吉原御免状 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101174112

作品紹介・あらすじ

宮本武蔵に育てられた青年剣士・松永誠一郎は、師の遺言に従い江戸・吉原に赴く。だが、その地に着くや否や、八方からの夥しい殺気が彼を取り囲んだ。吉原には裏柳生の忍びの群れが跳梁していたのだ。彼らの狙う「神君御免状」とは何か。武蔵はなぜ彼を、この色里へ送ったのか。-吉原成立の秘話、徳川家康武者説をも織り込んで縦横無尽に展開する、大型剣豪作家初の長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 鬼平犯科帳などを手掛けたベテラン脚本家が、死の5年前に時代伝奇小説家に転向、以来、隆慶一郎というペンネームで次々と作品を発表し、ある作品は少年ジャンプで漫画化されたことから短期間に全世代にセンセーションを巻き起こした作家となった。
    彼がその作品の中で多くテーマとしたのが網野善彦の『無縁・公界・楽』で紹介されたアジールと道々の輩。この小説の肝は吉原を徳川体制下に残された数少ないアジールという説を打ち出したこと。しかもそれは単に象徴的な意味ではなく、政権側と吉原側との双方が秘密裏に武装した実働部隊を持ち、吉原を囲むお歯黒溝や塀なども実は遊女を逃がさないためのものではなく、外部からの攻撃に備えた要塞として仕立て上げるための装置だったと大風呂敷を広げる。住まいの図書館出版局から出版が予定されていた『花街考』が著者の急逝により立ち消えとなってしまったため、結局、吉原に関する考察は、この本(と続編)のみとなってしまった。また、他では滅多に取り上げられない傀儡子が物語の中心に据えられているのも嬉しい。中世のオカルトめいた怪しい民俗学が好きな人間には非常に楽しめる小説。

  • 面白かったどころではない。驚いた。
    吉原について、何を知っているわけではないが、それでもこれまで知っていた吉原を根底から覆すような作品だった。吉原と出てくるが、物語は吉原を中心にはしているが、もっと壮大。
    隆さんはこの後も、この作品に出てくる人物を小説にされているらしいので、読み勧めたくなる。
    こういう時代小説はもっと世間の人たちに読まれてもいいように思う。
    読んでよかったと思える作品だった。

  • 宮本武蔵に育てられた青年剣士・松永誠一郎は、師の遺言に従い江戸・吉原に赴く。だが、その地に着くや否や、八方からの夥しい殺気が彼を取り囲んだ。吉原には裏柳生の忍びの群れが跳梁していたのだ。
    彼らの狙う「神君御免状」とは何か。武蔵はなぜ彼を、この色里へ送ったのか。
    -吉原成立の秘話、徳川家康影武者説をも織り込んで縦横無尽に展開する、大型剣豪作家初の長編小説。


    登場人物の豊かさもさながら、人々の思惑、思いがしっかり伝わってきます。
    吉原をめぐる陰と陽。
    歴史の悲しい裏の面をさりげなく取り上げており、華やかなだけではない吉原の一面を、「神君御免状」のもとに描き出している傑作です。
    主人公、松永誠一郎の魅力と、それに魅かれた人々の思い。
    これが実話であったなら、どんなに悲しく、かつ魅力的だろうかと、ついつい引き込まれてしまいました。

  • 再読。

    クセもケレン味もない主人公。
    その分、敵役や女性キャラが個性的で魅力的。
    「一夢庵風流記」に登場した爽やかな若者がいい味わいを出したキャラになって登場。
    「影武者徳川家康」のエピソード0またはパラレルワールドのお話しとして登場して隆慶一朗ユニバースの広がりが垣間見れる。ファンにはたまらない。

  • これからどんどん書いて欲しかったのに急逝されてとっても残念。
    この『吉原御免状』が処女作で、かつ直木賞候補作となった作品。時代小説の傑作中の傑作ですね。

    時代劇やドラマでよく出てくる吉原ですが、こういう遊郭が出来た歴史や幕府との関係など関心しきり。
    これ以降、時代劇を見る目が変わった。

  • 壮大な設定で、面白くなるかなと思っていたら
    これからって時に終ってもーた。残念。

  • 時代伝奇小説で一時代を築いた隆慶一郎のデビュー作。前から読みたいと思いながら、積読になっていたものをやっと読了。
    評判に違わない面白さ。吉原を舞台にしながら、その裏に様々な要素を詰め込んだ、これぞ伝奇小説か。宮本武蔵、柳生一族、家康替玉説、傀儡士、もう沢山の要素を詰め込みながら吉原という特異な一世界で全てをまとめ上げている。通読した後に後記や解説を読むとまた、その深さがわかってくる。
    本世界観は連作的に幾つか書かれているとのこと。読んでみなければ。

  • 前半、とても面白く読んだ。吉原のこと、花魁道中、初めて知ったことも多く、高尾と関係を結ぶところまで、一気に読んだ。その後の展開をワクワク期待して読み進めたが、おばばさまが登場したあたりから、とんでもない話に転がりはじめ、裏柳生との闘いも中途半端な終わり方で、この小説の良さがどんどん萎んでいってしまった。とても残念。直木賞の選考評でかなり酷く書かれていたが、さすが選考委員と見直してしまいました。

  • 宮本武蔵に預けられ、武蔵の死後も遺言を守り26歳になるまで修行を続け、遺言を守り江戸に出てきた主人公。

    武蔵直伝なので、剣の達人。

    吉原遊郭で起こる柳生との争い。
    そして世良二郎三郎(家康の影武者)との密約。

    デビュー作だが、すでに作者の中では「影武者 徳川家康」の構想ができていたと思うと小説家ってすごいと思う。

  • 詰め込み過ぎではないかというくらいの濃密な内容。
    吉原の子細な描写はもとから興味があることもあり夢中になった。
    家康のくだりがちょっと長過ぎてバランスを壊しているように感じた。
    自由闊達な着想とエログロが最高。
    著者の作品は初めて手に取ったが、ぜひ読破したい。
    総じて最高。

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