ローマ人の物語 (22) 危機と克服(中) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.72
  • (72)
  • (120)
  • (159)
  • (5)
  • (1)
本棚登録 : 1125
感想 : 76
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181721

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ヴェスパニアヌがローマ皇帝につき、統治した業績を紹介した巻。
    久しぶりの統治能力のある非凡な皇帝であったと知った。
    5賢帝時代の助走時代のはじまり。

  • ヴェスパシアヌスとムキアヌスが出てきて、本当に安心した。ローマがネロの後も続くのは知っているが、ここからどうやって建て直すのか、謎でしかなかった。ユダヤ問題の根の深さ、ユダヤ教の一貫性を改めて実感。全く2000年前から、いやもっと前からずーっと変わらずのこの問題。ちょっと本を読んだくらいの日本人が簡単にはあーだこーだ言えないことだけは理解する。
    ヴェスパシアヌスの愛敬はきっと田中角栄的なんだろうな。ただ彼ほどの我の強さはないのだろうけど。
    そして、やはり世襲制にしたがるのは、父親としては当然の流れなんだろうか。シンプルさから無駄な皇帝争いがないことも世襲制の利点だなぁ。ただし、ちゃんとした息子なら。そして、古代ローマに子供であれば男女の関係なく、と求めるのは酷だけれど、これはまぁ、今だってなかなかできていないことだから、致し方なし。
    次は息子達の治世。楽しみだ。

  • 皇帝ヴェスパニアヌスとその右腕ムキアヌス、長男ティトゥスをメインに、ローマの内乱期に起きた二つの異民族の反乱を鎮圧し、ローマ帝国を建て直すまでが描かれる。
    異民族の反乱のひとつは、「ガリア帝国」建設を掲げたゲルマン系ガリア人の反乱。もうひとつはイェルサレムでのユダヤ人の反乱「ユダヤ戦役」。ユダヤ戦役は紀元1世紀後半の出来事だけど、この時点ですでに、敬虔なユダヤ人にとっては「イェルサレムに(ユダヤの)神権政体を樹立することこそが、正統」だったという文に、中東問題の歴史はもう始まっているんだなと思った。

  • ヴェスパシアヌスが帝位についた後も、彼はすぐにローマに向かったわけではなかった。
    ローマの西ではゲルマン系ガリア人が、東ではユダヤ人が反乱を起こしていたからだ。
    とりあえずガリア人については、ヴェスパシアヌスを推したムキアヌスがすぐさま反乱を鎮圧した。
    そしてユダヤ人を鎮圧したのはヴェスパシアヌスの息子であるティトゥス。
    ヴェスパシアヌスは息子とともに、凱旋将軍としてローマ入りした。

    華々しい経歴も、生まれの高貴さも持ち合わせていない新皇帝は、「健全な常識人」として、ローマの平和を守り、財政を立て直したのだった。
    お手本にしたのは、アウグストゥスとティベリウスと、クラウディウス。
    後世の評判が悪いティベリウスとクラウディウスも、当時はちゃんと評価されていたんだなあ。
    ただ庶民の人気がなかっただけで、統治能力は高かったよねえ、塩野さんの本によると。

    この本でいいなあと思ったのはムキアヌス。
    最初に兵士たちに擁立されたのは彼だったけど、彼はヴェスパシアヌスが帝位につくまでを支え、帝位についてからも政権が安定するまで支え続ける。
    そして、帝位の安定を確認した後、そっと表舞台から姿を消した。
    こういう人が側にいてくれたのが、ヴェスパシアヌス最大の幸運だったのではないでしょうか。

  •  ネロ帝死後に帝位に就いたガルバ・オトー・ヴィテリウスの3人による内乱を平定した後のヴェスパシアヌス帝の物語です。紀元69年のローマ人による帝位をめぐる内乱の時期に勃発したガリアで発生した反乱と,その前後の時期に発生したユダヤ戦役,そしてそれらの反乱を鎮圧した後のヴェスパシアヌス帝の治世が話題になっています。
     内乱の経緯を描写することでの内乱の性質とそれへの対応に関する記述,そしてユダヤ戦役を舞台としての民族性に関する記述は,現在でも影響している課題にも通日内容が多いとおもって読み進めていました。
     そして,これらの大きな2つの反乱の後に帝位に就き,ネロ帝の後の混乱を収めて再建し,再びローマを成長軌道に乗せたヴェスパシアヌス帝を,時代が求めた指導者として,塩野さん「健全な常識人」と評します。塩野さんらしい表現だと思っています。

  • ガルバ、オトー、ヴィティリウス。3人の皇帝が次々と倒れた後に

    立ったのは、これまでの貴族階級出身ではなく、軍団叩き上げ

    の人ヴェスパシアヌス。日本流に言えば「平民宰相」というとこ

    ろか。

    しかし、打ち続いた内戦で大きな問題が持ち上がる。ユリウス

    ・カエサルが制覇したガリアで、独立の機運が高まった。

    精鋭と言われて来たローマ軍団は、それぞれが皇帝を擁立して

    ばらばら。しかも、首都ローマでの市街戦でローマの守護神

    ユピテルの神殿が火災で焼失。

    「なんだよ、ローマ軍団それほど強くないじゃん。守護神の

    神殿まで燃えちゃって神々にも見放されてるじゃん。よしっ、

    独立するなら今がチャーンス」

    有力部族の長たちは軍団を編成したばかりか、ローマ軍団

    内部からの反乱も引き起こす。だが、すべての部族がガリア

    帝国の夢に参加した訳ではなかった。

    これまで同様、ローマへの忠誠を誓う部族もいた。これが計算

    違い。でも、反ローマの部族にも親ローマの部族にも「ユリウス」

    の家門名を名乗る人がなんと多いことか。

    それもこれも、かのユリウス・カエサルがガリア制覇の際に自分

    の家門名を大盤振る舞いした結果だ。あっちもユリウス、こっちも

    ユリウス。カエサル、なんと太っ腹。読んでいて少々混乱したけ

    どね。笑。

    そして、ガリア問題と並ぶのがネロの時代からの課題だった

    ユダヤ問題だ。内戦での中断はあるものの、結局はローマが

    勝利を収めるのだがユダヤ人の描写を読んでいると、聖地を

    追われたのは自業自得に思えて来た。

    さて、ヴェスパシアヌス。治世はおおむね善政で終始している。

    健全なる常識を持った人は、この内戦を教訓とし早々に自分の

    息子を後継者として周囲に認めさせる。

    「かわいそうなオレ、神になりつつあるようだよ」

    これまで大病もなく過ごして来た常識ある皇帝は、死・の床で

    呟いた。帝位に就く時に公約した、平和と秩序の再復・維持を

    実現して。

  • 23巻に記載

  • 混乱と反乱と異民族の侵入。
    9、インペラトール・カエサル・ヴェスパシアヌス・アウグストゥス

  • 1年半のうちに皇帝が3人も入れ替わり、帝国の北ではガリア帝国の反乱、東ではユダヤの反乱が相次いで起こるという動乱の時期を過ごした後、紀元69年12月から帝位についたヴェスパシアヌスが再びローマに平穏をもたらし79年に病死するまでを扱う。

    ユダヤ戦役のくだりを読みながら、現在のイスラエルによるガザ侵攻のことを考えずにはいられなかった。
    ❝ユダヤ人の特質の一つは、走り出したら途中で止まることができず、行きつくところまで走ってしまうところにある。❞(p.98)

  • ヴェスパシアヌス回 塩野さんの文章を読んでいると、時々因果関係がわからなくなる。

全76件中 1 - 10件を表示

塩野七生の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×