新源氏物語 霧ふかき宇治の恋(上) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101175225

感想・レビュー・書評

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  • 田辺聖子さんが亡くなられたので追悼の気持ちで読んでいます。大阪のおばちゃんのイメージが強い方でしたが、作品自体は極めて正当派ですね。上巻は八の宮の姫君たちの物語で、下巻はいよいよ浮舟の物語です。

  • 上下巻合わせてのレビュー

    光源氏が他界し、その子供や孫たちの代の話。
    夕霧は順調に出世し、たくさんの子供たちが成長しているが、
    本書では『分別くさく面倒な大人』として描かれている。
    本書の中心となるのは、女三の宮と柏木の子である薫と、
    明石の姫君の息子である匂宮。
    薫と匂宮の恋物語が本書の中核を占める。

    それにしても薫の運命の辛さ。
    匂宮のような軽薄さが薫にもあれば悩みも少しは軽減されたかもしれないが、几帳面が過ぎる部分で自己の懊悩を深めてしまう。

    キーポイントになる女性たちは「八の宮の姫君たち」

    いずれにしても、悩める薫が本書の主テーマであろう。

  • 田辺聖子訳。文体が昭和の中間小説なので何しろ読みやすい、けれど現代語訳というより翻案なのだろうか、少々俗っぽい。まあ以前読んだ宇治十帖は辛気臭かった記憶ばかり残っているので、読みやすさを取ってみた。

    上巻で感じるのは薫の主体性のなさで、この人は理由がないと恋に落ちることもできないのだ。そして理由があれば頑張ってお世話してしまうので、いい人どまりの扱いをされる。無残。しかし「理由があれば」の別の表れとして、匂宮を宇治に連れて行ってのだまし討ちという流れもあり、絶対ゆるさないよ、という気持ち。その流れ自分ひとりじゃ作れないやつじゃん、とか……

    真面目なんだけど、自分の決めた道をわき目もふらずに歩くばかりの寂しい人。ついてないのは認めるけれど、ちゃんと相手を見ないからだよ、しょうがないね、と思う。

    中君が戦略家でよい。タフネスを感じる。

  • 薫が歯がゆい…。
    大君はもっと堅物、中の君は派手な感じのイメージだった。

    下巻からは浮舟がクローズアップされるはず。

  • 紫式部の『源氏物語』のストーリーを、現代の言葉で語りなおしたシリーズ「新源氏物語」の続編です。「宇治十帖」と呼ばれる巻が上下2巻に収められています。

    本編以上に、平安時代の恋愛譚が現代的なロマンとしてよみがえったという印象が強く感じます。とくに、恋にややおくての薫と情熱的な匂宮が対比されていて、つい「キャラが立っている」と言ってみたくなります。

  • 新源氏物語の続編/宇治十帖
    浮舟は下巻メイン、上巻での扱いが少しひどすぎた

    源氏にも思うところは多々あったが、何故か薫のほうがいけすかない

  • 源氏物語の最後の章「宇治十帖」。
    青年・薫が「・・自分はどこから来たのだろう・・いったい、自分は誰の子なのだろう・・」
    この言葉から物語は始まる。
    「宇治十帖」の主人公薫は光源氏の実の子供ではない。
    こんな悩みを持った薫の物語。
    大君、中の君、浮舟をめぐり、薫と匂宮との関係、それぞれに思いが交錯し
    微に入り細に入りの描写が興味深い。
    時にはくどくなったり、時にはまったりしたり、また退屈したり・・と
    読んでいておもしろい。

  • 宇治十帖はよく面白くないと言われているようですが、こちらの訳だとドラマチックでとても面白いです。薫にはどこまでもムカムカイライラさせられますが、匂の宮のストレートでからりとした女好きは笑って許してしまいそうになるし、翻弄される浮舟が最後にみせた意地も「よくやった」とほめてあげたくなります。

  • 光源氏の子、薫の話。
    いわゆる“宇治十帖”。

  • (2007.05.17読了)(2003.04.26購入)
    源氏物語の第二部です。源氏物語54帖のうちの最後の13帖のうちの「匂宮」「紅梅」〜「宿り木」の8帖が掲載されています。4つ目の「橋姫」からが、宇治十帖と呼ばれるのだそうです。
    光源氏は既に亡くなり、夕霧の柏木の話も、主役の座を降り、薫と匂宮が主役となります。
    薫は、表向きは、光源氏と女三宮の子供ですが、実際は、柏木と女三宮の子供です。
    光源氏の場合は、ブレンドした香を着物に焚き染めていい香りをさせていたのですが、薫の場合は、体からいい匂いを放つという特異体質なのだそうです。
    匂宮は、光源氏と明石の君の間に生まれた明石の中宮と今上帝の間の子供です。
    表向きは、薫と明石の中宮は、異母姉弟ですから、薫と匂宮は、叔父と甥の関係になります。年が近いので、遊び友達でライバルということになります。
    薫は、若いのに、恋よりは、仏教のほうに興味があるようで、宇治のほうで修業している八の宮と親しくなりたびたび訪れます。
    八の宮には、娘が二人いるので、八の宮は、薫に姉娘を嫁がせたいような、薫も結婚してもいいような、お互いに意志をはっきりさせないうちに、八の宮は死んでしまいます。
    八の宮の使用人の中に、柏木の乳母だったひとがおり、薫に出生の秘密を教えます。
    薫は、八の宮の葬儀をとりしきり、その後も、残された娘達の面倒を見ます。
    そのうち、姉娘に言い寄るようになるのですが、姉娘は、妹と一緒にずっといたいと思っているので、薫を受け入れる気はありません。
    薫は、寝室にしのんで行ったりしますが、同意が得られない状態で強引にことに及んだりしないので、思いを遂げる事はできません。
    姉娘は、妹のほうを進めたりするのですが、薫は、姉にこだわります。
    薫は、妹のほうを匂宮に嫁がせ、姉のほうにどこまでもこだわります。
    そのうち姉は、死んでしまいます。
    匂宮に夕霧の娘との結婚話が持ち上がり、妹のほうと過ごす時間が少なくなると、薫は、妹のほうに言い寄るようになります。
    困った妹娘は、八の宮に実はもう一人認知していない娘がいることを明かします。
    薫は、今度は、そちらの娘へと関心を向けてゆきます。
    薫は、セックス経験がないわけではありません。普段は、使用人の中の気に入った娘と仲良くしているようです。身分の高い方々は、なんともうらやましい限りです。
    八の宮の二人の娘達の、刻々と変化する事態の中で、変わってゆく心理描写が実に見事です。1000年も読み続けられてきた物語だけの事はあります。

    ☆田辺聖子の本(既読)
    「甘い関係」田辺聖子著、文芸春秋、1975..
    「絵草紙源氏物語」田辺聖子著・岡田嘉夫絵、角川文庫、1984.01.10
    「新源氏物語」(上)、田辺聖子著、新潮文庫1984.05.25
    「新源氏物語」(中)、田辺聖子著、新潮文庫1984.05.25
    「新源氏物語」(下)、田辺聖子著、新潮文庫1984.05.25
    「むかし・あけぼの」(上)、田辺聖子著、角川文庫、1986.06.25
    「むかし・あけぼの」(下)、田辺聖子著、角川文庫、1986.06.25
    「竹取物語・伊勢物語」田辺聖子著、集英社文庫、1987.07.25
    「おちくぼ姫」田辺聖子著、角川文庫、1990.05.25
    (2007年5月22日・記)

    (「BOOK」データベースより)
    平安王朝の宮廷ドラマの華麗な覇者、光源氏の、因果応報ともいうべき秘められた業を背負って生れた、もの静かな貴公子・薫。彼を敬愛するがゆえに、その切実な求愛に応えることを拒みとおして逝った大君。運命の恋人たちの愛は、さらに変転しながら、川をくだる…。流麗な文章と巧みな構成を以て、世界の古典を現代に蘇らせた田辺版・新源氏物語、待望の完結編「宇治十帖」上巻。

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著者プロフィール

1928年3月27日生まれ、大阪府大阪市出身。樟蔭女子専門学校(現・大阪樟蔭女子大)卒業。1957年、雑誌の懸賞に佳作入選した『花狩』で、デビュー。64年『感傷旅行』で「芥川賞」を受賞。以後、『花衣ぬぐやまつわる……わが愛の杉田久女』『ひねくれ一茶』『道頓堀の雨に別れて以来なり 川柳作家・岸本水府とその時代』『新源氏物語』等が受賞作となる。95年「紫綬褒章」、2000年「文化功労者」、08年「文化勲章」を受章する。19年、総胆管結石による胆管炎のため死去。91歳没。

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