持ち重りする薔薇の花 (新潮文庫 ま 2-13)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101169132

作品紹介・あらすじ

薔薇の花束を四人で持つのは、面倒だぞ、厄介だぞ、持ちにくいぞ――世界的弦楽四重奏団(クヮルテット)の愛憎半ばする人間模様を、彼らの友人である財界の重鎮が語り始める。互いの妻との恋愛あり、嫉妬あり、裏切りあり……。クヮルテットが奏でる深く美しい音楽の裏側で起きるさまざまなできごと、人生の味わいを、細密なディテールで描き尽くした著者最後の長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 老練な編集者が、功成り名遂げた財界実力者から、長年懇意にしてきている実力派弦楽四重奏団の結成当初からのあれこれをききとる、というスタイルで、老人が来し方を振り返り記憶をたどりながら語る物語。この取材を元にしたノンフィクションは関係者の死後に発表されるという約束のもとにオフレコのような話題まで問わず語りに話していく中に、丸谷才一得意の雑学やゴシップをたっぷりちりばめて読ませる。読み始めたらするする引き込まれる。
    この物語の味わいはやはり年配者が読めば格別なのだろうか。それは追々わかるとして、さまざまなカルテット(フィクションのグループ・実際の作品ともに)の話題が出てくるので、音楽ファンの方が楽しめるし、音楽が聞きたくなること必至。
    巻末の湯川豊によるインタビューとあとがきを読み、何を仕事にしているかわからない高等遊民が内へととじこもるスタイルの日本の近代文学への批評として、丸谷さんは常に職業人を主人公として仕事ぶりや世間とのかかわり合いを丁寧に描写した大衆小説を書き続けていたのだとわかり、いろいろ腑に落ちた。

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著者プロフィール

大正14年8月27日、山形県生まれ。昭和25年東京大学文学部英文学科卒。作家。日本芸術院会員。大学卒業後、昭和40年まで國學院大學に勤務。小説・評論・随筆・翻訳・対談と幅広く活躍。43年芥川賞を、47年谷崎賞を、49年谷崎賞・読売文学賞を、60年野間文芸賞を、63年川端賞を、平成3年インデペンデント外国文学賞を受賞するなど受賞多数。平成23年、文化勲章受章。著書に『笹まくら』(昭41 河出書房)『丸谷才一批評集』全6巻(平7〜8 文藝春秋)『耀く日の宮』(平15 講談社)『持ち重りする薔薇の花』(平24 新潮社)など。

「2012年 『久保田淳座談集 暁の明星 歌の流れ、歌のひろがり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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