川英治文学賞、『東京セブンローズ』で菊池寛賞、戯曲では「道元の冒険」で岸田戯曲賞、「しみじみ日本・乃木大将」「小林一茶」で紀伊國屋演劇賞および読売文学賞、「シャンハイムーン」で谷崎潤一郎賞、「太鼓たたいて笛ふいて」で毎日芸術賞および鶴屋南北戯曲賞など、受賞多数。二〇一〇年四月死去。

「2021年 『さそりたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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