家族八景 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101171012

感想・レビュー・書評

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  • 人の心を読める家政婦、七瀬が、色んな家庭を転々としてそれぞれの家族の問題を目の当たりにする。

    フロイト的な心的構造を心理描写に自然に持ち込んでいて面白い。

    心理描写は、小説の登場人物か第三者的な語り手の視点で描かれることが多いけど、「心を読める」七瀬が主人公になることで、その両方がミックスされた視点が構成されている。

    さらに七瀬が自分の能力の出自を明らかにせんとして心理学を学んだ過去を持つことが、心理描写に心理学的な知見を当てはめることの根拠になっている。

    おそらく、第三者的な視点のまま心理学用語を用いていたら、よりスノブな香りのする文章になっていたのではないか。

    そういう意味で、心的構造を心理描写に自然に持ち込めているように思う。

  • ひとの心が読めてしまう少女・七瀬は自らの力を知り、試すためにもお手伝いを職として様々な家で住み込みながら働いていた。
    その中の8軒の人々のエピソードをまとめた1冊。

    元々ドラマを昔に観て、とても好きだったので手に取った本。
    ドラマはかなり原作に忠実だったんだな〜。
    人の心が読めてしまう七瀬にとって、住み込みで働くというのは興味深い反面とてもリスキーで、読みながら自分だったら?を常に頭の片隅に置いていた。恐らくもっと人をけしかけたり、コントロールしようとしてしまうだろうなあ。
    最後の亡母渇仰のラストが壮絶すぎて、もし自分なら狂ってしまいそう。

    生活の中で、相手の気持ちが分かればなあと思うことはままあれど、人の心が読めるのは幸せなのかね、不幸せなのかね。

  • 人の心が読めたなら、便利だろうなぁと思うのは普通の人だからか。始めてこの話を読んだとき、「幸せにはなれないんだなぁ」と思って七瀬がいじらしかった。まぁきっとここがヒロインとしての『落とし所』であり当時の私はまんまと『落ちた』事に大人になってから判った。

  • 中学生のとき初めて読んだ文庫の小説だったことを思い出した。
    小説を気持ち悪いと思い、それ以来小説を読まないきっかけを与えてくれた。
    今思えば刺激が強すぎる面白さだったため、
    本能的に何かの危険を察知して敬遠したのかもしれない。

  • 10代後半から30を迎える手前までの10年余の間に読んだ文庫本を、少しずつ読み返すことに。スタートは筒井康隆。当時読んだきり、はなれてしまっていたので新鮮です。

    ちょうど一年ほどまえ、NHKで「七瀬ふたたび」がドラマ化されたのを観ました。その時に、この「家族八景」から始まる‘七瀬三部作’のことを思い出し、もう一度読みたいなと思っていたのですが、古い本は全て、実家の納屋の中。最近の帰省で掘り起こして少し整理し、段ボール3箱分、現在の住まいに送り返して、再読リレーを開始…

    と、すっかり前置きが長くなりました。本題の「家族八景」。人の考えを丸ごと読む超能力を持つ少女・七瀬が主人公。一所に長く居続けると、自分の特異な力を露呈する危険が大きくなると恐れる彼女は、職場を転々としても不思議に思われないという理由で、家政婦となっている。雇われた家庭内に渦巻く意識下の愛憎が、七瀬の‘第三の目’によってあぶりだされる。

    これはこんなに恐ろしい話だったか?目に見えない人の心を覗くということだけでもかなりスリリング。さらに怖いのは、七瀬が自分を守るために力を駆使したときの結末。ほんの‘いたずら’的な仕掛けで、巻き込まれる人々の人生を大きく変貌させてしまう…怖い怖いと思いながら、もっと覗き見したいという好奇心で読み進め、8つの家庭を巡る禁断の旅を終えました。

    自分の特殊な力を確実に強めながら、力を隠して生き延びるためのしたたかさ、余りにも醜い現実にのみこまれまいとする抗い、常人じゃないことで感じる孤独…いろんな‘意識’との闘いあるいは共存の道を求めていく七瀬。この先彼女はどんな人生を歩むんだろう?気になる。読み終わったときに、心に残る七瀬の存在感は絶大です。

  • 再読。といっても前回は十代だったので、「人間(特に男性)は汚い!汚らわしい!!」と思いました。折り返しも過ぎた今読むと七瀬もなかなかなものだと思います。若いけど経験値がすごいものね、無理もない。

  • 思いの外時代を感じた。数十年前の話とはいえこんなにも考え方が違うとは。当時の世相がわかって面白かった。

  • 人間のことを刺激的に表現するので、爽快でもあり、自分のことを言われているようでこっぱずかしい。

    18〜20歳のくせに精神的に成熟しすぎてて、自分を省みて恥ずかしくなった。テレパシーは使えないけど、もっと大人になろうと思った。

    みんな七瀬のことナナちゃんって呼んでたけど、ナナちゃんって呼びたくなるような外見なんだろうか。自分も欲混じりの声でナナちゃんって呼んで、侮蔑の目でみられるんだろうな。それもまた一興。

  • 太宰治に続き、久々の小説。うすら寒い。でも、次々読みたくなる!

  • 読み始めは慣れない文体にとまどったが、読み進めていくうちに面白い話にのめりこんた。
    「亡母渇仰」が印象深い。葬式なんかは、たいていの人間は悲しんでなどいないのだろうと思える。

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著者プロフィール

筒井 康隆(つつい やすたか)
1934年大阪市生まれ。日本を代表するSF作家の一人と目され、小松左京、星新一と並び「SF御三家」と称されることもある。
1981年『虚人たち』で泉鏡花文学賞、1987年『夢の木坂分岐点』で谷崎潤一郎賞、1989年「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞、1992年『朝のガスパール』で日本SF大賞をそれぞれ受賞。1993年に断筆宣言を行ったことは大きな話題になった。1996年断筆解除後には、2000年『わたしのグランパ』で読売文学賞、2010年に第58回菊池寛賞、2017年毎日芸術賞をそれぞれ受賞。2002年には紫綬褒章も受章している。
代表作のひとつ『時をかける少女』は度々映画化、アニメ化され、多くの読者に愛される。ほか『日本以外全部沈没』、『文学部唯野教授』、『旅のラゴス』、『残像に口紅を』などは機会あるごとに話題となり、読み返されてきた。

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