知ろうとすること。 (新潮文庫)

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レビュー : 289
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101183183

感想・レビュー・書評

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  • きっかけは小さくても、自分を発信し続けることで想像もできない未来が広がることもあると、早野さんの話を読んで思う。そこには誠実さが一貫してあるからこそ、人が集まるのだろう。自分もそうありたい。

  • あの震災に対して、当時ネットの中にはたくさんの情報が常に流れていて、でもそれが正しいのかどうかは私には判断できなくて、正直真実を知るのは怖いとも思っていた。
    もしとんでもない状況に日本がなっていたらどうしようという恐怖。
    そうやって知ろうとしなかったから、手元にある分かりやすい意見、大声での警告を私からも発信するのが唯一自分に出来ることだと勘違いをしていた。
    この本を読むまで、福島は危険で、もう人は住めない土地で、そこの食べ物ももちろん食べてはいけないのだと思っていた。
    もう震災から5年が経っている。
    自分の生まれた国で起きた事故について、知ろうとするにはあまりにも遅すぎたと思う。
    同時に、あの頃どれだけの人が早野さんの存在に救われただろうと考えると、このように真実を伝えるということの価値を改めて実感させられる。

    福島の安全性について声高々に主張する本じゃないです。
    ただ大丈夫だよと言ってくれる暖かい本です。
    たくさんの人が読んでくれたらいいなと思います。

  • 物理学者の早野龍吾さんとコピーライターの糸井重里さんが、東日本大震災から3年が過ぎた2014年、原発事故は結局どういう影響をもたらしたのか、また、情報を受け取るときの態度などについて対談している様子をまとめた本。

    本書の中で、糸井さんが非常時に、専門知識が無い中で、どういう人の言葉を信用すべきかを、どう判断していたかが紹介されていた。
    スキャンダラスでなく、脅かす態度がなく、正義をふりかざしていなく、それでいてユーモアがある。
    本書はまさにそんな本だった。
    難しい言葉も全然ないし、押し付けがましい態度もない。
    それでいて、そうだったのか、とうなずける話ばかり。
    実際に早野さんが行った調査や、データの整理といった、単純に事実に基づいた話だからだろう。
    これは、とりあえず日本人は一読しておいた方が良い本ではないか?

    早野さんは、物理学者ではあるが、原発については全く専門外であったという事実に驚かされる。
    震災が起きた日から、原発について勉強を始め、理解を深め、種々のフィールドワークや、赤ちゃん向けのホールボディカウンターの開発など、重要な貢献をするに至ったという。
    中でも、線量を測る機器で、すでに開発されていたがあまり普及していなかった製品(D-シャトル)を、早野さんが「再発掘」したくだりに感服した。
    これまでは、ガラスバッジという、1年間にどれだけ線量が上がったかしか分からない、非常にざっくりとしたものしかなかったという。
    しかし、早野さんは、線量と生活習慣・・・何時にどこで何時間過ごしたのか、が重要であるという当たり前の事実に注目する。
    そして、1時間毎の線量を記録できるD-シャトルに注目した。
    単純に外出していなければ線量が低いといった事実だけなく、同じ家に居るときでも、除染がされていない屋根に近い2階の線量が高い、等、目からウロコの事実ではないか。
    その製品は、内部的には1時間毎のデータを蓄えているが、需要がなかったため、それを取り出すソフトが無い状況だったという。
    確かに、非常時でなければ、1年間の線量が把握できていれば、いいのかもしれない。
    しかし、こういった事故が起こってしまえば、そうではない。
    そうした場合、どういう情報が日々必要なのかという、頭の切り替えが必要だ。
    今回の事故のような状況において、ざっくりとした事実しか分からなければ、また何か情報が隠されているのではないかといった、様々な疑心暗鬼に陥ってしまう。
    自分の行動と線量が結びつけば、どんな場所が危ないのか、逆に危ないと思っていた場所も実は大丈夫など、リアルに把握できるこで、より具体的な対策や安心につながる。
    そういう、状況に即した冷静な対応、発想ができる早野さんは、本当にすごい。

    しかし、玉石混交の情報の中で、早野さんのような人をどう見つけ出すべきか。
    事実、震災当時、早野さんを知ってもいたが、私は、信じるに足る人物だと当時判断することはできなかった。
    思考を放棄しないという一点につきるのだろうが、当時を思い出すと、科学的な素養が乏しい私には、やはり限界があった。
    糸井さんの人を信じる基準は、一つ参考にしたい。
    また、自分で本を読んだりしないと、こうした事実を知ることもできない現代の報道のあり方は、本当に嘆かわしいと思った。

  • ある物事に対する判断をする前にその物事を知ることが大切。これは当たり前の話だが、知らず知らずのうちに大きな声に流されて、それが大衆の総意みたいになる傾向を感じる。
    福島の問題については、このことが如実に示されてしまった。大切な判断は常に事実に対して行うべきもので、それを知ることが大前提。
    真摯に事実を発信する早野氏。その事実に向き合う糸井氏。科学と大衆の関係があるべき姿として示されていると感じた。科学リテラシー以前の問題として、持つべきスタンスを学べた。

  • 読めば読む程、早野さんの人柄や行動力に感服。
    科学者の態度の件り、

    端的に言えば、自分が研究したり、発言したりする分野において、過去に何が起きて、いまどこまでがわかっていて、どこからがわかっていないかというようなことは、勉強しなくちゃいけない、それは必須です。

    この責任を全うする努力が出来ての、この人間力なんだろうな、と。まだまだ頑張らなくちゃ!と思うのでした。

    そして、138億年のドラマも良かった。
    あんな風に科学を語れる人、もう拍手。だから、震災後に、不安な人も耳を傾けたんだろうなあ。

  • 「傍観者」だったことを思い知らせれてしまった。
    私は、ただ知っているつもりだったのだと。
    「知ろうとすること」は、たしかに大切な姿勢だと思う。それと同時に、どの情報を選ぶか、見極める目の大切さも痛感させられた。
    これからの世界を生きていく上で、大切なことを学ばせてもらえた一冊です。

  • 糸井さんの言う、よりスキャンダラスでないほう、より脅かしてないほう、より正義を語らないほう、より失礼でないほう、を選ぶ、私もそうしてみたい。

    どうしても、スキャンダラス、脅かし、正義、そんなものに弱くなってしまうから。

    ただ、様々な情報の中から、どうそれを選択していくのか、難しいとは思う。
    結局のところ、「○○さんが言っているから」程度でしかなかったりするから…。

    原発事故から5年が経とうとしていて、その間の情報の更新はしていく必要があるのは確かだと思う。

  • 科学者にとっての科学と、その他の人にとっての科学って違うのだろうなというのが興味深かった。

  • 糸井さんと早野さんの会話(対談ではないと思う)はわかりやすい。福島や内部被ばくに対して多くの誤解をしていたことを知りました。
    早野さんがあとがきに記している
    ---「混乱した状態から、より真実に近い状態と思える方に向かって、手続きを踏んでいく」というサイエンスとしての考え方を、一般の人たちに理解してもらうのは、とても難しいと知ったのです。---
    根気強く数字を見せ続ける早野さんの行為には頭が下がります。福島の高校生たちのCRENでの講演については、私までドキドキしてしまって、心が震えました。
    そして、糸井さんのあとがきは最高です。

  • 東日本大震災・福島第一原発事故に伴う様々な混乱。
    その際に事実とその周知に文字通り奔走した東大の物理学の早野龍五教授と、コピーライターの糸井重里氏の対談集です。

    早野先生が語るのは科学に対し、学問に対し、事実に対して真摯であるということ。糸井さんの言葉からは、そういう「真摯な人」をどうやって見つけるのか、についてだと思います。
    とても感動する話が多かった。多くの人に読んでいただきたい一冊です。

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