海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年 1 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
4.10
  • (120)
  • (135)
  • (74)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 1211
レビュー : 106
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181325

作品紹介・あらすじ

ローマ帝国滅亡後、他国の侵略も絶えないイタリア半島にあって、一千年もの長きにわたり、自由と独立を守り続けたヴェネツィア共和国。外交と貿易、そして軍事力を巧みに駆使し、徹底して共同体の利益を追求した稀有なるリアリスト集団はいかにして誕生したのか。ヴェネツィア共和国の壮大な興亡史が今、幕を開ける。「ルネサンス著作集」中の大作、待望の文庫化、全六冊。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ローマ帝国末期、
    蛮族の侵入によって1000年もの間続いたローマ帝国は、遂に崩壊の危機に瀕していた。

    その時に、
    海の上へ逃げた民族。
    それが水の上の都と言われる
    ヴェネツィアの人々だ。

    海の上と言っても、
    実際に海の上に逃げ込めるわけではないので、入り組んだ沼地の中に逃げ込んだのだった。

    そこにしか道がなかった。
    川を越えて山へ入ることも叶わず、近辺の街へ入ろうにも、今まさに蛮族が首都ローマを目指して、略奪のかぎりを尽くすその進路進行上に逃げることなどは不可能。

    残された道は、その沼地にしかなかったのである。

    そこから生まれた国の物語が、
    ヴェネツィア人の物語なのである。


    沼地の上では、
    家を建てようにも、
    通常の陸の上での建て方では、
    建物は立たない。

    ゆえに、
    沼地の中の泥の更に下の層に、
    びっしりと無数の尖った木を打ち込む。
    その打ち込んだ木の上に、石柱を置き家の土台とする。

    その木さえもその沼地にはないのであるから、これもまた外部から取り寄せるしかない。

    つまり、
    ヴェネツィアは完全なる非自給自足国家であったのだった。

    そんな完全非自給自足国家に残された道。
    それは、海運国家しかなかった。
    海へ出ることである。

    海へ出て、豊かになる方法は2つに1つ。
    交易に従事するか、海賊を業とするか。

    ヴェネツィアは前者を選び、
    一千年もの間自由と独立を保ち続けたのであった。

  • 蛮族に追われてラグーナに逃れ、そこから文字通り物理的にも制度的にも都市国家ヴェネツィアを創立し、やがて高速海路網を確立するにいたる第4次十字軍までを描く。ここで特筆すべきなのは、他の一般の歴史書とは違って、「物理的な建国」をヴェネツィアの基礎として位置づけていること。まず、何はともあれ、それこそがヴェネツィアだけが持つ特異点なのである。また、冒頭に紹介される守護聖人サン・マルコのエピソードも実にヴェネツィアらしい。すなわち、それが例え禁を犯したものであろうと、お金で買ったものであろうと全く気にしないのだ。
     守護聖人サン=マルコと、それに伴う有翼の獅子のシンボルを手に入れたことは、それ以降のヴェネツィアの発展に大いに寄与したに違いない。それにしても、いともあっさりとそれまでの自分たちの守護聖人、聖テオドーロを捨て去るところがヴェネツィアのヴェネツァイアたるゆえんだ。マキアヴェリでさえ驚くに違いない。

  • 塩野七生のヴェネチア史である。全6巻、本巻はヴェネチアの誕生、アドリア海をつなぐ「海の高速道路」の完成、第四次十字軍の顛末とヴェネチアが得たリターンである。西暦452にアッティラの略奪を避けるために、ラグーナに逃げたのがヴェネチアの始まりで、その後、ロンゴヴァルドやフランク王国ピピンなどが攻撃してきた。フランクとの戦いでは、航行可能な水路を示す杭を引き抜き、座礁した敵船を襲うという戦法で勝利したが、ヴェネチア人はこの戦闘を教訓にそれまでのマラモロッコからラグーナ深奥のリアルトに国家中枢を移し、そこに落ち着く(800年頃)。この建設過程、杭をうちこみ基盤をつくり、石で海水をふせぐという土木建築、また、雨水を利用した取水なども書いてある。991年から元首(ドージェ)ピエトロ・オルセオロが、東ローマからアドリア海の「警察」をひきうけることで、コンスタンティノーブルにおける特権を獲得した。そして、アドリア海の海賊を掃討、基地港をアドリア海に数珠つなぎに建設することに成功した。1202年、第四次十字軍の運送に携わることになったが、ヴェネチアは4500の人と馬、2万の歩兵からなる軍隊を輸送する船舶・糧食を準備したのに、十字軍に参集した戦力は3分の1にしかならなかった。また、十字軍は代金も払えない状態で出発が3ヶ月も延び、最初の目的地は、ハンガリーが占領したアドリア海の都市ボーラ攻略だった。ボーラ奪還はなるが、そこに神聖ローマの権力闘争ではじきだされた皇子が助けを求めにきて、皇子に肩入れしてコンスタンティノープルを攻略することになる。いろいろあって、コンスタンティノープルが陥落、3日間の略奪が行われた。結局、ヴェネチアの元首は東ローマの八分の三をもつことになり、エーゲ海を制覇、東地中海に君臨する。ヴェネチアは領土的野心を持たず、海岸の拠点確保だけに終始した。ローマ教皇はボーラ攻略時に第四次十字軍を「破門」した。フランス騎士たちは破門を避けるため、釈明に奔走するも、ヴァネチア人は「破門」されても釈明もしなかった。基本的には「はじめに商売ありき」で、「まずヴェネチア人、次いでキリスト教徒」であった。ヴェネチアは共和国で、アンチヒーローの国柄であって、フィレンチェとはこの点がちがうらしい。なお、塩野氏によれば、「現実主義」とは「現実と妥協する」ことではなく、「現実と戦う」ことだそうだ。

  •  「はじめに、商売ありき」の合理的な考え方をもっている、ヴェネツィア共和国の1000年に及ぶ歴史について描かれた本。初めに描かれていた第4次十字軍の話はとっても面白かった。自分たちの利益を最大限になるように考えつつ、大国の力をうまく利用していくところがとても面白かった。

     海洋都市であった4国家の比較も面白かった。これにより、ヴェネツィアの異質性がよくわかった。また、ジェノヴァとの戦いは熱いものをかんじた。ヴェネツィアの政治制度であるドージェや十人委員会および国会による権力分立制度はとっても素晴らしいものであり、日本も見習うべきだとは思ったが、この制度が維持できたのはヴェネツィア人の性格があってこそだろう。なぜならば、今の日本の政治家では、このヴェネツィアの方々のように国を想う気持ちはほとんどないだろうから。

     さらに、ヴェネツィアの商魂には驚かされた。トルコとの戦いでの大損を取り返そうと和平条約を締結した際にすぐ大使をコンスタンティノープルに派遣し、そのつなぎに捕虜となっていたヴェネツィア人を使うところもさすがだと感じた。このようにチャンスを逃さない姿勢が1000年繁栄できた要因なんだろう。

     この後、経済的発展に伴って、政治的・文化的に成熟していき、衰退していく。という人の一生だったら充実してやまないような一生だろう。奢れるものというより、平和でありすぎた故の外交感覚のマヒ。今の日本を見ているような気もした。

  • 長い!でも面白い!現代では観光地でしかない、キリスト教圏ではありえないエコノミックアニマルなヴェネツィアの栄枯盛衰を描いた歴史小説。
    しかし、政治・外交・文化を描きつつ、魚介類と塩しかない一都市国家が、地中海貿易で栄華を誇ったのは何故か?という疑問に答えてくれる。

    ヴェネツィアと変わらない日本にとって必読の一冊。

  • 比較的分かりやすい。ベネチアの歴史とテーマがピンポイントだし、なかなか読みやすくて楽しんで読める。とは言っても色々難しいので、ある程度事前にキリスト教についてや十字軍、コンスタンティノープルやビザンチン帝国についてなどなど、知識をつけておくとより良い。
    イタリア旅行をした時にベネチアに魅入られて読んでみた。
    所々に地図が差し込まれているが、もっと沢山入っていてほしい。あと人物相関図とか。

  • 大河ドラマ同様、ノンフィクションではないのだろうが、だからおもしろいのか?

  • 全6巻。

    7世紀に始まった共和国が18世紀になくなるまでの1000年の通史。

    海洋国家の栄枯盛衰の歴史だった。共和国の制度を維持し続けたことに驚くばかりだ。

  • ローマ帝国滅亡後、他国の侵略も絶えないイタリア半島にあって、一千年もの長きにわたり、自由と独立を守り続けたヴェネツィア共和国。外交と貿易、そして軍事力を巧みに駆使し、徹底して共同体の利益を追求した稀有なるリアリスト集団はいかにして誕生したのか。ヴェネツィア共和国の壮大な興亡史

  • 1話目2話目の導入には『ローマ人の物語』に比べればややまとまりに欠ける印象だが
    第四次十字軍を扱う3話はいつものイタリア好き好き塩野節がとても楽しい

全106件中 1 - 10件を表示

塩野七生の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印

海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年 1 (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする
×