ロートレック荘事件 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 3256
レビュー : 413
  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101171333

感想・レビュー・書評

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  • 「だ、騙されたーーー!!!」と読み終わって心の中で絶叫してしまいました。いえ、いい意味で、です。そして、誰かに「いいからとにかく読んでみて!」て、言いたくなりました。

    もうちょっと説明するなら、うまく言えませんが、何というか、綿密に選び抜いた言葉でしか成り立たない、一歩選び間違ったら破綻して三流に陥ってしまうある意味難しい物を、うまくきっちり作りきったなあ、と脱帽する、これぞ、小説でしかできない醍醐味、という作品でした。

    ラストの細かすぎる作者註てんこ盛りによるタネあかしと、ロートレックの作品群もすごく好きです。
    …この散りばめられた作品群は、暗喩的な意味は勿論あるだろうけど、読み手の注意を無意識に核心からそらすための作用も担ってるよなあ…多分。
    読み終わってから気がつくことが多すぎて、また一から読み直して確かめなきゃ、という気になります。

  • 綺麗に騙された!爽快だ。情報をシャットアウトして素直に読んだ甲斐があった。
    読み終わってから他レビューを見ると案外評価が低くて驚くが、全編通してこれだけ伏線を散りばめ、全く矛盾なく作られているのは凄いと思う。しかも書かれたのはずいぶん前だ。

    所々で感じた違和感は、自分なりに補完して飲み込みながら読み進めた。作者の意図そのままの読み方だっただろう。おかげで、最後読み返した時に見えてくる第2のストーリーも心から楽しめた。
    名前の呼び方や見取図など、あからさまなヒントも提示されており、手法は充分にフェア。
    途中で挟まれるロートレックの作品が内容に無関係で残念とのレビューも多いようだが、少なくとも「接吻」はこの本に仕掛けられた罠を暗示している。
    短い小説で、一気に読めるのも良い。本当に面白かった。

  • 完全にミスリードされ続けたままラストを迎えてしまって驚くよりも先に「は???」となってしまった。よくよく落ち着いてどういうことだったか考えるとすさまじい作品……

  • 何を書いてもネタばれになってしまいそうな作品です。フェアかアンフェアかはともかく、本当に驚きました。予備知識なしで読んで欲しい一冊です。

  • 鬼才・筒井康隆さんが推理小説の世界に真剣に真っ向勝負を挑んだ騙しのテクニックが冴え渡る叙述トリック・ミステリの不朽の名作。本書のタイトルのロートレックは実は障害者を象徴する意味のみなのですが、途中に代表的な絵画作品が数多く掲載されていてお得な気分が味わえますね。まずブラックな笑いがお得意な著者には珍しく「侏儒褒章」なんて戯言以外は至って生真面目その物の筆致に驚きましたね。冒頭から幽かに違和感を覚えながら著者が読者を誤認させ誘導する手管に完全にしてやられましたね。ラストに漂う悲劇的な哀感にも心が痛みました。

    実に巧いなあと思います。これが本当の「知らぬは読者ばかりなり」と言った所でしょうね。まあ相当の混乱状態の中で起きた出来事とは言え、だからこそ隠された事実を知っていながら渡辺警部は3人もの被害者の命を救えなかった事が不甲斐なく情けない無為無策の重大な責任問題だと思えますよね。それから49頁のロートレック荘二階平面図を見直してみて特徴的な表記の違いに嫌でも気づきましたね。本書もまたトリックの性格上から映像化が困難な作品でしょうね。後で振り返るとモヤモヤした最大の違和感は男なら誰もが嫉妬するモテ男の矛盾でした。

    また例によって唐突ですみませんが、さだまさしさんの曲でロートレックが出て来る唯一の歌「たずねびと」の一番の歌詞を引用します。いつもの様にこの店のカウベル鳴らして ドアを開いて狭いカウンターとまり木にすがれば黙っていても出てくるアメリカンそれからほの暗い柱の陰にロートレックのおなじみのポスター常連達の吐息と煙草の海喘ぐ様に泳ぐレコード壁紙の落書きは 昔の青春達書いた人も書かれた人も昔の恋人達色褪せてうずくまる待つ人のないたずねびと ノスタルジックな雰囲気が渋い名曲ですので気になった方は何時か聴いてみて下さいね。

  • 【個人的読書記録】
    騙された…と言うより気付けなかった…

    読み終わって全てが分かった後に、それを踏まえてもう一度読み直したくなる小説。

    謎解きをし始めたページから、該当箇所を見直ながら読んだのは久しぶりだった。

  • ぐいぐい引き込まれて、見事に騙されました。
    なんとなく途中で、もやっとする感覚はあったのですが、最後まで見破れず。
    すごく面白かったです!
    ロートレックの挿絵も素晴らしかった。

  • 久しぶりに、ミステリーに気持ちよく騙された。
    葉桜や向日葵、イニシエーションラブなどもこの類いの
    文章だからこそできるトリック、叙述トリックなのだが、
    これほどだまされて納得のいくものはなかなかない。
    読みにくいなぁ、おれってだれなんだろう、という最初のちょっとした疑問も、読み進めるうちに慣れ、忘れ、
    夕食での会話のさもありなんというところに作者の力量を感じた。
    犯人がわかりかけときに、突きつけられる違和感。
    最後はとても切なく、悲しい話。
    解説にもあったが、文学におけるエチケットという
    逆説的にみれば差別領域に一石を投じた作品としても意義深い。

  • だまされた…あとは悲しい

  • 個人的に傑作。
    2人の話と思いきや3人いたとは。
    存在に気づかれすらしない1人の劣等感が動機に濃く濃く繋がっていく。
    短い物語なので2回目も読みやすい。

著者プロフィール

筒井 康隆(つつい やすたか)
1934年大阪市生まれ。日本を代表するSF作家の一人と目され、小松左京、星新一と並び「SF御三家」と称されることもある。
1981年『虚人たち』で泉鏡花文学賞、1987年『夢の木坂分岐点』で谷崎潤一郎賞、1989年「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞、1992年『朝のガスパール』で日本SF大賞をそれぞれ受賞。1993年に断筆宣言を行ったことは大きな話題になった。1996年断筆解除後には、2000年『わたしのグランパ』で読売文学賞、2010年に第58回菊池寛賞、2017年毎日芸術賞をそれぞれ受賞。2002年には紫綬褒章も受章している。
代表作のひとつ『時をかける少女』は度々映画化、アニメ化され、多くの読者に愛される。ほか『日本以外全部沈没』、『文学部唯野教授』、『旅のラゴス』、『残像に口紅を』などは機会あるごとに話題となり、読み返されてきた。

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