- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101181745
感想・レビュー・書評
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トライアヌスの一生
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五賢帝時代最初のトライアヌス。
皇帝っぽさがとてもいいです。
13、インペラトール・カエサル・ディウィ・ネルウァエ・フィリウス・ネルウァ・トラヤヌス・オプティムス・アウグストゥス・ゲルマニクス・ダキクス・パルティニクス -
さんざんな失敗に終わった後、次に任命されるリーダーに求められる人物像とはどんなものだろう。
多くの人は、今までと間逆な改革を望むが、時に性急な変革は無用な混乱を生む。
しかし、圧力と言えるまでの期待をかけられるなか、冷静に事を運ぶのはよほどの傑物でないと難しい。
ならば、中継ぎを挟むのはどうだろう。
暗殺されたドミティアヌスの後を65歳で継いだネルヴァは、悪評高い制度の変更のみを行い、属州出身のトライアヌスに後を託した。
皇帝としての準備期間を得られたトライアヌスは、ドミティアヌスの策にもネルヴァの策にも囚われることなく、
皇帝の責務である安全保障、国内統治、社会資本の充実に専念することが出来た。
ただ、トライアヌスの業績からは、そもそも中継ぎなど必要でなかったかもしれないと思わせるほどの成果に満ちている。
・背が高く頑強で、怪我を知らぬ健康優良児
・長く苦しめられたダキアを鎮圧し、帝国建設以来初の領土拡張
・貧困家庭の子弟への育英資金制度
・橋、フォールム、浴場、港湾、街道など列挙に暇がない公共事業
・属州総督たちからの膨大な陳情に対する的確な指示
・皇帝を支える慎ましく教養に溢れた一族の女たち
特に『法の上ではなく、法の下に立つ皇帝』に徹する姿勢は、かつての皇帝ではありえなかったほど元老院との良好な関係を築くことに成功した。
しかし類まれな至高の皇帝はあっても、完璧な皇帝などというものは存在しない。
ダキア制覇はかつての失敗があったからこそ、橋の建設に1年を費やすほどの準備の上で決戦にのぞめたが、
はるか遠方のパルティアの地においては、かつての失敗があっても『遠い』というだけで全く別の力学が働く。
軍力を用いての『戦争』での勝利はあっても、長期の『支配』を達成するには、必ず発生する反発を如何に抑えるかが鍵であるが、
その反乱の只中において、トライアヌスは病に倒れそのまま没する。
賢帝が残したただ一つの、しかし大きな課題に、後を託された次の賢帝ハドリアヌスは如何に立ち向かうのか。
次巻に続く。 -
賢帝の話。戦争のシーンは面白かったけど公共事業の話は退屈だった。安定している時の資料がほとんど残されていないのは興味深かった。
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24巻はトライヤヌス帝の帝位在任の様子がつづられます。
帝位在位初期には、ドミティアヌス帝以来の「貸し」を返済すべくダキア族を掃討することになるのですが、掃討後の対処が先代から続いた伝統と違います。
戦後のダキア人の扱いについては、ローマ伝統の部族融和策を用いず、ほぼ総入れ替えのようなことを行い脅威を取り除くことにより、ローマの安定をもたらしています。これはカルタゴに対して行って以来長く封印されていた方法です。
勿論、勝者、敗者の考えでは普通とも思えますが、ローマ人の物語を読み続けていると周辺が気になります。このような強引な方法は周辺地域と軋轢を生みますし、このことに端を発した元老院との政治的綱引き的にはどうなのか、他の属州民はどう思うのかなどいろいろ考えてしまいました・・・・。成し遂げるのはやはり大したものだと思います。
このこと一つとっても、「いかに巨大な帝国の運営とは臨機応変と説得力をもって為されていたのか」と感じます。
このあたりをきちっと実行できるところが、ローマ人の時代よりすばらしき皇帝(賢帝)とよばれたトライアヌス帝なのかも知れません。また、小プリニウスとの書簡による帝国運営の断片は、生き生きとその時代の政治を伝えています。
思慮深い、いい政治の時代だったように思えます。
どうも、ローマ以降、人類は進歩していないように思うのですが・・・ -
読書日:2013年1月2日-8日
title in Italiana:SAECULUM AUREUM.
Imperator Caesar Divi Nervae Filius Nerva Traianus Optimus Augustus.
今年初めての感想です。
通称「Traianus」の生涯を1冊を通して描いています。
彼が初めての属州民皇帝です。
始めにそう書いていたのに元老院に気を配り、庶民にも良き生活を営んで欲しいと願って統治をした影響で、
最後の頁になるまで、この事がすっかり頭から抜け落ちていました。
賢帝である人の死以上に悲しい事はありません。
帝国の興隆の様子はこれから目を離せません。 -
五賢帝時代突入。それぞれの賢帝はタイプが違い、時には現状維持をし続けた者が賢帝と呼ばれる。
要するに、画一的にベストなリーダーのモデルも、サービスのモデルも存在せず、時代・顧客に合わせニーズを発掘・解決することが必要ということ。
これは何にでも言える。