恋人たちの森 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101174013

作品紹介・あらすじ

愛される少年。愛する男。男同士を嫉妬しながら少年を母のように抱く少女。そして、恋人を美少年の魅力から取り戻そうとする黄昏の女の破滅的な情炎。頽廃と純真の綾なす官能の世界を、言葉の贅を尽して描く表題作。愛する少年を奪われる前に殺し、自らも息絶えた男の鮮烈な最期。禁じられた恋の光輝と悲傷を雪の武蔵野に綴る『枯葉の寝床』など、鬼才のロマン全4編を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 美意識が高じるとこうなるのぉ~

    森茉莉さんの短編集
    「ボッチチェリの扉」「恋人達の森」
    「枯葉の寝床」「日曜日には僕は行かない」
    には愕かされました

    男同士の恋愛関係を舞台は日本なのに
    仏蘭西にいるようでも、どこでもなくて
    道具立て豪華絢爛、濃く、蜜に描きながら
    はてさてなんだっけと、 ストーリーがあるようでなくて、 やたらに美男が登場し、長いまつげの影がやどり
    必ず死人が出るのに、恐ろしくはなくて、ばかげたほどロマンチックで、翻弄されて最後まで読んだのでありました

    『わたしの中のアリスの世界』というエッセイ集を読んだときは、森鴎外の娘臭はあるけれど、それはそうだから仕方がなく、生活のひとこま、一片にピカッと光るような
    思いを寄せている姿が好もしいと思いました

    あのころのフランス映画(アラン・ドロンやジャン・ポール・ベルモンド登場の)を、思い浮かべて創作をしたのだ、とエッセイにあるから、 ああ、そうなんだろーなー

    わたしだってむかしそんな映画を観た後は、画面の登場人物になったような気持ちで歩き帰った経験がありますもの

    こんなに美しい言葉を尽くしてきれいに書けるなんて
    やっぱり鴎外の娘です

  • つい数日前に読んだ官能系とほぼ真逆の印象だったので、そういう意味でも非常に興味深く読めた。といっても、こちらは4編中3編が同性愛を描いたものであるわけだが。さらにその3編はいずれも大人の男が少々頭の軽い美少年に対し、庇護欲と執着にとりつかれてしまうという展開。ついでにこってりした嫉妬やら誰かの死やらも絡んでくるので、文体も相まって黒い粘り気に満ちた空気を醸し出している。一番よかったのは『枯葉の寝床』なのだが、ギドウ、ギランと色気を感じる名前が続いて、どうして最後が達吉……それだけが解せない(苦笑)。

  • 森茉莉さんのエッセイは読んだ事があったけど小説は初めて。でも、まさかこんな小説書いていたとは意外だった。

    4篇中3篇が同性愛を扱っている。この時代にそのモチーフは珍しかったんじゃないかな?ただ、恋愛小説ともロマンス小説とも言えそうだけど、本質的にはトレンディー小説なんだと思う。

    登場人物が美貌で、外国の雰囲気を醸し出す小洒落た生活を送っている。ま、通俗的ではあるけれど、つまらないロマンス小説よりかはましかな。

  • 「恋人たちの森」「枯葉の寝床」「日曜日に僕はいかない」は同性愛もの。パターンとしてはどれも同じで、30代壮年の苦みばしった美丈夫(おもに知的な職業)が、10代後半の魔性の美少年の虜になって身の破滅系。さながらオーギュとジルベールの雛形ですが、もちろん森茉莉のほうが竹宮恵子よりも年代的には先。むしろ竹宮恵子に森茉莉を読んでいたかどうか聞いてみたいですね。

    唯一同性愛ものではない「ボッチチェリの扉」は、書かれた時期が一番早いせいか、完成度としてはイマイチな印象。ディティールで読ませてしまうけど、全体としてはバランスが悪い。いずれにせよ森茉莉という作家の巧さは全体より細部だとは思いますが。付け焼刃でない耽美趣味は、本物のお嬢様育ちで西洋かぶれの父鴎外を持つ彼女にしか書けない洗練を感じます。

  • 古典BL。三島とか森茉莉とか、赤江爆とか。BLじゃなくて、耽美ですね。BLじゃなくてJUNEでもない頃の文学的香りが高尚なかんじ。何度も読み返しては、外来語の漢字表記と、ドロドロの同性愛にうっとりしたのでした。
    森鴎外も偉大ですが、娘も堂々と耽美に身を投じているところが尊敬。BLの先駆者。

  • 独特な読点と美しい筆致で耽美な世界にぐいぐい引き込まれていく。全編、抗えない熱情の先に死がつきまとう。純文学における死とは、陶酔した熱情の代償なのだろうか。まるでフランス映画のような読後感。

  • 絶版?のハードカバー版
    2篇のしかし、完成された二人の世界が羨ましい
    一瞬でも、きっと。

  • とにかく読むのに時間がかかった。
    でもゆっくりじっくりと時間をかけて読みたかったから良い。
    鎌倉で読み始めたことも思い出。
    想像を上回るガッツリ耽美。
    いきなり解説の話になるが、著者は静止画の中に物語を見出すといったことが書かれてあったけど、まったくもってその通りだと思った。
    美しくも、愛憎に獲り憑かれ憔悴しきっている大人の男と、エロスの寵愛を一身に受けたかのような可憐な美少年。
    少し距離を保って、書斎に佇んだりなんかしていて
    (ひとりは机に肘をつき座っていて、美少年は書架にもたれかかって少し首をかかげてこちらを向いている)
    そんな静止画の記憶の創造みたいな世界なのだった。
    (ま、まさに妄想。。。)

    すべて美しく浮世絵離れしているかのようだけど、描かれる心理描写がグロテスクの域に達して、ある意味とても下品だったりするからそのバランスがくせになる。
    とくに、「日曜日には僕は行かない」というよだれもののタイトルがつけられた短編に出てくる達吉(この名前の安定感)が、八束夫人を見送る際に一瞬見せたゆがんだ笑顔…。
    性格ゲロ悪。と思わずつぶやいてしまう。
    そんな悪趣味もすべてクセになる。

    枯葉の寝床のSMプレイで若干、本当に気持ちが悪くなる。あまりにも緻密で粘着質な描写力。すごすぎ。ほんとに文章の魔力。
    そういった意味で、もしかしたら最初の短編「ボッチチェリの扉」が一番好みだったかもしれない。
    人生の一時期をあんなにBLに注いだことがあるくせにかたじけない。

    とにもかくにも憎めない人だと思った。
    美しいものを追い求める、それはもはや勇姿。
    貧乏サラヴァンを静かにポチるのである。

  • 妄想小説。文章が読みにくい&解りにくい。誰か一人は殺さないと、話にならないようだ。

  • どきどきしすぎてページをめくるのがつらい。

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著者プロフィール

1903~87年、東京生まれ。森鴎外の長女。1957年、父への憧憬を繊細な文体で描いた『父の帽子』で日本エッセイストクラブ賞受賞。著書に『恋人たちの森』(田村俊子賞)、『甘い蜜の部屋』(泉鏡花賞)等。

「2018年 『ほろ酔い天国 ごきげん文藝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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