旅のラゴス (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101171319

感想・レビュー・書評

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  • 高度な文明を失った代わりに、人々が特殊な能力を獲得した世界。
    この世界を旅するラゴスという名の男が本書の主人公です。
    ある時は奴隷として鉱山で働き、またある時はその知恵を称えられて王と呼ばれ。
    旅先で出会う人々や出来事を綴った短編が積み重ねられ、だんだんとラゴスの目的やこの世界の背景が見えてきます。

    ラゴスとの交流がもたらした刺激や知識により、人々の考え方や技術が向上していく様子を読みながら、どこかで不安を感じている自分がいました。
    今は電気もない世界ですが、やがて産業が発達し、科学技術が世の中を変えていくだろう。
    政治や社会の在り方もより洗練されていくだろう。
    しかし、その先に待つのは、再びの滅亡なのではないか。
    そんな予感にうっすらとした寒さを感じた読後でした。

    初めて読んだ筒井康隆作品にあまり馴染めず、それ以降読んでこなかったのですが、本書はとても好みでした。
    あとがきによると、筒井作品の中では異色作のようですが、これを機にほかの筒井作品にもチャレンジしてみたいと思います。

  • 「人生は旅だ」とはよく聞くたとえだが、この本はラゴスという一生を旅に費やした男の物語だ。

    220ページにも満たない物語だが、娯楽小説にありがちな野暮で無駄な表現の一切を省き、凝縮された男の人生が詰められている。

    理知的な男の一人称で進むこの物語は、文章が少し硬く読み進め難いと感じる人もいるかもしれないが、未開拓の架空の星で知識を得て行くラゴスとともに旅を続けると、今暮らすこの社会がどのような過程で出来上がっていったのかが朧げに分かる。

    変わった設定のSFでもあり、一生を賭したボーイミーツガールものでもある。ラストの終わり方には胸を締め付けられるだろう。

  • むむむむむ
    初の筒井康隆さん
    一生の間にこんなたくさんの経験ができるものなのか。小さくまとまってんじゃねーよっていういつかの先生の言葉を思い出した。
    国王になって、結婚もして、15年間を過ごして、
    それでもそこも旅の途中。帰りたいと思う場所があって、でも帰ってからも居心地の良さは得られても心の満足は得られてず。
    最後まで進み続けなければ、本当の満足を知ることはできないってことか。夢追って叶えても、それで終わりじゃない。家庭を築いて、子ども育て、しわしわになっても、それで終わりじゃない。認知症の人が家にいるのに帰りたいっていう気持ちが分かった気がした。いつかもっと良くなる、幸せで心地好かった頃に戻れるなんて幻想。あるのは今だけ。

  • いろいろなことが起きるが、一人称なのにすべて淡々と語られ、心理描写がごく少ないのがまず新鮮。聞いたことのない生き物もたくさん登場するけれど、それがどんなものかも説明されないし、世界観も背景もすぐには判らないが、そういうことのタネ明かしもない。物語として収束もしない。かなり突き放された感じなのに、なぜか主人公に一種共感しながら読める。すごい筆力と思う。

  • 普段SFはほとんど読まないが、冒頭の転移からハマった。先が気になりスラスラ読むことができた。
    ラゴスがやたらなんでもできて、冷静で、モテていてカッコイイ✨
    最後まで旅を求め、最愛の人に向かうのがステキ。

  • 北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か?異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。
    「BOOKデータベース」より

    時間が経つのは早いね、てこと.あれから○年経った、とか簡単に書きすぎだよー
    まぁ、まさしく人生は旅、という内容.
    もう少し感想らしきものを書きたいけど、なんというか、かすかな違和感を覚える.
    形になったら追記する.

    追記:
    やっぱりあれから○年経った、と今の時代に沿っているような沿っていないような内容がイマイチだったのだろうな.
    小説って細かな描写とか(細かな描写が書かれていないとは言わないけど)心境の変化とかが書かれていることを期待して読んでいるけど、それが期待したほどではないのかなと思う.
    情報量が多い現代にあってクローズアップされる人々の経歴は○年××、○年△△・・・とすっとばしてすばらしさが語られるけど、そこに至るまでにはいろいろあるわけで、小説に求めるのはそこにあるいろいろなわけで.それをニュース的にすっとばして語られていることに違和感を覚えたのかも.それを「旅」というのであれば、成功してるよ.でも、私はそれを旅と思えない、というところにギャップがあるんだな.
    まぁでも、これはコレだな.流れる感は感じるし、理解できない心境というのがあるんだな、ということが分かったという点で読んでよかった、と言えるのかもしれない.
    自分が小説に期待しているものが期せずして、再確認された.

  • 初筒井康隆

    旅人ラゴスが高度文明崩壊後の世界を南へ北へ向かう行きて帰りし物語。文明崩壊後に人類が突如として手に入れた特殊能力(転送、壁抜け、予知夢など)やスカシウマ、ムラサキコウ、ミドリウシなどの架空生物が当たり前のように存在する独特な世界観だが、先祖=高度文明(=現代の地球?)の知恵を手に入れたラゴスの「段階を踏まぬ飛躍は社会に有害であり、秩序が崩壊する」などの懸念は現実世界にも通じるものがある。

    約250ページの中に半世紀くらいの物語が詰まっているため、別れや死も含めて、一章一章が淡々と語られるイメージ。
    そんな中でも作品を通じてラゴスが忘れることができなかったムルダム一族の女性デーデという女性の存在に導かれて最後の旅に赴く。

    当初の目的に向かう途中で直面する出会い、知恵、好奇心が新たな目的を作り出し、その無限のサイクルで人生というものは成り立っているのだということを思わせられる。

  • 一生をかけて旅する主人公の物語。

    運命の人と出会え、最後までその人を追い求めることができた主人公は、幸せだったと思う。

  • 時間の経ちかたが淡々としていて容赦がない。だからか、SFなのにリアリティを感じた。
    主人公の感情も淡白そうだけど、そこに興味をそそられる。

    筒井さんの本は初めて読んだけど、他の作品も読んでみたい。

  • いきなり読み始めると、転移?とためらってしまうので、そこはやはり氏、これもSFものとして心得てから読み始めるのがおすすめ。
    でもそこまでSF色が強いわけではないので、ヒットしたのもファンタジー的な感じで受け入れられているのではないだろうか。

    主人公ラゴスがいろんな場所に旅をしていくので、その一つ一つの場所が短編集のよう。
    場所によってすっと読めるところもあればなぜかなかなか進まないところもあったり。
    顔、壁抜け芸人、たまご道はあまり後の話に関係してないっぽいし、不思議なとこばっかりで少し読むのがしんどく、銀鉱は他のより長いが、まあこの話の内容はまあまあ重要なので仕方なく、でもここを過ぎるとあとはもうあっという間。

    読む前はただ単に旅をし続ける話がなぜ話題をよんでいるのだろうと思ったけど、読んだあとでも「どこがよかった?」と聞かれてもうまく答えられない。
    一つ思うのは、ラゴスが旅を続ける理由が無理やりではなく、そうせざるを得ないということが無理なく伝わってくることと、ラゴスの実直さにあるのかもしれない。

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著者プロフィール

筒井 康隆(つつい やすたか)
1934年大阪市生まれ。日本を代表するSF作家の一人と目され、小松左京、星新一と並び「SF御三家」と称されることもある。
1981年『虚人たち』で泉鏡花文学賞、1987年『夢の木坂分岐点』で谷崎潤一郎賞、1989年「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞、1992年『朝のガスパール』で日本SF大賞をそれぞれ受賞。1993年に断筆宣言を行ったことは大きな話題になった。1996年断筆解除後には、2000年『わたしのグランパ』で読売文学賞、2010年に第58回菊池寛賞、2017年毎日芸術賞をそれぞれ受賞。2002年には紫綬褒章も受章している。
代表作のひとつ『時をかける少女』は度々映画化、アニメ化され、多くの読者に愛される。ほか『日本以外全部沈没』、『文学部唯野教授』、『旅のラゴス』、『残像に口紅を』などは機会あるごとに話題となり、読み返されてきた。

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