ポルノ惑星のサルモネラ人間―自選グロテスク傑作集 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101171470

作品紹介・あらすじ

地球から学術調査隊が訪れた「ポルノ惑星」で、美人隊員の島崎博士が妊娠した!原因は妖草ゴケハラミ。その処置を年中丸裸の原住民に聞きだしに向ったおれが見た、密林を跋扈する奇怪な動植物の数々。常識に凝り固まった悩みそを爆砕するモンスター・オンパレードの表題作の他、妻が冬眠から目覚めて羽化、産卵して脱皮までする「妻四態」など、異次元グロテスクワールド全開の7編。

感想・レビュー・書評

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  • 御大筒井康隆のグロさが炸裂する短篇集。表題作「ポルノ惑星のサルモネラ人間」は未開の惑星で妊娠してしまった女性隊員の秘密を探るべく、その謎を知る原住民の元まで決死の探検に挑む作品で、卑猥な生物群や下ネタ満載の植物など、とにかくエロとグロのオンパレードである。卑猥な生物に犯されかける隊員というスラップスティックな楽しみもさることながら、下ネタがいやらしくなりすぎないように絶妙な配分になっているのも魅力。他にも冬眠、羽化、産卵、脱皮と次々に変容する妻を男の語りのみで描ききった「妻四態」もなかなかの快作である。説明が一切ないのに、なんとなくそれを受け入れる夫が味わい深く、また口語で語りかけているだけで物語が成立しているのも凄い。まさに筒井康隆の文章力のなせる技である。個人的に一番のお気に入りは「イチゴの日」で、ブスなのを隠してトップアイドルに仕立て上げられた女が、ブスだとカミングアウトされて笑いものにされる前に奇想天外な方法で復讐するというブラックコメディである。悪魔学で悪魔を呼び出して群衆もろともミルクの海に叩き込むという星新一ばりの突飛な復讐も面白いが、それが彼女の好物であるイチゴミルクになぞらえた復讐というのがたまらなく面白い。ミルクの海に溺れ、イチゴスプーンで潰されていく人間たちのイメージ喚起力は非常に高く、グロさとファンタジーのマリアージュが素晴らしい。「下品な舌なめずりの音がぴちゃぴちゃと響きわたる」という〆も良く、小説を読む楽しみを味わわせてくれた一本である。グロさとは執拗な描写だけではなく、イメージにダイレクトに訴えかけるものだということを教えてくれる一冊。特に触覚、聴覚、視覚、嗅覚等の五感への請求力は並外れており、筒井康隆のグロさをあますことなく味わいたいならオススメの一冊。

  • グロテスクという割にはスプラッターは抑え目で、どちらかというと精神的なえげつなさと不条理さを押し出している作品がラインナップされている感じ。ただ、それなりに筒井康隆を読みなれてきてしまったので、だんだんこのノリにも食傷気味になってきた自分がいて、それを何かしら乗り越える作品が欲しいとも思う今日この頃。本作に収録されているものの中では「偽魔王」がなかなかちゃんとしていて、おもしろい。

  • 「偽魔王」に尽きる。「下痢便がぴゅっと飛びベッドに感嘆符を描いた」みたいな描写があまりに秀逸。

  • 「ポルノ惑星のサルモネラ人間」予想以上に最高だった。「すばらしい新世界」の系譜!快楽の追求に舵を取った平和共存の世界。人間どころか他の動植物まで徹底させてて面白いしむしろそこがメインだしで楽しかった。オチがまた文句なしの素晴らしさ。最低なんだけど最高って感じの傑作。「妻四態」一人称がいい。改行なしでドバーっと喋っていきなり数ヶ月単位で時間が飛ぶ。このジャンプ感が爽快で素晴らしい。内容の独特さ以上にこのリズミカルな文章に魅力がある。
    「歩くとき」いきなり文章の途中で明後日なイメージ描写が突然挿入されてまた突然戻る展開が唐突な上、絶妙な内容で思わず噴き出す可笑しさ。本文(?)の歩くときの説明文も専門的過ぎるがゆえに難しすぎて笑えてくる二段構え笑。「座右の駅」ちょう最高!メタ的な話かと思ったら夢の話!視点とサイズが文章の途中で瞬間的に切り替わる文章の巧みさに痺れる。筒井短編はオチもいいんだけどオチに集約してない、設定だけでもない、全体で楽しませるバランスの良さが素晴らしい。
    「イチゴの日」ブスがブスはとルッキズムの極北のようなグロテスクな台詞と展開で最低最悪な気分になっていたら一転、後半デウスエクスマキナ的な感じで前半の不快感がまた形を変えてディテール細かくグロテスクに着地する。凄いところに切り込んでるけど黙るしかないというか否定や批判を許さない視点だなぁと。いじめという単語を使っているだけあり、ここまで徹底されたルッキズムでなくとも万能感ある。 他人を勝手にジャッジし見下して笑う、人間の嫌な部分を不快なまでに拡大して見せ(物語的なオチはあっても)落とさないところが凄い。
    「偽魔王」エログロって本当に苦手だわ。筒井康隆の描写ってタメも煽りもなく淡々と他の文章と全く同じテンションで飄々と書かれているからするすると読めちゃうんだけど気持ち悪いことには変わらない。文章美味すぎて脳内で自動再現されるのもオエー!!! でもこういう終わり方は好物。「カンチョレ族の繁栄」「ポルノ惑星のサルモネラ人間」と同様未開の地を探索し不可思議な動植物に遭遇する探検譚。未知の世界の常識を批判している側がむしろ「自己紹介乙」みたいになる流れも似てるんだけど、展開も後味も全く別物でそれぞれに面白い。

  • 短編集。うむうむ。
    ・・・表題作は読んだ。この手はダメだと思った。
    次読んだ。ダメだ。。。
    次も次も読みはじめた。だめだった。
    体に合わなかったのかもしれない。
    一応表題作は読み切った。★2つ

  • 初筒井康隆。文章が読みやすい上に話がおよそ狂っててすごい楽しかった。『妻四態』はおっさんの声がまざまざと頭の中で再生されました。好き。

  • これはものすごいね…
    何というかこの人にしかかけない、
    という世界観は彼のためにあるのじゃないかしら。

    わざと段落も句読点も消した作品があったり
    着眼点がかなりユニークだったり
    食後に読まないでください的なものがあったり…
    とにかくバリエーション豊富、飽きませんでした。

    でも彼の文は好き嫌いは
    絶対に分かれるのです。
    嫌いな人はクドクドしていて
    ダメというかと思います。

  • 飛ばし読み

  • さすが自選というだけあって、変態でグロい!!淫猥?
    スプラッター要素もつよいのに読めちゃう。おもしろいからなんだなぁ。

  • 書名からも分かる通り、あえて悪趣味なものを集めた短編集。切り口に慣れてきてしまうと単調な気も。でも面白い。前に呼んだ戸梶圭太作品のようなグロい表現も、大分前に試されていたんだな(もっと他にもあるかもね)。で、「このグロい表現は何なんだ?」と作中で問うていたり、用意周到。やたら屁をひり脱糞するので、そこの描写がお約束のようになっていた。

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著者プロフィール

小説家

「2017年 『現代作家アーカイヴ2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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