家族八景 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101171012

感想・レビュー・書評

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  •  煩悩は108まであるともいうが、小市民たる我々は心の内でとても人には言えないようなことを考えながら生きている。もし、そんな心の中を覗かれてしまうとしたら、それは恐ろしいことだ。
     そのことが「恐ろしい」としっているから、恐れられた末に待つのがどういった境遇か知っているから、「その能力」を持つ火田七瀬は家政婦として各家庭を転々と移り住むことで、能力の発覚を避けている。
     彼女が行く先々では大なり小なりの事件が起こったり、起こらなかったりする。しかし、奇妙なことに人々の内心の動きをより恐ろしく感じるのは表面上、何も起こっていない家庭の方なのだ。各自の思惑や欲望、プライド、嘲笑様々なものが家庭という鍋の中で煮詰められていきながら、それでいて外面的には「何も」起こらず、混沌は鍋の中密度を増していく……その様が恐ろしい。
     個別の作品について述べるなら、『紅蓮菩薩』の情景は心に迫るものがあったし、七瀬の人間的な一面が見られる『青春讃歌』も印象に残っている。夫婦の機微を描いた『芝生は緑』は独特のおかしみがあり、能力者として力をふるう七瀬が見られる『水蜜桃』とその能力故に彼女が彼女自身に追い込まれる『亡母渇仰』がこの作品集を上手く締めていると思う。

  • はじめてこの本に出会ったときの衝撃は忘れられません。今年再びじっくり読んでみて,その当時と同じ素晴らしさを感じました。おかげで,30年ぶりの「My 筒井康隆ブーム」再来です(笑)

  • 人の心を読める能力の本ってのは結構ありそうだけど、生々しさがあって面白かった。

    ただ毎回毎回セックスセックスで、リアリティを強調し過ぎというか、、、
    美人で若い女の子が自分のお手伝いさんに来たらそうなるのは必然なんだろうけど、もうちょい何かやりよう無いのかなあと思った

    紅蓮菩薩の回で、七瀬のファイルカードがちぎれてるのに怪しまないのは不自然な気がした。

  • 主人公の特殊能力である読心術で、女中として様々な家族と関わり合う。表面上には出ない人間の心理模様が描かれていて興味深かった。

  • 久々筒井康隆
    この読みやすさはやっぱ天才では

  • 心を読む能力を持った少女がお手伝いさんとして働きながら色々な家を転々とする話。

    殆どの登場人物の性格が歪んでて面白い、家族は大抵憎み合ってるし、夫婦は不倫していて、出てくる男はすぐに主人公を犯す事を考える。

    主人公も結構いい性格してるから話が暗くならない所がいい。

  • テレパシーが使える家政婦の話。

  • いい。

  • 本当に面白かった。
    七瀬三部作を友人に勧められ、その一作目であるこの本を手に取りました。
    想像の何倍も面白かったです。
    八つの家族それぞれが持つ不安定さと人間味に、ぐいぐい引き込まれて行く感覚でした。
    また、八つの家族だけでなく七瀬自身も不安定な存在であり、この後どのように話が展開して行くのか楽しみです。

  • 家族の内面は一番知りたくないものかもしれない

  •  二回目。
     タイトルからは想像つかない。いい意味で裏切られた。
     昭和な時代の話ではあるが、なぜ憎み合いながら家族を維持しなければいけないのだろう。程度の差かな。

  • どんどん七瀬の神経が太くなっていく

  • 面白かった!

  • 筒井康隆3本目

  • 七瀬ふたたびよりも、クールなSFという感じ。互いの心が分かってしまったら、大抵の家族はきっと破綻する。我が家も然り。

  • 主人公、好き。

  • 大好き

  • 2018#48

  • やっぱり七瀬シリーズではこれが一番だよね

  • ヒロインが来なければ……、と云うような話ばかりだった覚えが。

  • なかなかにスリルもあるし楽しめた。テレパシーがあるといいなって思うけど、実際にあったら、なかなかにつらいもんなんだな。人が悪いことばかり考えているのでがっかりした。

  • 筒井康隆初体験。選択が良かったのか悪かったのか…

    登場人物の多くの内声にセックス・ドライブが表現されているのに何となく違和感。

    お手伝い七瀬がシリーズ化されている様だが、正直言って理解不能…



  • 『「もっと、おつゆを召し上がる」(殺してやりたいわ)
    「うん。貰おう」(なんだ。その声色は)
    「ナナちゃん。おつゆ、もう一度温めてきてね」(殺してやろうかしら)(破綻)』

    『やはり自分にはこの相手しかいないのだということをなんとかして自分に納得させようとする倦怠期の中年夫婦の、一夫一妻制という社会道徳への無意識的な心的規制と都合のいいすり替え、そして何よりも繁栄と平穏と余暇と満ち足りた栄養の中で育まれた中年男女の、そのはげしい情欲のはけぐちを求めようとする心理に彼女は負けたのだった。』

    『ことばでの争いが、互いを果てしなく低次元へひきずり落としあい、底知れぬ憎悪の坩堝で責め苛みあうことになるのを、天洲は何度かの経験でよく知っているにちがいなかった。』

  • 所持/お手伝いさんとして様々な家庭を渡り歩く、エスパーの七瀬。読み進めるにつれて七瀬自身の感情の振り幅が大きくなってきて、面白さがぎゅーんと増していくかんじがした。〝はやく続きが読みたい〟と感じた本。
    人の心は見えないようにできているのは、そのほうが幸せだからかなと思ったりして。

  • 2018.2.16

  • 2018年1月5日読了。
    2018年12冊目。

  • テレパスの能力を持つ七瀬は自らの力を隠しながら住み込みの家政婦として様々な家庭で働くものの、期せずしてその家庭の偽りや歪みを浮かび上がらせてしまう…という短編集。

    お互いを憎み、軽蔑し合いながら偽りの平和な家庭を演じる家族「無風地帯」
    不潔さを暴かれた家族の暴走「澱の呪縛」
    年齢を気にせず人生を謳歌しようとする妻とそれを苦々しく思う夫を襲う悲劇「青春謳歌」
    エロ親父に七瀬が襲われる「水蜜桃」
    研究に没頭したい夫と嫉妬心の強い妻による「紅蓮菩薩」
    お互いに隣の家族の配偶者が気になっている「芝生は緑」
    家族から厄介者扱いされながらも絵画に没頭する画家に七瀬が好意を抱く「日曜画家」
    強権的だった母親の葬儀がやがて壮絶な結末を迎える「亡母渇仰」
    の八編収録。

  • 変わった小説だった。普通ではない8家族、謎が多くどこか人間味がない変な主人公。この小説を読んで残ったものは性は人生とは切り離せないものなのかなーと。
    ドロドロしていてあまり好きないが続きがあるので読んでみようとは思う。

  • やっぱり筒井康隆は面白いし、凄い。
    これが40年以上も前の作品だなんて。文体にも感心しちゃうけど、何より人間の醜さをこんなに分かりやすく描ききれれるなんて。

  • 読心術の能力をもった女子の話。確かに目の前に立ってるひとが自分を見てどう思ってるか吹き出しのように見えたら気持ち悪いわな。

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著者プロフィール

小説家

「2017年 『現代作家アーカイヴ2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

筒井康隆の作品

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