花埋み (新潮文庫 わ-1-1 新潮文庫)

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  • 新潮社 (1975年6月3日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (576ページ) / ISBN・EAN: 9784101176017

みんなの感想まとめ

女性の挑戦と自己実現を描いた物語が展開されます。日本初の女医、荻野吟子の壮絶な人生を通じて、彼女が直面した社会の偏見や困難、そして愛と決断の重要性が浮き彫りになります。若くして結婚し、離婚を経験した彼...

感想・レビュー・書評

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  • 渡辺淳一文学忌 ひとひら忌

    札幌医科大学出身の医師でもあった渡辺淳一氏。これまで医療系・社会派の作品を主に読んできましたが、本作は初読です。

    モデルは、日本初の国家資格を持つ女医、荻野吟子。
    1851年生まれ。まだ女性に学問は不要とされた時代に、無謀とも思える挑戦を重ね、ついに医師となった人物です。

    若くして結婚するも、夫から淋病をうつされ離婚。その経験から女医の必要性を痛感し、家族の反対を押し切って学び続けます。
    やがて開業し、いわば赤ひげ先生のように人々を救う日々。しかし、男性中心の社会や制度、周囲の偏見と常に向き合うことになります。

    長い間、私はこのタイトルを「花摘み」だと思っていました。
    「花埋み」はなうずみ、とは何か。

    その答えは後半にあります。
    彼女は キリスト教の教えに傾倒していき
    クリスチャンとなります。そして、
    志方というクリスチャンの若者と出会い、互いに惹かれ合い結婚。彼の北海道開拓の夢を支えるため、吟子は自らの築いた医業を手放し、過酷な土地へと向かいます。

    咲いていたはずの「花」が、別のものの中に埋もれていく。なぜあれほど 男性に苦しめられながら
    地道な勉学で手に入れたものを手放したのか。
    開拓は結局上手くはいかず、
    札幌で再び開業を模索するも、医学の進歩から取り残された現実を知る吟子。彼女自身に悔いはなかったのかもしれません。それでも、読者としては、その才覚が埋もれていったことに強い惜しさを感じます。

    先日読んだ『らんたん』の時代とも重なり、津田梅子らが自分の夢を叶えていった時代を考えると
    哀しさも感じますね。

    今回 偶然こちらを読むことにしたのですが
    出身地・埼玉では朝の連続テレビ小説の誘致が進んでいるとか。
    まさに、埋もれていた才覚ある女性の物語です。

    • おびのりさん
      ビマキさん
      不倫もの以外が良いかも
      雲の階段は 上下巻で長編ですよー
      ビマキさん
      不倫もの以外が良いかも
      雲の階段は 上下巻で長編ですよー
      2026/05/01
    • ともちんさん
      北海道の作家さん…渡辺淳一さんでしたか⸜(*ˊᗜˋ*)⸝

      誰だろう?誰だろう?って考えてたんです。
      渡辺淳一さんはノーマークでしたフフフ(...
      北海道の作家さん…渡辺淳一さんでしたか⸜(*ˊᗜˋ*)⸝

      誰だろう?誰だろう?って考えてたんです。
      渡辺淳一さんはノーマークでしたフフフ(´^∀^`)フフフ…

      読んだことないんです
      北海道出身なのに…ダメですね(*´艸`)
      2026/05/01
    • おびのりさん
      ともちん
      そして 過酷な北海道の開拓でした
      北海道も 政策に左右されてしまった土地でしたね
      私は 北海道にも行ったことがないんです
      一度くら...
      ともちん
      そして 過酷な北海道の開拓でした
      北海道も 政策に左右されてしまった土地でしたね
      私は 北海道にも行ったことがないんです
      一度くらい行ってみたいです
      2026/05/02
  • 日本最初の女医、荻野吟子さんのお話。
    明治初期の女性の立場があまりにも低すぎて、それに立ち向かっていった女性達がいてこそ今があるのをひしひしと感じた。
    男性にしか認められていない勉強や、男性にしか認められていない医師免許の試験などを一つずつ乗り越えていく姿は素晴らしかった。
    だからこそ、かなり年下の志方との結婚や病院を閉じてまで無謀な北海道開拓へついて行ったこと、その十数年で医療が進歩していることに気づいていなかったことなどが、勿体無いと感じでしまう。ただ、吟子さんには後悔はなかったのだろうな。

  • 二つの意味での驚きであった。一つは、失楽園の印象強い作者の人物像、印象が変わった事。一つは、日本で初めて女医師となった、荻野ぎんという人物、壮絶な人生。

    努力をしなければ、人は進めない。しかし、決断がなければ、人は立ち上がらない。立ち上がらなければ、当然、歩めない。また、歩みを邪魔する他人の価値観がある。ぎんは、立ち上がり、他人の価値観と戦い、歩んだのだ。

    男に運命を翻弄され、故に、一人で生きていく事を決断したぎん。だが、最後には、しかし今度は能動的に、自ら男の人生に連れ添うのだった。

    人の生き方は多様。また、何が良かったかも、人それぞれである。そんな教唆も得られる、読むべき一冊ではないだろうか。

  • 20230924読了
    公美さんに借りる。
    荻原吟子さんの伝記的小説
    初・渡辺淳一でしたが、思ったよりずっと面白かった。なるほど、人気なわけだわ渡辺先生。

  •  この時代の男尊女卑の障害と虐めは想像を絶するもので、それらに対し計り知れぬ覚悟と時に敵意を持って立ち向かってゆく主人公に感銘を受けた。
    登場人物の心情描写、生きた時代は異なるのにその人生を見守っていたかのように愛をもって描いている著者を感じ、自分も近くでその景色を見ているような感覚になった。

     日本初の女医、荻野吟子の生涯を描いた小説。
    「読んでみろし」と父に渡され持ち帰ってきたけれど、難しそうでしばらく本棚に眠っていたもの。
    読み始めてすぐに引き込まれたのでした。

  • 女性に社会的地位のなかった明治初頭に日本初の女医となった荻野吟子の生涯を描いた一冊。
    女が勉学を積み医者になるなど何事かと一掃した当時の閉鎖的な空気が恐ろしい。
    晩年にキリスト教に傾倒し、夫と共に信者の理想郷を建設すべく北海道開拓に乗り出したときに味わった艱難辛苦、この描写が寂寥感溢れるものでまた素晴らしい。
    傑作『阿寒に果つ』でも見せつけられた淡々としていて且つ鋭く重い文体がここでも存分に活かされている。
    やっぱり渡辺淳一の文章は知的で無駄がなくて大好きだわ。

  • 日本で初めての女医である荻野吟子の伝記的なお話だった。明治のまだ女性蔑視の時代、医者になるということがどれほど大変だったかがわかる。なんでも最初にやるというのは大変だ。それをやり遂げた意志の強さに感心した。やがて彼女は医者だけの力ではどうしようもないことがあることを知る。病気を治すには周りの人の協力も必要なのだ。そこにたどり着いて彼女はキリスト教を信仰するようになり、夫となる志方と出会う。彼に出会うことが彼女の人生をがらりと変えてしまう。東京での医師としての名声も仕事も捨て、北海道に行くがそこでの10年の間に医学は進歩しもはや自分の知識と技術は古いものであると知りショックを受ける。志方と結婚したことは彼女にとって良かったのか。愛する人を得たことは良かったのだと思いたい。彼女の残した功績は忘れられることはない。人生は人との出会いで変わるものだと感じざるをえない。

  • 初婚相手にうつされた膿淋がはじまりだった。
    男医者に恥部を見せる屈辱が忘れられず、女は医者を志す。

    荻野ぎん、のちの荻野吟子という日本人女性初の医者が誕生するまでと、それからを描いた長編。
    家族の反対を押しきり
    師匠のプロポーズを断り
    男性だけの学校で執拗な嫌がらせを受けたり
    彼女が挫折する要因はその人生の中で幾度も幾度もあった。
    しかし、彼女は医者になる。

    「男から受ける側の女である性」と立ち向かいながら、彼女は女である私たちに励ましをくれる。

  • 日本初の女医となった荻野吟子の生涯は、まさに波瀾万丈。その学識と行動力、忍耐力は尊敬に値するが、その人生は幸せだったのか?

  • 日本で初めての女性医師の人生、とても興味深く読むことが出来た。

    そこには当然ながら、その価値観が認められない当時の社会からの差別や困難があり、しかしそれに立ち向かい跳ね返し、切り開く強い意志。その実現に至る過程が丁寧に描かれていて読みやすかった。

    それだけに後半は、何かこの作品ではなく、彼女の生き方に残念な感じがあり。それもそういう生き方だったのかもしれないけど。

    なんだかんだで人生を大きく左右するのは、人との出会いって事かな。

  • 日本最初の女医 荻野ぎんの話。
    お嬢様として生まれ、才女の呼び声高く育ち、名家に嫁ぐも夫に淋病を移され離婚。治療で屈辱的な思いをしたぎんは男を恨み、反骨精神を糧に日本最初の女医になる決意をする。差別に立ち向かい夢叶え、信仰を共にする13歳年下の志方のアプローチで再婚。キリスト教信者の理想郷を作るという志方について未開拓の北海道へ。

    プライドが高く、ばかにされることが許せない。男を憎む反面、一度言い寄った男が別の女に乗り換えるとそれもおもしろくない。
    とっても頭がよいはずなのに、理想と情熱だけで計画性のない志方についていき、女医としてのキャリアを捨ててしまう。最終的には社会の変化についていけず、時代の最先端だったはずのぎんが「井の中の蛙」状態となってしまう。
    まさに波乱万丈。

  •  もと1970(昭和45)年に単行本として刊行。
     北海道出身の渡辺淳一さんの文学館が札幌にある。そこでクラシックのコンサートもときどきあるので行くことがあるのだが、この作家についてはあまり興味が無く、これまで確か1冊しか読んだことがない。いやもうちょっと読んでおこうと思い、適当にチョイスしたのが本作だ。
     この小説は実在の人物、荻野吟子の生涯を追った物語である。彼女は日本で初めて、公式の試験を経て女医になった人物だ。
     今からは想像もつかないような古いジェンダー観からくる迫害・妨害を受けつつも念願の開業医になる。この中段辺りはサクセスストーリーとして盛り上がる。が、その後彼女は女権拡張の社会運動に励んだり、敬虔なキリスト教徒になったりして、どんどん脇道に逸れて行ってしまう。せっかく希有の秀才として書き込まれてきたのにそれを完全に生かせない方向に転落するのが読んでいて残念になる。
     文体は非常に読みやすく、心理描写は単純でわかりやすい。わるくいえばステレオタイプな浅い心理描写しかないので、そのへんはやはり「通俗系」の作家なんだなと思う。文学でなくても、テレビドラマの脚本かマンガとしてそのまま成立してしまうところがある。
     ところで、荻野吟子が二度目の結婚をし、「キリスト教の理想郷をつくる」という夫を追って北海道に渡るのだが、彼らが理想郷として作った村はイムマヌエルと称される。これが、日本の土地として登録されたとき「神ヶ丘」となるのだが、どうやら現在の北海道檜山地方、今金町神丘のことらしいのだ。
     神丘は私が就職したときすぐ傍にあった土地で、吟子がさらに移り住んで病院をひらいた瀬棚(せたな)町も、若い頃の私が馴染んだ街なのである。妙な偶然に驚き、なんだか懐かしい気持ちになった。

  • 高校生の頃、図書室の司書さんに薦められて読んだ本です 機会がたまたまあったので再読しました
    当時、吟子の結婚(再婚)がどうしても納得いかず、せっかく念願の女医になり女性の地位向上の活動もしていたのにこんな若さと熱情しかない夢見がちで浅薄な男と一緒になるなんて、と憤慨したものです(友人には笑われました)
    あれから四半世紀経って見方が変わるかな~と思いながら、一気見
    まあ…結婚も開拓について行くのも吟子が選んだことだから他人がとやかく言うものじゃないよね…(目逸らし)
    それはそれとして、淡々と、かつ細やかな描写で書き上げる筆者の筆力の確かさを感じました

    出会った時に男女のあり方について理想を語り合った二人が結婚してから「夫らしい」言動をするようになったり、夫が開拓に行っているのについて行かない妻とは?と悩んだりするのは、旧来の価値観の中で育ってそこから逃れがたい人間の姿とも言えるのですが、この令和にあって私自身も「女性らしく」ありたい、そう見られたい(または、そういう女性を魅力的に感じる)という願望があるのは否定できず、やはりジェンダー的な価値観に縛られているのかなと悩ましいです

  •  
    ── 渡辺 淳一《花埋み 19750603 新潮文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4101176019
     
    (20240918)

  • 日本最初の女医荻野ギンの物語。明治初期においては女性が学問をするものとは考えられておらずましてや医者は男のするものだという考えがあった中、男尊女卑の社会に対抗しようとするギンの熱い信念のもと彼女は初めての女医となる。女医を目指すきっかけは元夫から淋病をうつされたこと、それに対して周りは女性なら仕方ないという考えがあったこと、診察の際に男に見られるという恥ずかしさを受けたことなど多くの理由がある。女医になってからは女性の権利向上を目指したり、キリスト教に入信したりと多岐にわたる社会的活動をし世間からも注目される。13歳年下の志方と結婚し彼のキリスト教徒のユートピア開拓という大きな目的のため北海道に移住したが開拓は失敗に終わり田舎の町医者として最後を迎える。
    封建社会が根強い中才能だけでなく強い信念をもとに行動したことによって今では当たり前になった女性が医者になるという快挙を成し遂げた過程は読み応えがあった。自分も彼女のように強い信念を持って勉強に励まなくてはならないなと痛感させれる。

  • 児童に荻野吟子の調べ学習をさせるために読みました。吟子さんの波乱に満ちた生涯が、渡辺淳一氏の手によって、ドラマチックに、まるで映像を観ているかの如く描かれています。
    前半部分は医者になるまでの茨の道を歩く吟子さんの姿が、後半部分は医師となったあと、新世界を夢みる志方さんによりそう吟子さんの姿が描かれています。
    正直なところ、前半部分だけでよかったかなと思います。後半からは志方さんにズルズル引きずられていく唯の女みたいな感じがして、"え?これが困難に立ち向かったあの荻野吟子?"と、がっかりする場面も多々あります。
    小説はあくまでもフィクションだから…と思うのですが、それでも前半部分の勢いが後半急激に衰えてくる残念さは否めません。

  • 解説がすごく身に染みた。
    「その憎悪が、吟子の存在を支え、女医への道を完遂させた原動力である。その憎悪が吟子の人生の前半の魂と霊を喚びさましたのであり、その憎悪の虚しさの実感が、志方との結婚とキリスト教の仰という吟子の後半生を決定したのである。」

    医師になる上で、覚悟は求められる。世間一般的に、勉強ができかつ性格もよい、体力もある、といういわゆる「天才」が求められる。それは、人の体や命を預かる仕事である以上、当たり前のことであるのだろう。しかし、今の私にその力はあるのだろうか。話す時には言葉がうまくまとまらないこともあり、体力も不安で、勉強もできる部類では無い..
    人間性は周りのことをよく見てる方ではあるだろうが、その心情推察は向いてない(たぶん映画とかみて慣れていくことが求められるのだろう)。医師になるとはどういうことか、改めて向き合う機会となった。

  • 自分が女医なのでいつか読もうと思っていたがやっと読むことができた。いろいろ共感できるところもあり、辛いことに耐えながらもはじめての女医者になれたのがすごい。とてつもなく辛かったことと思う。この方がいなかったら今の自分がないと思うと感慨深いものがあった。

  • 日本初の女医。荻野吟子の半生を特に女医になるまでの記述は、かなり熱量もあり良かった。なんだか立志編という感じで著者も書きやすかったのではないかと思った。その反面、その後の話は、なんとなく書きにくかったのか、断片的で熱量も低い。

  • 主人公が置かれている状況って、今の中東諸国の女性たちに似ているのではないだろうか。女性だというだけで、学問も職業も発言も制限された時代。今のようにどんな職業でも女性が挑戦できるようになるためには、彼女のような人が正面から困難と向き合ってくれたからこそなんだとわかった。
    それにしても好寿院で学んでいるときの男子学生の嫌がらせといったら、本当に低俗であきれてしまう。人としてどうなの?って思ってしまう。まあ、時代背景もあるとはいえ、ひどすぎる!
    どこかのレビューにも書いてあったけど、無駄のない文章で読みやすく引き込まれた。吟子が最後に13歳年下の志方と結婚し、北海道で生涯を終えたことには賛否あるようだけど吟子が自分で選んだ道なのだからいいんじゃない?と私は思います。

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著者プロフィール

1933年北海道生まれ。札幌医科大学卒。1970年『光と影』で直木賞。80年『遠き落日』『長崎ロシア遊女館』で吉川英治文学賞受賞。2003年には菊池寛賞を受賞。著書は『失楽園』『鈍感力』など多数。2014年没。

「2021年 『いのちを守る 医療時代小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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