ローマ人の物語 (5) ― ハンニバル戦記(下) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181554

感想・レビュー・書評

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  • ハンニバル、カルタゴ、ギリシアの時代の終焉、そして確固たる覇権国家ローマの誕生。己自身の判断と崇高な意思、犠牲のもとに不屈に突き進むローマに、かつての大国が打ち破れていく。ハンニバルという一人の戦士が巻き起こした旋風が、ひとつの時代の終わりと、あたらしい時代の幕開けをもたらした。

  • ハンニバル戦記下。ローマが地中海の覇権を握り、カルタゴの滅亡まで。古代の人物といって、すべて力でもの伏せた蛮人だとばかり思ってはいけない。そこには崇高な誇りと、人間愛と、倫理観がある。だんだんと規模を大きくし、拡大するローマ帝国。大きくなればなるほどに、一つの瑕疵が歯車を大きく狂わせる。信頼が疑心に変わり、尊敬が失望に変わり、誇りが傲岸に変わる。血なまぐささはなるたけ取り除きながらも、拭うことのできない人間と国家の衰亡のドラマが、生き生きと描かれている。

    著者のカルタゴ滅亡に対する悲哀に、こころ揺さぶられるところがある。

    13/8/25

  •  ハンニバルとスキピオ・アフリカヌスが激突したザマの会戦を中心に,第二次ポエニ戦役の終盤と,その後にローマが地中海をローマの内海(「マーレ・ノストゥルム(われらが海)」にしてしまうまでの物語です。
     この「ハンニバル戦記」のテーマのひとつは,歴史をプロセスにあるという考えに基づいて,民族が戦争にどのように対処したかを詳細に知ることにより,その民族について詳しく知ろうというものだと思っていますが,ハンニバルとスキピオ・アフリカヌスの戦略面と彼らの性格,その後のローマの政略などがこの意図のもとにまとめられています。また,読みどころが多く,ローマ人の物語の山場のひとつだと思っています。

     カルタゴを下し,地中海を内海にし,勝者になったローマですが,その急速すぎる勢力拡大は,ローマに数多くの歪みを,それも勝者であるが故の歪みをかかえてしまうことになります。この歪みに起因するローマを襲った社会問題とその解決が,次のIII巻「勝者の混迷」の物語です。

  • マシニッサを自軍に迎えたときのスキピオの優しさに感動。出来事の無味乾燥な陳列である高校世界史しか知らない人には是非読んでもらいたい。

  • ハンニバル、スキピオが亡くなり、マケドニア、カルタゴが滅びる。
    今までが盛り上がっていただけに、ちょっと寂しい印象の残る感。

  • ポエニ戦役終了。
    ハンニバルとの長い戦いは終わった。
    カルタゴもマケドニアも滅び、ローマはさらに興隆。
    弱肉強食の世界。
    正面突破の戦力がモノをいう戦術から、騎兵と歩兵を
    組み合わせた包囲殲滅戦へドラスティックに転換。
    現代では当たり前だけど、当時では劇的なこと。
    馬の鐙だってそうだ。長らく誰も思いつかなかったらしい。
    普及したのは中世とのこと。

    著者が言うように、全く新しいことに気づくことなのではなく、
    今目の前にある事象をちょっと違った視点から見ることが、
    とても大切でなかなかできないことなのだろうな~。
    特に真剣であればあるほど視点は狭くなっていくから。

    包囲についての考え方がなんとなく分かった気がする。
    包囲は態勢上の話だけではなく、やっぱり時間軸と組み合わせて
    考えるほうが、よりスッキリする。
    最初から包囲が可能な状況って、地形にもよるけれど、
    敵が相当バカとしか思えんもんな~。。。

    <メモ>
    ○ 優れたリーダーとは、優秀な才能によって人々を率いていくだけの人間ではない。率いられていく人々に、自分たちがいなくては、と思わせることに成功した人でもある。持続する人間関係は、必ず相互関係である。一方関係では、持続は望めない。

    ○ ザマの会戦前のハンニバルとスキピオの会談

    ○ ラテン語の格言
      話したことは飛び去るが、書いたことは残る

      

  • いよいよハンニバル戦記も終焉を迎える。
    連戦連勝を続けたハンニバルもカルタゴに戻り「ザマの会戦」。

    スキピオの戦術は、まさにハンニバルのそれである。
    「カンネの会戦」がそのまま再現された感じであった。

    これだけローマに貢献したスキピオも大カトーによって失脚させられるているのは、いつの時代も嫉妬というものはあるということを実感させられる。
    「恩知らずのわが祖国よ、おまえにはわが骨をもつことはないであろう」という言葉がスキピオの無念をよくあらわしており、印象的である。

    あれだけ協力であったカルタゴもついには滅亡するわけだが、いままで敗者であっても属州化するか同盟国として自治を認めていたのにもかかわらず、カルタゴを跡形もなく滅亡させたローマの方針には驚かされた。

    いよいよローマが混迷の時期に陥るきっかけであろうか。

  • 『ぼくらの頭脳の鍛え方』
    書斎の本棚から百冊(佐藤優選)99
    歴史についての知識で、未来への指針を探る
    キリスト教文化中心主義にとらわれない日本が世界に誇る物語。
    ※10巻までを登録。実際はハードカバーで全15巻、文庫本で全43巻ある

  • ハンニバル戦争終期。スキピオのアフリカ侵攻。ヌミディア王国の内紛。マシニッサ王とスキピオの関係。ザマの会戦。カルタゴの降伏。スキピオ弾劾。カトーによるスキピオの失脚。ハンニバル戦争時にハンニバルと同盟を結んだマケドニア王国。マケドニア王国の滅亡。ヌミディア王国とカルタゴの関係悪化からのローマ介入。第3次ポエニ戦役。小スキピオによるカルタゴの滅亡。

  • 大カトーは第2次ポエニ戦争に勝利した後も、カルタゴとは関係ない物も含めて、あらゆる演説の後に「~、ところで、カルタゴは滅ぼされなければならない 」と脅威を抱き続けた強国カルタゴの滅亡。

    燃え上がるカルタゴをみて呟いた小スキピオの言葉が全てだと思う。「今われわれは、かつては栄華を誇った帝国の滅亡という、偉大なる瞬間に立ち会っている。だが、この今、私の胸を占めているのは勝者の喜びではない。いつかは我がローマも、これと同じときを迎えるであろうという哀愁なのだ。」

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