死ぬことと見つけたり(上) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 98
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101174181

作品紹介・あらすじ

常住坐臥、死と隣合せに生きる葉隠武士たち。佐賀鍋島藩の斎藤杢之助は、「死人」として生きる典型的な「葉隠」武士である。「死人」ゆえに奔放苛烈な「いくさ人」であり、島原の乱では、莫逆の友、中野求波と敵陣一番乗りを果たす。だが、鍋島藩を天領としたい老中松平信綱は、彼らの武功を抜駆けとみなし、鍋島藩弾圧を策す。杢之助ら葉隠武士三人衆の己の威信を賭けた闘いが始まった。

感想・レビュー・書評

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  • ジャンプに『花の慶次』が連載されていた頃、原作は『一夢庵風流記』だと知って読んでみたのが、作者・隆慶一郎さんとの出会い。
    胸の中に爽やかな風が吹き抜けるような読後感に、もう痺れた。
    こんなに面白い本がこの世にあったのに、どうして読まずに生きて来れたんだろうと、本気でそう思った。今また、同じ思いに浸っている。

    タイトルの意味するところは、ご存じ『葉隠』の一節。
    江戸時代の中期(1716年頃)、肥前の国佐賀鍋島藩の藩士・山本常朝が口述した武士としての心得をまとめたもの。ところがこの一節のために戦時中悪用されて、まるで死をやみくもに美化して、率先して死ぬことを奨励する書であるかのような誤解を受けていたらしい。
    ところが隆さんはその『葉隠』を、戦地に赴くのにこっそり持参したのだ。
    それも、『葉隠』の中身をくりぬいてランボーの詩集を隠すために!
    詩集などという「軟派」な読み物は見つかれば撤収されてしまうからと必死で考え抜いた策だったらしいが、まるで中学生がエッチ本を隠すかのようで、この序章だけで笑ってしまう。

    そして活字に飢えた状況の中で初めて『葉隠』を読み、その面白さに目覚めていく。
    まるで『レ・ミゼラブル』を読むように何度も何度も読んでは、その面白さを確認したという。
    曰く、『葉隠』が面白くてはいけないのか?

    この前置きがあって、本編の面白さが生きる。
    隆さんの描く登場人物たちの、なんとまあ魅力的なこと。
    奔放苛烈な「いくさ人」なのだが、しばしば世間の価値観とのズレを生じ、そこは思わずニヤつくツボ。
    昭和62年8月号から平成元年8月号までの「小説新潮」に連載されていた作品たちを一冊にまとめたのがこの本で、中途で隆さんが急逝されたため未完に終わっているが、そんなことはまるで気にならない。
    「血沸き肉躍る」という古い表現を、久々に思い出した。
    前田慶次と、こちらの斎藤杢之助と、一体どちらが強いんだろう?
    ああふたりの決戦の場面を見たかった・・と、アホなことをぼんやり考えている・笑
    スタートは島原の乱からである。以下、下巻に。

  • 葉隠武士道を貫く杢之助らの生き方が粋で清々しい気持ちになる。
    随所にマネジメントの至言も散りばめられ、思わず唸る...。10数年前に読んだ時には気づけなかったことが多々あり、読み返す価値を改めて実感。
    さあ下巻に参ろう。

  • とあるレビューに共感して読んだが、想像をはるかに超える衝撃的時代小説だった。
    人物はみな個性的で、特に主役の三人がいい。陰湿なのに、笑ってしまうほど爽快で豪快な話の数々。こんな堂々とした主人公、今まで見たことがない。
    『葉隠』は書かれた当初あまり流行らなかったらしいから、実際鍋島藩士がこうだったのか謎な上、個人的に史実重視の小説が好みというのに、これはエンターテイメントとしてとっても面白く楽しく読めた。
    未完なのが非常に悔やまれる。最後まで読みたかったなー。

  • 死を畏れぬ心の鍛錬とは、人を一体どこに辿り着かせるのか。葉隠が教える生き様。死が恐ろしくないならば、人は自暴自棄に生きてしまわないものか。そこに眠る信念を歴史小説が解き明かす。清々しく気持ちの良い、痛快な物語だ。それでいて葉隠の真髄が随所に散りばめられる傑作。今まで読んだ事が無かった事、本作を手に取った邂逅を嬉しく思う。

    何より、作者の原体験。死は必定。戦時中の回想から始まるのである。徴兵検査を受けさせられ、兵役を課せられることになった作者は、その当時アルチュール・ランボーと中原中也が愛読書だった。ランボー作『地獄の季節』をどうしても戦場に持っていきたかった。考え抜いたあげく戦場でも許される『葉隠』をくりぬいて『地獄の季節』を持っていく。活字に飢え、だから、出会った。

    毎朝、自分の死を思い描いてから1日を始めるという習慣。死を畏れぬ事と自棄になる事は違う。読みながら、自らを顧みて学ぶ。

  • 感想などは下巻にて。

  • 太平洋戦争で徴兵された若者が、ランボオの詩集を持ち込みたくて「葉隠」の中に潜ませて行く。活字に飢え、やむなく葉隠を読み出して、その魅力に引き込まれ、独自の解釈を展開していく。ここから時代は江戸初期に移る。鍋島藩(現在の佐賀)の葉隠武士3人衆が、藩のため、主君のために躍動する。その生き方は、武士の本分そのままであり、常に自分は死人(しびと)として生に執着せず、故に立場にも金にも執着しない。義や孝に反するものは許さないが、それが主君であっても、不法を諌めて切腹を賜るのが最上とするもの。なんとも爽やかで潔い生き方。家族も友人も、吉原の顔役すら、皆彼らに惹かれる。まっすぐなだけに、命懸けで付き従うものも多いが、敵も多く、常に命のやり取りをする。一見、付いていけない奇人ばかりだが、三人の中にややまともな者があって読者としても理解しやすいバランスになっている。著者の急逝により、未完となっているのが残念だが、読後感すっきり。

  • 既に死人が故にできること、無駄に生にこだわるからできないこと。
    杢之助の現代にも通じる生き様に感服。

  • 下巻が届くのが楽しみ。司馬遼太郎の『峠』に近い興奮度。

  • 感想は下巻で。

  • 読了

  • 読了。レビューは最終巻で。

  • 作者が葉隠をいかにし、戦争中に読みだしたかという紹介から始まる。
    どうして、なかなか、面白かった。
    短いエピソード集なんだけど、毎回が思い切りよく生き抜くことを信条に生き抜く侍であるため、波乱万丈が烈しいのなんの。作者が言うとおり、葉隠は元々読んでみたい本の一冊であったけれど、葉隠は面白いものなのではないかと思ってきた。

    引用した言葉は不満。
    私は、自分が痛い目に合わないためだけに、嘘をつくひどい人間を見たことがある。そいつは、自分が傷つけた人のことなどあっという間に忘れていく。こんなひどい人間は幸せになってはいけないとまで感じた人間だ。

    残念ながら、18話で完結の予定だったらしいが、作者が急逝のために、15話が最後。16話を17話については草稿が残っており、あらすじを記載してくれている。勝茂がなくなり、杢之介が殉死、求馬が殉死とますます読み応えのある内容なだけにとても残念。

    そして、18話については、あらすじもなく、作者が編集者に話した内容を記載するとなっていた。こういうのを見ると、編集者というのはいい存在だなぁと思ったりする。頑張れ、のりすけさん(笑)

    最後まで、触れられないのが、萬衛門の死。
    私は彼は死ななかったんじゃないかと思った。杢之介と証言の約束をしていたから。誰にも迷惑を掛けないように、独りで去っていくのが杢之介。やるべきことを果たしてから20年後に切腹するのが求馬、生き残るのが萬衛門。それぞれの信条に応じた殉死だと思う。

    毎日が刺激に溢れ、羨ましい気がするけれど、それは何かあったらすぐ命を引き換えにする覚悟をもって生きているからこそ初めて得られる報酬。
    私たちが何もリスクにかけることなく、我が儘に生きるのとは違う。

  • 品川Lib

  • まあまあかな。どこまでが事実に基づいたものなのかちょっとよくわからなかったな。

  • 俺的には理想の武士像。葉隠そのものや葉隠の解説書よりその生き様を体現してるこの本のほうが魅力的。

  • 武士の生き様なー

  • 初めてのちゃんとした?歴史小説でした。歴史小説ってちょっとズルいかもしれないな。題材が面白すぎますよね。そもそも佐賀県って私の中では全く印象になかったので、新しい知識も得られて二重に楽しかったです。
    徳川家光〜家綱くらいの時代の鍋島藩を舞台に、葉隠武士と呼ばれる戦士の中の戦士達を描いています。この小説は未完のまま作者がなくなってしまって、結末がどうなるのかわかりません。それが本当に残念です。
    歴史小説がめっちゃ面白いらしいことがわかったので、読み終わってすぐに吉川英治の「三国志」読み始めました。

  • 葉隠に書かれている佐賀藩士の心得をベースとした時代活劇小説。隆さんの他の小説(網野学説が下地)と異なって、藩主に背きつつも藩主に戻っていくような相反する行動を通して生き様を描いている。

  • 昔を生きた侍の姿がよくわかる。大将と部下の関係が、浪人かどうかは関係なく、対等なのがわかる。

  • 「死人」の強さと爽快さ。

  • 鍋島藩の浪人で死人(毎朝、起きる前に自分が死ぬ場面をシミュレーションし、死ぬことに一切の恐怖をなくした者)斎藤杢之助が主人公の連作短編集。

  • 葉隠に沿った物語。意図しない終わり方が逆に余韻を残してくれた。

  • 主人公の覚悟と行動力に惚れる。

  • エンターテイナー版葉隠。戦国の世も終わった江戸時代、主持ちのいくさ人たちの活躍。天草四郎の乱に始まるが1話毎に歯切れよく完結するので実に読みやすい。

  • 抜群に面白い。

    戦場では一瞬の躊躇が生死を分かつ。したがって逆説的だがその躊躇を無くす為、常日頃から死んでおく必要がある。

    これを具現化したのが本書の主人公、斉藤杢ノ助。文字通りいつでも躊躇なく死を差し出す。

    たとえ家老、藩主、老中であろうと、杢ノ助を相手に回すと一瞬にして命のやりとり、男と男の勝負に持ち込まれる。

    そして相手はその杢ノ助の本気を悟ったとき、己の中の甘さに愕然とし負けを認める事になる。

    この杢ノ助の本気度やそのスピード感たるや。かっこいい!痛快!恐るべし!

    常に頭の中で参照している一冊です。

  • 時代小説は人の名前が難しい…
    言葉も難しい。

    ただ、面白い。

    死人。毎朝死ぬ。
    その為、後悔などしない生き方。
    自分に強い生き方を学びたい。

    p127.ことの大小を問わず、理由の正逆を問わず、一瞬に己れのすべてを賭けて悔いることがない。
    p130.今日只今に己れの全存在を賭けて決して悔いることのない男である。
    p197.人間のすることに理屈はどうにでもつく。だがすべて嘘である。何を考えるかではなく、何をするか或いはしないかで男の評価はきまる。

  • 最後まで終わっていない事だけが悔しい。
    しかし構想だけ見ればある程度は想像出来ると共に、他作品を見ると容易に想像出来る。
    バイブルと言える作品が見つかった。

  • 4.09/1064
    内容(「BOOK」データベースより)
    『常住坐臥、死と隣合せに生きる葉隠武士たち。佐賀鍋島藩の斎藤杢之助は、「死人」として生きる典型的な「葉隠」武士である。「死人」ゆえに奔放苛烈な「いくさ人」であり、島原の乱では、莫逆の友、中野求波と敵陣一番乗りを果たす。だが、鍋島藩を天領としたい老中松平信綱は、彼らの武功を抜駆けとみなし、鍋島藩弾圧を策す。杢之助ら葉隠武士三人衆の己の威信を賭けた闘いが始まった。』

    冒頭
    『死は必定と思われた。つい鼻の先に、刑務所の壁のように立ち塞がっていた。
    昭和十八年十二月。
    僕は九月の末に二十歳になったところだった。』


    『死ぬことと見つけたり』
    著者:隆 慶一郎(りゅう けいいちろう)
    出版社 ‏: ‎新潮社
    文庫 : ‎400ページ (上巻)

  • 下巻にまとめます

  • 2020.10.03

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