- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101171319
感想・レビュー・書評
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fall outが流行っているが、それと同様に文明が発達しきった後の世界を緻密に描くSF作品は内省させられて面白い。
序盤、壁抜けなどの短編が奇妙でファニーで示唆的で好きだったし、中盤のヘビーな内容になってからのコントラストもワクワクした。筒井康隆さんの端的な小説の書き方は読みやすいな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
知りすぎてしまった人間と、発展しすぎてしまった社会が向かうのは「死」である。
旅を続けるのは、なんのため? -
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筒井康隆 旅のラゴス 読了
生粋のストーリーテラーだなぁと思う。
固有名詞や動詞の選択なんて関係ない。文体の瑞々しさとか煌めきも必要ない。ストーリーと世界観で真っ向勝負なの。
勝手な筒井康隆のイメージ。
頭の中には、タテヨコにきっちり整理された膨大で上品な知識が詰まっている。隙間にはユーモアも。多分とんでもない性癖の持ち主なはずなのに作品には反映しない奥ゆかしさも併せ持ってる。で、本人はあまり女性にモテない。
妄想プロファイルね。
このラゴス、勝手にベルセルクの絵で脳内再生された。碌に知らないけどね。
BGMにピンクフロイドとかキングクリムゾンもかけたけど、最終的にはハービーハンコックがあってるかな。 -
主人公のラゴスが世界を回る旅をする物語。
あるときは奴隷に、またあるときは王様に、そして教師に、、、
旅の進行とともに移り変わるラゴスの立場や心情が面白かった。 -
とにかく不思議。完全な異世界という感じではなく、リアルな世界とリンクするところが多いからなのか、不思議な力を持つ人が現れると、なんだこれは?と奇妙さを感じる。なんだかすっきりしないものの、つい読み進めてしまった。
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【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/686483
突然高度な文明を失った代償として、人々が超能力を獲得しだした世界で旅を続ける男・ラゴス。
集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら旅をするラゴスの目的とは? -
傑作としか言いようがない。
あるときは奴隷に、あるときは王に、あるときは教授として、男は旅をする。魅力的な人間と、出会い、別れ、旅は続く。
主人公ラゴスの完璧とも言える人間性、奇妙で、しかしどこか懐かしい世界と人々。それらが筒井康隆の美しくもポップな文体で綴られる。
初めは独特なリズムの戸惑うかもしれないが、リズムに乗れるようになれば文字が文字以上の速度とリアリティで脳内に直接流れ込む。この上なく面白かった。
ラゴスは常に何かを追い求めていた。それは知識であったり、女であったり、死の先の何かであったり、それが何であれラゴスが歩みを止めることはない。それこそが旅であり、だからそこ「旅のラゴス」なのだ。
旅小説は旅を通じた主人公の成長を描くことが多いが、本作にはそれがない。ラゴスは常に達観しており、人間性は初めから完成されている。だからこそ「ラゴスの旅」ではなく「旅のラゴス」になっているのだと思う。(辺に説教臭くたびに意味を見出すものよりも、自分はこちらのほうが好き)
知識や学問がとても面白く描かれる。そうだ。学問は本来嫌悪するものではなく、むしろ嬉々として享受するものなのだ。全ての基本は歴史にあるとする考え方も面白かった。考えてみれば、あらゆる学問は歴史の上にあるものなのだから、基本であるに決まっている。
ラゴスのように学びたくなった。
行く先々で信頼され、尊敬され、敬愛され、そして愛されるラゴスの完璧さに、疑いを持つ事が無かったと言えば嘘になるが、読み進めるうちに、私もラゴスに惚れてしまったので文句をつけることなど出来ない。 -
2階書架 : 913.6/TSU : https://opac.lib.kagawa-u.ac.jp/opac/search?barcode=3410166977
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色々な国をラゴスと一緒に見られ、かつ未来の読書体験も出来たようで面白かった。不思議な世界が広がっている。ただラゴスがあまり物事に執着せず流れていく様が何故か淋しく感じてしまった。
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今まであまり読んだことがないジャンルを読んでみようと思い手に取りました。
SFは難しそうな印象があったので、「SF おすすめ 日本」で検索をかけて初心者向けとして紹介されていた本から。
読んでいて1番思ったのは「(良い意味で)思っていたのと違う」です。
解説にもありましたがなんだかロマンティックだったので。
目的に他者が関わってくるものの、主人公は終始旅の人。
最後はそれまでの主人公のイメージとは違う旅の目的だったので少し意外だなと思う反面、歳を重ねるってこういう風に少しずつ変わっていくことなのかなぁとも思いました。
また終わり方はふわっとしていて余白があるものですが、「祈っているよ、ラゴスさん」で締めくくられているのが優しくて私は好きです。
初心者向けなだけあってスラスラと読めました。
きっと「SFっぽさ」が散りばめられているんだろうなぁと思うので、いくつかチャレンジした後にまた読み返してみたいと思います。 -
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タイトルそのままラゴスの旅のSF小説。
世界は文明が衰退しているが、
人や動物の心を見、それと同調できる能力や空間転移なる瞬間移動など超能力が一般的な世界。
前半はいい感じに不便な超能力が生活を左右していてバランスがよく面白かった。
後半にゆくにつれラゴスの目的が明らかになりつつ、科学技術
や政治も混ざりファンタジー感が薄らいでもっと前半のような話が読みたかったと個人的には思う。
ラゴス自体に共感はできなかったり、少し好みに合わない部分もあったがそのラゴス由来の淡々とした語りや文体は好きです。 -
高度な文明を失ったことと引き換えに超能力を得た人々が住む世界。そんな世界を旅する男ラゴス。自らの知識と経験を私利私欲のために使わない姿勢が格好良い。ときに奴隷、またあるときは王、波瀾万丈ながらもラゴスのような生き方に憧れる人、特に男性は多いはず。
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あたかも自分が長い長い旅を、波瀾万丈な人生を歩んだかのような壮大な体験を得られた。同じ場所に留まり続けずに生きている間に旅をして、この広大な地球をもっと感じたい。
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#旅のラゴス #読了
序盤のSF的な香りに引き寄せられ、最後まで味わってみたら、ラゴスの旅する姿勢に魅せられていた。
自分の経験や知識を私利私欲に用いるのでなく、必要な時に必要なだけ発揮していくことは、もしかしたら旅におけるある種の正解なのかもしれない。
#筒井康隆
#新潮文庫 -
2024/01/26-01/30
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旅する価値を知れた気がする。
目的はどんなものであってもいいと思えた。
色んな出会いや別れを経る人生もいいなと思う。
年寄りになってから後悔する前に今のうちから色んな所に行こうと思える本だった。 -
きちんとした感想は多くの方が書いて&考察もされていることと思うので、以下は個人的なメモ。
複数の方のおすすめだった本書。
筒井康隆かあ…と思いつつ手に取る。
時かけ、は中学生で読み、家族八景と七瀬再びは大学生のときに読んだ。
時かけは面白かったけど、七瀬シリーズは暗くてしんどかった気がする。
それ以来の出会いなので、ちょっとドキドキしたが、薄い文庫本で、旅人ラゴスがいろんな国や地域を巡るストーリーなのであまり頭を使わずにスラスラと読めた。
というか、タイトルはラゴスの旅、じゃないんだ?
全体の雰囲気がうまいなあ。
それでも、筒井康隆だと思って読むので、どうも批判的になってしまう。
いい年した男性が、思い出のなかの15歳の少女に対して、けっこうずっと性愛的な感覚を持っていくのが、違和感いっぱいだったけど、、、。
まあ、ひところの男性目線の冒険物語って、こんな要素があるよな。
その部分以外は萩尾望都のマンガにもありそうな、ポエティックかつ残酷な物語で、情緒と余韻にあふれた終わり方もこれはこれでアリ、と思えた。
壁抜け男という題材、いろんなとこで見かける気がする。