- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101181691
感想・レビュー・書評
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放蕩皇帝カリギュラと公務は有能だが嫁に尻に敷かれたクラウディウスの巻。
広大な領土をもつ帝国の皇帝の苦悩が如実に判る19冊めだが、長くは続かないが恐怖で抑える方法も歴史が教えてくれる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
初代皇帝 アウグストゥス
2代目 ティベリウス
3代目 カリグラ
3代目皇帝カリグラの突然の死によって、思っても見なかった皇帝の座に就くことになったのは、歴史学者のクラウディウス。当時50歳。生まれつき右足が悪く、吃音癖もあったらしい。
最初はあまり期待されていなかったが、カリグラの4年間の失政の後始末をやり遂げ、13年間の治世の間、アウグストゥス以来のパクス・ロマーナ(ローマの平和)の維持発展に腐心し、まずまずの成果を上げる。
だが問題は35歳年下の妻メッサリーナ。さえないオヤジの妻から突然ローマ帝国の皇妃になって舞い上がってしまい、好き勝手のし放題。虚栄欲と物欲と性欲にブレーキがかからず、重臣の財産は取りあげるわ、夜な夜な皇宮を抜け出して近くの娼家で客を取るわのやりたい放題。
「メッサリーナは、自己コントロールが不得手な女であった」
「とはいえ、自己制御の能力が十分な女を、女らしいとは評さないのが男ではあるけれども。」(p99)
いかにも塩野先生らしいコメントだ(笑)。
暴走のあげくメッサリーナは23歳で死刑となる。
ひどい目にあったにもかかわらず、懲りない皇帝クラウディウス。4度目の再婚相手はアグリッピーナという30代の女性で、前夫との間にネロという息子がいる。
こういう皇帝を評して、「正式の妻という配偶者がいないと落ちつかないタイプの男であったのだ。妻に支配されるのに慣れた男、というよりは、独身だと落ちつかないので再婚したのだが、結局は再婚の相手の思いのままになってしまった、という感じに私には映る。」(p148)
そして彼女から毒殺されてしまうのである。 -
カリグラ暗殺後のクラウディウスの治世の話。家庭−特に妻−には難アリとも言えども、政策自体は非常にまっとう。しかもそれまで政治も軍でも従事したことがなく、一介の歴史学者だというから驚き。一方で著者が再三書いているように、歴史学者であるがゆえの、自分への過信もなく、徹底的に歴史から学ぶ(パクる)姿勢がよかったのだろう。それにしてもアウグストゥス、ティベリウス、クラウディウスという、まっとくな皇帝が悩まされるのは常に身内の問題なんだと認識。出来る人にとって一番のリスクは身内なんだなー
P38
なぜなら、歴史に関心をもつことは、自分を含めた個々の人間の独創力に全面的な信を置かないことでもあるからだ。言い換えれば、「歴史は自分が創る」とは思わず、「歴史は人間たちが創る」と思う立場である。 -
第四代皇帝のクラウディウスの物語です。カリグラ暗殺により,50歳で予期せぬ帝位に就いたクラウディウスですが,13年の治世では,その職務をきちんと全うし,カリグラの統治で失われた分を十分に取り返し,パクス・ロマーナを継続,発展させた統治でした。クラウディウス帝のように,着実に責務を果たしていくのは,心身の消耗を伴うもので,職務に対する強い責任と自覚がないと果たせないと思います。こういう生き方ができた人には,敬意を持ちます。
皇帝就任まで,世間から注目されず,敬意を持たれたことがなかったことから,妻にはいいように使われたクラウディウス帝は,再婚相手の小アグリッピーナの野望の犠牲になり,その死の後は,彼女の息子に帝位がうつることになります。彼女の息子は悪帝の代名詞にもなる,ローマ史上で最も有名な人物になりますが,彼の治世の話は,次の巻で物語られることになります。 -
ゲルマニクスの弟クラウディウスのお話し。
悪くないけどなんかかっこ悪い人で少し残念。
4、ティベリウス・クラウディウス・カエサル・アウグストゥス・ゲルマニクス -
クラウディウスという皇帝は全く知らなかったが、こういう人がいたからこそローマの帝政は続いたのだろうなと思う。恐らく普通に誠意ある仕事をした人なのだろう。だけど、カエサルとアウグストゥスという2人の存在は大きすぎたし、仕事も人心術にもたけていた。同僚にいたら、頼りになることだろう。だが、彼の仕事は皇帝。妻のことまでは管理できなかった、では済まない。普通に仕事のできるいい人が皇帝になるということの悲劇さ。それにしても、家庭は大切。どの皇帝も家庭生活に恵まれていないのは悲しいことだ。読んでいて、かわいそうになってくる。
次はネロの番。さて、どうなることやら。 -
20巻に記載
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悪妻2連続で面白かった
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3代皇帝カリグラが暗殺された後に歴史学者だったクラウディウスが4代皇帝となった紀元41年から、クラウディウスが妻であるアグリッピーナに毒殺される54年までを扱う。
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皇帝クラウディウスの統治
五〇歳まで歴史研究家だったクラウディウス。
カリグラ暗殺後に突然、皇帝に即位する。
先帝の、内政(特に財政)・外政面(北アフリカとユダヤ)における負の遺産を処理し、皇帝統治の信頼回復を目指す。
それ以外にも、安全保障のためのブリタニア遠征や、解放奴隷を登用した秘書官システム(現在でいう官僚制度)の構築、国勢調査の実施や公共郵便制度の拡充と民間への開放、クラウディウス港やクラウディウス水道橋(起工はカリグラ)といった公共事業、北ガリア属州民への元老院の議席解放とそれに伴う奴隷解放規制法施行といった、多くの業績を残した。
しかし妻には恵まれず、メッサリーナやアグリッピーナといった悪妻にいいように利用されてしまう。
最後は(おそらく妻に)毒殺され、アグリッピーナの連れ子である、あのネロが次の皇帝に即位する。