死ぬことと見つけたり(下) (新潮文庫)

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  • 新潮社
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レビュー : 66
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101174198

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  • 上巻に続き、佐賀鍋島藩の危機を救おうとする斎藤杢之助とその朋友・萬右衛門、中野久馬の三人の生きざまを語っている。
    武家社会になど興味を持てないというひとも多いだろうが、この3人があまりにも生き生きと描かれているため、いつの間にか入り込んでしまう。
    もうその魔力は恐るべしで、隆さんの筆力の冴えにはひれ伏してしまいそうだ。

    若かった杢之助も下巻では父親となり、そのふたりの子らが活躍する章もある。
    剣の腕に父親譲りの才を見せる長女の、『果し合い』の場面が特に好きだ。
    性酷薄な松岡主水との闘い、主君勝茂公とその孫・光茂との悶着と相続問題、
    その光茂をけん制する3人の腕の冴え、迫力の『海難』の章、有名な『振袖火事』、何よりも、佐賀藩を取り潰そうと目論む老中・信綱との長年に渡る確執等々・・読ませるシーンは枚挙にいとまがない。
    そのひとつひとつに、杢之助たちの煩悶と苦悩があり、秘策がある。
    おおそうきたか!と膝を打ったり涙が出そうになったり。
    どの場面でも人間の描写が非常に上手いので、佐賀藩士とはこんなにすごいんだぞ、で終わらないものがそこに流れている。

    「死」から逆に人生を考えるということが、こんなにもひとを強くするのだろうか。
    打算のない、ただ己を頼りにその時を精一杯に生きる生き方はいっそ爽やかで、まるで優れた映画を観るかのように鮮やかに心に刻まれる。
    また、読みながら何度も何度も、恥ずかしい生き方をしてこなかったかと自分自身に問いかけもする。

    巻末に、隆さんがしたためていたと見られる続編のモチーフが書かれている。
    どうやら登場人物たちにも死が訪れるらしく、そこまで読まずに済んだのはある意味幸運なのかもしれない。
    いやそれとも、見届けられないことを惜しむべきなのか。
    隆さんは、続きを読者に想像する楽しさだけを残して逝ってしまった。
    そしてたぶん私は、現代小説からは遠ざかっていくのだろうな。。
    まぁそれもかなり幸せなことではあるけれど。

  • 未完とは、残念。

  • 読了2回目
    数少ない何度読んでも面白い話。

  • 傑作。作者が亡くなったため、未完であるが面白い。

  • 上巻レビューの続きですよ。

    この本を好きな理由ですが、まず主人公が単純明快でヒロイックなこと。
    これはこの著書の描く主人公のパターンですが、自分の世界観がきっちりと
    あって、それに従って即断即決即行動。このパターンが死ぬほど好きなのです。

    わたしは火星が牡羊座にあるので、単純・明快・行動的という火の男をこよなく
    愛しているのですね。過去につきあった男はすべて火の男です(どうでもいい)

    そしてこの小説の主人公は「死人」です。毎朝イメージの中で死ぬ。
    なので死を恐れない、という付加価値がついてくる。

    この死人であることが、蠍座のわたしにはたまらないのですね。
    蠍座は生と死を司り、オール・オア・ナッシングで物事を決めていく実に極端な
    性質を持っているのですが、そことベストマッチするわけです。

    つまりわたし自身の投影であるからこそラブ!というわけですね。
    世界は自分の投影の塊ですね。


  • ここで終わるのかと呆気にとられてしまったが、あとがきで未完だと気づく。
    こんなに面白くて有名な作品なのに映像化・漫画化されていないのを不思議に思ったが、未完のためか。

    葉隠入門と聞き堅苦しいかと思ったが、テンポが良く時代劇を見てるような感覚で楽しく読める。時代劇の脚本家だったと知って納得。

    登場人物が良い。
    杢之助と求馬、違う道を歩むが志は同じ。
    死人として淡々としている杢之助がふと見せる人間味。
    あくまでも人間臭く実直な求馬。
    勝茂のいくさ人としての靭さと孤独。
    常住坐臥死人。

  • 司馬遼太郎『峠』的な死生観、ちょっとエンタメ。読後感爽快

  • 「葉隠」の舞台である、佐賀鍋島藩の話。「葉隠」によれば、武士は毎朝自分が死ぬことを克明に思い浮かべるべきらしい。エンターテイメントとしてはとても面白い。

  • 常識の範囲では解決がむずかしい事象を
    死人として生きる侍が、常識を超えた思考と行動で
    難局を打破していく痛快な時代劇。

    殿様や土地への忠誠ではなく、
    自らの生き方への忠誠として
    この思考は昇華していったのか?
    都合よくその時代に利用されることは避けたいと思う。

    ただ、パラダイムシフトで先行き不透明な現代に於いてこそ、
    このような何らかの視座を持つことは必要か。

    隆さんの作品は、10年超ぶりか。
    これを持って全作品読了。

  • 「葉隠」をベースにした歴史小説。家光の時代鍋島藩の「死を覚悟して」毎日を生きる浪人が主人公。毎朝自分が死ぬことを想像し、死の覚悟を確かめる。浪人仲間等とともに藩の問題を裏から支援する。

    話の最後は残念だったが(この展開は読書人生で2度目だ)時々強烈にはっとする箇所があり、心震わせられる。

    死に対する意識が改まったと言うか、そこまで行かなくても大儀の前には自分を殺すことの大切さを思う。
    また、死ぬとは前のめりに生きたいとも思う、医療が発達してなかなか死ねなくなった現代、前向きに死を選択する生き方の思案。

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