銀齢の果て (新潮文庫)

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  • 本 ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101171517

感想・レビュー・書評

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  • 老人増加対策のために政府が定めた「老人相互処刑制度(シルバー・バトル)」70歳以上が対象となるこのバトルは地域と期間を定めて行われる。舞台は東京の下町宮脇町5丁目、対象者は59名。最後に残った1人だけがその後に生きる権利を得るこの戦い……ってすごいなオイ!!

    Twitterで見かけて、軽い気持ちで読み始めたらガチやったわ……。58人プラスαがバタバタ死んでいくし、他の地域の中継もあるから、ほんま恐ろしい速度で70歳以上がバタバタいく。最期の瞬間もそれぞれで、フィクションらしさがあり重くはないんだけど、合間にチラリと見えるリアルさが怖い。

    一番怖いのは、そろそろこういうことがリアルで起こりそうだということよな。
    コロナ禍の救急車が間に合わなくて、みたいな話はまさにコレだし(バトル期間中は区外から往診不可で持病の悪化でってのもあった)
    筒井康隆氏、恐るべし。

  • 増大した老齢人口調節のため、ついに政府は70歳以上の国民に殺し合いをさせる「老人相互処刑制度(シルバーバトル)」を開始した。

    ご老人版バトルロワイヤル、刃物と弾丸が飛び交い、命乞いや画策があり、血まみれスプラッタにエログロ表現の筒井節。姥捨山ベースの「楢山節考」より過激で、シュールな人間模様。

    私の手元にあるものは平成20年発行分で、巻末には歌人の穂村弘氏の文が…!

    • hetarebooksさん
      まっき~♪さん

      こちらこそ、いつも花丸ありがとうございます☆

      うふふふ、すごいですよ。突き抜けていて、なんというか、逆に爽快感が...
      まっき~♪さん

      こちらこそ、いつも花丸ありがとうございます☆

      うふふふ、すごいですよ。突き抜けていて、なんというか、逆に爽快感があります。

      何がすごいってこれを書かれたとき、筒井さんもけっこういいお年なんです。それでいてこんな設定を書いてしまう、という。。。
      2014/03/17
  • 「非常におもしろかった」と言えば、その人間性を疑われ兼ねないが、非常におもしろかった。筒井康隆氏の作品はいくつか拝読したが、『シルバー世代のバトルロワイヤル』というあらすじを読んで本作『銀齢の果て』を本屋で探し続けた挙げ句、見つけることは叶わず、結局はネットで購入して読むに至った。
    本作は場面転換や日付の移り変わりがあるにもかかわらず、章で区切ったりはされておらず、そのせいで読む手を止めることができなかった。これ程、1作を早く読んだのは初めてである。

    内容は至って分かりやすい、老人の殺し合いであり、酷く趣味が悪いことであると思う。しかし、狂気じみた殺し合いだけでなく、しっかりとした設定や殺し合いのルールもあり、終わりまで飽きることはなかった。また、老人であるが故の「死への選択」が様々である点が非常におもしろい。ところどころリアルな点もおもしろい。死にたくない者、死にたい者、美しく死にたい者、最後のやりがいとする者、気の狂った者、、、人の生きてきた過去によって、選ぶ死の姿はそれぞれで、考えさせられる部分もあった。

    普通、思いついたとしても書かないであろう本作を筒井氏が完成させてくれたことに感謝したい。
    おすすめの読み方は最初の見取り図のページを印刷して、生存者をチェックしながら読む方法だ。

  • おじおばのデスゲーム。それを遠巻きに見ている対象者以外の人間たちがいちばん怖い。
    後書きにもあったように、これは滅茶苦茶な本を書いてるように見えて、近い未来への限りない忠告のような意味が全体を通して孕まれている気がする。
    九一郎VS津幡の一騎打ちではバトル物少年漫画さながらのアツさが見られて良かった。
    様々な老人劇が見られておもしろい、とばかりも言ってられないし、未来の老人は私だ…と少し震える。

  • 「長生きは罪である」と法制度が出来「処刑」を宣告され、しかも「70歳以上老人同士のバトルで」施行というブラックユーモア小説。

     いただけるか、いただけないか読んでみました。

     ブラック過ぎて、のけぞりましたがほんとうのこともたくさんあり、笑えて、うなずいて、しかし、ちょっぴりもの悲しくなりました。いえ、すさまじい殺し合いの闘争がではありません。それは笑ってしまえばいいフィクションです。

     帯にある「後期高齢者医療制度という老人いじめ政策を予見した小説」ではあるような、でもそれを「いじめ」と取るかどうか、むしろそれを「すすめないとこうなる小説」のようです。

     政府の作る制度は必ず裏がある(かもしれません)ので手放しで賛成するのもなんですが、負債多い日本の老人人口爆発によってかかってくる医療費増をどうするか、なんらか方策を講じないと永く生きていられなくなりますよ、ということでしょうか。

     長寿が嬉しいのかどうか、寿命とはなんぞや。でも、102歳で元気に鉛の玉を投げている(お昼のTV)前向き男性を見ていると、目的をもって元気で、長生きしたいなーと思うし、やっぱり勝手だわね。

     ということでいただきましたこの小説。

  • デスゲーム的な話が好きなので読んでみたが、あまりに悪趣味で読むのがしんどかった。
    ブラックユーモア的な文体も生理的に受け付けないし、
    場面転換も唐突で全体的に読みにくい。
    全く別の場面や人物の話に移るとき、行を空けるとか章を区切るとかするものじゃない?と思うのだけど…。
    唐突に次の行から話が全く変わるので、最初は面食らった。
    バトロワとかクリムゾンみたいな感じを期待していたが、人間ドラマやスリル、サスペンスなど全然なくてガッカリ。

  • 社会がああだこうだ施策を練る。それに盲目的に従っていいのだろうか。無視するだけじゃ社会不適応者だけど、反抗するのはいいじゃないか、その中に人権をうたう国民の権利が含まれている。声をあげよう。SNS上の揚げ足取りは半熟未熟!と蹴散らそう。快活な惨劇が社会の病理をえぐり出す傑作。

  • 筒井氏の世界に入っちゃ危険(笑)と思いつつ・・どんどん引きずり込まれました。
    何となくですが、「俗物図鑑」の梁山泊に立てこもる人々とイメージが重なっていました。不思議です・・。ギリギリのところに追い詰められる感じが似てるのかもと考えたりして・・。

    ラストは壮絶なんだろうなと思ったのですが、確かにある意味壮絶ですが、また違った意味で驚かされた作品です。

    結構タブーに挑んでいますね。それが筒井氏らしいと思います。そして引きずり込まれる感じ。いつまでも筒井ワールドは変わらずそこにありました。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「筒井氏の世界に入っちゃ危険」
      ブラック・ユーモアの見本と言うか権化ですからね、この作品も、いつか遣って来るコトじゃないかと思ってしまいます...
      「筒井氏の世界に入っちゃ危険」
      ブラック・ユーモアの見本と言うか権化ですからね、この作品も、いつか遣って来るコトじゃないかと思ってしまいます。。。
      2012/10/29
    • aquaskyさん
      nyancomaruさん、筒井作品は、ちょっと読み始めると止まらなくなりそうで怖いです。笑) そのうちに実際に起こってしまうかもですね・・...
      nyancomaruさん、筒井作品は、ちょっと読み始めると止まらなくなりそうで怖いです。笑) そのうちに実際に起こってしまうかもですね・・・怖い怖い。
      2012/12/18
  • 浅ましい老人がたくさん出てくる小説。
    老いても欲望も、生への執着も捨てきれない。
    若者には貶まれ、社会のゴミと呼ばれてもいい目を見たい。
    人間だもの。

    みつを

  • おもろかったなぁ。まず老人相互処刑制度の略称がシルバー・バトルなの人の命が掛かってる割にコミカル過ぎるし。一面に象出てきた時は外出中やったけど面白すぎて声出た。ほかにも「なんでそうなるねん」って場面が所々あって、笑いながら楽しく読めた。語り口調はコミカルだけど、散り際は呆気なくて淡白なのが良い塩梅で好きだった。

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著者プロフィール

筒井康隆……作家、俳優。1934(昭和9)年、大阪市生まれ。同志社大学卒。1960年、弟3人とSF同人誌〈NULL〉を創刊。この雑誌が江戸川乱歩に認められ「お助け」が〈宝石〉に転載される。1965年、処女作品集『東海道戦争』を刊行。1981年、『虚人たち』で泉鏡花文学賞、1987年、『夢の木坂分岐点』で谷崎潤一郎賞、1989(平成元)年、「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞、1992年、『朝のガスパール』で日本SF大賞をそれぞれ受賞。1997年、パゾリーニ賞受賞。他に『家族八景』『邪眼鳥』『敵』『銀齢の果て』『ダンシング・ヴァニティ』など著書多数。1996年12月、3年3カ月に及んだ断筆を解除。2000年、『わたしのグランパ』で読売文学賞を受賞。

「2024年 『三丁目が戦争です』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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