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- Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101169132
作品紹介・あらすじ
薔薇の花束を四人で持つのは、面倒だぞ、厄介だぞ、持ちにくいぞ――世界的弦楽四重奏団(クヮルテット)の愛憎半ばする人間模様を、彼らの友人である財界の重鎮が語り始める。互いの妻との恋愛あり、嫉妬あり、裏切りあり……。クヮルテットが奏でる深く美しい音楽の裏側で起きるさまざまなできごと、人生の味わいを、細密なディテールで描き尽くした著者最後の長編小説。
感想・レビュー・書評
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老練な編集者が、功成り名遂げた財界実力者から、長年懇意にしてきている実力派弦楽四重奏団の結成当初からのあれこれをききとる、というスタイルで、老人が来し方を振り返り記憶をたどりながら語る物語。この取材を元にしたノンフィクションは関係者の死後に発表されるという約束のもとにオフレコのような話題まで問わず語りに話していく中に、丸谷才一得意の雑学やゴシップをたっぷりちりばめて読ませる。読み始めたらするする引き込まれる。
この物語の味わいはやはり年配者が読めば格別なのだろうか。それは追々わかるとして、さまざまなカルテット(フィクションのグループ・実際の作品ともに)の話題が出てくるので、音楽ファンの方が楽しめるし、音楽が聞きたくなること必至。
巻末の湯川豊によるインタビューとあとがきを読み、何を仕事にしているかわからない高等遊民が内へととじこもるスタイルの日本の近代文学への批評として、丸谷さんは常に職業人を主人公として仕事ぶりや世間とのかかわり合いを丁寧に描写した大衆小説を書き続けていたのだとわかり、いろいろ腑に落ちた。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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