井上ひさしと141人の仲間たちの作文教室 (新潮文庫)

著者 :
制作 : 文学の蔵 
  • 新潮社
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感想 : 111
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101168296

感想・レビュー・書評

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  • 08077

    06/01

  • 作文教室の録音を改めて文字に起こしているためか、言葉が頭にすっと入って凄く読みやすい。
    受講者の作文(添削付き)も面白いのが多くて一気に読めた。
    自分も作文を書く習慣をつけようかな…。

  • 著者が岩手県一関市で1996年におこなった作文教室の講義録。
    文章が上手になるための参考書としてではなくても、読んでためになる。もちろん、文章・日本語の勉強には大いになる。文章を書く人には必読の内容がぎっしり。
    子どもへの文章教育の方法論も参考になった。

    本のなかに「くわしくは著者のこの本を参考にせよ」という注がふられているが、『自家製 文章読本』『私家版 日本語文法』『井上ひさしの日本語相談』『本の運命』など、ずいぶん昔に読んだ本が多く、具体的には忘れてしまっている話が多かった。
    しかし、とくに学生の頃に読んだ『〜文章読本』(のほうだと思う、確か)などには非常に衝撃を受けた記憶がある。これらが、いまの自分に無意識のうちにも血肉となっていてくれたらいいのだが。

    著者が亡くなってから最初に読んだ著書だったので、やけに言葉のひとつひとつが心にしみてくる。
    「(人の死が厳しいことの理由の一つが)ひとりの人間が長い時間かけて収穫し、ため込んだ記憶が一気になくなってしまうわけで、非常に不幸な、かけがえのない損失だと思います」
    「わたしも書く時間が残り少なくなってきました。あと十年も書ければと考えたり、できたら、十三年、あと十四年は、と考えたりしますが、十五年は持たないと思っています」
    まったく、自身のことをご存じだったのではないか!

    この本を読んで、きちんと読みたい、あるいは手元に置いておきたいと思った本。
    ・夏目漱石『私の個人主義』
    ・大野晋『角川必携国語辞典』
    ・井上ひさし/樋口陽一『「日本国憲法」を読み直す』
    ・司馬遼太郎/井上ひさし『国家・宗教・日本人』
      など

    [10.5.12]

  • 「奇跡が起きています。」

  • 秋と書いて「とき(時)」とルビをふる、その感覚にじんわりと涙が出た。文脈はこうだ。
    「どんな一生でも、それは一個の立派な一生です。そのことを考えて考えて考えつくすべき秋なのでしょうね」

    頁をめくりながら、ひしひしと著者の、人に対する優しいまなざしがじんじん響いてきて、何度か読むのを中断させられた。故人を偲ぶ。言葉がたくさん遺された。

    文章を書くのでも、ここまでやり尽くさねばならないのかと身の締まる思いがする。人々が織り上げた日本語というものに対し、とことん敬意を払わなければならない。成り立ちや意味、文例を知れば知るほど、文章に奥行きが生まれる。
    頭が下がる。

  • 08.4.7

  • これは一回読んでおいて損はないほんだなぁ。

    自分が受けてきた国語教育の不味さが、ピシッと書いてある。
    あと、普段無意識に使っている日本語のややこしさも、ユーモアを交えた語りで書かれていて面白い。

  • まず原稿用紙の使い方、題のつけ方、段落の区切り方、そして中身は自分の一番言いたいことをあくまで具体的に―。活字離れと言われて久しい昨今ですが、実は創作教室、自費出版は大盛況、e‐メールの交換はもう年代を問いません。日本人は物を書くのが好きなんですね。自分にしか書けないことを、誰が読んでも分かるように書くための極意を、文章の達人が伝授します。

  • 自分にしか書けないことを、だれにでもわかる文章で書くということ。

    井上ひさしさんも文章講座をされていたんだなあ。参加したいものです。
    意外と選評は優しく、けれども言葉の選び方がとても繊細だと感じました。
    短期記憶、長期記憶に分け、短期記憶にたたみかけるように、短い文章を積み重ねることが大事。けれども、相手の長期記憶を利用しないと、わたしたちの書いたものの、言ったことが相手に理解されない。

    優れた文章書きは、なるべく小さく千切ったものを、相手に次々に提供していく。(漱石の文章が参考)。参加者への手直しを見ると、副詞は余分とかなり削られている。
    あと、文章の前置きが長すぎて、ほとんどはいらないと。もっとあとの部分から書いてよし、と。「いきなり核心から入る」ことが大事。

    字引は自分のそばに置いておく。辞書なしに「俺は文章を書くぞ」というのは車がないのに「運転するぞ」とほとんど同じこと。(大野晋さんの「角川必携国語事典」がおすすめ)
    日本語は点のつけ方が大事、「点ひとつで、意味が全然、変わってくる」。
    「~と彼女が言った」とか書かなくても分かるのが、日本語。
    日本語は木も葉っぱ、魚や虫、稲なんかも、語彙が多い。(空や星の語彙は少ない、だから日本人は、この宇宙の果て、何があるんだろう、なんて哲学的なことは全然考えない)。

    意識をなるべく研ぎ澄まして。観念的に、じゃなくて具体的に。理屈ではなくて、具体的に。
    文章に接着剤を使いすぎるな。「理屈を連れてくる」接続助詞は、下手に使うと苦労するだけ(~だが、 ~という、~といわれるも使わない)
    「誠実さ」「明晰さ」「わかりすさ」これが文章では大事なこと。
    予想もつかなかった展開とは、もともと自分の中にあったことです。長期記憶の中からは、とんでもないものがヒュッと出てくる。
    考えて、考え抜いて、もうこれならどこからでも書ける、というところまでちゃんとやったうえで、いったんそれを脇に置いて……。
    まず、ものを良く見る。その見たことを、そのまま書くということ。(感じたことではなく)
    人間は書くことを通じて考えを進めていく生き物です。

  • 3日間に及ぶ作文教室。井上ひさしによる講義の様子と、参加者が書いた実際の作文と、井上ひさしがつけた添削と一言が掲載されている。(原稿用紙に)文章を書くためのノウハウが、平易な言葉でたくさん説明されていて、とってもわかりやすかった。「〜は、」と「〜が、」の違い。なんとなく使っていて、その使い方の違いを私は説明は出来なかった。でも、ふう〜んそういうことかと理解できた。私も井上先生が出されたテーマ(私の困っていること)と、字数(400字)で作文を書いてみたくなった。ちゃんと先生が教えてくれた通り、国語辞書を片手に持ってね。〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜今朝の電車の中で最後の頁を読んでいたら、「できたらあと13年、14年は書ければと考えたりするが、15年は持たないと思っています」とあり、あら?井上ひさしっていったいおいくつ?この作文教室はいつのこと?と思っていた。そして夜、くつろぎながら今日の新聞をめくっていると、そこに井上ひさしが肺がんであることを公表とあり、ドキッとしてしまった。単行本の発行から11年だ。うんまだまだ数年は書いてもらわねばならない、ご本人がその予定なのだから。そう思いながら読み進むと、治療して現在は快方に向かっている、春には次の作品を書く予定とあった。は〜びっくりしたけど、そうだよ、そうだよ春になったら書いてくださいよと胸をなでおろした次第だ。

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著者プロフィール

(いのうえ・ひさし)
一九三四年山形県東置賜郡小松町(現・川西町)に生まれる。一九六四年、NHKの連続人形劇『ひょっこりひょうたん島』の台本を執筆(共作)。六九年、劇団テアトル・エコーに書き下ろした『日本人のへそ』で演劇界デビュー。翌七〇年、長編書き下ろし『ブンとフン』で小説家デビュー。以後、芝居と小説の両輪で数々の傑作を生み出した。小説に『手鎖心中』、『吉里吉里人』、主な戯曲に『藪原検校』、『化粧』、『頭痛肩こり樋口一葉』、『父と暮せば』、『ムサシ』、〈東京裁判三部作〉(『夢の裂け目』、『夢の泪』、『夢の痴』)など。二〇一〇年四月九日、七五歳で死去。

「2023年 『芝居の面白さ、教えます 日本編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

井上ひさしの作品

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