旅のラゴス (新潮文庫)

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  • 新潮社
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本棚登録 : 7812
レビュー : 928
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101171319

感想・レビュー・書評

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  • 高度な文明を失った代わりに、人々が特殊な能力を獲得した世界。
    この世界を旅するラゴスという名の男が本書の主人公です。
    ある時は奴隷として鉱山で働き、またある時はその知恵を称えられて王と呼ばれ。
    旅先で出会う人々や出来事を綴った短編が積み重ねられ、だんだんとラゴスの目的やこの世界の背景が見えてきます。

    ラゴスとの交流がもたらした刺激や知識により、人々の考え方や技術が向上していく様子を読みながら、どこかで不安を感じている自分がいました。
    今は電気もない世界ですが、やがて産業が発達し、科学技術が世の中を変えていくだろう。
    政治や社会の在り方もより洗練されていくだろう。
    しかし、その先に待つのは、再びの滅亡なのではないか。
    そんな予感にうっすらとした寒さを感じた読後でした。

    初めて読んだ筒井康隆作品にあまり馴染めず、それ以降読んでこなかったのですが、本書はとても好みでした。
    あとがきによると、筒井作品の中では異色作のようですが、これを機にほかの筒井作品にもチャレンジしてみたいと思います。

  • 「人生は旅だ」とはよく聞くたとえだが、この本はラゴスという一生を旅に費やした男の物語だ。

    220ページにも満たない物語だが、娯楽小説にありがちな野暮で無駄な表現の一切を省き、凝縮された男の人生が詰められている。

    理知的な男の一人称で進むこの物語は、文章が少し硬く読み進め難いと感じる人もいるかもしれないが、未開拓の架空の星で知識を得て行くラゴスとともに旅を続けると、今暮らすこの社会がどのような過程で出来上がっていったのかが朧げに分かる。

    変わった設定のSFでもあり、一生を賭したボーイミーツガールものでもある。ラストの終わり方には胸を締め付けられるだろう。

  • いろいろなことが起きるが、一人称なのにすべて淡々と語られ、心理描写がごく少ないのがまず新鮮。聞いたことのない生き物もたくさん登場するけれど、それがどんなものかも説明されないし、世界観も背景もすぐには判らないが、そういうことのタネ明かしもない。物語として収束もしない。かなり突き放された感じなのに、なぜか主人公に一種共感しながら読める。すごい筆力と思う。

  • 普段SFはほとんど読まないが、冒頭の転移からハマった。先が気になりスラスラ読むことができた。
    ラゴスがやたらなんでもできて、冷静で、モテていてカッコイイ✨
    最後まで旅を求め、最愛の人に向かうのがステキ。

  • 初筒井康隆

    旅人ラゴスが高度文明崩壊後の世界を南へ北へ向かう行きて帰りし物語。文明崩壊後に人類が突如として手に入れた特殊能力(転送、壁抜け、予知夢など)やスカシウマ、ムラサキコウ、ミドリウシなどの架空生物が当たり前のように存在する独特な世界観だが、先祖=高度文明(=現代の地球?)の知恵を手に入れたラゴスの「段階を踏まぬ飛躍は社会に有害であり、秩序が崩壊する」などの懸念は現実世界にも通じるものがある。

    約250ページの中に半世紀くらいの物語が詰まっているため、別れや死も含めて、一章一章が淡々と語られるイメージ。
    そんな中でも作品を通じてラゴスが忘れることができなかったムルダム一族の女性デーデという女性の存在に導かれて最後の旅に赴く。

    当初の目的に向かう途中で直面する出会い、知恵、好奇心が新たな目的を作り出し、その無限のサイクルで人生というものは成り立っているのだということを思わせられる。

  • 時間の経ちかたが淡々としていて容赦がない。だからか、SFなのにリアリティを感じた。
    主人公の感情も淡白そうだけど、そこに興味をそそられる。

    筒井さんの本は初めて読んだけど、他の作品も読んでみたい。

  • いきなり読み始めると、転移?とためらってしまうので、そこはやはり氏、これもSFものとして心得てから読み始めるのがおすすめ。
    でもそこまでSF色が強いわけではないので、ヒットしたのもファンタジー的な感じで受け入れられているのではないだろうか。

    主人公ラゴスがいろんな場所に旅をしていくので、その一つ一つの場所が短編集のよう。
    場所によってすっと読めるところもあればなぜかなかなか進まないところもあったり。
    顔、壁抜け芸人、たまご道はあまり後の話に関係してないっぽいし、不思議なとこばっかりで少し読むのがしんどく、銀鉱は他のより長いが、まあこの話の内容はまあまあ重要なので仕方なく、でもここを過ぎるとあとはもうあっという間。

    読む前はただ単に旅をし続ける話がなぜ話題をよんでいるのだろうと思ったけど、読んだあとでも「どこがよかった?」と聞かれてもうまく答えられない。
    一つ思うのは、ラゴスが旅を続ける理由が無理やりではなく、そうせざるを得ないということが無理なく伝わってくることと、ラゴスの実直さにあるのかもしれない。

  • 長い旅をしてきたような感覚になった。うらやましい!
    自分もこんな旅がしてみたい!と思う。
    羨望の目を集めながら、己の目的のため行動する。
    その際の別れは厭わない。惜しむが厭わない。
    その姿勢に憧れるし見習い到達せねばならぬと思う。
    もっと勉強していろんなことを知ろう!と思った。

    最後、デーデに出会えていてほしいと強く願った。

  • 不思議な本。正直なところ、ものすごく面白いわけではない。が、最後までよめば何かわかるだろうと、好奇心で最後まで読了。SFのような、文明批評のような、一人の男の旅のものがたりだった。

    難解な小説かと思いきや、とてもすらすら読みやすいのは、さすがの筒井先生。でも他の小説とはちがって、衝撃や驚きは少なかった。わりとたんたんとしている。

    心に不思議な余韻が残った。ラゴスとともに長い旅を楽しんだ。この本は、一体なんだったんだろう?

  • 旅人を主人公とした物語。
    世界が滅亡した数千年後の話ではあるが、数百年前のようなムードの世界観で、プラスアルファで超能力やSFチックなエピソードがあるという、一風変わったストーリー。

    読んでてほのぼのとするというか、ゆったりと話を読み進めることができた。
    出てくる登場人物や特殊能力(顔の変身、壁抜け、集団転移、テレパシー)、ケモノ達(巨大な鳥とヘビ、スカシウマ、赤い蝶)、国や環境も等の物語の構成が非常に凝っていて、文章も非常に読みやすく、ストーリーそのものが楽しかった。

    ただ、あまりストーリーの進行に強弱がなく、主人公も非常に落ち着いていて拍動がないところが、読んでて少し(非常に少ないが)物足りなく感じたかな。

    かと思いきや、終わり際は「どうなるんだ?」と思ったところで、途中で完結してしまうというストーリー。

    ああ、本当に面白かった!!

著者プロフィール

筒井 康隆(つつい やすたか)
1934年大阪市生まれ。日本を代表するSF作家の一人と目され、小松左京、星新一と並び「SF御三家」と称されることもある。
1981年『虚人たち』で泉鏡花文学賞、1987年『夢の木坂分岐点』で谷崎潤一郎賞、1989年「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞、1992年『朝のガスパール』で日本SF大賞をそれぞれ受賞。1993年に断筆宣言を行ったことは大きな話題になった。1996年断筆解除後には、2000年『わたしのグランパ』で読売文学賞、2010年に第58回菊池寛賞、2017年毎日芸術賞をそれぞれ受賞。2002年には紫綬褒章も受章している。
代表作のひとつ『時をかける少女』は度々映画化、アニメ化され、多くの読者に愛される。ほか『日本以外全部沈没』、『文学部唯野教授』、『旅のラゴス』、『残像に口紅を』などは機会あるごとに話題となり、読み返されてきた。

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