ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以前 下 (10) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181608

感想・レビュー・書評

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  • 読む手が止まらないとはこのことか。ガリア戦役が終わって、三大巨頭のクラッススやポンペイウスの動きも活発になっており目が離せない。
    ローマ一の富豪であったクラッススは唯一手にしてなかった軍事的な成功を得るための遠征へ。そして、ポンペイウスは反カエサル派の暗躍によって共闘体制から対立する立場へ。
    様々な立場の者の思惑が複雑に入り乱れて、政局での駆け引きがとにかく激しい。いよいよカエサル vs ポンペイウスのローマ人同志の頂上決戦が繰り広げられる。とにかく胸熱の展開。

  • 『ローマ人の物語10 ユリウス・カエサル ルビコン以前(下)』塩野七生

    読了。カエサル、ルビコン川を渡る。
    「賽は投げられた!」
    もうめちゃめちゃ面白い。

    カエサルには通底した信念があった。巨大化したローマにおいて共和制は対応できていない、おそらくは帝国的なる形を取るしかないのではと考えていた。
    これに近しいことを、現代日本の哲学者、東浩紀さんが言っていた。要約すると「スケールが大きくなると民主主義が機能しなくなる」東さんはロシアや中国を念頭に置いていた。
    しかし、ここで念頭に置いておくべきなのはカエサルはロシアのプーチンとも、中国の習近平とも異なり「母国のシステムを母国のために破壊しよう」としていた。

    ポンペイウスも、ラビリエヌスも、キケロも、小カトーも、皆が魅力的。
    しかし、もう圧倒的にカエサルが一貫してる。一貫性のある人間を人は信頼する。
    一貫するということは、それだけ初心が強く、つまり当初からよくよく考えて迫るものを抱えていたからブレないのだろう。

    次を読むのがとても楽しみです。カエサル編大変に面白い!!!

  • 三頭政治の一角を担うクラッススがオリエントで戦死し、カエサルにとっては困難が、元老院にとっては好機が訪れる。元老院によるポンペイウス懐柔も成され、カエサルはいよいよ窮地に陥る…はずなのだが、カエサルと元老院とでは訳者が違い過ぎるのか、著者の塩野氏がカエサル贔屓だからか、あまり「絶体絶命の危機」という感は無い。史実を知っている身としては、ここからどうやって不利な状況をひっくり返していけたのか、という強い好奇心を感じられる巻になっている。

    この巻でガリア戦役は終結。降伏したガリア人たちに対し、カエサルはガリアの諸民族を虐殺せず、本拠地となっていた各地の町を破壊したりもしていない。これが結果的にガリア人(ケルト人)の文化を生き残らせることになり、当時の町が今もヨーロッパ各地に存続するきっかけになったらしい。ケルト文化が無ければ今のイギリスやフランスの文明は存在しないわけで、政敵を壊滅させることが必ずしもいい結果を生むわけではない、というのが、この例だけとってもよくわかる。

  • クラッススパルティア遠征そしてカッレの敗戦
    青年クラッスス自死

    パルティアの貴公子スレナスは、彼の名声が自分をしのぐのを恐れた王オロデスにより、30歳にして事故と見せかけ殺されます。

    ガリア戦役7年目ではオーヴェルニュのヴェルチンジェトリックス(フランス最初の英雄←WIKIより)が立ち上がりガリア総決起。

    ヴェルチンジェトリックス善戦するもアレシア攻防戦でカエサルに完敗。
    >「ヴェルチンジェトリックスは自ら進んで捕らわれの身になった」
    キケロによればカエサルは若い頃の自分自身に似た性格の若者を愛した。オーヴェルニュの若者はおそらくカエサルが軍団長にでも欲しいと思った人材であろう。しかし歴史は、そのような逸材は敵側にしかもてなかったという例で満ちている。

    以降ガリアはおとなしくなります。

    そしてこれだけの活躍をしたカエサルを、元老院は国家の敵、国賊として潰そうとします。
    ポンペイウスを取り込み。
    13年間カエサルと苦楽をともにして戦ってきたラビエヌスを取り込み。

    「賽は投げられた。」

    ひとつひとつの事柄を受け止めるのに大変なんですけど、ガリアとゲルマンの比較やアステリックスのところでちょっとリラックスできます。

  • ガリア戦役6年目から8年目にかけてのガリア民族との戦いがこの章の内容です。
    紀元前53年にパルティアに総司令官として遠征したクラッススが敗北し、殺されます。三頭政治の一翼を占めていた彼の死に元老院派は、大きくなるカエサルの存在を恐れます。庶民派として人気のあったクロディウスが元老院派のミロの一派に殺される事件もあり、表舞台にポンペイウスを引っ張り出し、「一人執政官」として選びます。こうしたローマの政情不穏もある中、カエサルは、7年目にガリア民族の大団結の一大蜂起に遭います。ガリア民族にはまれな強力な指導力を発揮した若き総司令官がいたのでした。そのためカエサルは動きを読まれてしまい、撤退を余儀なくされる絶対絶命の危機に襲われます。しかし、会戦を選んだ敵により結果的に救われます。アレシアというガリア人の信仰を集める聖地に立てこもる作戦を見て、ローマ軍お得意の包囲網建設という土木工事を施します。この辺りは詳細な図説付きで筆者も、…理工系でない私はやれやれと思ってしまう。…と苦笑。全く、カエサルの現場監督ぶりには驚嘆するところです。
    こうしてアレシアでもカエサルは完勝し、戦後処理を終えますが、息つく間もなく次に、元老院派との法律と言論を武器にした闘いが待っていたのでした。カエサルは逡巡しながらも、新秩序の樹立を目指し、ローマ人同士の内線を招くことを意味するルビコン川を越えます。賽は投げられた!と叫びながら。

  • ガリア戦記6年目〜8年目(戦後処理)+ルビコン川渡河直前までの話。しかし、本当に不思議。ローマで活躍したのは実質的に執行官になった1年くらいなのに、ガリア戦記が終わるや否や、元老院の引きずり下ろしに対して、ガリアに居ながら手を打てるってどういうことなんだ。もちろんガリアでの活躍は華々しいのだけれど、民衆だけでなく、政治の中枢まで関与できるイメージがまったく湧かない。それほど突出した人間、文字通り時代の寵児だったんだと思う。

    P177
    虚栄心とは他人から良く思われたいという心情であり、野心とは、何かをやり遂げたい意思であると思っている。他者から良く思われたい人には権力は不可欠ではないが、何かをやり遂げたいと思う人には、権力は、ないしはそれをやるに必要な力は不可欠である。ところが、虚栄心はあっても野心のない人を、人々は、無欲の人、と見る。またそれゆえに、危険でない人物、と見る。かつがれるのは常にこの種の「危険でない人」である。

    P196
    しかし、人間誰でも金で買えるとは、自分自身も金で買われる可能性を内包する人のみが考えることである。非難とは、非難される側より非難する側を映し出すことが多い。

  • カエサルのガリア戦記は本当にローマ人が強かったのを物語る。

  • ■評価
    ★★★☆☆

    ■感想
    ◯いよいよガリア戦記も大詰め、相手もガリアを束ねてカエサルと伍して戦ったヴェルチンジェドリックスが登場。ガリア戦記の最終決戦を迎える。

    ◯一方ローマでは、ポンペイウスを取り込んだ元老院の反カエサル派が、元老院最終勧告を出すに至る。
    ◯かの有名な「賽は投げられた」のシーンが最後に出てくるムネアツなシーンが載っており、ルビコン以後も期待してしまう内容である。

    ●「ここを超えれば人間世界の悲惨。超えなければ我が破滅。 ―進もう、神々の待つところへ、我々を侮辱した敵の待つところへ。賽は投げられた!」

  • ガリア戦記最終章です。
    ガリアの平定から内乱記に続くところまでのお話しになります。
    とても刺激的で楽しい場面の連続でした。

  • ガリア戦記からの賽は投げられた、までの道のり。
    最後の賽は投げられた、に胸が熱くなる。
    ラビエヌス!君もルビコンを越えたんだね。
    早く次が読みたくなる!

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