海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年 (4) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181356

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  • 恐怖の大王、オスマントルコのマホメット2世とヴェネチアとの死闘の巻。常勝陸軍国家トルコにビザンチン帝国は滅ぼされ、エーゲ海最大のヴェネチアの拠点、ネグロポンテも奪われ、この時期、キリスト教国家、そしてヴェネチアは完全に劣勢に立たされる。しかし、マホメット2世の死が趨勢を変えるのか⁈
    後半のサンド・ブラスカの旅行記は当時の世相を感じられ、面白かった。

  • 『コンスタンティノープルの陥落』の前後のお話。
    自国の天然資源といえば魚と塩しかない一海洋都市国家が、オスマン大帝国と必死に渡り合う巻。
    かくも不安定な状況下で同じ政体が1000年続いた、というのは改めてすごい。

    マホメット2世が、「降参しても首は刎ねない」、と約束したあと、投降者の首ではなく胴体を真っ二つにした、という話は怖過ぎ。

  • 4巻はいよいよ宿敵トルコがメーンに。ジェノヴァを倒し地中海に覇を唱えたヴェネツィアは、異教徒ともプラグマティックにビジネスをしてきた。だが、風前の灯だったビザンツ帝国はついにトルコに滅ぼされ、ヴェネツィアとトルコのパワーバランスが変化し、好戦的なスルタン、マホメッド(メフメト)2世の登場で衝突は避けられなくなる。
    キリスト教徒である前にヴェネツィア市民であった彼らはローマ法王の力も借りながら戦いに挑む。ペルシャも絡む。ヴェネツィアにとってアルバニアの英雄スカンデルベグの死は痛かった。世界史で学んだとはいえ、この先の展開が楽しみになる。

    後半は当時の新興ビジネスである聖地巡礼旅行の再現。これだけ組織的にビジネスを動かすヴェネツィアはさすが。筆者の描き方もよく、当時の信仰心の篤さと、十字軍が終わってなお平和的なキリスト教とイスラムの交流がこのような形で続いたのかと感心することしきりでした。

  • 対トルコに苦戦しながらも、持ち前の賢さとスピードで巧みに生き延びていくヴェネツィア。聖地巡礼ツアーの抜け目なさには、呆然とするばかり。しかも悪どさは一切ない。現代人もある意味で見習うべきかもしれない。

  • 四巻目は宿敵トルコの台頭と、ヴェネツィア航路を使った聖地巡礼パックツアーについて。
    合理主義者は根本的な間違いを犯すことがある。合理的に考えて相手がそんなことをするはずがないと思ったことでも相手はすることがあるのである。その事は当時のヴェネツィア外交官が「良識とは受け身に立たされた側の云々することなのだ。行動の主導権をにぎった側は、常に非良識的に行動するものである」と嘆いている。このことはいつの世になっても、外交問題の普遍性を示している。日本の近くのかの国をみればそれがわかる。
    また、ヴェネツィアはその航路と後悔技術で聖地イェルサレムまでの巡礼ツアーを組んでいた。儲けられるところは儲けるのがヴェネツィアのやりかたである。

  • <宿敵、トルコ>
    海洋国家でもなく、キリスト教でもない、規模の違うトルコとの対立。自分たちとはまったく違う相手との問題に、立ち向かうヴェネチアが書かれている。
    P41マキアヴェッリ
    現実主義者が誤りを犯すのは、自分達が合理主義者でリアリストなものだから、非合理的に行動する相手を理解できないからなのだ。

    <聖地巡礼パック旅行>
    読んでいてとても楽しかった。
    旅行の安全性や移動の大変さは現代と違うけど、旅行のワクワク感や観光の感想とかは今も昔もそれ程変わらないんだなと思えた。

    「コンスタンティのープルの陥落」「レパントの海戦」

    2010/11/11読了

  • 15世紀後半までのオスマントルコとの戦争・外交
    また、ヴェネツィアによる聖地巡礼パック旅行の記録

  • オスマントルコ、マホメッド2世との戦い。コンスタンティノープルを陥落させた強力な敵。戦と交渉で凌ぐ。
    旅行記は当時の様を同時代にいるかのように読めて楽しい。ヴェネチアの歴史のうねりの中で小休止した気分。

  • 中世においてさえ、キリスト教の教義よりも自国の利益を優先させていたヴェネツィアだが、トランプ大統領の“アメリカ・ファースト”みたいな傲慢さが感じられないのは、資源に乏しく人口も十分でない中、生き残る為には大国相手の外交努力を怠らず、いざ戦争となったら、国を挙げて戦わざるを得なかったから、か。

  • 国土も資源も貧弱にもかかわらず巧みな外交と海軍力で繁栄を続けてきたヴェネツィアに国力ではるかに勝るトルコが立ちはだかるようになる。賢い若きスルタンはヴェネツィアの予想を覆して勢力を広げてきた。様々な戦の記述の詳細は忘れてしまったが、電話もテレックスもない時代に敗戦を知ってショックを受けるのが1か月とか2か月後という中で、スパイを放って情報を集めていたというのが興味深い。考えてみれば日本の忍者も同じころ同じようなことをしていたわけだ。
    この巻は後半のエルサレムへの聖地巡礼パック旅行の様子が圧倒的におもしろい。カメラのない時代に金持は画家や版画家を連れて巡礼に出かけたそうだ。お蔭で読者はそのときの訪問地の様子を見ることができる。ヴェネツィアは国を挙げて巡礼ビジネスをやっていて、客としては至れり尽くせりなので、少し遠回りでもヴェネツィアから出かける巡礼者が多かったとのこと。たしかに初めていく長旅なのだから、自国の言葉で持ち物その他のアドバイスを得られるのは大助かりだったに違いない。航海中に命を落とす巡礼者もいた中、無事に数か月の旅を通じてきちんと記録をつけてくれた官僚の旅行記をもとにしたとのこと。やはり記録は大事だ。この官僚は後に神聖ローマ帝国への大使になったそうだ。

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