皇帝フリードリッヒ二世の生涯 上巻 (新潮文庫 し 12-102)

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  • Amazon.co.jp ・本 (500ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181486

作品紹介・あらすじ

12世紀が終わる頃、神聖ローマ皇帝とシチリア王女の間に一人の男子が生まれた。少年は両親をはやくに失い、絶大な権力をもつ法王の後見を受けたが、帝位に登り、広大な領土を手中にすると、法王との関係が緊張。法王に十字軍遠征を約束するが、剣ではなく交渉を選んだことでますます反感を買い、ついには破門に処されてしまう……。生涯を反逆者として過ごした中世を代表する男の傑作評伝。

感想・レビュー・書評

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  • 皇帝フリードリッヒ二世の生涯 上巻
    文庫版
    著:塩野 七生
    新潮文庫 し 12 102

    「玉座に座った最初の近代人」
    第6次十字軍で、聖地エルサレムを無血開城し、イスラムと融和、武力を使わなかった叡智の人
    強大なローマ教会勢力から、封建領主を保護して、封建制度を維持しつつも、法治国家をめざした人
    イスラム世界から、文化を取り入れ、ラテン語、イタリア語に翻訳して、ルネサンスへの道を拓いた人

    上巻は、その生誕から、第2次ロンバルディア戦役によるフリードリッヒによる平和まで

    気になったのは、以下

    すべてはあるがままに、そして見たままに書くこと
    科学上の経験がないところに、真の知識は、生まれない
    歴史は鏡である

    天涯の孤児になって以後の十年間、満年齢ならば四歳から十四歳までの十年間を、フリードリッヒは、言ってみれば「独学・独歩」で通すのである

    思えば皮肉だが、アッシジのフランチェスコと皇帝フリードリッヒ二世という、中世に生まれながらルネサンスの先駆者になる二人ともが、中世そのものという感じのこの法王に認められたことで飛躍の機会をつかんだのだからおもしろい

    カプア憲章:王国の統治は、力の論理を廃し、法に基づいて行われる

    剣を交えないで済むためにこそ剣をたずさえていく
    この点が、他の十字軍とフリードリッヒの十字軍のちがいであった

    皇帝フリードリッヒ2世は、その生涯を通じて学芸の奨励に熱心であった

    フリードリッヒという男は、嫌い人間は寄せつかなかった
    そして、フリードリッヒの好感情は、アル・カミールの親書によって決定的になる

    歴史を書きながら痛感させられることの一つは、情報とは、その重要性を理解できた者にしか、正しく伝わらないものであるということだ

    人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない
    多くの人は、見たいと欲する現実しか見えていない
    情報を活用できるのは、見たくない現実でも直視する人だけなのであった

    皇帝とは神よりその任務を委託された身である以上、その統治が法による正義に基づいて行われているかどうかを見極める責務は彼にある、と明言する
    ただし、明言したということは、責任の所在もはっきりさせたということになる
    そして、この一事こそが、彼の「憲法」、ないし、「憲章」の根幹になるのだった

    本質的には武人ではなく政治家であったフリードリッヒは、可能ならば常に、武力による解決よりも話い合いによる解決を選んだ

    目次

    文庫版への前書き、あるいは、読者への手紙
    読者に
    第1章 幼少時代
    第2章 十七歳にして起つ
    第3章 皇帝として
    第4章 無血十字軍
    第5章 もはやきっぱりと、法治国家へ
    第6章 「フリードリッヒによる平和」(Pax Fridericiana)
    図版出典一覧

    ISBN:9784101181486
    出版社:新潮社
    判型:文庫
    ページ数:500ページ
    定価:950円(本体)
    発売日:2020年01月01日

    下巻 目次

    第7章 すべては大帝コンスタンティヌスから始まる
    第8章 激突再開
    第9章 その後

  •  著者が長年書きたいと念じていたフリードリッヒ二世の生涯を描いた作品。

     
     上巻は、誕生から始まり、神聖ローマ帝国皇帝即位、第6次十字軍におけるイスラム側との交渉によるイェルサレム回復、ナポリ大学の設立やメルフィ憲章に見られる皇帝を中心とする法治国家づくり、法王との対立、「法王派」に組するロンバルディア同盟との戦いなどが描かれる。

     彼は、父ハインリッヒ六世(神聖ローマ帝国皇帝)、母コスタンツア(ノルマン朝シチリア王ルッジェロ二世の娘)の子として1194年に生まれ、三歳で父を亡くし、シチリア王に即位、その直後四歳で母も亡くしている。こうした厳しい状況にありながら、その出自もあり、神聖ローマ帝国皇帝の座に就くことになった、そんな彼が、どのような国の形を考え、いかにして自らの理想とするところを実現していくかに著者の関心があるようだ。
     
     中世という時代に生まれ、時代にあまりにも先んじてしまった人だったなというのが、読んでの先ずもっての感想。
     例えば、十字軍と言えばイスラム教徒との戦争による聖地奪還が当然視されていた時代に、交渉による講和を実現し、その咎でローマ法王から「キリストの敵」と断罪されてしまったことや、近代の先駆けともいうべき中央集権的な法治国家づくりを目指したことなど。

  • 中世ヨーロッパに生まれ、神聖ローマ帝国皇帝として13世紀にかけて中央集権国家を築き、政治の面で神からの解放を進めたフリードリッヒ二世の生涯を塩野先生が書いています。

    大きな目標を成し遂げるときは、合理的・現実的な選択の積み重ねで実現していくというのが王道の手段というのは、いつの時代も変わらないのかな、と思いました。

    一番印象に残った文章
    「法律は、施行しだいで良き法にもなれば悪法にもなる。それを常に意識しているのが統治者の責務の第一になるが、忠実に実施することこそが法の番人の責務と信じて疑わない人々から見れば、これさえも既成の秩序の破壊に映るのだった。」

    これとセットで、異端裁判所の話が心に残る。
    自分たちのしていることが正しいと信じて疑わない、と偏ることがいかに怖いかは、新型コロナで社会がギスギスしている今だからこそ強く感じる。
    (結局、人の心っていつの時代も変わらないんだね)

    自分の考えや信念を信じることは大切だけど、もう一人の自分がいかに客観的に自分の偏りを見られるかも大切だと感じた。

  • 塩野七生先生が描きたかったという、皇帝フリードリッヒ二世。

    中世では、異端ともされてしまうくらいの圧倒的な先駆者。神聖ローマ帝国の皇位とともにシチリア王国の王位までももちながら、イェルサレムを無血開城してしまい、ローマ法王に破門されてしまったりもする。彼の信念は貫かれており、「皇帝のものは皇帝に。神のものは神に。」であった。だからこその、イスラムのスルタンと学問での友達にもなれたのだろう。

    時代が時代ならば、もっと名君として君臨できたのではないだろうか。

    彼の一生を描くには、ローマ人の物語やヴェネツィアの物語、十字軍の物語などなどの前段階がないと書けないような濃厚な作品に感じられた。

  • いや、神聖ローマ帝国なんて、高校生の世界史で習ったことがあるだけで、その後40年全く関係のない生活を送って来た立場からいうと、この人がどんな人だったのか何をしたのかなど記憶はまったくありませんでした。世界史も苦手だったし。歴史的記述が淡々とした語り口で繰り出されるので非常に読みやすく好ましいです。歴史に学ぶというか歴史上の人物に学ぶということが可能になります。

  • 本書の時代は日本では鎌倉時代か。この時代にヨーロッパでこんなダイナミックな動きが進行していたとは全く知らなかった。いや面白い、中世ヨーロッパにこのような君主がいたとは。
    歴史上の人物を、現代人に理解できるような文章で魅力的に紹介することが著者の得意とするところなのだろう。
    小生は「ローマ人の物語」を読むのが楽しく、あの大部冊を繰り返し愛読した。
    本書の主人公は「カエサル」の次くらいにいい男である。著者は惚れた男を描くと文章が光る。
    「フリードリッヒ二世」、世界史で名前くらいは出てきていただろうか。日本では業績なぞ全く知られていないのではないだろうか。この時代に法による支配を打ち出し「憲章」を制定するとは。もっと取り上げられても良い君主だと思った。下巻も楽しみである。

  • やっと上巻読み終わったー!自粛中にたくさんの本を買って乱読しておりました。そのうちの一冊です。

    私がフリードリッヒ2世に興味を持ったのは、デル・モンテ城がきっかけでした。イタリア南部にあるデル・モンテ城は、八角形尽くしで築かれたミステリアスな建物です。この不思議な城を建てたのがフリードリッヒ2世。調べてみると「早く生まれすぎた」人らしい…

    ここから本の感想です。
    フリードリッヒさんかっこいいよ!一国のリーダーたるやこういう人でないと。フリードリッヒは一国どころか、シチリア王であり神聖ローマ皇帝でありエルサレム王であります。「席の暖まる暇もないくらいに移動を繰り返す人であった」ほど各国を飛び回っていたらしい。
    それはそれは多くの偉業を成し遂げた人物。ある程度の美化はされているとしても、すごいなーとしか言いようがありません。こんな人が現世にあらわれませんかねぇ?

    「◯◯の誰それ」とか「皇帝の側近である誰それ」とか、何度も繰り返し説明をしてくれるので登場人物の名前が多くて「あれ?この人誰だっけ?」というのがありません。難解な言葉もほとんどないので読みやすくてわかりやすいです。一気に下巻も読んでいこうと思います。

  • 塩野七生先生がずっと書きたかった人物を書いた本が文庫になったということを知り、購入しました。

    高校時代に世界史を学んでいましたがあまり記憶に残っていない人物だったので、新鮮な気持ちで読め面白かったです。

    ローマ法王の権力が絶大だった中世時代に、法王とどう折り合いをつけて改革を起こしていったのか。ルネサンスに繋がる一大人物の生き方は魅力的でした。

    下巻の内容がたのしみです。

  • 「ストゥポール・ムンディ」(世界の驚異)と同時代の人達に畏敬され、公式にはラテン語で「フリデリクス 神の恩寵によって ローマ皇帝アウグストゥス イェルサレムとシチリアの王」と称したというフリードリッヒ2世という人物…なかなかに興味深い訳だが、本作はその人物の生涯を概ね編年式に追いながら語る物語だ。
    本作は、“主人公”であるフリードリッヒ2世等の史上の人物達をモデルにした劇中人物達が勇躍し、苦悩し、歓び、怒るというような「小説」ではなく所謂「史伝」という読物である。或いは、日本国内ではやや馴染みが薄いかもしれない欧州諸国の歴史を題材としながら、非常に読み易い感じだ。実は同じ著者の他作品も過去に読んでみた経過が在ったと思う。
    俗に言う、欧州の「中世」というようなモノがどういうものなのか?その時代に「忘れられてしまった?」というような概念を実現しようとしていたかのような、皇帝としての行動を説くことで、寧ろ「中世」なるモノの姿が形を帯びるというような感だ。なかなかに興味深い。

  • めっちゃ楽しみにしていた本なのに、数ページ読んでは眠くなってしまい…を繰り返していた。「合わない」ってこういうことかも…。
    少年時代のフリードリッヒのハチャメチャ振りがヤバかったです。
    あと、イノケンさんが意外に大人しかったというか…。

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