エディプスの恋人 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101171135

感想・レビュー・書評

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  • ある日、少年の頭上でボールが割れた。音もなく、粉ごなになってーそれが異常のはじまりだった。強い”意志”の力に守られた少年の周囲に次つぎと不思議が起こる。その謎を解明しようとした美しきテレパス七瀬は、いつしか少年と愛しあっていた。初めての恋に我を忘れた七瀬は、やがて自分も、あの”意志”の力に導かれていることに気づく。全宇宙を支配する母なる”意志”とは何か?
    ー文庫うらすじより


    もの凄い本を読んだのかもしれないと思いました。
    『七瀬三部作』第三作。
    私と同じ昔の田舎の高校生だった親友のAちゃんが「読書は苦手だけど七瀬のシリーズだけは好きなの」と言っていた七瀬三部作。
    前にも書きましたが、こんな前衛的な本をあのAちゃんが高校生の時に読んでいたなんて、信じられません!!
    来月Aちゃんの誕生日なので久しぶりにLINEしてみます。
    SFは、ほとんど読んでこなかったジャンルなのですが、このくらいは普通なのでしょうか。

    人の心が読めるテレパスの七瀬。第一作の『家族八景』では人の心は著者の筒井康隆さんがこれでもかと書かれる程、腹黒いものなのかと思いましたが、今回は大いにあり得ることかもしれないと思い直しました。
    さすがに『家族八景』のような家族はあまりないのではと思いますが。
    これは、孟母のお話です。
    設定が斬新で(昭和56年初版になっていますが)とても面白かったです。

    • おびのりさん
      まことさん 
      はじめまして おびのりです。
      フォローありがとうございました。
      七瀬シリーズを読んでいて、まだ読んでもらえているんだと嬉しかっ...
      まことさん 
      はじめまして おびのりです。
      フォローありがとうございました。
      七瀬シリーズを読んでいて、まだ読んでもらえているんだと嬉しかったです。
      七瀬再びは昭和のNHKで子供用ドラマ化されて、当時感激してみました。その後当然、筒井康隆にはまっていきました。
      私も 再読したくなりました。
      だいぶ変色していますが、まだ三冊とも手元にあります。
      2022/05/02
    • まことさん
      おびのりさん。初めまして♪

      こちらこそフォローとコメントまで、ありがとうございます。
      七瀬三部作は、ちょうどブクログさんのお薦め本に...
      おびのりさん。初めまして♪

      こちらこそフォローとコメントまで、ありがとうございます。
      七瀬三部作は、ちょうどブクログさんのお薦め本になっていて、
      レビューにも書いたように、高校の同級生が好きだったと言っていたのを思い出して読みました。
      その後、同級生のAちゃんに連絡を取ってみたら、七瀬のシリーズは
      やはりAちゃんも、「NHKの少年ドラマシリーズで知った」と言っていました。
      昭和の作品ですが、全然、色あせない、前衛的な作品だと思いました。
      他の筒井作品も読んでみたいような、ちょっとこわいような気がします。
      2022/05/02
  • テレパスである火田七瀬は、私立高校の事務員として、突然存在する。彼女自身、現在の自分に疑問を持たない。彼女は、ひとりの男子高校生に興味を持つ。彼の周囲では、たびたび不思議な現象が起こる。そして、理由もわからぬまま、少年に惹かれていく。
    彼の父親と会い、彼を巡る強い意思の存在を知ることになる。それは、かつて少年の母親だった女性の意思だった。母親は、選ばれし大宇宙の支配者となりその意思は宇宙に偏在しているのだった。
    少年の母親の意思は、七瀬の肉体を一時的に支配して、息子と肉体関係を持つ。その刹那に、七瀬は宇宙意思の感覚を経験する。そして、七瀬によるその世界観の表現となる。
    壮大なファンタジーに行きつき、好みが分かれそう。人は、何者かの支配下にあり、支配者は時間と空間を操る。大きな意思に反して、息子への愛には固執する。ギリシア神話のエディプス、実の母親と知らないとはいえ結婚してしまう悲劇を、息子に背負わせる。七瀬は、息子に与える為、その生も愛さえも操られる。
    家族八景の火田七瀬が、この最終作の世界観でラストを迎えるとは。

  • 七瀬三部作の最終章。
    前作では、超能力者の仲間たちが抹殺され、七瀬自身もかなり危険な状況で終わってしまった。
    この本では、七瀬はある名門高校の教務課職員として働いており、前作からどのように生き延びたのか、暗躍する組織もまったく触れずに物語は進んでいくので、七瀬が主人公であるものの、スピンオフ的な作品なのかと思いながら読んでいきました。
    (最後の方でその謎は解かれるのですが)

    不思議な力で護られている高校生の香川智広。そして七瀬は自分の意思か何かの意思の力で智広と相思相愛の恋愛に堕ちていきます。(今まで男性を避けてきた七瀬がそうなることに少し嫉妬した)

    さてさて、内容は詳しく書けないのと自分の表現力が弱いので終わりにしますが、香川智広の父の頼央が失踪した妻の珠子や智広との幸せな過去を顧みて話すシーンは何10ページもかけて書かれており凄い。そこからラストまで一気に読んでしまう迫力がありました。特に頼央と形を変えた珠子との性的シーンは麻薬的でとてもエロティックなもので、こういう感覚のまま死んだら人はなんて幸せなのかと本気で思ってしまった。(エロい自分だけかもしれないけど)
    そして、手塚治虫の火の鳥に通じるような、壮大な宇宙的な発想、結末に感動しました。よかった。


  • 『家族八景』『七瀬ふたたび』に続く、俗に言う七瀬シリーズの完結編。
    異能SFの雰囲気は影を潜める、というよりかは作者の中で“異能”というものをより深く推し進めたであろう本作は、形而上的な色合いを帯びる。
    生物の上位存在の様なもの..宇宙意思..定まった呼び方の無いこういったものに対し、本作はかなり突っ込んだ、かつ文字化に成功している作品かもしれない。七瀬シリーズの幕引きに寂しさもありつつ、個人的には支持したい締め方。

  • 三部作の最後を飾る作品。
    にもかかわらず、冒頭を読んで思った感想は、「あれ?」というものでした。
    前作とは全く違う性質の超能力者。物を動かしたり、未来を予測したりと、1点に秀でた才能の人物が出てくることはありましたが、今作の"彼"は異質です。

    今作は、全く繋がりのないように思えましたが、なるほど読み終えてみるとそういうことだったのか、と納得しました。

    別作品ですが、三部作でテーマが広がっていく物語で思いついたのは、「リング」「らせん」「ループ」がなんとなく自分の中で近いのかなと。もちろんストーリーは全く違いますが。

    果たして私たちに意思は存在するのでしょうか。
    今のあなたの瞬間的な考えも、誰かに持たされたものかも知れません。明日には消えてしまうかもしれない、誰かに。

  • 「今年の謎は、今年のうちに…」ということで、読みきりました七瀬3部作!イエィ。
    3部作通しての☆は3つをつけさせていただきます。

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    私立名門高の教務課事務員として働く火田七瀬は、テレパスをもつ超能力者だった。
    その高校の生徒・香川智広は、幼い頃からなに者かの「意志」により守られている存在だった。
    「意志」の存在に脅威を覚えた七瀬は、智広の周囲を調べ始めるが、やがて自分のなかに突如芽生えた、智広への奇妙な「恋心」に気づき…

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    2作目「七瀬ふたたび」のラストで、大変なことになってしまった七瀬だったけど、3作目の本作ではさらっと登場してきてびっくりしました。
    2作目とまったく違うパラレルワールドの話??と思うくらいの話運びでしたが、ラストではやはりつながっている世界であり、2作目でラストの背景も説明されます。

    「エディプスの恋人」というタイトルから、エディプスを調べた方でカンの良い方は、「意志」の存在の正体にも薄々気づかれるのではないでしょうか。
    智広にまとわりつく「意志」は、最初は得体のしれない不気味な存在感ですが、その正体があきらかになったあとの「意志」の行動は、なかなか生理的にきつかつたです。

    テレパスである七瀬が、自分の能力が露見するのを恐れているが故、智広のまわりに起きている「怪異」とその原因について調べ始める、という理由はわかります。
    ただ本作は、前作・前前作に比べて七瀬が「テレパス」であるという面が、後半に行けば行くほど薄くなってしまっていたようにおもいます。
    また、理性的な七瀬であっても、少しずつ「意志」の力に取り込まれていく姿は読んでいてもどかしく、「意志」なんかに負けないで!!!と強くおもいました。

    この作品は1977年出版とのことですが、この頃からこんなにも先進的な表現手法をされていたの?!と読んでいてとても驚きました。 (29ページ、124ページ、249ページあたり)
    先進的手法については、2作目までを超えていました。

    3部作完結としては、すっきりする部分ともやもやする部分(主に生理的に)もあったので、☆3つとさせていただきました。
    「今年の謎は、今年のうちに」を達成できた(3作を2022年中に読み切れた)点は、とても達成感がありました。

    というわけで(?)皆様、どうぞよいお年を!
    また2023年でお会いしましょう!
    (2022年12月末日)



  • 2作目の「七瀬ふたたび」を飛ばしての作品だったけど楽しく読めました。生まれて初めて恋心を抱いた相手が高校生。超常現象の行方を追った結果それが全知全能による亡き母親によってであって
    それに従い認めざる負えない中、自己の存在自体にも悩む。しかし、最終的にはこのタイトルを超えて七瀬が幸せな方向へと向かったので良かったかな。

  • 七瀬さんに幸せになってもらおうと、作者である筒井さんは、本書に登場する「意志」の如く振る舞ったのだと感じました。
    人間の心理描写に秀でた作品とのコメントがあったのがきっかけで『家族八景』を読み始めた物語でした。七瀬さんの話は、いつもまでも続いてほしいという思いもありますが、ここで終了のようです。まだ続きも描けそうですが、筒井さんはどうお考えなのでしょう?
    しばらく、筒井康隆さん作品を読み漁るというマイブームは続きそうです。

  • 「七瀬ふたたび」の余韻がなくなりそうだったので早めに購入。七瀬のパーソナリティーは好きですが、物凄いマザコン小説のようで、後味が非常に悪く、全く共有できなかった。テレパス能力をもつ七瀬、孤独な日々を過ごしていたが、超能力をもつ少年と恋をする。しかし、その少年には能力は全くなく、失踪した母親が、少年を守るために能力を操っていた。母親の少年に対する愛情は親子愛を越え、さらに、宇宙をも支配する存在。ここまで来ると私の理解を超え、脳の神経回路がショートし、そのまま「了」。最後は懲りすぎ?私の理解力の問題?

  • 既読本

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著者プロフィール

小説家

「2017年 『現代作家アーカイヴ2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

筒井康隆の作品

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