ローマ人の物語 (11) ユリウス・カエサル ルビコン以後(上) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181615

感想・レビュー・書評

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  • ユリウス・カエサル壮年期。ローマの内乱、カエサルとポンペイウスの戦いがこの巻で終わる。

    かつてはカエサルとほぼ同じ立場、同じ権力でローマを統治したにも関わらず、反カエサル派に祭り上げられてカエサルに刃を向け、その後は敗走を続けて最後は逃げ込んだアレキサンドリアで暗殺されたポンペイウス。この巻を読んでいると、彼の不運と哀れさとが際立つ。有能な武将であったポンペイウスも、カエサルという眩しすぎる太陽の前では影になり、消えていくしかなかった、ということか。

    ローマに「軍」を持ち込み、戦場としてしまったカエサルが、ポンペイウス討伐以降にどう振舞っていくのか。次の巻は統治の話になっていくのだろう。

  • ポンペイウスとの戦いって、
    教科書上だとあっけなく終わるから
    なんだか圧勝なのかと思いきや
    カエサル側って色んな不利の上での戦いだったんだな。

    諸外国との関係もちゃんと理由があっての
    行動と分かるから面白いし、カエサルの才能が
    本当にすごい人だと思う。

  • カエサル、ポンペイウス、クレオパトラと私でも聞いたことのある方々が出てくるので、どんどん読み進めることが出来ました。

  • カエサルとポンペイウス、担がれてしまったいきがかり上、気が乗らないまま戦ったのが伝わってきた。クレオパトラはいつ出てくるのかと思ったら、ようやく巻末で登場。出会いはカエサル、かなり晩年だったのね。今までのフラットなカエサルを見ていると、クレオパトラの美貌に騙されてっていうのは盛られた話だなと思う。次巻が楽しみ。

  • ついにカエサルはルビコン川を渡る。
    ルビコン川、つまり国境を、軍を率いて越えるということは、ローマに対する反逆行為であり、ガリアでの凱旋将軍として迎えられるはずが、反逆者として鎮圧の対象になるということ。
    それでもカエサルがルビコン川を渡ったのは、「俺を正当に評価しろ」ということではなく、元老院政治は今の世の中にはもうそぐわないので、政治機構の改革をしなければだめだという思いから。

    その報を聞いて元老院の人びとは我が身可愛さからローマを脱出、カエサルを迎え撃つ準備のためポンペイウスも領地に向かいローマを後にする。
    なので、ふたを開ければがら空きのローマにカエサルは帰ってきたことになる。
    この辺りの危機管理がもうすでに「元老院、ダメだな」と思わさる。
    カエサルは何度もポンペイウスに「会って話をしよう。二人で政治を立て直そう」と手紙を書くが、それは叶わない。
    ローマの領土でローマ人同士が戦うということは、どちらが勝ってもいいことがないとカエサルは考えるが、これはなかなかすごいこと。
    勝海舟の必死の説得にもかかわらず、薩長は幕府を挑発し続け、結局戊辰戦争という内戦が起きてしまった日本の、2000年前の出来事なのだから。

    人たらしカエサルは、部下の人心掌握にも長けていたから、圧倒的に少ない人数、連戦続きの疲労、軍資金の枯渇をすらバネにして戦い、勝利をおさめるのだけど、捕虜ひとりひとりの意向を確認し、カエサルにつきたいという者は軍に組み入れ、ポンペイウスの元に帰りたいという者は武器を取り上げたうえで解放する!
    これもすごい。

    自分は自分の信念に基づいて行動しているのだから、他者が他者の信念に基づいて行動することを尊重する。
    これって民主主義の根幹じゃないですか。
    っていうか、民主主義って概念ができたのは、これから何百年あとなのか?
    結果、ポンペイウスの元に返した人たちに暗殺されるのですが、それはまだ先の話。

    政治改革のためにこれほどの行動をすることも、驚異。
    だって中国は、何回国が変わっても、何度支配者(民族)が変わっても、政治機構、行政システムは変わらなかったもんね、共産党ができるまで。

    私が今まで思っていた、独裁者シーザーってのとは全然違ったカエサルの思想。
    独裁者になりたかったのではなく、一緒にやってくれる人がいなかったんだ。
    ひとりだけ見てる世界が違ったんだろうなあ、きっと。

  • ルビコン川を渡ったカエサルは、元老院派に担がれたポンペイウスと対決する。これまでと違い、カエサルは同胞のローマ人相手に戦うことになる。ファルサルスの会戦での両雄の激突、ポンペイウスを追ってエジプトへ、そしてクレオパトラ登場。

    相変わらずカエサルが魅力的。だけどここにきて初めて著者のカエサル贔屓がちょっと鼻についた。カエサルの説得にキケロが従わなかったことまで、カエサルの思惑通りで、やはりカエサルのほうが役者が上、と解釈するのはどうなんだろう。ちょっとカエサルに良いように解釈しすぎな気がする。

  • カエサルの墜ちていく感はどうしても書きたくないんですなぁ、この作家は。というか単に当方が無知な天邪鬼なだけかもしれませんが、何かこうメリハリが無いんですよね、このお方の作品は。

  • この巻では、カエサルの壮年期の紀元前44年3月までの前半。

  • 壮年後期 Virilitas 紀元前四九年一月~前四四年三月

    著者:塩野七生(1937-、北区、小説家)

  • 元老院最終勧告によって国賊とされたカエサルが、ルビコンを超えてポンペイウスを戴く元老院派と対決をする。

    とはいえ、元老院派を構成する議員たちは、キケロや小カトーであってもリーダーシップを発揮するということはなく、この戦いは事実上は三頭政治の二頭を担ったカエサルとポンペイウスの戦いと言ってよい。

    まず、スペイン、南仏属州で、そしてギリシア、最後にエジプトと場所を変えて展開されたこの戦いにおいても、カエサルはあくまでカエサルであったと思う。

    ドゥラキウムでの敗退の後のファルサルスでの鮮やかな逆転、兵士のストライキや退役要求(という形をとっての賃上げ要求)に対する、相手の心理を巧みに読んだ対応等、ガリア戦役でのカエサルと同じような強力なリーダーシップを見せている。

    ガリアではなくローマ領内で戦われたことから、敵や戦場となった都市、領内での地元の有力者への対応は、被征服者に対するそれとは異なっていたが、それとても、カエサルのグローバル国家としてのローマ国家の像からすると、一貫した考えのもとに行われていたものなのだろう。

    ただ、『内乱記』によって現在にその過程が伝えられているこの戦いについては、『ガリア戦記』のようなポジティブな色彩は感じられなかった。

    カエサル自身は、都市国家として元老院による集団指導(エリートによる支配)が限界を迎え、帝国としてのシステムを備えた新たな国家像を描いていたわけだが、旧来の国家像との対立がカエサル対ポンペイウスという形で戦われたこと自体は、カエサルにとっては哀しみをもって受け止めていたのだろう。

    いずれにしても、元老院派の平定は、カエサルがローマにもどって国家のシステムの改革を行うためには避けては通れない過程だったのだと思う。

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