新源氏物語(下) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101175164

感想・レビュー・書評

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  • 源氏の君に幻滅したり、息子の夕霧くんに「お前もか!」とつっこんだりしながらついに最終巻です。
    源氏の君は最後まで、好きにはなれませんでした。
    男の一方的な愛の押し売り(ほぼ強姦)に耐えなければならない女性達が気の毒で。酷い時代ですね。
    こういう、自分の恋愛感情に振り回されて自制できない人って怖いし迷惑です。散々好き放題したあげく死ぬ間際になって出家したとて、多くの女性を踏みにじった罪は許されないと思う。
    「世に傲り、人に愛執していた旧い自分は死に、荘厳な浄土を欣求してひたすらいそしむ新しい自分が生まれるのだ」なんて、やりきった感満載で出家を決意されても同情も共感もできませんわ。まず、あやまれ。紫の上に。生まれ変わんのはその後。

  • 「梅枝」から「幻」まで。准太上天皇の位に昇り、栄華は極まる。そんな光源氏の足もとを少しずつ崩壊させてゆくような第二部、何度読んでも運命の苛酷さに震撼させられます。

  • - 同じ田辺氏の著書「光源氏ものがたり・中」に「このあたり(若菜)から『源氏物語』本編の低音部に、不気味な重苦しい調べがついてまわるようになります。ここにいたって『源氏物語』は、はなやかな恋の物語から、重厚で、まことに辛いおとなの物語になるのです。」とあるように「若菜」以降の巻には「生」と「死」が背後にあって読み応えがありました。

    晩年の光源氏は、世間体を気にしながらも未だ自分本位に生きているような。同年代の登場人物に比べて見た目が若々しいというのも、その表れではないのでしょうか。殿に振り回される女人たちに同情します。

    そんななか「つらき世をふり捨てがたき鈴虫の巻」で未練がましく言い寄ってくる源氏を女三の宮がバッサリと切り捨てたのは胸がスカッとしました。物語後半のキーパーソンとなる女三の宮、六条院の聡明で隙のない他の妻たちと比べると不完全な人格であるが故に愛すべきところもあり、「他人がどうであろうとワタクシの知ったところではない」と我関せずを貫く様も私は嫌いではありません。

  • 上巻、中巻に続いて読了しました。
    明石の女御(ちい姫)が、育ての母である紫の上にも、産みの親である明石の上にも親しく接していて、とても好感がもてました。主上に帰ってこいと急かされながらも実家に留まり、紫の上の最期に立ち会えたときも、寂しいけれど美しい場面でした。
    柏木の衛門督と女三の宮の話は、なんだか女三の宮が気の毒で…それにしても、源氏は2人とその子である薫にそれとなく辛く当たる場面は、気持ちは分かるけど自分のことを棚にあげて…と複雑な気持ちになりました。
    読み終わったとき、続きが気になる終わり方だなと思いましたが、原作は続きがあるんですね。薫のこともそうですが、夕霧と雲井雁、女二の宮のことが途中で終わってしまっています。玉鬘も子供をたくさんもうけたとありますが、その後ちゃんと幸せになれたかどうかも気になります。
    他の方が訳した源氏物語にも是非チャレンジして、続きを楽しみにしたいと思います。

  • 女たちが生きる、その生き様を見届けた気持ち

    多くの気持ちの葛藤、困惑、歓喜、涙にふれ
    知らない世界を感じられた

    衣の華やかさに対してその重さほどの深い悲しみを感じる場面が多かった

    人間模様を描く小説として源氏物語はやはり面白いと感じた

  • 光源氏の晩年の心理が細やかに描写され読み応えがあった。上巻序盤のエロ小説感は全く感じない。1000年読み継がれてきた理由がよくわかった。

  • 「多くの恋をし、恋心の煩悩と呪縛に苦しむ源氏は、最愛の女人・紫の上を失って、初めて愛の意味を知る。悲しみに閉ざされたままの源氏は、出家を決意する。下巻には、「花散りし梅が枝に残る匂いの巻」より「夢にも通えまぼろしの面影の巻」までを収める。遠く平安時代も、今も全く変らない恋愛心理、愛の物語「源氏物語」を、新しい現代の言葉で描いた『新源氏物語』本編、堂々完結。]

  • 高校時代に一読し、京都来訪前に再読

  • 田辺源氏、再読です。
    実は今、橋本治の窯変源氏を読み途中なのですが、解釈が独特過ぎて(!)原作が気になったのだけれどもちろん原文は読めないので、私の中で一番わかりやすいイメージの田辺源氏を読んでみることにしたのです。

    窯変源氏で引っかかったのは、若菜上下と柏木の帖。
    田辺源氏では、柏木は普通に恋してました。女三宮もそれなりに。

    彼女が死に間際の柏木に宛てた返歌、
    立ち添ひて 消えやしなまし憂きことを 思ひ乱れる煙くらべに
    についての解釈はしみじみと嬉しい、とあったので意外でした。

    窯変源氏では、女三宮が書いた時点では投げ遣りな歌でしかなかったのに、柏木の病床で読むと慕いあう者同士の相聞歌にきこえ、柏木は感動してたんですよね。深読みすぎる解釈かなと。
    ちなみに円地源氏では柏木の気持ちには触れられておらず、寂聴の女人源氏でも、女三宮の語り口なので特に書かれてませんでした。
    そして、虚しい返歌に失望し自嘲するという印象的な解釈はあさきゆめみしにありました。

    やっぱり源氏って面白い。訳者によってこんなに雰囲気が変わるとは。
    なんだか田辺源氏の感想じゃなくなってしまった…

  • 桜の花が「可憐から豪華へ、そして、散って行く」ような最終章。
    桜が散り際に、少し凶々しくなる事があるように、
    女三ノ宮が陰を落とす。
    紫の上の心理描写は秀逸。
    これで、紫の上は、
    世界で最も美しいヒロインの一人にして、
    誰からも好感を持たれるという地位を確立した気がする。

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著者プロフィール

1928年3月27日生まれ、大阪府大阪市出身。樟蔭女子専門学校(現・大阪樟蔭女子大)卒業。1957年、雑誌の懸賞に佳作入選した『花狩』で、デビュー。64年『感傷旅行』で「芥川賞」を受賞。以後、『花衣ぬぐやまつわる……わが愛の杉田久女』『ひねくれ一茶』『道頓堀の雨に別れて以来なり 川柳作家・岸本水府とその時代』『新源氏物語』等が受賞作となる。95年「紫綬褒章」、2000年「文化功労者」、08年「文化勲章」を受章する。19年、総胆管結石による胆管炎のため死去。91歳没。

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