愛のひだりがわ (新潮文庫)

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  • 新潮社 (2006年7月28日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (352ページ) / ISBN・EAN: 9784101171494

みんなの感想まとめ

成長と希望をテーマにした物語が展開され、主人公の愛ちゃんが父親を探しに旅をする中で出会う多様な人々との交流が描かれています。王道のストーリーながらも、平易な文章表現が情景を鮮やかに思い描かせ、読み手を...

感想・レビュー・書評

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  • ◯児童書としても進められる内容。構成としてはかなり王道のストーリー。
    ◯文章表現は一時代前のように感じるが、情景がスッと頭に描ける平易さや、一人称の語りによる演出とはいえ巧み。
    ◯しかし何故だろう、歳をとったせいか、こういった本で涙腺を刺激されるようになった。

  • 久しぶりの筒井康隆!
    主人公愛ちゃんは父親を探しにひとり旅に出て、息子の嫁に居場所を追われているご老人・詩の才能豊かな主婦・ずっと愛を見守ってくれるサトルや犬のダンとデン・両親を殺した暴走族のリーダーになった歌子・出版社の人々etc.、バラエティ豊かで心根の温かい人々に守られながら影響を受け月日を重ねていく。
    ジュブナイル系と思って侮るなかれ、作者からの説明や心理描写の押し付けが(多分意図的に)少なく、さらさらのスープのごとく進む展開の中で、読み手の想像欲求は否が応にも駆り立てられる。そうしている内にすっかり小説に丸め込まれた様に愛ちゃんやその他愛ちゃんをサポートする登場人物に感情移入していって、自分なりの解釈が楽しくなってくる。
    最後、愛ちゃんのストーリーを通しての成長が喜ばしくもある反面切なくて、胸がつまるのです。

  • 近い未来この小説と同じ社会になるのかなと思い少し怖くなりました。
    環境汚染で汚れた空、警察官の機能が低下し治安が悪くなった町、人殺しや銃の発砲は当たり前。
    そんな無法地帯の中でも父を探し懸命に生きようとする愛。

    「今の私が作ったのが今の社会であるなら、今の私以上の私になって今の社会以上の、もっとよい社会に変えなければ」この愛の気持が印象的でした。

    今の現状に失望せず知識を深めたら自分が成長するだけでなく視野が広がり社会が変わるきっかけを作ることができるかもしれません。
    一番良くないのは今の現状に不平不満言い時代の流れに流されることかもしれませんね。

  • ‪2006年文庫化の長編小説。左腕が不自由な小学6年生の少女が行方不明の父を探す旅に出るジュブナイル小説。細かな描写や状況説明を極力削ぎ落とし、淡々とストーリーは進むが破天荒かつ非常識な要素が散りばめられ、独特な刺激を放っている。‬

  • 内容(「BOOK」データベースより)

    幼いとき犬にかまれ、左腕が不自由な小学六年生の少女・月岡愛。母を亡くして居場所を失った彼女は、仲良しの大型犬デンを連れて行方不明の父を探す旅に出た。暴力が支配する無法の世界で次々と事件に巻き込まれながら、不思議なご隠居さんや出会った仲間に助けられて危機を乗り越えていく愛。近未来の日本を舞台に、勇気と希望を失わずに生きる少女の成長を描く傑作ジュヴナイル。



    最初に読書の楽しみを教えてくれた最大の恩人は筒井康隆氏です。高校の時は手当たり次第に読みました。短編も長編もエッセイもどれもこれも大好きでした。当時の世の中への影響力も物凄いものが有りました。ブラックな攻めた話が多かったのでとっても刺激的でした。
    翻って久々に作品を読みました。文体や単語の選び方に古さを感じるのですが概ね話としては悪くなかったという所でしょうか。ただ昔のギラリっと光る才気が感じられないのはさみしい限りです。これも一時代を築いた人への過大な期待なのかもしれません。

  • まずジュヴナイルってなんぞや、YAみたいなものなのね。それなら許してもいいかしら、ずいぶんと大衆的な読み物だなぁという感じはする、でも筒井康隆の顔、こわいので、このひとすごい経験してきたんだろうな、とは思ったり。
    人がこんなにパタパタとRPGみたいに死んでゆく小説はあまり読まないので新鮮だった。
    父の最後の絶望的な様子ばかり現実的で、そこが好き。

  • 主人公の小学生の少女の一人称で語られるため、難しい漢字を使わず、使ってもルビをふって児童小説のような体裁なのだが、主人公の置かれた世界はハードでバイオレンスな、児童小説にはまったく似つかわしくない世界だ。
    主人公の少女は左手に障害があり、家庭環境に問題を抱えているが健気に生きている。そんな少女が母の死をきっかけに家を出て、いなくなった父を探しに旅をするロードストーリーなのだが、少女の左側には常に誰かが(それはまず犬からだった)寄り添って物語は淡々と進んでいくのである。
    各章のタイトルに登場人物の名前が冠してあり、章毎にその人物が少女の左側を受け持つことになる(一部違うが)。その人物たちの物語の悲惨さはしかし後半で昇華される。暴力や殺人が生々しく続いていき、そうやって物語は児童小説とは似ても似つかない様相となるのだ。
    結論から言うと、想像とはまったく違っていたが楽しめた。大人向けの児童文学という感じで好意的に受け止められた。そこは非常に筒井康隆らしいと思った。

  • 事故により左腕が動かなくなってしまった愛。
    自分を取り囲む環境に嫌気がさし、いなくなった父を探す旅に出る。
    私利私欲が最優先の暴力が蔓延る世界で
    それでもそんな世界でも思いやりの心は絶えることはないと
    動かない愛のひだりがわで見守る人達が教えてくれた。

  • ゆっくりと進む映画を観ているように、おだやかな心で一気に読めた。
    簡単な設定と分かりやすいストーリー、近未来の話ということで、想像に足るぐらいの荒んだ町。銃や殺人といったような話も当たり前にでてくるが、違和感なく話は進み、人の優しさや美しさだけが余韻のように残る。読後感が良い。

  • そりゃ美人なら良い人たちに囲まれるさ
    成長するってことは失うってことか

  • 犬に噛まれて左腕が不自由になった少女、愛が父親を探して犬を連れて旅をする物語。ジュブナイルらしい平易かつ一昔前の教科書のような読みやすい文体でありながら、暴力が支配する近未来の日本の治安は非常に悪く、そんな世界を旅するいたいけな少女というコントラストが非常に良かった。まるでその道中はさながらRPGのように仲間との出会いと別れが描かれていて、誰かがいなくなれば誰かが助けてくれる風になるあたり、人との絆や「縁」というものを感じてしまう。子供でいる間は魔法に近い奇跡があったりするのだが、そうした時期を過ぎれば魔法はただの現実となり、主人公の世の中への解像度が上がる従ってその風景もより現実的に変わっていく。特に今までの旅の成果が一気に繋がるクライマックスは読み応えがあり、思った以上に現実的だったことにびっくりしてしまった。そんな現実を知ることで子供は大人になっていくのであり、それこそがジュブナイルものの真骨頂なのだと思う。

  • 愛の旅が楽しかった。子供の旅だから無謀で危険だったけど、いつもそばに誰かいて、助けてくれる。
    子供から卒業したら、残酷だけど大人にならなきゃいけない。

  • ヒロイン少女、月岡愛はシングルマザーの母と二人住み込みの料理店でこき使われていたが、母が死んで出奔した父を探して街を出ることにする。愛の左手は幼いときグレートデーンに噛まれて不自由になっているが、愛は犬の言葉がわかり犬=デンは愛を守るためずっと左側を歩いてついてくる/「ご隠居さん」と呼ばれる老人=真田一平が「わしもいじめにあっている。大きな店をやっていたが息子の嫁が無理やり売らせて、生きがいを奪い死ぬのを待っている」旅に加わる/襲ってきた変質者を殺し正当防衛だが真田は自首して服役…愛は託された大金を奪われ

  • 物騒になった日本の近未来に生きる小学6年生の月岡愛を巡る出来事とその3年後の話です。

    デンとダン、そしてシュガーたちの野犬が登場し、愛を助けますが、愛の方は・・・
    しかも、愛は犬と会話できたのにラストでは会話できなくなってしまいますし。

  • 旅する少女の話、連れは移ろいながら、時には歩き時には街に留まり、
    子供が大人になる、一歩踏み出す、自立するというようなことがテーマかな

  • じわじわタイトルの意味を理解し始めるときにはもうお話に夢中になっていた
    少しだけ暴力的な表現もあるけど、すごく読みやすくて先が気になって一気読みしてしまって、しかもここでこんなふうに終わるの!って最後の1ページを読んだ瞬間ブワッて全身に鳥肌が立った

  • 『マッドマックス』的な近未来を舞台に、少女の旅が描かれる。

    ジュブナイルということだけど、なかなかにバイオレンスで、欲望が渦巻いてるハードな作品でもある。

    しかし、これは旅立ちの物語。
    少女は大人になり、彼女に関わった人たちも、何かしら新しい世界に踏み出していく。

    さすがに筒井康隆といった感じ。

  • 自分でも意外だったんですけど、初めての筒井作品でした・・・。
    すごく良かった・・・超能力に犬を連れた少女・・・このジュブナイル感。
    ディストピア感あるのに、どこか長閑で泥臭い・・・だけど誰しもが凛と咲く一輪の花のように生きようと戦っている・・・。

  • 筒井さんにしては微妙という感想を多く見ますが、私は好きです。ジュブナイルということでバッドエンドはありえないと思ってましたが、世界観はかなりハードボイルド。暴力が溢れているし、ときには殺人まで起こります。

    ただ、タイトルの示すとおり、ひだりがわに誰かがいつもいて守ってくれる、やさしさが伝わってくるお話です。

    ラストがとっても印象的。筒井さんが淡々と書くので、あっさりしていますが、何度か読み直して目頭が熱くなりました。

  • 筒井康隆先生はグロギャグや不条理だけでなく、ストーリーラインのハッキリした、こんな傑作だって書けるのだ( ´ ▽ ` )ノ。
    それはもう、馬の首風雲録(ジブリアニメ化希望)や我が良き狼(スピルバーグ映画化希望)の頃から、ずっとだ( ´ ▽ ` )ノ。
    健気な少女の成長談ながら、必ずしも純な性格でもなく、スッキリした結末にも至らない( ´ ▽ ` )ノ。ブクログ評を読むと、この結末が不満な人が多くて、あれ?と思ったけど......

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著者プロフィール

筒井康隆……作家、俳優。1934(昭和9)年、大阪市生まれ。同志社大学卒。1960年、弟3人とSF同人誌〈NULL〉を創刊。この雑誌が江戸川乱歩に認められ「お助け」が〈宝石〉に転載される。1965年、処女作品集『東海道戦争』を刊行。1981年、『虚人たち』で泉鏡花文学賞、1987年、『夢の木坂分岐点』で谷崎潤一郎賞、1989(平成元)年、「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞、1992年、『朝のガスパール』で日本SF大賞をそれぞれ受賞。1997年、パゾリーニ賞受賞。他に『家族八景』『邪眼鳥』『敵』『銀齢の果て』『ダンシング・ヴァニティ』など著書多数。1996年12月、3年3カ月に及んだ断筆を解除。2000年、『わたしのグランパ』で読売文学賞を受賞。

「2024年 『三丁目が戦争です』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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