ローマ人の物語 (18) 悪名高き皇帝たち(2) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181684

感想・レビュー・書評

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  • 悲しい読後感。ティベリウスにしてもカリグラにしても、人生の終わり方が悲しいなぁ。
    ティベリウスは皇帝になってからずっと悲しい。本人も自分の役割を理解しての様々な行動だったし、それはそれでローマに必要なことだったのに、当時の人には理解されていないのが物悲しい。
    そして、カリグラ。若さゆえ。おぼっちゃまゆえ。ティベリウスの背中をみての動きが裏目に出てる。
    皇帝という立場の難しさ、なんだろうな。
    カエサルとアウグストゥスが凄すぎたってことでもあるんだよね、きっと。

  • カリギュラという小説のウィリアムハワードのもので、人をうらやましがると運気が落ちるという語りがあり、ティベリウスの凄さにビビっていたり比べていたりしたらしい。ちょうどこの巻がそこにあたる。

  • ティベリウスとカリグラ。悪名高き両皇帝の事績と塩野女史による評価の巻。
    映画の中でよく見る、ローマによって張り付けにされたイエスや悪逆非道のカリグラが史実では違うのではないかと認識した一冊だった。

  • ティベリウス編を最後までよんで、彼が悪帝と呼ばれた理由がわかりました。
    晩年の、国家反逆罪の乱発。
    それに伴い処刑された人々。
    寛容のユリウス・カエサルと、ビジネス鷹揚なアウグストゥスに対して、謹厳実直で面白味がなかったため元々人気のなかったティベリウスがこんなことしたら、そりゃあ民衆の支持は離れるでしょう。

    大きな危機を華々しく回避して見せたら、分かりやすく皇帝の人気は上がる。
    けれども危機を起こさないように基本的なシステムを構築したって、人々の目には触れにくい。
    本人自身もカプリ島に隠遁して、人々の目に触れにくいしね。
    もう、世間にどう思われようと、帝国の安寧だけを考えていたっぽいティベリウス。

    でも、国家反逆罪の乱発はいかんですよ。
    晩節を汚しました。
    秀吉のような老害とはまた違うけれども、長生きしすぎて、心が折れてしまったというか、もうどうでもよくなったんでしょうな。いろんなことが。

    だから、ティベリウスの次の皇帝カリグラに民衆も元老院ももろ手を挙げて受け入れた。
    若く、見目麗しく、派手で、話がわかる。
    すべてを手にしたカリグラはまだ25歳。
    結論から言うと、彼こそが悪帝だったわけです。
    人気取り政策も、思いつき政策も国庫を空にすることにしかならず、外交も内政もボロボロに。

    しかし、ティベリウスはなぜカリグラに帝王教育を施さなかったのか。
    自分の身近に置いて、政治とは何か、税金の必要性、軍隊の統率の仕方、属州それぞれの特徴など、教えることはできなかったのか。
    そして、カリグラが無意味な政策を思いついた時に、「それはいけません」と命を賭して殿をお諫めする家老のようなじいやのような存在は周りにいなかったのか。

    そんな状態で、世間を知らない若者が、人気のない皇帝を見て育った若者が、人から受け入れられようとしたら、道を誤ってもしょうがないのではないか。
    カリグラを悪帝に仕立てたのは、無責任に彼に全権を与えて祀り上げた元老院と多くの民衆なんじゃないのか。

    と思ったのですが、カリグラを殺したのは、戦地で育った幼いカリグラを知っていた、言わばじいやのような近衛軍団の大隊長たちでした。
    ってことは何度か、または何度も「それはいけません」と諫めたのかもしれない。
    いきなり刀でぶった切ったりはしないと思う。
    と言うことは、聞く耳をもたなかったカリグラがやっぱりダメダメだったのか。

    アウグストゥス、ティベリウスが国庫に貯めたお金をたった三年ですっからかんにして、ローマのためになることをほぼしなかったカリグラ。
    さて、次の皇帝は何から手を付けるのか。

  • テイベリウスの晩年とその後を引き継いだ三代めの皇帝カリグラ(ガイウス・カエサル)の最期までを描いています。
    晩年をカプリ島で隠遁しながら(第一線を退いたわけではないので、作者は家出したと表現していますが)統治したティベリウスは、それでも帝国の統治は可能だと考え実行していきます。
    公務を果たすための「手足」をセイアヌスという近衛軍団の長官に託したのでした。庶民には不評だったと言うテイベリウスの統治スタイルは、この頃亡くなった実の母親の葬儀にさえ参列しなかったという事実が物語ります。この人間の心情を理解しなかったという欠点につながっているのでした。手足だったセイアヌスがティベリウスの本心を見抜けず、頭をもたげようとして、出し抜けに国家反逆罪に問われ処刑されます。セイアヌスを破滅に追いやったティベリウスはこの時72歳、テリブル(恐るべき)という形容詞がついています。
    その後も隠遁したまま、公式の場に一切顔を出さなかったために、後世の歴史家に様々なゴシップを書かれたという理由にもなったようです。
    こうして、ローマ社会を万全の体制にして77歳で世を去ったティベリウスの後に、「幸福は扉の外に待っている。…やらねばならないことは、扉を開けて中に入れることだ。」という文言どおりに帝国を引き継いだ人物は、25歳にも満たないカリグラでした。
    会社でも創業者が成した事業を、苦労知らずの二代目が駄目にする経緯はよくありますが、この時代、広大なローマ帝国を引き継いだカリグラにも、当てはまりました。庶民の人気取りの政策に終始して、快楽に走り、国家財政を破綻に導いたのです。在任してわずか3年にも満たずの期間でした。そして、金策のために外交に目を向けたものの、ユダヤ人の宗教観の理解不足のためにこれも失敗、熱狂的に受け入れられた就任当時の熱は一気に冷え込んでいました。
    結果として、護られていた筈の近衛軍団兵士たちによる皇帝殺害が起こります。あまりに未熟な皇帝の言動に、耐えられなかった身内からの反乱だったと書かれています。
    このわずかな期間の国家のドラマテックな展開に唖然とするばかり!

  • ローマ帝国は「カエサルが企画し、アウグストゥスが構築し、ティベリウスが盤石にした」(p90)

    その後に登場したのがカリグラ。
    それまで、歴史上でも希な政治のプロが続き、ローマ帝国を完成させるが、それを継いだのが24歳のまったくの素人。
    当然統治はうまくいかない。

    「カリグラは、幸か不幸かモンスターではなかった。頭も悪くなかった。彼にとっての不幸は、政治とは何かがまったくわかっていない若者が、政治をせざるをえない立場に就いてしまったことにある。(p203)

    カリグラは剣闘士試合や戦車競争といった市民が熱狂する競技を次々に開催し(いまでいうとサッカーやF1みたいなものらしい)、デビュー当時は大人気を博す。しかし国家財政が悪化し、やがて自分を神と考えるようになって愚行を重ね、身辺警護の近衛軍団に殺されて、在位4年であえなく幕。

    「政治の実践とは、ニュースがなければうまくいっている証拠と言われるくらいに地味で、それでいて一貫性を求められる責務なのである。」(p203)

  • アウグストゥスの血を引くカリグラ。前代ティベリウスの跡を継いだ彼は、その血筋と禁欲的な政策を解放したために大衆から歓迎された。だが目に見える権力を欲したこと、浪費がたたり国家財政が破綻したことで民の心は離れていき、最後は側近に殺害される。いかにもわかりやすい歴史。

  • 3代ティベリウス帝の後期と、これに次ぐカリグラ帝の短い治世を扱う18巻です。地味ながら堅実、賢明な治世を敷いたティベリウスが、晩年にかけ、徐々に変質していくさまが面白いです。
    またカリグラ帝の章では、この時期までのローマとユダヤの関係について紙幅が割かれています。しばらくキリスト教の勉強をしていて、ユダヤの側からの歴史ばかり読んでいたので、視点が広がりました。
    ただ著者は本書においては全般的に、中立というよりはローマの側に立って物事を断じるように思われ、そのまま受け取るというよりは少し距離をおいて読む必要を感じます。

  • ティベリウスの死とカリグラのお話し。
    若くして皇帝になるのは大変。
    カリグラの短命な統治。
    3、ガイウス・ユリウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクス

  • 20巻に記載

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