チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷 (新潮文庫)

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レビュー : 240
  • Amazon.co.jp ・本 (434ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181028

感想・レビュー・書評

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  • 塩野七生さん初期の作品で、独特な作風によるお得意の記録文学です。
    この作品によって、日本に「チェーザレ・ボルジア」という人物を広く知らしめることに貢献したといえますね。
    初期の作品ということで、文章表現に若干の拙さを感じる部分があることや、チェーザレ以外の人物が唐突に登場し過ぎて誰だっけと思うようなことなどはあるものの(笑)、疾風が如きチェーザレの人生に遅れまいとするかのような疾走感溢れる物語展開で目が離せず、とても面白かったです。

    父に法王アレッサンドロ六世を持ち、ヴァレンシア大司教から枢機卿という聖界のトップに立ちながらその座をいともあっさりと捨て去り、俗界ではヴァレンティーノ公爵となり教会軍総司令官としてロマーニャ地方を平定、ロマーニャ公国設立ひいてはイタリア統一も射程にいれていたが父法王の死に伴い没落、31歳の若さで戦死するという波乱な人生には憧憬を禁じ得ないです。まさに人生を大いなる野心のもと凝縮して駆け抜けいったという感じでしょうか。しかも、美青年ということでもあり。(笑)

    内外を恐怖させたチェーザレの、ロマーニャ地方を蹂躙するかのような過酷で果敢な攻めや、平気で二枚舌を使う悪辣さ、酷薄な戦後処置は、彼の冷徹さ、残虐さ、冷酷さを如何なく示すものであったのに対し、それが一転、それと対称となるかのように坂道を落ちるがごとく没落し、哀れを感じざるを得ないほどの落ちぶれようには目を瞠らざるを得ないですね。
    例えていうなら、若さに任せてぶいぶい言わせてきたやんちゃな若者が、鼻っ柱をへし折られ往時の影もなくなってしまったという感じですかね。
    何だ、それならどこにでもいそうなヤンキーな兄ちゃん・・・ではやっぱりないか・・・。(^_^;
    落ちぶれた様は何だかこちらまで哀しくなってきました・・・。

    目的のためには手段を選ばず、己の欲望のみに忠実で計算高い。裏切り者には冷酷な報復を行い絶対に許さない。
    こうした彼の手法はニッコロ・マキアヴェッリをして統治のお手本だと言わしめるとともに、互いに過度な干渉はせず互いの才能を利用するだけ利用しようとしたレオナルド・ダ・ヴィンチとの関係といい、やっぱり才能ある人のまわりには才能ある人が集まってくるのですね。
    自分も集まりたかったなあ。うそ!(笑)

    イタリアの歴史や地理に疎いので地名や人物は何度となく地図や人物紹介を参照する手間があったことや(特に地名はどこに征服に向かったのか都度確かめた(笑))、記録文学という手法からチェーザレを含む登場人物の心情描写がほとんどなかったのはまあいいとして、登場人物の中でこれは重要と思われる人でさえ描写が少なかったこととか(妹ルクレツィアとか弟ガンディア公爵ホアンとか、あるいはジュリアーノ・デッラ・ローヴィレ枢機卿とか)、部下の反乱に至った背景を知るにはあまりにも唐突感があったことなど、もう少し丁寧に描いてもらえればより理解が深めれたと思うシーンが多々あったことは否めないながらも、冒頭の「読者へ」で作者自身も若書きということで欠点はあるけれどあえてそのままにしてあると書いてあって、そのような「若さ」も含めてページ数を感じさせないスピード感が魅力的な物語であったと思います。

    • 佐藤史緒さん
      延長線上というより、ど真ん中ストライクですね(笑)美青年君主だけでなく美青年従者をセットで描くところがポイント(?)と思います。

      塩野...
      延長線上というより、ど真ん中ストライクですね(笑)美青年君主だけでなく美青年従者をセットで描くところがポイント(?)と思います。

      塩野さんは最近はギリシア人の物語を書いているそうですね。中でもハンニバルの戦いの巻が銀英伝ばりに面白いという噂を小耳に挟みました。いつか読んでみたいものです。
      2017/06/20
    • 佐藤史緒さん
      失礼しました。ハンニバルはギリシアじゃなくてローマの方ですね
      σ(^_^;)
      失礼しました。ハンニバルはギリシアじゃなくてローマの方ですね
      σ(^_^;)
      2017/06/20
    • mkt99さん
      佐藤史緒さん、こんにちわ。
      コメントいただきありがとうございます!(^o^)/

      ははは。やっぱりど真ん中でしたか!(^o^)
      どー...
      佐藤史緒さん、こんにちわ。
      コメントいただきありがとうございます!(^o^)/

      ははは。やっぱりど真ん中でしたか!(^o^)
      どーりで美青年くさい(?)と思いました!(笑)
      なるほど、従者も美青年!?確かにその通りでした。ワン・ツー連続で怒涛の寄せということですね!(笑)

      塩野さんの描くハンニバルの戦いは銀英伝ばりなんですか!
      それは機会があれば是非読んでみたいところですね。(^_^)
      ハンニバル将軍といえばアルプス山脈越えが有名ですが、そういえば銀英伝にも似たような話があったかも。(笑)
      ご紹介いただきありがとうございました。m(_ _)m
      2017/06/21
  • 従来のチェーザレのイメージとは異なり、マキャベリの「君主論」に近い英雄的な姿を表した書。
    読んでいて半世紀遅れて日本に現れる織田信長にとても酷似していると感じた。手向かうものには容赦なく冷酷に対峙するが、能力を認めた者(この場合、ダビンチ)は登用し、近くに侍らす(マキャベリ)。
    30歳そこそこで死んだチェーザレは時代を駆け抜けた英雄であったことには間違いない。

    • やまさん
      おはようございます。
      きょうは、快晴です。
      体に気を付けていい日にしたいと思います。
      やま
      おはようございます。
      きょうは、快晴です。
      体に気を付けていい日にしたいと思います。
      やま
      2019/11/16
    • kakaneさん
      おはよう御座います。
      コメントありがとうございましす。
      今日は本当に快晴で気持ちがいいですね。
      充実した1日をお迎えください。
      おはよう御座います。
      コメントありがとうございましす。
      今日は本当に快晴で気持ちがいいですね。
      充実した1日をお迎えください。
      2019/11/16
  • マキャヴェリの『君主論』を体現するような生き方を示したチェーザレ・ボルジアの伝記小説です。

    むしろ自分にとっては、『君主論』の向こうにチェーザレという男の生き様を透かし見ているからこそ、権謀術数を説く『君主論』という書物に生き生きとした魅力を感じているのではないかという気がします。もしチェーザレの存在がなければ、『君主論』はただ読者を鼻白ませるだけに終わっていたのではないかとさえ思います。

    チェーザレの行動を端正に記していく文章も、彼のキャラクターにどこか似つかわしいと感じられます。

  • まず、タイトルが美しい。本書16ページの、チェーザレ・ボルジアの肖像が、「あるいは優雅なる冷酷」という言葉を裏付けるようだ。

    読後感は、「燃えよ剣」を読み終えたときに似ている。目的のために手段を選ばなかった、という点でも、チェーザレ・ボルジアと土方歳三はどこか似ているような気がする。その生涯の短さも。その最期の姿さえ。

    たった31年の生涯に、良くも悪くも、彼はどれだけのことを成したのか。成し得たことは彼の才によるものだが、没落は、彼の政治的基盤がすべて法王たる父にあったことが原因だろう。父の死のタイミングこそが、彼の命運を決したのだと思う。華やかに表舞台に登場し、瞬く間に上り詰め、あっという間に失墜した。

    イタリア統一。

    ガリバルディによるそれは、確か19世紀半ばのことだ。チェーザレが生きたのは、15世紀後半から16世紀に入った頃まで。歴史に「IF」はないけれど、父である法王があのときに死ななかったなら、そしてそのときにチェーザレ自身が病床についていなければ。イタリア半島が「イタリア」になったのはもっと違う日だったのではないかと、そんな壮大な夢を見たくなるような人物に、塩野氏はチェーザレを書き上げている。

    マキァヴェッリの「君主論」は、現代の政治・国家のあり方にはなじまないものであるかもしれないが、確実に、「それ」を必要とした時代があった。少なくとも、マキァヴェッリはそう信じ、彼をそう信じさせるに足りうる人物がその時代には存在した。

    チェーザレ・ボルジアというのは、たぶんそんな人だった。

  • なぜ人間の中には、どうしようもなく悪に引き寄せられる部分があるのだろうか。
    欲望のままに生きる姿を心の底ではうらやましく思うから?
    目的のために手段を選ばぬ強さに憧れるから?

    大抵の人間は当為の声に従って生きていくが、稀にそうでない人物も現れる。
    チェーザレの所業はお世辞にも褒められたものではなかったが、それでもどこか惹かれる部分がある。
    悪の美学という言葉がよく似合う男だ。
    そもそも悪とは何なのか、どう定義づければ良いものか、考え始めたら自分でもわけがわからなくなった。

    彼の理想とした王国を見てみたかった気がする。
    彼は政治のうえでは冷酷にして残虐な面もあったが、無意味に民衆を傷つけることはしなかった。

  • 塩野七生さんの初期作品、最近でこそボルジア家の研究が進んでいるが、発表当時「中世のイタリア史」に興味を持つ読者は少なかったはず。

    内容は「ローマ人の物語」より濃い。塩野七生さんの才気爆発の一冊。

    ダ・ヴィンチとの出会いも、さもありそうな設定。



    チョーザレ・ボルジアというより父親であるローマ法王アレクサンドル6世の海外ドラマシリーズを「ボルジア欲望の系譜」「ボルジア家 愛と欲望の教皇一族」2シリーズ続けて観た、観てしまった。

    今日のバチカンやカトリック教徒はこのドラマの描く酒池肉林のローマ法王庁世界をどう評しているのだろうか、嫌悪と否定というよりあきれかえって言葉もないのではなかろうか。

    キリスト教に縁のない日本人視聴者としてはあまり知ることのない15,6世紀のイタリア情勢をなるほどと関心しながら興味本位に観てしまった。

    日本人がチョーザレ・ボルジアを知るのはマキャベリが君主論で理想の君主としてあつかわれていることの意外性、あるいは塩野七生の「チョーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」でのチョーザレである。

    15,6世紀の日本といえば応仁の乱後の室町、安土桃山の戦国時代、織田信長をチョーザレ・ボルジアに見立ててもそう違わない。

    マキャベリが君主論で「君主が臣下に忠誠させるためには残酷であっていいし、君主は恐れられるべき」といえば「君主論」はまさに秀吉、家康の方法論である。

    超人的な武将チョーザレもアレクサンドル6世が亡くなると力を失いスペインに亡命を余儀なくされる。

    マキャベリが「イタリア統一と安定」期待の君主はわがままな坊ちゃまにすぎなかったが、はるか彼方の島国で「君主論」と同じ方法論が実践され3世紀も統一と安定が図られた、とは皮肉である。

  • チェーザレ・ボルジアの生涯を描いた塩野作品。惣領漫画「チェーザレ」とあわせて、チェーザレという人物、また中世イタリア自体に興味を持った。冷静な意思決定と大胆な実行。現代を生きる自分の中で、殊更響いた教訓。

  • 最初はイタリアの歴史が全く分からず苦労しましたが、段々はまっていきました。
    これはチェーザレかっこいい! っていう感想に尽きますね。
    沢木耕太郎さんの解説もよかった。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「これはチェーザレかっこいい!」
      タイトルの秀逸で、チャザーレの人物像そのものです。。。
      チェーザレ・ボルジア関連で、読みたいと思っているマ...
      「これはチェーザレかっこいい!」
      タイトルの秀逸で、チャザーレの人物像そのものです。。。
      チェーザレ・ボルジア関連で、読みたいと思っているマンガが、惣領冬実の「チェーザレ 破壊の創造者」(結構絵が整っているので)、、、
      2013/02/19
    • ayahさん
      nyancomaruさん、こんにちは!
      そうですよね、タイトルが兎に角カッコいいですね!イタリアの歴史が結構複雑で、骨が折れましたが、漫画の...
      nyancomaruさん、こんにちは!
      そうですよね、タイトルが兎に角カッコいいですね!イタリアの歴史が結構複雑で、骨が折れましたが、漫画の方が分かりやすいかもしれませんね。私も読みたいです。^^
      2013/03/26
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「イタリアの歴史が結構複雑で」
      ですよねぇ~
      こう言った物語を読む時は、人名地名事典が有ると嬉しいです。。。
      「イタリアの歴史が結構複雑で」
      ですよねぇ~
      こう言った物語を読む時は、人名地名事典が有ると嬉しいです。。。
      2013/05/07
  • すんなり読み下せない日本語が多くて読みづらい。この修飾語はどこにかかっているのか?主語はどっちなのか?指示語はどれを指しているのか?もちろん、注意深く読めばわかるのだけど、つまり注意深く読まないと何行か戻って読み直すはめに。文の組み立てを工夫すれば読みやすくなるのになー?
    エピソードは盛りだくさん。イタリアはさほど大きな土地ではないけれど、小国がひしめき、チェーザレは謀略をめぐらせ軍隊を率いて駆け回る。しかし中盤あたりは似たような繰り返しのように思えて、何度も読むのを挫折しそうになった。
    歴史書のような体をなし、小説ではないので内面描写はでてこない。それゆえ登場人物の行動にいまいち合点がいかぬまま、「よくわからないけど、でも史実ではそうなっているのね?」といったところも多数。
    織田信長を連想してしまうのはわたしだけか。親に大事にされ、親の威光の下で躍進していた点では違っているが。そばにいて欲しくはないが、遠くから見ている分には魅力的な人物だと思う。

    そういえばチェーザレに関する話を読むのは3つめ。最初に川原泉の「バビロンまで何マイル?」でチェーザレのエピソードを読み、連載中の惣領冬実の「チェーザレ」も読んでいる。それぞれチェーザレのイメージが似ていたり、違っていたりするのが面白い。惣領さんの描くチェーザレは文句なくかっこよく、良心も持ち合わせているように思えるけど、この先どうなるかな…。

  • 本当はどんな人だったのか、とても気になる人物。

    謀殺、守る気なしの講和条約、降伏→安全を保証→1年後に謎の死、、そういう仕事ばかりと言えばそうだけど、傭兵からの脱却(→徴兵)やイタリアの統一など新しいことも見えていて、何より、いずれに対してもたくさん行動してきた。それをマキャヴェリが話し相手として観察し、のちに有名な作品として残したことで、彼の一生も少しは、単なる悪役として以外にも、きちんと刻まれることになった。
    この人とは絶対同盟とか組みたくないし、どこに魅力があるのかわからない。でも魅力がない訳ではない。どこにかわからないけど、妙にある。マキャヴェリさんは彼をどういう風に説明したのか、読んでみたくなる。しかし、これが政治哲学のひとつの見本になってしまうってこわいわ。。

    結局は、親(法王)の権力と自身の健康が同時に崩れたときに力を失い、そのままそれを取り戻すことはなかったけど、もしあの病気がなくて、ナヴァールの不運がなかったら、イタリアはもっと早く統一されて枢軸国側にはなってなかったかも?

    時代としては、1490-1510あたり
    ルネサンスの後半、宗教改革前夜、スペインを誕生させた両王の晩年でカールVがまだ子ども、ヘンリーVIIIもまだ子ども、コロンブスがイザベルにインドインド言ってアメリカにたどり着いて悪いことしてた頃、、
    アジアだと、斎藤道三の生誕〜10代くらい、明の真ん中へん、コンスタンティノープル落とした恐怖の父に育てられたバヤズィトIIが国内で静かにしてた頃。

    免罪符のこともあるにせよ、平常時からこんだけ好き放題してたらそりゃルターさんも怒るわな。神は信じるけど、教皇とかはうちらは知りませんってグループができるのも当然。


    しかし、中国とか日本の話以外、一国の内側の戦争を詳しく読む機会があんまりなかったので久しぶりというか新鮮。足利将軍家の影響下で戦国大名同士が騙し討ちし合うのと構造少し似てる感じするし、時代も同じ。やってることは同じだけど、日本の戦国時代よりは何となくスマートなんかな?(たぶんさほど違いはない)

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